慶大の体育会を深掘りしていく連載企画、「What is ○○部?」。20個目の体育会は洋弓部!!1959年に東京オリンピックでアーチェリー競技が実施されるかもしれないとの予測のもとに、慶應義塾体育会弓術部の中に洋弓研究班として設立され、これまで学生王座4度獲得という栄光を手にしてきた洋弓部。6月に開催される全日本学生アーチェリー男子王座決定戦で男子3位以内、女子ベスト4以内の目標を掲げ、東京五輪メダリストも輩出した整った練習環境で日々練習に励んでいる。今回ケイスポは、洋弓部の練習場である日吉蝮谷洋弓場を訪ね、チームを支える髙橋熙主将(商4・慶應)と注目の新2年生、荘司有輝(理工2・慶應)にお話を伺った。
前編では、昨年の10月の六大学新人戦で男子未経験者では見事1位、全体でも5位と好成績を残し、先輩からも注目を浴びる荘司にアーチェリーを始めたきっかけや競技への思い、六大学新人戦での活躍、そして今後の目標について語ってもらった。

注目の新2年生・荘司
――洋弓部に入部したきっかけは?
荘司:高校までずっと野球をやっていて、高校で甲子園優勝を経験しました。そこで自分の中で野球の限界を感じ、新しいチャレンジがしたいと思うようになりました。大学から始められるスポーツを探していて、ボート部やヨット部など、さまざまな部活の新歓に参加してみた結果、自分に向いていそうだと感じた洋弓部に入部しました。
――入部前に抱いていた洋弓のイメージと、実際に競技をしてみて感じたギャップはありましたか?
荘司:洋弓は外から見たら分からないことが多いスポーツだなと思いました。内部の感覚がとても繊細であることは、入部前には想像していませんでした。実際にやってみると、微妙な力加減で結果が大きく変わることを体感し、繊細なスポーツだと感じました。それがギャップであると同時に、突き詰めていけばいくほど面白さが増す部分だと感じています。
――高校時代は野球をされていたとのことですが、洋弓はより個人競技的な側面が強いと思います。その点で難しさや新たな発見はありましたか?
荘司:野球をしていた頃から、自分一人で考えながら課題を克服する練習を続け、試行錯誤しながら技術を磨くことが好きでした。その経験がアーチェリーにも活きていると感じます。
――昨年の六大学新人戦では、未経験者の中で全体一位という好成績を収めました。この結果を予想していましたか?また、好成績を収めた要因は何だと思いますか?
荘司:好成績を残せる自信はありましたが、自分としては『未経験者の中で優勝』という結果には満足していません。経験者を含む全体カテゴリーで優勝することが目標だったので、点数が届かなかったことには悔しさを感じています。自分は世界を見据えて日々練習しているので、『大学から始めた』という枠にとらわれることなく結果を残したいと思っています。先輩方から『未経験なのに上手いね』と言っていただけることがあるのですが、自分としては『未経験者なのに』という枕詞なしで『上手いね』と言われたいのが正直な気持ちです。
――慶應義塾大学洋弓部の雰囲気について教えてください。
荘司:雰囲気はとても良くて、分からないことがあればすぐに質問できる環境です。ただ、洋弓は個人競技的な側面が大きく、チームの点数が個々の成績の積み重ねで決まるため、野球のようなチームワークや一体感はそれほど求められない部分もあります。しかし、慶應義塾体育会の一部として、この組織を円滑に回すためには一定の一体感が必要だと思っていて、そのバランスはうまく取れていると感じています。
――今後の個人としての目標を教えてください。
荘司:まずは在学中に日本のナショナルチームに入ることです。ナショナルチームに選ばれれば、そこからオリンピック代表メンバーが選出されるので、最終的には大学院1年生時の2028年ロサンゼルスオリンピックに出場し、金メダルを獲得することが目標です。
チームとしての目標は、王座決定戦で2年生から4年生までの3年間で三連覇を達成することです。

1本1本高い集中力を保ち矢を放つのが印象的だった
新たな競技に挑戦し、野球で培った経験を活かしながらアーチェリーに取り組む荘司。未経験者という枠にとらわれない高い志と確固たる目標が、今後の活躍を期待させる。
(取材:鈴木啓護、塩田隆貴、記事:鈴木啓護)