第94回早慶レガッタが13日、東京都・隅田川で開催され、早稲田大学が女子エイト・第二エイト・対校エイトすべての種目で勝利。7年ぶりとなる完全優勝を果たした。雨が降り続き、波が大きく荒れる悪条件の中、慶應義塾大学は懸命のレースを見せたが、最後は地力の差をつけられ敗戦。悔しさを胸に、再起への誓いを新たにした。
2025年4月13日(日)
第94回早慶レガッタ @隅田川
早慶レガッタは1899年に始まり、日本最古の対校競漕大会として毎年4月に隅田川で開催される春の風物詩。両校の端艇部が威信をかけて臨む伝統の一戦は三大早慶戦にも数えられる。昨年の対校エイトでは早大がわずか1/4艇身の差で勝利し、慶大は惜敗。その悔しさを晴らすべく、慶大端艇部は135周年を迎えた今年、「自進」をスローガンに掲げ、クルー全員が寮で寝食を共にしながら絆を深めてきた。
ボート競技では、漕手たちは進行方向とは逆を向いてオールを操るため、相手の位置や動きを直接見ることはできない。しかし、先手を取ってレースをリードする展開になれば、後方に位置する相手を視界に捉えながら漕ぐことが可能となる。そのため、リードする側は戦略的にも精神的にも優位に立てるのがこの競技の特徴だ。特に早慶レガッタのコースは、スタートから両国橋付近まで緩やかに右へカーブしている構造上、アウトレーン(台東区側)を漕ぐ艇が若干有利となる。今年もその地形的優位を活かすべく、スタート直後のダッシュでどちらが主導権を握るかが勝負の分かれ目となる。
女子エイト
◆試合結果
タイム:1着 早稲田大学(4分03秒83)、2着 慶應義塾大学(3分59秒41)
艇差:1・1/4艇身
◆出場クルー
シート位置 | 選手名 | 学年・出身高校 |
C | 和田隆之介 | 政2・慶應志木 |
S | 荻内杏奈 | 政4・慶應湘南藤沢 |
7 | 申裕美 | 法4・都立富山 |
6 | 笠原愛美 | 経3・慶應湘南藤沢 |
5 | 岩井咲嬉 | 法2・立教女学院 |
4 | 佐藤亜美 | 文2・渋谷幕張 |
3 | 武者夢果 | 政2・学芸大付属 |
2 | 市村蒔穗乃 | 政4・平塚江南 |
B | 石川恵奈 | 商3・東洋英和 |
大会の火ぶたは女子エイトにより切って落とされた。女子エイトは、スタートの東武線鉄橋からゴールの桜橋までの1000メートルのコース。先日行われた戸田でのレースでは4秒差で早大に敗れており、慶大にとってはリベンジを期す試合となった。「『今年も慶應女子はどうせ負ける』とは言わせない」。女子エイト主将・申裕美(法4・都立富士)は試合前にそう意気込んだ。昨年の悔しさを知る経験豊富な選手が半数以上占める布陣で、35年ぶりの勝利を目指した。

女子エイトは35年ぶりの勝利へ
雨がパラパラと降る中、女子エイトは吾妻橋をスタート。早慶ともに良いスタートを切り、雨による波が残るコンディションの中、序盤は互いに譲らない展開となった。言問橋付近では慶大が早大をやや追いかける形に。半艇身のリードを許しながらも、これ以上差を広げさせないという力強いストロークで粘り強く食らいついていく。しかし、桜橋手前で差は約1艇身に広がり、最終的には1・1/4艇身の差をつけられてゴール。悲願の勝利にはあと一歩届かず、連敗に終止符を打つことはできなかった。

許したリードは僅か半艇身
大学入学後に競技を始めたクルーが大半を占める中、リズム作りを担ったストローク・荻内杏奈(政4・慶應湘南藤沢)を軸に早大に食らいついた女子エイト。今年は「ユニフォーミティ(=全員で動きを合わせること)」を勝利のカギとし、ここまで練習を積み重ねてきた。昨年は2艇身差で敗北を喫したが、今年はその差を1・1/4艇身にまで縮め、8人のユニフォーミティの成果が見られたレースとなった。女子エイトはさらなる成長を遂げ、来年こそは長年の雪辱を晴らし、慶大に勝利をもたらしてくれるだろう。

惜敗も確かな成長の跡が感じられた
第二エイト
◆試合結果
タイム:1着 早稲田大学(13分14秒04)、2着 慶應義塾大学(13分19秒56)
艇差:1・1/2艇身
◆出場クルー
シート位置 | 選手名 | 学年・出身高校 |
C | 坂田健太郎 | 法3・慶應 |
S | 岩本流空 | 商3・慶應 |
7 | 峯岸玲雄 | 経4・慶應志木 |
6 | 浅見悠成 | 経4・慶應志木 |
5 | 藤枝宏太 | 政3・慶應志木 |
4 | 小糸源 | 環2・慶應NY学院 |
3 | 高尾礼士 | 経3・慶應 |
2 | 三野剛生 | 経3・慶應 |
B | 岸本共平 | 商4・慶應志木 |
第二エイトは、対校エイト出場が叶わなかった男たちにとってもう一つの晴れ舞台。慶大は昨年の隅田川を経験した3人を含む、3・4年生を中心とした構成で3750メートルの長丁場に臨んだ。特に6番の浅見悠成(経4・慶應志木)は、昨年まで主務を務めていたという異色の経歴を持つ。早慶レガッタに出たいという強い思いを胸に練習を重ね、今回メンバーに名を連ねた。

また一つの晴れ舞台
女子エイト同様波が高く不安定な水面の中、両国橋通過までは互角の展開。台東区側のアウトレーンを漕ぐ早大がカーブで先行するも、慶大はリズムを崩さず粘り強く追走する。中間地点の駒形橋で3秒差をつけられた後も、言問橋を過ぎてレートを上げ反撃を試みたが、早大がさらにピッチを上げ突き放し、そのままゴール。 3連覇中だった慶大は惜しくも敗れ、4年ぶりに早大が第二エイトを制した。

4年ぶりの敗戦となった
対校エイト
◆試合結果
タイム:1着 早稲田大学(11分46秒23)、2着 慶應義塾大学(11分25秒39)
艇差:5艇身
◆出場クルー
シート位置 | 選手名 | 学年・出身高校 |
C | 笹生健介 | 経4・慶應 |
S | 阿部優貴 | 商4・慶應 |
7 | 鈴木颯真 | 経4・慶應 |
6 | 中村遼太 | 経4・慶應 |
5 | 城座泰志 | 経4・慶應 |
4 | 細谷蓮太郎 | 経4・慶應 |
3 | 扇原優 | 医2・慶應 |
2 | 伊藤遼太 | 法4・慶應志木 |
B | 白石健人 | 総2・今治西 |
大会最注目のレース・対校エイト。両校が1年ごとに優勝する実力拮抗の力関係の中、慶大は昨年僅か1/4艇身差(約5メートr)で早大に敗れた。その悔しさを糧に、「あの日削り出せなかった1秒という差をどう削るか、この1年ずっと考えてきた」と語るのは、2年生エース・扇原優(医2・慶應)。慶大は感染症によるチーム内の体調不良によりメンバー変更を強いられた中、直前になり辛くも主力級を揃えることができた。

昨年の悔しさを胸にレースに臨む
スタート直後、両艇が波に煽られ接触、やり直しのアクシデントが起こった。そんな中、再スタート後は早大がアウトレーンから半艇身先行。潮の流れが速い順流の中、両国橋通過時点で1艇身、直線コースに入るとさらに差を広げられる展開に。荒波に何度もオールをとられながらも、三度目の隅田川となるコックス・笹生健介(経4・慶應)、ストローク・阿部優貴(商4・慶應)を中心に一体感ある漕ぎを見せたが、最後は早大が5艇身差をつけ2連覇を達成。慶大にとっては悔しい敗戦となった。

5艇身差をつけられ敗戦した
7年ぶりの完全優勝を許した慶大にとっては、悔しさの残る大会となった。だが、感染症や悪天候という困難の中でも、どの種目でも慶大のクルーは果敢に立ち向かい、一体感のある漕ぎを貫いた。「再びメンバーで船に集まってボートを漕いだ時に、改めてチームスポーツの良さや仲間の大切さを感じることができた」と語るキャプテン・中村遼太(経4・慶應)の言葉通り、絆と成長の1年だった。135年の伝統を背負い、悔しさを糧に、次なる舞台での巻き返しに期待がかかる。

次なる舞台に期待がかかる
(取材:河合亜采子、竹腰環、ウジョンハ)
写真で振り返る第94回早慶レガッタ
★女子エイト
★男子エイト
★対校エイト