【端艇】歓喜と苦難の3日間 4種目入賞の快挙が示した慶大の”今” 新たな一歩を踏み出す/第103回全日本ローイング選手権大会

端艇

5月22日から24日にかけて、海の森水上競技場で開催された第103回全日本ローイング選手権大会。朝方に薄く広がっていた雲は次第に姿を消し、正午には夏の訪れを感じさせる快晴の空の下、選手たちは渾身の力をオールに込めた。早慶レガッタ後、初めての公式戦となる今大会は、新体制となった慶大にとって”飛躍”の第一歩。熱気を帯びる水上で、それぞれが自らの限界に挑んだ。中でも圧巻のレースを見せたのが、男子シングルスカルに出場した扇原優(医2・慶應)。社会人選手も出場する中、並み居る強豪を次々に退け、堂々の準優勝という快挙を成し遂げた。さらに男子ペア、男子軽量級ペア、女子舵手付きフォアがそれぞれ入賞を果たし、計4種目での入賞という成果を収めた。着実に存在感を示したクルーたちの健闘は、秋以降の躍進を予感させるものとなった。

 

2025年5月22日(木)〜5月24日(土)

第103回全日本ローイング選手権大会 @海の森水上競技場

男子部

試合結果

 

名前

結果

タイム

男子シングルスカル

S:扇原優(医2・慶應)

FinalA 2着(全体2位入賞)

8分48秒04

男子ペア

S:白石健人(総2・今治西)

B:細谷蓮太郎(経4・慶應)

FinalA 6着(全体6位入賞)

8分12秒97

男子軽量級ペア

S:中村遼太(経4・慶應)

B:鈴木颯真(経4・慶應)

FinalA 6着(全体6位入賞)

7分54秒95

男子フォア

S:阿部優貴(商4・慶應)

3:城座泰志(経4・慶應)

2:伊藤遼太(法4・慶應志木)

B:峯岸玲雄(経4・慶應志木)

FinalB 3着(全体9位)

7分20秒49

男子クォドルプル

S:徳永恒晴(法3・慶應)

3:阿部憲太(商2・慶應))

2:金子健志郎(法3・慶應)

B:谷水祐仁(環2・慶應)

FinalB 5着(全体11位)

7分24秒91

男子舵手付きフォア

C:笹生健介(経4・慶應)

S:岩本流空(商3・慶應)

3:藤森隆成(法2・慶應)

2:小糸源(環3・慶應NY学院)

B:藤枝宏太(政3・慶應志木)

FinalB 4着(全体10位)

7分27秒31

男子エイト

C:坂田健太郎(法3・慶應)

S:馬場大誠(政4・杉並学院)

7:中村大河(法4・慶應)

6:三野剛生(経3・慶進)

5:岸本共平(商4・慶應志木)

4:平田森裕(経2・開成)

3:古舘弘光(経3・慶應)

2:浅見悠成(経4・慶應志木)

B:國本大輔(文3・横須賀総合)

FinalC 2着(全体14位入賞)

6分59秒52

男子ペア

早慶レガッタでは対校エイトとして活躍していた白石健人(総2・今治西)と細谷蓮太郎(経4・慶應)が出場する男子ペアは22日の予選、500m地点を1分46秒86の最下位で通過。しかし1000m地点では鋭い追い上げを見せ、2位に浮上する。社会人チーム・TeamSSPとの2位争いが白熱する中、粘り強く食らいつき7分10秒87でゴール。わずか0.5秒差で接戦を制し、A決勝進出を果たした。

僅差の接戦を制しA決勝進出を果たした

迎えた24日のA決勝では、1500m地点まで3位と4秒差で粘りを見せる健闘を展開。しかし終盤、金沢大学に抜き出されると、そのまま差を広げられ8分12秒97でフィニッシュ。悔しさの残る結果とはなったが、最後まで力強い漕ぎで戦い抜いた慶大。6位で入賞を果たした。

粘りを見せるも6着フィニッシュ

 

男子軽量級ペア

チームをけん引する主将・中村遼太(経4・慶應)と鈴木颯真(経4・慶應)の男子軽量級ペアは、22日の予選で500m地点を1分44秒95の好タイムで通過し、スタートダッシュに成功。しかし、大阪公立大学に徐々に追いつかれて、1/2艇身まで迫られる展開に。主導権を握りたい慶大は落ち着いた漕ぎで一度は引き離すも、今度は3レーン・東京大学に前に出られ、一進一退の接戦となった。最終的には3位以下に大差をつけるもトップには届かず、7分8秒32で2着フィニッシュ。敗者復活戦に回ることとなった。

キャプテン・中村遼が出場する男子軽量級ペア

23日の敗者復活戦では3位に約10秒の差をつけ、A決勝に駒を進めた慶大。迎えたA決勝では、予選で接戦を演じた東京大学を約2秒リードし、500m地点5位で通過。レースは最後まで勝敗の読めない混戦となったが、ゴール手前で他艇を抜け出される展開に。最終タイム7分54秒95で6着フィニッシュ。6着に終わり、6位での入賞となった。

A決勝に駒を進め全体6位に入賞した

 

男子クォドルプル

徳永恒晴(法3・慶應)、阿部憲太(商2・慶應)、金子健志郎(法3・慶應)、谷水祐仁(環2・慶應)の男子クォドルプルは22日の予選、500m地点まで1レーン・立教大学、6レーン・東京経済大学と三つ巴の3位争いを展開。しかし、3位の東京経済大学に約5秒差をつけられ、6分6秒26のタイムでフィニッシュ。ラストスパートの追い上げも虚しく、敗者復活戦に回る結果となった。

ラストスパートも虚しく敗復戦へ

翌23日の敗者復活戦では、上位3着までに準決勝進権が与えられる中、昨年3位の明治大学は序盤から独走。慶大は500m地点を1分49秒04のタイムで通過し、1レーン・トヨタRC、2レーン・大阪公立大学と並び2位争いを繰り広げたが、次第に後退し5レーン・立教大学との3位争いに持ち込まれる。レース終盤、ギアを上げた慶大は1/4艇身差のリードを守り切り、7分26秒86で3着。序盤からのハイレートという戦術が功を奏し、準決勝進出を果たした。24日の準決勝では他艇に差をつけられ、最終タイム7分15秒71で6着。続くB決勝では、終盤に1/2艇身差まで詰め寄るも、再びラストスパートは実らず、7分24秒91で5着フィニッシュ。A決勝進出の6チームに続く結果で、全体11位で大会を終えた。

3位の座を手にし準決勝進出を決めた

 

男子シングルスカル

高校時代から日本代表に選出され、1年時には早慶レガッタの対校エイトにも名を連ねたエース・扇原優(医2・慶應)。昨年の全日本新人ローイング選手権では白石健人(総2・今治西)との男子ダブルスカルで大会2連覇を果たし、今回の男子シングルスカルに出場した。22日の予選では序盤からスピードに乗り、500m地点を1分48秒11で通過。2位に約4秒の差をつけて主導権を握る。1000m地点では3分41秒85とさらに差を広げ、後続を大きく引き離す独走体制を固めた。終盤には4レーンのトヨタRC・釜本大輝がスパートをかけてきたが、1艇身以上のリードを保ったままフィニッシュ。7分41秒82と安定したレース運びで予選1位通過を決めた。

終始安定したレース運びで予選を1位通過

予選の上位1位のみが進出する24日の準決勝では、1500m地点まで6分6秒39のタイムで首位をキープ。気迫の漕ぎも終盤で後続に詰め寄せられると、リズムを乱し8分14秒93の3着でA決勝を果たす。迎えたA決勝では、予選同様に序盤からハイレートで展開。500m地点では1分56秒30のタイムで2位通過すると、その後4レーン・中部電力を力強くかわして首位に浮上。2・3位と1艇身差をつけるレースを展開する。しかしレース中盤から、1レーンのアイリスオーヤマ・西村光生が猛追。大会2連覇中の24歳のベテラン追い上げに抗しきれず、1500m地点では約5秒のビハインドを背負い、再逆転を許す。懸命のラストスパートも虚しく、ゴール前ではその差がさらに広がった。それでも3位以下には2艇差以上の大差をつけ、8分48秒04の2着フィニッシュ。ゴール直後は雄叫びをあげ、全力を出し切った達成感をあらわにした扇原。全日本選手権シングルスカル種目への初出場で、堂々の全体2位という快挙を成し遂げた。

初出場にして全体2位という快挙をあげた

 

男子フォア

早慶レガッタで対校エイトクルーとして活躍した阿部優貴(商4・慶應)、城座泰志(経4・慶應)、伊藤遼太(法4・慶應志木)、そして第二エイトで気迫の漕ぎを見せた峯岸玲雄(経4・慶應志木)乗艇した男子フォア。22日の予選では500m地点まで粘るも、1000m地点で3分21秒14と3位以上に大差をつけられ、最終タイム6分50秒87で4着フィニッシュ。敗者復活戦に臨むこととなった。翌23日の敗者復活戦は、準決勝進出がかかる上位3着以内を争う展開に。500m地点を1分48秒24のタイムで4位通過。3レーン・法政大学と5レーン・日本大学が序盤から先行し、慶大は4レーンの関西学院大学と並走しながら3位の座をかけた競り合いを繰り広げた。1000m地点では関西学院大に約2秒の差をつけられ4位通過となるも、リズムを崩さず追走。徐々に差を詰めて引き離し、1500m地点では2位の日本大学に追いかける形に。終盤、レートを上げ反撃を試みたがわずかに届かず、7分24秒54で3着フィニッシュ。準決勝進出を決めた。

3位争いを制し準決勝へ進出した

24日の準決勝では、日本大学に約7秒差をつけられ6位に終わり、B決勝へ。続くB決勝では1000m地点を3分37秒70のタイムで2位通過し、そのまま逃げ切りたいところが、4レーン・京都大学に徐々に追い上げられてしまう。1500m地点では0.5秒差まで迫られ、ついにリードを許す展開に。ゴール直前に再び追い上げたものの、逆転には至らず、最終タイム7分20秒49で3着。昨年は5位に入った慶大だったが、今回はA決勝進出を逃し、惜しく全体9位で大会を終えた。

京都大学に逆転を許し全体9位の結果

 

男子舵手付きフォア

早慶レガッタで対校エイトのコックスを努めた笹生健介(経4・慶應)が舵を握る男子舵手付きフォア。岩本流空(商3・慶應)、藤森隆成(法2・慶應)、小糸源(環3・慶應NY学院)、藤枝宏太(政3・慶應志木)の4選手とともに臨んだ22日の予選では、ハイレートでレースに入り、500m地点を1分41秒79のタイムで2位通過。2レーンの日本大学とほぼ並び好スタートを切った。しかしその後は失速し、他艇に次々と追い抜かれる展開に。最終タイム6分53秒74で4着となり、敗者復活戦へ回ることに。翌23日の敗者復活戦では、500m地点を1分52秒27のタイムで通過し、2位に約2秒差をつけて主導権を握る。しかし750m付近から昨年6位の4レーン・東京経済大学が徐々に迫り、1000m地点ではその差がわずか約0.5秒差まで縮まる。以降は両校がなん度も順位を入れ替える一進一退の攻防に。さらに中盤からは3レーンの法政大学も追い上げを見せ、1500m地点では慶大を約2秒差でリード。逆転を許す形となったが、ラストスパートで再びギアを上げ、7分33秒59の1着でフィニッシュ。ゴール直後には喜びを爆発させたクルーたちが互いに手を上げて健闘を称え合った。

ハイタッチで健闘を称え合った

24日の準決勝では、序盤から他艇とほぼ並ぶ形でレースを展開。1000m地点までは4位と僅差の争いを繰り広げるも、徐々に差を広げられ、1500m地点では約4秒のリードを許す苦しい展開に。そのまま差を詰めきれず、最終タイムは7分31秒12。上位進出は叶わず、B決勝へと回ることになった。続くB決勝で、は500m地点を1分51秒01のタイムで4位通過。そのまま先頭の6レーン・東京経済大学に1艇身の差をつけられながら追走したが、レース中盤にはその差が広がってしまう。1500m地点では3位の4レーン・法政大学に1/2艇身差まで詰め寄る場面も見られたが、逆転には至らず。最終タイム7分27秒31で4着となり、A決勝進出の6チームに続く全体10位で大会を終えた。

終盤の追い上げも逆転ならず

 

男子エイト

一方、早慶レガッタで第二エイトのコックスを努めた坂田健太郎(法3・慶應)が指揮を執る男子エイトは、22日の予選で昨年2位の3レーン・NTT東日本と同組に。序盤から他艇に大きく引き離され、厳しい展開が続く。最終的には1位と約40秒の差をつけられ、6分33秒60のタイムで4着に終わった。

悔しさの残る予選レースとなった

翌23日の敗者復活戦では、3レーン・仙台大学がスタート直後から先行。慶大は500m地点を1分40秒98のタイムで4位通過するも、次第に差を詰められ、1レーン・東京科学大学理工学系と肩を並べる接戦になった。1000m地点では約1秒の差でリードを許し、ラストスパートも実らず7分3秒27のタイムで最下位。C決勝へ回ることとなった。同日のC決勝では、東京科学大学理工学系との2艇のみで実施。スタートでハイレートを見せたが、一気に突き放され、最終的には6秒差の6分59秒52で2着フィニッシュ。力及ばず、全体14位の結果となった。

ハイレートのスタートも全体14位の結果

 

女子部

試合結果

女子舵手付きフォア

S:申裕美(法4・都立富山)

3:荻内杏奈(政4・慶應湘南藤沢)

2:岩井咲嬉(法2・立教女学院)

B:笠原愛美(経3・慶應湘南藤沢)

C:和田隆之介(政2・慶應志木)

FinalA 5着(全体5位入賞)

8分34秒93

女子ダブルスカル

S:中村遼太(経4・慶應)

B:鈴木颯真(経4・慶應)

FinalB 5着(全体11位)

9分01秒94

女子舵手付きフォア

和田隆之介(政2・慶應志木)が舵を握り、申裕美(法4・都立富山)、荻内杏奈(政4・慶應湘南藤沢)、岩井咲嬉(法2・立教女学院)、笠原愛美(経3・慶應湘南藤沢)が出場した女子舵手付きフォア。主力艇が揃い踏みする注目の種目とあって、観客席からの声援にも一層熱が入る中、出場したチームが6艇に限られたため、本戦前の22日は予備レースとして位置付けられた。

大会初日には予備レースが実施された

レースでは序盤から積極的な漕ぎを見せ、500m地点を1分50秒06の好タイムで1位通過。4レーン・立命館大学と並んでレースをけん引する。しかし中盤以降は徐々にリードを許し、終盤にはペースを落としてしまい2位集団に後退。ゴール手前の1900m地点では先頭の立命館大学に2艇身差をつけられ、最終タイム7分34秒89で4着に終わった。この結果を踏まえ、慶大は24日の本番に向けて戦略を練り直す。迎えたA決勝では、序盤から4位以上のチームに1/2艇身のビハインドを背負い、6レーン・日本体育大学と並走する展開に。一時はリードを許す場面もあったが、1500m地点では約2秒差で5位通過。その後も粘り強く漕ぎ切り、最終タイム8分34秒93で5着フィニッシュとなった。昨年の10位から5位へと着実に順位を上げ、成長を示すレースとなった。

女子舵手付きフォアの今後に期待だ

 

女子ダブルスカル

順風が吹く中スタートを切った女子ダブルスカル。佐藤亜美(文2・渋谷幕張)と市村蒔穂乃(政4・平塚江南)の2選手が出場する慶大は、昨年大会7位の同志社大学や明治安田など強豪がひしめく中、500m地点では1分56秒55で通過。この時点で、2レーン・1位の明治安田には既に10秒以上の差をつけられていた。序盤の展開について、「練習通りのスタートを切ることができたが、予想以上に1Qで他艇との差をつけられてしまった」と振り返る慶大。さらに横風により苦戦を強いられ、距離を詰め切れないまま8分5秒16の4着でレースを終えた。「中盤にレートが下がってしまいました。明日はもっとレートを上げて一本一本力強く漕ぎます!」と前向きに語る両選手は、翌23日の敗者復活戦に臨んだ。

距離を詰め切れず4着で予選を終えた

迎えた敗者復活戦では、テンポの速い滑り出しで他艇を引き離し、500m地点を約3秒差の首位で通過。一度も先頭を譲ることなく、主導権を握り続け準決勝進出を決めた。24日の準決勝では、予選で対戦した3レーン・明治安田と再び同組に。大学チームは5レーンの法政大学と慶大の2艇のみという構成の中、序盤から差をつけられる展開となる。500m地点では法政大学に約5秒遅れるも、その差は徐々に拡大。最終的には8分28秒67のタイムで6着。1位・明治安田との差は約30秒に開き、悔しさの残るレースとなった。続くB決勝では、ハイレートのスタートで先頭集団に食らいつき、500m地点を2分9秒60で2位通過。3レーン・中央大学に迫られながらも、レース中盤までは競り合いを演じた。しかし終盤にかけてペースが落ち、1000m以降でスピードに伸びを欠いた。最終的に5位まで順位を下げ、9分1秒94でフィニッシュ。A決勝に進んだ6チームに次ぐ、全体11位で大会を終えた。

全体11位という成績を収めた

(取材:五関優太、ウジョンハ)

 

写真で振り返る第103回全日本ローイング選手権大会

男子部

女子部

 
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