【端艇】「一から挑戦者という強い気持ちで」入賞4種目の選手たちが振り返る 挑戦の舞台裏に込めた思い/第103回全日本ローイング選手権大会

端艇

5月22日から24日にかけて、海の森水上競技場で開催された第103回全日本ローイング選手権大会。入賞を果たした慶應義塾大学の4種目の選手たちが、それぞれのレースを振り返り、勝利に込めた思いを語った。挑戦を貫く揺るぎない意志とチームの深い結束が力強く伝わり、慶大端艇部の未来への期待を一層高める。

 

2025年5月22日(木)〜5月24日(土)

第103回全日本ローイング選手権大会 @海の森水上競技場

男子シングルスカル

名前

結果

タイム

S:扇原優(医2・慶應)

FinalA 2着(全体2位入賞)8分48秒04

 

――今大会、ご自身のレースを振り返って

扇原:予選、決勝とも良い組み合わせに恵まれ、決勝に向けて徐々にギアを上げていくような理想的なコンディショニングができました。特に荒天の影響で土曜日に準決勝と決勝が行われることになりましたが、レース後の栄養補給やクールダウンなど、自分の知識を最大限活用して疲れを残すことなく決勝に臨むことができました。決勝レースでは、「自分の練習を信じてレースする」ことだけに集中しました。結果として、スタートで他のクルーを上回り、先行することができました。中盤では全日本選手権2連覇中の社会人選手に抜かれましたが、他のクルーに対しては序盤で築いたリードを維持して2位でゴールできました。特に1500m地点では体力的に限界で意識が遠のきかけましたが、応援指導部をはじめとする慶應の力強い応援に後押しされ、なんとか逃げ切ることができました。社会人選手を含む全日本選手権での準優勝は大きな喜びです。また、日々の練習の成果が実を結び、安堵しています。

 

――早慶戦の悔しさを胸に臨んだレース。早慶レガッタ以降の取り組みや、その上でどのような気持ちで挑んだのか

扇原:早慶レガッタで全クルーが完敗を喫しました。私は、慶應端艇部に漂うこの停滞ムードを、全日本選手権でのメダル獲得によって一掃したいと考え、早慶戦以降の期間を過ごしました。この期間の練習方針は「機械のように漕ぐ」ことでした。朝は基本的に4時半、早い時は3時台に起床し、大会出場クルーの中で最も多く漕いだと自信がつくような距離を漕ぎ込みました。さらに、シングルスカルの練習で追い込むことがなかなか難しい状況でしたが、毎日マネージャーの方に立ち会ってもらい、常に監視下で自分を追い込むハードな練習を続けました。そのため、このレースには強い勝利への執念があり、また支えてくれたマネージャーへの恩返しのためにも勝たねばならないと考えていました。レース後には時に意見の衝突もあったマネージャーも私の結果を喜んでくれ、それも嬉しく思っています。

 

――今後の課題や、全日本インカレへの意気込み

扇原:決勝レースでは、悪コンディションの中で安定した漕ぎを維持できなかったことが敗因でした。今後は荒天下でも一定のパフォーマンスを発揮できるよう練習に励みます。次の目標は東医体です。昨年に引き続き、圧倒的な実力で2連覇を達成できるよう準備を進めます。インカレは予備試験のため出場できませんが、その先の全日本新人選手権での個人3連覇を目指して、日々の練習に取り組んでいきます。

 

扇原優(医2・慶應)

 

女子舵手付きフォア

名前

結果

タイム

S:申裕美(法4・都立富山)

3:荻内杏奈(政4・慶應湘南藤沢)

2:岩井咲嬉(法2・立教女学院)

B:笠原愛美(経3・慶應湘南藤沢)

C:和田隆之介(政2・慶應志木)

FinalA 5着(全体5位入賞)8分34秒93

 

――今大会、ご自身のレースを振り返って

岩井:自信を得たこと、課題が明確になったという2点で、インカレ優勝に向けてのスタート地点に立つことができたレースだったと感じています。具体的には、予備レースにおいて第1クオーターを1着で通過するなど、全員が未経験のクルーであっても他大学と全く戦えない訳ではないという気づきを与えてくれたレースだったと考えています。一方で、自分たちの技術面もそうですが、特に事前に決めていたレースプランを完遂することができないフィジカルの弱さという明確な課題が提示されたレースでもありました。2年生として、二人の4年生の先輩方にメダルをかけることのできなかった自分の弱さに対しての悔しさで今はいっぱいですが、切り替えてインカレに向けて全身全霊で練習に取り組みたいと思っています。

和田:私は2月からの4ヶ月間、女子部のクルーと毎日練習を重ねてきました。最初の頃は自分自身の経験が浅かったり、他大学には推薦で入った実力のある経験者が多く在籍していることもあったりして実力差を感じる場面もありました。それでも病気や怪我を抱えながら毎日ひたむきに練習に取り組む女子部の姿を間近で見ているうちに自分も一緒に強くなりたい、絶対にこのクルーで勝ちたいという気持ちが日に日に強くなっていました。だからこそ試合当日までに8kgもの減量を行い、女子の船に必要な体重である50kgまで体を絞り、全力で練習に取り組むことができました。3月のお花見レガッタ、4月の早慶レガッタ、そして今回の全日本。どの試合においても船の上だけでなく陸トレや合宿中の生活も含めてクルー全体が一体となって過ごしてきました。その積み重ねのおかげで、全日本前には「今のクルーが一番強い」と胸を張って言える状態に仕上がっていたと思います。実力も、チームワークも、間違いなく最高の状態で臨むことができました。本番当日は風も波も強く普段とは全く異なる環境でした。その中でも最後まで諦めずに強く漕ぎ切ることができたように思います。

試合期間中には1本目のレースでの反省を即座にチーム全体で共有し、戦術を見直してから2本目に臨みました。また空いている時間をすべて使って最後の最後まで練習し、チーム全体で成長し続けることができました。自分はコックスとして舵を取りながらコールを入れる役目を担っています。4年生の先輩方にとってはこの試合が最後の全日本であり、また現役として残された二つの大会のうちの一つでもありました。だからこそ先輩方が納得できるような悔いの残らないレースにしたかったです。そこで2本目のレースでは1回目の反省を活かしミスなく舵を切りました。また操手に安心して漕いでもらえるような冷静なコールと思い切り力を出し切ってもらうための熱いコールを使い分けた。結果として自分自身も成長できたと思えるような試合をすることができました。

この4ヶ月間で経験の浅かった自分に対して親身に技術を教えてくださった先輩方、そしてともに頑張り続けてくれた同期には本当に頭が上がりません。大変だったはずの練習も今となってはあっという間に感じるくらいの好きなメンバーと漕ぎ続けた4ヶ月でした。機会があるならばぜひまたこのクルーで漕ぎたいです。本当にありがとうございました。

 

――早慶戦の悔しさを胸に臨んだレース。早慶レガッタ以降の取り組みや、その上でどのような気持ちで挑んだのか

荻内:早慶レガッタ後の1ヶ月間、女子の舵手付きフォアは2、3、4年生の全学年が乗っているクルーでありながら常に全員の意見交換を大切にし、日々よりよい漕ぎができるような工夫を最後の最後まで続けました。早慶レガッタでは悔しい思いをした分、同じ種目に早稲田はいないものの、もう同じような悔しさは味わいたくないという思いと、必ずメダルを取りたいという気持ちで、厳しい練習も乗り越えることができました。

笠原:年々早稲田との差が縮まっていることを実感できた早慶戦でしたが、やはりまだ一歩が届かないというところで終わってしまいました。経験者と未経験者という大きな差を埋めるためにフィジカル面では何が足りていないのか、メンタル面では何が足りていないのかをクルー全体で話し合い、それぞれが抱いている想いを言語化し、共有してきました。また、早慶戦では8人乗りのエイトでしたが今回の全日本選手権では4人乗りのフォアになったことで、毎回のクルーミーティングでは全員がその日の練習で感じ取ったことを共有し合うことに重点を置きました。こうすることで、早慶戦で再実感した早稲田との差を胸に、高校での経験値は関係ないのだと証明できるようなレースを観客に届けたいという想いで試合に挑みました。

 

――今後の課題や、全日本インカレへの意気込み

:今大会で、未経験者の私たちでも経験者集団と渡り合えることがわかり、明確な自信に繋がりました。それと同時に、優勝するために必要な課題もたくさん浮き彫りになりました。全日本という大きな大会で、上手い選手と自分たちの漕ぎを客観的に比較することができ、技術面でも体力面でもまだまだ大きな差があることを実感した次第です。早慶戦、全日本と立て続けに大きな大会がありましたが、次のインカレまでは少々期間が空きます。ここからさらに心技体に磨きをかけ、慶應女子部初のインカレ舵手付きフォア優勝を目指して努力を重ねて参ります。

 

岩井咲嬉(法2・立教女学院)、申裕美(法4・都立富山)、和田隆之介(政2・慶應志木)、笠原愛美(経3・慶應湘南藤沢)、荻内杏奈(政4・慶應湘南藤沢)

 

男子軽量級ペア

名前

結果

タイム

S:中村遼太(経4・慶應)

B:鈴木颯真(経4・慶應)

FinalA 6着(全体6位入賞)7分54秒95

 

――今大会、ご自身のレースを振り返って

中村:昨年、バウの鈴木と舵手付きフォアで出場し5位だったこともあり、最後の全日本で必ず優勝したいと多くの練習を重ね、自信も今まで1番あるクルーになりました。予選でも納得のいく漕ぎをすることができていました。ただ最後の少しのミスで東大に負けてしまい、詰めの甘さも予選で実感しました。また結果として、A決勝では自信のあったスタートで前に出ることができず、最下位の6位と悔しい結果に終わってしまいました。決勝で力の差を痛感するレースとなりました。

鈴木:メダルを狙っていた分、6位という結果は悔しかったです。しかし、レースを通して強豪校と並べたことやラブコンディションの中で漕いだことなど収穫が多い大会でした。

 

――早慶戦の悔しさを胸に臨んだレース。早慶レガッタ以降の取り組みや、その上でどのような気持ちで挑んだのか

中村:早慶戦では全部員が悔しい思いをし、早慶戦後は漕ぐ距離を圧倒的に増やし、またボートの動画を見る専用のテレビを設置したりなどボートに割く時間をかなり増やしてきました。多くのクルーが自信を持ってレースに臨めたことは、収穫としてありました。

鈴木:とにかく距離を漕ぐという題目のもと、今まで以上に距離を漕ぎ込みました。また、漕いだ距離を見えることで高いモチベーションを保地ました。早慶戦で大敗した悔しさや自分達の未熟さを感じた上で、また一から挑戦者として挑もうという強い気持ちで大会に臨みました。

 

――今後の課題や、全日本インカレへの意気込み

中村:全員が本気で優勝、メダルを目指して挑んだが、まだ満足いく結果を得ることはできませんでした。インカレに向けて、最後の3ヶ月で早稲田大学などのトップのチームを逆転するためには、自分たちが勝てると思う自信が必要だと考えています。そのために、ひとつひとつの課題を明確にし、クリアし続けることで自信がついていくと思います。これからは主将として練習の見える化をすすめ、多くの選手がトップクルーに食い込んでいくチームを作りたいです。4年間もがき続けている136期が優勝して最後全員で笑って引退できるように、努力し続けます!

鈴木:まだまだフィジカル面、体力面を伸ばしていけると思います。日々の苦しい練習を乗り越えて、心身ともに強くした上で、9月のインカレに臨みたいと思います!

 

中村遼太(経4・慶應)、鈴木颯真(経4・慶應)

 

男子ペア

名前

結果

タイム

S:白石健人(総2・今治西)

B:細谷蓮太郎(経4・慶應)

FinalA 6着(全体6位入賞)8分12秒97

 

――今大会、ご自身のレースを振り返って

白石・細谷:予選では、相手と接戦の展開の中で、2人で息を合わせて艇を伸ばすことができました。決勝では、難しいコンディションの中で終始クルーでまとまりを持てず、悔しい結果に終わってしまいました。

 

――早慶戦の悔しさを胸に臨んだレース。早慶レガッタ以降の取り組みや、その上でどのような気持ちで挑んだのか

白石・細谷:今年の全日本は早慶戦から1ヶ月後と、練習期間が短い中で一回一回の練習で課題と目標を明確にして練習に臨みました。

 

――今後の課題や、全日本インカレへの意気込み

白石・細谷:インカレに向け、早慶戦や全日本での反省を活かし、どのような状況でもベストパフォーマンスを出せる技術力・体力の向上に全力で取り組みたいです。全てを賭けて、日本一を目指します。

 

白石健人(総2・今治西)、細谷蓮太郎(経4・慶應)

(取材:ウジョンハ)

 

こちらにて、全日本ローイング選手権大会の戦評も公開しております。ぜひ併せてご覧ください!

 

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