第33回ラクロス早慶戦が日吉グラウンドにて開催され、女子戦では慶大が終盤に意地を見せ、8―6で早大を下し5連覇を達成した。序盤から得点を重ねリードを奪った慶大だったが、第3Qに逆転を許す苦しい展開に。それでも最終第4Q、エース・秋山美里(環4・日本大学)の同点弾を皮切りに再び試合をひっくり返し、逆転勝利を収めた。大会MVPには、要所で好セーブを連発した新守護神・矢嶋千穂(文3・東京学芸大附)が輝いた。王座奪還へ、チームに弾みのつく大きな1勝となった。
5月18日(日)@慶應義塾大学陸上競技場 第33回早慶ラクロス定期戦
♢スタメン♢
AT#88 藤岡杏(法4・慶應女子)
AT#3 秋山美里(環4・日本大学)
MF#77 安達心結(法3・日本大学)
MF#71 三好香奈(政4・慶應女子)
MF#19 澤田彩子(文4・品川女子学院)
DF#96 辻田直佑子(法4・白百合学園)
DF#90 増田そら(文4・立教女学院)
DF#34 都村沙枝(文3・雙葉)
DF#30 佐藤優衣(経3・湘南)
G#51 矢嶋千穂(文3・東京学芸大附)
♢得点♢
| 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 計 |
慶大 | 3 | 2 | 0 | 3 | 8 |
早大 | 2 | 1 | 3 | 0 | 6 |
慶大得点者 | 秋山美(2)、三好 | 安達、藤岡 | ― | 秋山、村山、澤田 | ― |
2年連続でリーグ予選敗退を喫した慶大女子ラクロス部は、主将・三好香奈(政4・慶應女子)を中心に3年ぶりの王座奪還を目指す。今季のスローガンは「ASCEND」。一歩ずつ着実に成長を遂げる決意を胸に、新たなシーズンをむかえた。対する早大は昨年度の全日本大学選手権を制した強豪だが、慶大は過去の対戦成績で大きく勝ち越し、早慶戦では4連勝中。3月の六大学戦の中止の影響で、この試合が今季初対戦。意地と誇りをかけた熱戦が期待された。
開始2分、試合はいきなり動く。ゴール裏でボールをキープした澤田から藤岡へと繋ぎ、そのパスを受けた秋山がゴールを決め、慶大が先制点を挙げた。その後も主将・三好が相手のこぼれ球を素早く奪い、攻撃の流れを継続する。6分には相手のミスから奪ったボールを秋山が拾い、藤岡、安達、三好へと展開してショットを放つも、ここは相手ゴーリーの好セーブに阻まれる。直後の7分、カウンターを受けた慶大は相手の連続攻撃を防ぎきれず、同点に追いつかれる。しかし直後の9分、三好がボールを奪取し、秋山へと繋ぐと、秋山が中央からショットを突き刺し、再びリードを奪う。その後再び同点に追いつかれるも、終了間際に藤岡との連携から三好が勝ち越しショットを決め、このQ3-2とリードして終えた。
第2Q序盤も主導権を握ったのは慶大。4分、早慶戦初出場の3年生・安達が右サイドから鋭く切り込み、そのままゴールを決めてリードを広げる。その後は早大の攻撃に対し、三浦と新守護神・G矢嶋が2人がかりでセーブしピンチを防ぐ。3分から7分までの間は守備陣が集中力を保ち、早大の攻撃を完璧に封じる。9分にも矢嶋が再びセーブを見せ、ゴールを死守した。しかしその後、守備のパスミスを突かれると、早大の素早いパス回しにうまく対応できず1点を返され、スコアは4-3に。それでも前半終了間際、藤岡がゴール裏左サイドから鋭く回り込み5点目となるショットを沈め、2点リードで前半を折り返した。
第3Q、開始早々に早大が1点を返し、スコアは4―3に。以降、慶大は藤岡や安達らAT陣を中心に、左サイドやゴール裏を使ったパス回しから幾度かチャンスを作るが、3人、4人がかりで素早く寄せる早大DF陣に阻まれ、なかなかシュートに持ち込めない。Q中盤以降は、フィジカルの強さを前面に押し出した早大の攻守に押され気味の展開に。加えて、FOでの競り負けや前半から見られたDF陣の連係ミスも響き、流れをつかめない。すると、相手の速いパスワークからの連続攻撃を防ぎ切れず、終盤に立て続けに2点を奪われ5―6と逆転を許した。
迎えた最終第4Q、再び試合の流れを引き寄せたのは慶大だった。三好や澤田を中心に、MF陣が粘り強くグラウンドボールを制し、攻守に主導権を握る。劣勢を救ったのは、やはりエースの一発。2分、フリースローのチャンスから秋山がゴールをこじ開け、同点。勢いそのままに、4分には村山遥(経4・慶應湘南藤沢)がゴールを沈め、勝ち越し。守っては、増田や辻田らDF陣がショットカットやインターセプトで相手のG矢嶋が相手のOFを完封。13分には、相手のカウンター攻撃から放たれたショットを矢嶋がスーパーセーブ。勝負所で進化を発揮しチームを救った。最後は、澤田が得意の左サイドからのカットインショットを決め、8―6と突き放した。最終Qで底力を発揮した慶大が早慶戦5連覇を達成。大会MVPにはG矢嶋が輝いた。
試合を通して2点差以内の緊迫した攻防が続いた今カード。「接戦のときは絶対自分が止めるという気持ちでゴールに立ってました」、的確なポジショニングと安定したパス配給で、最後の砦として最終ラインからチームを支え続けた矢嶋は、大会MVPを獲得した。勝負所で存在感を放ったのは、やはり4年生だった。ハットトリックのエース秋山を筆頭に、三好、藤岡、村田、澤田ら経験豊富な役者たちがショットを決め切った。要所で体を張った増田、辻田などのDF陣の奮闘も勝利を大きく引き寄せた。三好主将は「今年は“チャレンジャー”の気持ちで1つひとつ丁寧に積み重ね、最後は学生日本一を獲りたい」と意気込む。悲願の王座奪還へ、今季の慶大にとって大きな弾みとなる白星となった。
(取材:真田海翔、野口ことみ、竹腰環、牧瀬藍、愛宕百華、長掛真依)
♢選手コメント♢
主将・MF#71 三好香奈(法4・慶應女子)選手
――最後の早慶戦、どんな想いで臨まれましたか
「絶対に勝つ!」ということですかね。自分たちのやるべきことをやれば絶対に勝てると思っていたので、そのことをみんなに伝えていきたいなと思って臨みました。
――試合内容を振り返っていかがですか
1、2Qでリードはしていたけれど、そこまで安心できるような点差ではなくて。3Qで思った通り厳しい展開を迎えた中で、最後まで気を抜かずにみんなが同じ目標を持ってプレーできたのが良かったのかなと思います。
――早稲田のプレーはどのように感じていましたか
やっぱり、ボールが落ちた瞬間の寄りとかは正直早稲田の方が上回っていたのかなとは思いますけれど、ボールを取った後の落ち着きという点では慶應が上回っていたから挽回できたのかなと思います。
――ゴール前の見事なグラウンドボールからゴールを決められましたが、ゴールシーンを振り返っていかがですか
もう、本当にああいうの(=混戦からのグラボ)を常に狙ってプレーしてきたので、今回点数という形にできて良かったです。
――試合を通して、ご自身のプレーはいかがでしたか
目標としては「とにかく誰よりも走る」というところだったんですけれど、それは体現できて良かったなというのと、グラボというのは自分の武器だと思っているので、それがこの舞台で披露できて良かったなと思います。
――今季はどんな1年にしたいですか
25チームはスローガンとして「ASCEND」というのを掲げているんですけれど、地道に努力して最後に登っていくというのをやっていきたくて。ちょっと前までは「強い慶應」だったんですけれど、今はもう「チャレンジャー」だという気持ちを持って、これから1個1個丁寧にやっていって、最後は絶対に学生日本一を獲りたいと思っています!
A T#3 秋山美里(環3・日本大学)選手
――試合後の率直な感想を聞かせていただいてもいいですか?
勝ててよかったなっていう気持ちと、勝ててほっとしています。
――相手が昨年の学生日本一・早稲田ということで、試合前はどういったことを意識していましたか?
試合前は、自分たちがこれまでやってきたことをしっかり出そうっていう気持ちでした。相手が早稲田ってことで、早慶戦に向けて相手もいろいろ対策してくるのは分かってたので、その中でも自分たちの“クオリティ”を貫いて、しっかり勝ちきりたいって思ってました。
――秋山さんから見て、今年の慶應女子ラクロスはどういうチームですか?
“粘りのラクロス”だと思ってます。今日の試合でもそれがすごく出ていて、3Qで逆転されて流れ的にはかなり苦しかったんですけど、そこでDF陣やGが粘ってくれたからこそ、悪い時間帯をなんとか踏ん張れたと思います。4Qに入ってからは、今度はOFで粘って粘って“チャンスで絶対に仕留める”っていう意識を全員で共有できていました。
――秋山さんはこの試合でハットトリックに加えて、勝負を左右する6点目や同点弾も決めるなど、印象的な活躍でした。攻撃の中で、ご自身の役割についてはどう考えていますか?
自分が点を決めるっていうのはもちろん意識してるんですけど、例えば今日の試合だったら藤岡選手とのゴール裏の連携だったり、周りの選手の良さを引き出すプレーもすごく大事だなって思ってます。
――早慶戦5連覇を達成して、今シーズンに勢いがついたと思います。改めて、女子チームとして今シーズンの意気込みを聞かせてください。
やっぱり私たち4年生が1年生の時に学生日本一を獲ったので、もう一度この大好きなチームでそのタイトルを獲りたいって強く思ってます。そのためには、1戦1戦日々進化していくことがすごく大事だと思ってます。これからのリーグ戦では、早慶戦よりもさらに進化した私たちのラクロスに注目してもらえたら嬉しいです。
MF#19 澤田彩子(文4・品川女子学院)選手
――今日の試合の率直な感想をお願いします。
去年、早稲田が日本一を取って早稲田のレベルがあがっている中でいつもとは違う緊張感があったのですが、その中でしっかりと勝利を収めることができてよかったです。
――今回の試合三好選手との連携が多く見られましたが、どのようなことを考えてプレーしていましたか。
自分がアタックの時は、まずは落ち着いて周りをしっかり見るということを第一に考えていました。三好選手はすごく視野の広い選手なので、三好選手が空けてくれるスペースと自分の1on1の力というところでお互いの強みをしっかりと生かすことができてよかったなと思います。
――早稲田のプレーに対してどのような印象を持たれましたか。
オフェンスはしっかりと入れるところは入れるといった感じで、ディフェンスは結構あげてくる感じで慶應とはスタイルがまったく違って、すごくやりにくい部分があって、しっかりと足でついてくるタイプだったので自分のランもあまり効かなかった気がしてやりづらかったです。
――今後の目標や抱負を教えてください。
今回は早慶戦に勝ってチームとしてはすごくよかったなと思ったのですが、自分自身としてはあまり貢献できなかったところがあったので、今回の悔しさをバネに次の本番のリーグ戦に向けてチーム全体として頑張っていきたいと思います。
A T#88 藤岡杏(法4・慶應女子)選手
――早慶戦、優勝おめでとうございます。率直に今のお気持ちは
まずはやはり一安心といったところで、勝ててすごく嬉しいです。
――2Qのゴールではどんなことを意識して、シュートに持ち込みましたか
自分が去年から一番練習してきた裏からの1on1というのは、すごい自分の中で武器だと思っているので、そこで決めきることができてよかったです。
――相手方のディフェンスに関してどんな印象を持ちましたか
やはり1on1の対峙が強い選手が多くて、そこはずっと早慶戦前から意識しながら練習してきたので、そのようなディフェンス相手にも強気で仕掛け続けることができてよかったです。
――次の試合に向けて
これからリーグ戦などが始まっていくと思うのですが、やはり今回出た課題というのはまだまだたくさんあるので、その課題を克服しながら、みんなでもっと強いチームになっていけるように頑張っていきます。
MVP・G#51 矢嶋千穂(文3・東京学芸大附)選手
――試合後の率直なお気持ちをお聞かせいただけますか?
今年から副将として、チームの力になりたいという思いで頑張ってきたので、こうした舞台でMVPをいただけて本当にうれしいです。「25チーム」が始動してからルール変更もあって、みんなでたくさん考えて取り組んできたので、なによりチームとして勝てたことがすごくうれしいです。
――今日の試合を振り返っていただけますか?
最初の入りは良かったんですけど、3Qで早稲田に流れを取られて逆転されてしまって。ただ、それもある程度は想定していて、後半に流れが傾くことも見据えてチームで練習してきたので、しっかり対応して4Qで取り返せたと思います。
――今日の試合ではファインセーブや落ち着いたパス配給が印象的でした。ご自身のプレーを振り返っていかがですか?
自分は、「ここ1本」みたいな勝負どころのプレーがすごく好きで、そういう場面での勝負強さが自分の強みだと思ってます。だから接戦のときは、「絶対自分が止めるんだ」っていう気持ちでゴールに立ってました。
――今シーズンへの意気込みをお願いします
去年、一昨年と2年連続でファイナル4に進めてなくて、すごく悔しい思いをしてきたので、今年こそは必ずリーグ戦を突破してファイナル4に進出して、そして優勝します!