【ラグビー】15年ぶりの勝利へ 魂のタックルで黒黄のプライドを貫け/2025関東大学対抗戦Aグループ@第6節 対早稲田大学 展望

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 今年で第102回目を迎える関東大学ラグビー対抗戦の早慶戦。通算成績では20勝7分74敗と大きく負け越しているだけでなく、最後の勝利は2010年まで遡り、昨年はノートライに抑えられるなど、黒黄軍団にとって苦々しい歴史が刻まれている。それでも「日本一」という目標を掲げる今季の蹴球部にとって、宿敵ワセダは超えなくてはならない壁だ。この記事では、両チームのここまでの戦いを振り返り、アタック、ディフェンス、スクラムの3点から早慶戦を展望する。

 目標の「日本一」達成に向けて着実に成長を続ける慶大蹴球部は、秋季対抗戦のここまでの戦績を3勝2敗(勝ち点20)としている。春季交流大会で敗れた青学大に勝利し、立教大、日体大には快勝。強豪である筑波大、明大にも、試合には敗れたものの両試合でロースコアの接戦を繰り広げており、15年ぶりの早慶戦勝利へ着々と成長を続けている。一方のワセダは4勝1敗(勝ち点26)で早慶戦を迎える。先週帝大に勝利した明大が5勝1敗(勝ち点30)とし、4位筑波大は上位チームとの対戦を全て終えた中でワセダと同じ4勝1敗(勝ち点22)としているため、対抗戦優勝、そして大学選手権でより有利なシードを獲得するため、ワセダも依然として負けられない状況にある。

 

 ここからは、アタック、ディフェンス、セットピースの3点に分け、試合のキーポイントを分析する。
 まずはオフェンス。今季5試合で57失点に抑えているワセダの牙城を崩す方法を探る。今季の慶大はキックで陣地を進めるか、ボールを回して突破を狙うか、状況に応じてプランを使い分けられる柔軟さを強みとしている。抜群のキック力を持つSO服部亮太(スポ2・佐賀工)を擁するワセダに対しては、よほど風の影響が強くない限り、蹴り合いの展開からエリアの確保を狙うより、パスを回してラインブレイクを図りたい。アグレッシブなランが持ち味のSO小林祐貴(政1・慶應)や、冷静なゲームメイクでチームを率いる主将・CTB今野椋平(環4・桐蔭学園)がアタックのリズムを作り、突破力に優れるCTB小舘太進(商4・茗溪学園)やWTB小野澤謙真(環2・静岡聖光学院)が相手を切り裂くBK陣は、トライを取りきる力に長ける。

CTB安西良太郎(左)、今野椋平(右)

WTB小野澤謙真(左)、SO小林祐貴(右)

 またチーム最多の5トライを挙げているHO藤森貴大(経3・慶應)を中心に、FW陣はラインアウトからのモールやサインプレーを得意としており、得点パターンは多彩だ。アグレッシブなボール回しにチャレンジしつつ、自分たち由来のミスを犯さずに、作ったチャンスを確実に得点に結びつけることができるかが勝敗を分ける。

HO藤森貴大

 次に、今季の慶大の最大の持ち味であるディフェンスについて展望する。筑波大戦で見せたような自陣での粘り強さは、慶大のDNAである「魂のタックル」の具現化であり、他のチームにはない強みとなっている。しかし、スキルフルな選手を擁するワセダ相手には、粘り強さに加え、前へ出るディフェンスで圧力をかけ続ける必要がある。チーム全体の規律、組織力だけでなく、FL申驥世(文1・桐蔭学園)の運動量やNO8中野誠章(文2・桐蔭学園)のスティール力など、個々の長所も存分に発揮しなければ、勝利の道は険しくなるだろう。

2024年度早慶戦の中野誠章

FL申驥世

 特に警戒しなければならないのはFB矢崎由高(スポ3・桐蔭学園)。日本代表に選出され、欧州遠征3試合でスタメン出場を果たした超大学級のトライゲッターは、対抗戦でも今季8トライを挙げている。また、矢崎の復帰はSO服部の選択肢を広げるという意味でも脅威となる。鋭いパスや長短様々なキックでワセダのアタックを指揮する服部と、突破力やハイボールの競り合いに優れる矢崎は相性抜群。彼らに余裕のある状況でボールを持たれてはならない。

2024年度早慶戦のFB矢崎由高

 最後に触れておかなければならないのがスクラムだ。改善傾向にあるとはいえ、今季の若い慶大FW陣はスクラムでペナルティを取られる回数が少なくない。一方のワセダはFW平均体重が99.5キロと決して高くないものの、慶大がマイボールスクラム確保率50%に抑え込まれた筑波大に対し、同スタッツ100%を記録するなど、スクラムをチームの強みとしている。ワセダの圧力をはねのけられるか、若いFW陣の奮起に期待がかかる。特に慶大の左PR井吹勇吾(環2・桐蔭学園)とワセダの右PR前田麟太朗(スポ2・桐蔭学園)は、共にスクラムに強みを持つ選手。名門・桐蔭学園高出身者同士のマッチアップに注目だ。

PR井吹勇吾

また、ワセダはスクラムからNO8粟飯原謙(スポ4・桐蔭学園)が持ち出し、相手のディフェンスラインに対して数的優位を作るオプションを持っている。出足の鋭いタックルと味方への的確な指示を持ち味とする慶大SH橋本弾介(法4・慶應)を中心に、ワセダのスクラムを起点としたアタックも封じたい。

SH橋本弾介

 慶大蹴球部はこの15年間、ワセダから勝利を奪うことができていない。それでも今年の蹴球部には、黒黄ジャージに憧れ、ワセダを倒すべく入部してきた選手がいる。一貫校時代からワセダへの対抗心を滾らせてきた選手がいる。競技引退を決め、ラストイヤーに懸ける選手がいる。そして、1度はラグビーの世界から離れながら、慶大蹴球部のために下田グラウンドに帰還した指揮官がいる。今年こそ、積年の悔しさを晴らす時だ。黒黄のプライドにかけ、魂のタックルを貫き通し、15年ぶり21度目の早慶戦勝利を成し遂げよ!

今年は笑顔で終えたい早慶戦

(記事:髙木謙)



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