慶大の体育会を深堀りしていく連載企画、「What is 〇〇部?」。第34回目は、軟式野球部!今回ケイスポは、大井埠頭中央海浜公園で行われた練習の様子を取材した。さらに、新幹部の主将・後藤健介(環3・Clayton Heights Secondary)選手、副将・高橋佳晟(商3・土佐)選手にインタビューを実施。新たなスタートを切った軟式野球部の“今”をお届けする。
軟式野球部は、1966年に創部された歴史ある部活だが、正式に体育会に加入したのは創部50周年を迎えた2016年。現在は慶大・早大・東大・明大・法大・立大の六大学から構成される、東京六大学軟式野球連盟に所属し、春秋リーグ戦優勝、全日本大学軟式野球選抜大会、全日本大学軟式野球選手権大会出場を目標に掲げ、練習を重ねている。部員は、選手34人、マネージャー5人の計39人。硬式経験者に加え、ブランクのある選手や野球未経験者もおり、背景は様々だ。
慶大軟式野球部の大きな特徴は、学生主体で活動を行っている点にある。「局制度」が設けられ、選手・マネージャー全員が財務局、OB・OG局、渉外局、備品局、データ局、広報局のいずれかに所属し、運営に積極的に携わっている。こうした仕組みにより、学年を超えたコミュニケーションが活発になり、チームワーク全体の結束力が高まっている。

”学生主体”を武器に結束力を高める
授業期間中は、週6日、平日・土曜8:00~12:00、多摩川ガス橋グラウンドを主な活動場所として練習を行っている。1限に必須授業がある場合は欠席、2限にある場合は早退など、各選手の履修状況に応じて柔軟に練習メニューを変更しているという。練習試合では、関東地区の強豪大学や社会人チームと対戦している。

キャッチボール後の実戦打撃では、無死一、二塁といった試合さながらの場面を想定し、打者は主将からのサインを受けて打席に立つ。上級生が投手へ助言を与える姿も見られ、学年の垣根を超えたコミュニケーションが生まれていた。続くゲームノックでは、主将と副将を中心に声を掛け合い、守備の基本動作を磨いていた。

和気藹々とした雰囲気

守備動作を確認
ここからは、主将・後藤健介(環3・Clayton Heights Secondary)選手と副将・高橋佳晟(商3・土佐)選手のインタビューをお届けする。

主将・後藤選手(写真左)と副将・高橋選手(写真右)
――入部したきっかけ
後藤:ずっと5歳から軟式野球をやってきて、その集大成として大学でも野球をやりたいなと思ったことがきっかけです。高校で留学に行ってブランクがある中で、硬式や準硬式ではなくて、やっぱり自分がやってきた軟式の中で、そして、サークルではなく、最後やるなら体育会でやり切ろうという思いで選びました。
高橋:自分は小学3年生から野球を始めて、小学校、中学校では軟式、高校では硬式をやっていました。体育会で野球をするなら軟式、準硬式、硬式の3択だったんですけど、その中で軟式野球部が唯一、練習を学生主体でやっていて、試合も学生がサインを出したり、メンバーを決めて運営しているという点で大きな違いがありました。大学で野球やるんだったら、自分が主体的に動いて、責任感を持って活動できればいいなと思って選びました。
――軟式野球の魅力
後藤:軟式の流れがあるところが好きです。もちろん硬式、準硬式でも野球というスポーツにおいて、流れはあると思うんですけど、走塁が生きることや、軟式野球にしかない「※叩き」は、軟式ならではの魅力だし、そこから流れを引き寄せられるところがすごく好きですね。
※叩き:打者が意図的に打球を高く弾ませ、三塁ランナーを生還させる戦法。
高橋:自分は体格差があまりでないことが魅力だと思います。硬式では自分の力で打球を飛ばさないと、どうしても選手として評価されないところもあるんですけど、軟式であれば体が小さくて力がなかったとしても、技術で戦えるので、そういった点が魅力です。

”技術”で戦う
――春秋リーグ戦5位に終わった結果を受けて
後藤:前年と比べると、明らかに敗戦になりそうな試合というよりかは、勝てる兆しが見える試合が確実に増えてきています。でも、そこで勝ちきれないというのが、この5位という結果に表れているなと思います。投手陣、そして全体の層の薄さという問題を乗り越えられなかったのは、チームとしての反省です。

課題は投手不足
高橋:結果としては5位だったんですけど、みんな成長している部分がたくさんありました。これからの練習で、なんとか成長した部分を結果につなげられるようなステップを踏めると、順位も上がるかなと思うので、ポジティブに捉えています。
――春の結果を受け、夏の練習で改善した点
後藤:バントやサインプレーの練習は割と増えたかもしれないですね。例えば、キャッチボールが終わって、バントの練習の時間をとったりとか。サインプレーで勝てるという意識がチームの中で浸透したのは、その練習があったからかもしれないですね。
高橋:春は個人のスキルで戦っていたけれど、夏に向けてはそれぞれが役割を持って、点を取ったり、守ったりしていました。個人プレーからチームプレーに変えていきました。
――新チームの現状
後藤:10月、11月頭から新幹部になって、正直自分たちも模索している状況です。ただ、チームの雰囲気を明るくしたいなという思いがあるので、それぞれの思っていることを吸い上げられるようにという点は意識しています。リーグ戦開幕までまだ少し時間があるので、練習内容もガラッと変えてみて、何がチームにフィットしやすいかを試している段階です。

練習内容の試行錯誤を重ねる
高橋:前の代は、割と幹部がメニューや方針を決めて、それを下に伝えるような流れだったんですけど、今はどちらかというと、みんながどういった意見を持っているのかまず聞いて、全体の最適解を見つけるような、全員が納得して、関与できるような環境づくりを意識しています。
――オフシーズンで強化したい部分
後藤:このチームの改善すべき点として、オフシーズンが明けた初日に準備が整っていないことが挙げられます。その準備をやってもらえるような環境にしたいというところで、新しく学年ごとにトレーニングの機会を作ってみようかなと思っています。個々のレベルや生活の違いがあるにしろ、その中でこちら側からアプローチができればいいなと思います。
高橋:毎回気持ちが切れてしまいがちなので、リーグ戦を見据えての生活を意識して、「あと何日でリーグ戦始まるよ」とか、「実際、試合ではこういう場面があるよね」みたいなコミュニケーションは取り続けていきたいと思います。
――主将、副将になった経緯
後藤:これまでの幹部は、主に学生監督、学生コーチ、主将、副将で構成されていて、監督が日々の練習、コーチがスタメン決定に関与していて、主将はグラウンド内でチームを引っ張る役割を担っていました。今回、幹部が入れ替わるとき、自分が監督の枠に入って、ミーティングをした際に、それぞれの役職がどこまでの役割を持っているかが曖昧になっていることが課題として挙げられました。それを踏まえて、学生監督、学生コーチ、主将の役割をすべて主将が一任する形にまとまりました。その結果、自分が主将となりました。
高橋:まず、監督を投票で決めて、同様に他の幹部も投票で決めました。結果的に票数が1番多かったので、副将になったという経緯です。
――主将、副将として意識していること
後藤:さっきも言ったように、チーム全体で話せる雰囲気をすごく大切にしています。自分は高校野球の経験がないということで、経験値において他の部員に頼る部分が多くなるので、他の部員にも役割を担ってほしいなという思いで、例えばポジションごとにチーフを作ったりしています。全員の考えが吸い上げられるように意識していますし、できるだけ全体でミーティングも行いたいと考えています。
あとは、決断に至る経緯が割と不透明だったので、幹部、チーフで行うミーティングに関しては、部員に議事録を公開して、気になることがあれば伝えてねと言っています。双方向からコミュニケーションが取れるといいなと思います。
高橋:主将が全員分見切ることは少し厳しい部分があるので、自分が選手目線でヒアリングをして、その内容を主将に伝えたり、全員の思いが共有できるよう、間に立って、スムーズな意思疎通を促すような、橋渡しの役割を担えたらいいなと思っています。

目指すは”橋渡し”の役割
――先輩方から受け継いでいること
高橋:やっぱり学生主体というところは部の特徴だし、今でも大事にしていることです。学生メインで練習を行うことに加え、事務面でも、選手全員が局に属して組織運営に携わるので、人間として成長できると思います。
後藤:リーグ戦優勝はどの代でも目指してきたことで、直近の期間ではそれを達成できていないので、改めて自分たちの代では達成したいという思いを伝えています。部としてぶれることはないと思います。
――個人の目標
後藤:やっぱりチームを優勝させたいという目標が1番上に立つし、この同期、後輩たちがいる今のチームで勝ちたいなと率直に思っているので、それが個人の目標であり、ひいてはチームの目標でもあります。
高橋:ベストナインを取れたらいいなと。自分のプレーがチームに貢献するし、活躍する姿を見せることで、みんながモチベーションを高く持つことができると思うので。
――新チームの目標
後藤:1番大きな目標は、春リーグ戦優勝で、そこから全国出て、秋リーグ戦につなげていきたいです。
高橋:全員が優勝したいという思いをもって、足並みをそろえて、1人残らず団結して優勝できるようにしたいです。
――ケイスポ読者、未来の後輩たちに向けて一言
後藤:いつも応援ありがとうございます。体育会の中で軟式野球部は割とマイナーで、そもそも軟式野球を知らない方も多いのかなと思います。僕たちが勝つことで、慶應の軟式野球部をまず知っていただきたいです。また、体育会に所属して、優勝に向けて同じ思いを持ってプレーしたいという新入生がいれば、ぜひ体験に来てほしいなと思います。
高橋:いつも応援ありがとうございます。OBの方や関係者の方が球場に来てくださると、我々選手たちもモチベーション高く、いつも以上のプレーができると思うので、みんなで慶應の体育会を応援する気持ちで、ぜひ応援に来ていただいたら嬉しいなと思います。
――ありがとうございました!
※写真は一部軟式野球部よりご提供いただきました
(取材:吾妻志穂、長掛真依)

