昨年100周年を迎え、101年目を迎えた慶應空手部。早慶定期戦の新しい1ページに刻まれたのは慶應義塾の勝利であった。前半はワセダにリードを許す展開も、物井聖那(法1・慶應)の勝利、大橋一惺(法1・慶應湘南藤沢)の逆転勝ちで勢いづいた慶應は、空手部副将・関右京(商4・慶應志木)、空手部主将・岩本遼(総4・高松中央)らによる最後7連勝で8-3と快勝。この日を以て引退する4年生たちの花道を勝利で飾った。
先鋒 | 田村全(医5・慶應湘南藤沢) | 0 | ⑦ | 岩渕凌(スポ4・水城) |
次鋒 | 西田朱里(環2・九州学院) | 1 | ⑧ | 松下清香(人1・藤枝東) |
三鋒 | 物井聖那(法1・慶應) | ⑥ | 0 | 臼井健一郎(人3・本郷) |
四鋒 | 山田吉治郎(法2・慶應) | 0 | ⑥ | 上地虎太朗(教3・Robert Cecil Palmer Secondary School) |
五鋒 | 大橋一惺(法1・慶應湘南藤沢) | ④ | 3 | 西塚悠真(スポ1・拓大紅陵) |
中堅 | 島颯(法4・慶應湘南藤沢) | ② | 1 | 丹羽啓太(商1・日本航空) |
五将 | 西田朱里(環2・九州学院) | ① | 0 | ルーシル |
四将 | 志村尚悟(商1・世田谷学園) | ③ | 1 | 上野凌雅(法2・京産大附) |
三将 | 関右京(商4・慶應志木) | ⑦ | 2 | 米盛新(スポ2・世田谷学園) |
副将 | 志村侑悟(商4・両国) | ⑥ | 0 | 舘花遙季(創理2・早実) |
大将 | 岩本遼(総4・高松中央) | ⑥ | 0 | 馬塲秀汰(教3・市立浦和) |
毎年恒例の空手早慶定期戦。今年は早稲田大学戸山キャンパスの早稲田アリーナでの開催となった。大学組手に先立って行われた高校組手では、昨年に引き続き慶應が勝利。流れに乗って大学試合組手でも勝利を掴みたい。
試合前、應援指導部による激励会が行われる。早稲田大学戸山キャンパスというワセダの中心で、應援指導部と空手部とが互いに肩を組み合い、若き血を叫んだ。
初戦、先鋒を務める田村全(医5・慶應湘南藤沢) は前半から押される展開が続き0-7で敗北。続く次鋒の西田朱里(環2・九州学院)も上段突きの有効で先制するも1-8で敗北と劣勢の展開。

昨年に引き続き田村が先鋒を務める
しかし三峰の物井は、上段突きを3つ決めて3点を先取。負けじと早大臼井健一郎(人3・本郷)が中段蹴りを仕掛けるもかわし、逆に物井が中段蹴りを決めて技あり。華麗なカウンターを決めてさらに2点を獲得。さらに直後に鋭い上段突きを決めて6点差として勝利。普段は形を得意とし、先月マレーシアで行われた男子個人形で3位と結果を残した1年生が、ここ一番で意地を見せ慶應の流れを呼び戻す。

慶應に流れを呼び込んだ物井
山田吉治郎(政2・慶應)は中段突きで先制するとそのまま4-1と大きくリード。しかし上段突きが強打となり反則を取られる。ポイントではリードしていたものの反則負けとなってしまう。
1-3と差をリードを許す慶應。ここでコートに上がるのは五峰の大橋。中段突きなどで2点を先制されるも、中盤に上段蹴りを決めて一本。3点を獲得し逆転に成功する!
残り30秒ほどのところで大橋が上段突きを決めて4-2とするも、残り10秒というところで上段突きを決められて4-3。1点差と迫られるも、大橋はワセダがとにかく前へ前へと攻めてくる中で、最後10秒を必死に守り抜いた。試合終了と同時に大橋は天を仰いだ。普段はマネージャーとして活動する1年生が大きな大きな1点を勝ち取り、慶應が2-3とその差を縮める。

逆転勝ちの大橋!
中堅の島颯(経4・渋谷学園幕張)は、中段突きで先制するも直後に上段突きを決められて1-1の同点。相手は早大1年の丹羽啓太(商1・日本航空)。4年の意地を見せるか、1年の若さを見せるかという戦い。残り10秒を切ってもなお決着はつかない熱戦が繰り広げられる。最後の最後、ポイントを重ねたのは島颯だった。最後となる早慶戦で、最高の結果を残した4年生の活躍で、慶應が3-3の同点に追いつく。

ラストゲームで最高の結果を残した島
五将としてコートに上がるのは西田。相手との体格差が大きい中で上段突きで先制に成功。そのまま逃げ切り勝利。相手の強烈な上段蹴りを小柄な体を活かしてかわすなど、要所での守りも光った。昨年の早慶定期戦では勝利を掴むことができなかった西田が、ここ一番で早慶戦初勝利を掴んだ!

西田は体格差をものともせず早慶戦初勝利を掴んだ!
続く志村尚悟(商1・世田谷学園)は試合中盤に先制するも直後に追い付かれる展開。しかし負けじと試合再開直後の速攻で上段突きを決めて勝ち越しに成功。残り30秒のところでさらに上段突きの有効を取って2点リード。防具が吹き飛ぶほど、激しい衝突を重ねたこの試合は、最後まで志村尚がそのリードを守り抜いた。慶應が5-3とリードを広げる。

1年生ながら大健闘の志村尚
三将は関。同点とした試合時間残り1分頃、中段蹴りのミスで、隙が生まれた相手にすかさず中段蹴りをお見舞いして技ありの2点。会場は大きな歓声に沸く。試合再開直後にさらに上段突きを決めてリードを広げると、最後は5-2から相手の中段蹴りのミスに対して見事なカウンターで中段蹴りを決め、7-2として勝利を掴んだ。

副将としてチームをけん引してきた関
この日副将の志村侑悟(商4・両国)は中盤リードを許すも、相手選手の強打が入ってしまい反則勝ち。慶應が7-3と大きくリードを広げる。
この日最後にコートに上がるのは、1年次から早慶定期戦で負け無しの主将・岩本。春に行なったインタビューでは大学で空手という競技に一区切りをつけたいと述べた主将が、早慶戦ラストゲームの舞台に立つ。

早慶戦ラストゲームとなる岩本
岩本は試合開始とともに見事な上段蹴りを決めて一本!3点をリードする。さらにその直後、試合開始とともにまたも完璧な上段蹴りを決めて3点を獲得。開始4秒で6点を奪い試合終了!
ここまで出場した3度の早慶戦で全勝と、ワセダにその圧倒的な実力を見せつけてきた主将がラストゲームでその実力を見せつけた。

岩本は開始6秒の速攻で試合を決めた
開始直後の速攻で6点を奪った岩本の勝利で、8-3と大きく差をつけてワセダに勝利を収めた。試合開幕直後は苦しい展開だったものの、終わってみれば7連勝で5点差をつけて勝利。早慶戦を試合前46勝36敗とこれまで有利に進めてきた空手部が、その強さを見せつけた。
この試合を以って4年生は引退となる。試合終了後の会場では、有終の美を飾った4年生に惜しみない拍手が贈られた。
(取材:神戸佑貴 写真:梅木陽咲、塩田隆貴、村山仁紀)
試合後インタビュー
――主将として今日のチーム全体の戦いはどう見えていたか
いつも以上の力が出せたというのではなくて、元々みんなそれぐらいの力は持ってるけど、それがうまく本番で出せてなかったという側面が大きかったので。その応援の良い雰囲気だったり、楽しい雰囲気、今日この試合を楽しもうというみんなのメンタルが、いつも通りの力を出させて勝てたんじゃないかなというように思います。
――この選手の活躍は大きかったという選手はいるか
今日に関しては勝った選手も負けた選手もみんなとにかく前へ前へと出て戦ってたので、まずはその点はみんなすごく良かったなと思いますが、特にやはり真ん中の6番目で4年生の島がしっかりと相手の1番手の選手にしっかりと勝ってくれたので、そこから一気に流れを持ってきて勝ってたかなと思います。
――岩本選手個人の戦い振り返ってみてどうか
私は空手を始めて以来17年間、自分が勝つとかそういうのではなくて、見てる人が自分の試合で楽しんでくれたらいいなと思いながら幼少期からずっと空手をやってきました。今日は、どうすればこの大会が盛り上がるかなということを考えながら試合ができたかなと思います。その点ですごく良い試合ができたと感じています。
――大学4年間振り返って
なかなかうまくいかないことだったり、難しいことの方が多かったと思いますが、やっぱり周りのみんなだったり、慶應空手部っていう環境が支えてくれたから4年間最後までやり切れたし、その中で出会った人々、それをこれからも大事にしていかないといけないなと思います。



