今年も春の早慶戦の日がやってきた。女子は88回目を数える伝統の早慶対抗庭球試合。両校ともに関東リーグでは1部で戦う名門チームだけに、その熾烈な戦いに注目が集まる。
昨年の早慶戦では、王座でも連覇を果たした絶対的女王・早大を前に、慶大は悔し涙を呑んだ。しかしその慶大に今年、彗星のごとくスーパールーキーが登場。先日の関東学生トーナメント(春関)、女子ダブルスでは早大ペアに肉迫し、準優勝という快挙を遂げた。彼女たちだけではない。春関での活躍により、慶大インカレ本戦シングルスに1名、予選シングルスに5名、本戦ダブルスに2組が出場を決めた。今、着実に進歩している慶大女子庭球部。若きチャレンジャーたちがどこまで女王に迫れるか。歴史的挑戦に期待が高まる。◆春関で快進撃!単複でインカレ本戦を決めた鮮烈ルーキー
―関東学生トーナメントを振り返って
春関は高校の終わりから、コーチや先輩方に大事な大会だと聞いていたので、私はその頃から春関をめさやってきていて、今回シングルスもダブルスもインカレ本直を決められたということで、自分が思ってた以上の戦績を出せたので、それは本当に素直に嬉しいです。―大学での最初の学生大会でしたが、どんな気持ちで臨みましたか
部室では一年生みんな目標を貼ることになっていて、そこでは一応春関ベスト8と目標を設定していました。
―ダブルスで準優勝という結果をどう捉えていますか
パートナーも大学に入って替わって、一年生同士で組んでいるので、二人とも大会の雰囲気などは分からなかったんですけど、一年生らしくやろうということで思いっきりプレーできたかな、と思います。
―女子で、決勝進出というのは類を見ない快挙ですが
監督にもそういうことは言われたんですけど、やっぱり自分はダブルスでは一応戦績があって、ベスト4や準優勝の経験もあったので、今回準優勝という結果で終わってしまったのは本当に悔しいです。次の大会では優勝を目指してもう一度頑張りたいです。
―大学の大会を経験して、感触はやっぱり大学生は粘りがあるというか我慢強いというか。ジュニアだとすごく打ち合って、どちらかがミスして終わるという試合なんですけど、大学では最後の一本まで粘って返してくる。そういうところが、やっぱり大学生のテニスなんだなあと思いました。
―試合ではミスの少ないドライブボレーが印象的でしたが、そこは高校時代からですか
はい。ドライブボレーは高校のときからずっと私の武器です。
―ポーチボレーも思いっきり飛び出したり、そのあとのケアもしっかりされていましたが、特に意識されているのですか
昔からダブルスの動きを自分はやっていたので、体が自然に動くという感じです。
―大学四年間の競技生活のスタートダッシュとして、準優勝は自信になりましたか
はい。特にシングルスに関しては今までなかなか勝ち上がれなかったのですごく自信になりました。
―大会では早慶対決もありましたが、感想は
思っていたよりも、チャンスはあるし、勝てる可能性もあると感じました。
―早慶戦に向けて、部内の雰囲気も高まっていると思いますが、どのように感じていますか
私の中では、あまり早稲田ということは意識せずに、一つの勝負として戦っていきたいと思っています。
―早大の選手に関してどんな印象を持ちましたか
やっぱり他の大学よりもしっかり決めてきたり、一本多く返してきたりというところがあるので、逆に自分が決めるところはしっかり決めていきたいと思います。
―シングルスではどんなプレーを早慶戦でしたいですか
自分はちょっと波があるので、波をできるだけ減らして、最後までしっかり諦めないでやっていきたいと思います。
―早慶戦に向けて意気込みをお願いします
打倒早稲田ということで!池田 玲(いけだ れい)
富士見ヶ丘高等学校を経て現在環境情報学部1年。ダブルスでのネットプレーが光り、高校時代には全日本ジュニアでダブルスベスト4という戦績をもつ。先日の春関ではダブルス準優勝。シングルスでも2回戦で本塾の副将、宇田川(政4)を撃破して3回戦進出。コンソレーションマッチでインカレ本戦への切符を手にした。小柄な新星が早慶戦に大きな嵐を巻き起こす。
◆執念のインカレ予選出場権獲得!逆境から復活の兆し
―今年の春関を振り返って
そうですね、春関は……。新進後に、結構調子が良かったのに結果が出なくて、就職活動もあったりしてどんどん忙しくなって自分ですごく追い込まれていって完全にモチベーションをみうしなっていて。春関直前も、「もう春関やりたくない!」みたいな……。そういうモチベーションでずっときていて、それで(春関の)直前になってやっはり負けたくないという気持ちがやっとちょっとずつ出始めたかんじだったのてもちろん結果は出なかったし、でもシングルスでインカレ予選出場はなんとか決めることが出来たのはちょっと安心しています。でも結果としては全然満足いかないというか、むしろ「最悪!」というかんじでした。―今のモチベーションの状態は
はい、今は春関が終わって、自分は四年間テニスをやってきて本当にこのまま終わっちゃっていいのかなっていう気持ちがすごくあります。他の部員が結果を出している中、自分だけ結果が出てなくて、やっぱりここで勢いを復活させたい。早慶戦があるし、ここで早稲田から一本取ってこれたら、なんというか自分の存在が……わかります??―はい
すごく自分の存在がアピールできるし、他校から見ても早慶戦の結果ってすごく重要なので、ここでもう一度鹿子木復活!というのをどうしてもやりたくて。だから今は春関からは考えられないくらいモチベーションもめちゃくちゃ高いです。―去年の春関を振り返って、去年のこの時期からどんな成長や変化ぎありましたか
去年の春関は完全に自分がインカレに行きたくて、本当に自分のために試合を戦っていたし自分のためだけにずっとテニスをしていたんですが、インカレは去年ダブルスで行くことができて、リーグでも選手として出ることができて、自分の中での目標は結構達成されたのかなって。でも今年は自分が今までやってきたことをいかにチームに残していけるかっていうことを自分の目標としていて、今までは完全に個人プレーで自分勝手にやっていたところを、本当にチームのためを考えるようになった。昔に比べればチームのことを考えて行動できるようになってきたと思うんですけど、まだまだ足りない部分はいっぱいあると思うので、それをこれから一つずつ改善していきたいと思います。―先日までの春関ではコンソレを勝ち上がってインカレ予選出場が決まりましたが、そこで一番良かったのはどういう点でしたか
すごく追い込まれていて、ここで負けたら、単複でインカレがなくなってしまうという究極に追い込まれた状況だったんですけど、今までだったらもういいやってなげやりになっていたところを、踏ん張れるようになった。「本当にこれでいいの!?」って自分に前より厳しく問いかけることができたのは成長したところだと思います。―春関では一年生の活躍がありましたが、後輩たちのプレーをどう見ましたか
やっぱり一年生はここまでの戦績がすごくあるし、練習を見ていてもポテンシャルをすごく感じるんですけど、でもまだ負けてらんないなっていうのがすごくある。自分はこの慶應で確実に三年以上厳しいトレーニングも積んできているし、そんな簡単に負けてたまるかっていうのが正直なところなので、すごくいい刺激になっていると思います。―一年生が入ってチーム全体の状態はどう変わりましたか
一年生が結果を出したこともあって、今すごく勢いのあるチームになってきていて、これまでは自分は若干取り残されている感じがあったんですけど、そんなことも言っていられないので、今は必死についていってます。むしろ私がちょっと足引っ張ってるのかな、って思う部分もあるんですけど、そんなこと言わずにただ前にこう、突進していってる感じかな、イメージ的には。―春関ではこれまでのような早大の一人勝ちの状況ではなくなりましたが、早大への見方は変わりましたか
早稲田は、去年の四年生が強くて、それが抜けたということがまず大きいですね。あと、早稲田も若い力がやっぱり強い。でも、若い力も確かに強いんですけど、恐さはないというか、慶應と比べるとそんなに団結力を意識していなさそう。今年の早稲田は去年までの早稲田より絶対恐くないっていうのは感じます。―四年目の、最後の春の早慶戦への思いは
春の早慶戦は私が入部してからは毎年結構惨憺たる結果なので、今年こそはなんとしてでも自分が絶対一本取ってきたい。いや、取ります!―その春の早慶戦で発揮したい自分らしさは
私の良さは……なんだろう難しい。余計なことを考えていると、入り込めないから、入り込んだら絶対強いと思うので、本当にがむしゃらになって、ボールを一球でも返す粘り強さと、なんとしてでも勝ちたいという気持ちや気合いをいかにコートで表現できるか、というとこ
ろです!もう本当に気合いで勝ちます!
―最後に、早慶戦への意気込みをどうぞ
部員19人みんなで勝ちを、掴みます!鹿子木 文(かのこぎ あや)
慶應義塾女子高等学校を経て現在商学部4年。昨年から中核選手としてコートに立ち続ける、内部進学生の星。慶大らしい粘りのストロークが魅力だが、春関ではダブルスは予選敗退、シングルスでは本戦1回戦敗退と不発。しかしインカレ予選をかけたコンソレーションマッチでは執念で勝ちあがり、インカレへの希望をつないだ。早慶戦では完全燃焼なるか。
そのほかの注目選手
◆宇田川 彩(うだがわ あや)
慶大の関東1部リーグでの健闘に貢献してきた宇田川も今季がラストイヤー。新進選手権大会では優勝。春関ダブルスではベスト8入りを果たした。慶大の大黒柱が、自身最後となる春の早慶戦で集大成を見せる。
◆藤岡 莉子(ふじおか りこ)
鋼のようなメンタルで逆境をはねかえす小さな巨人。春関のダブルス3回戦では脅威のパートナー愛で、敬愛する先輩を支え、早慶対決を制した。小柄な体から発せられるゆるぎない情熱が、慶大を勝利に導く。
◆西本 恵(にしもと めぐみ)
破壊力のあるストロークが目を引く、今年期待のルーキーの一人。春関では同じく1年生の池田と組んで、いきなりの決勝進出。高いポテンシャルを秘めた逸材の今後から、目が離せない。(取材・伊藤明日香)
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