遂にこの日がやってきた。両校が互いの威信を懸け戦う伝統の一戦、早慶戦である。慶大の先発は福谷(理4)。今季抜群の安定感を見せる右腕は8回まで無失点で抑えてみせた。一方の打撃陣も福富(商4)の先頭打者本塁打、横尾(総1)のリーグ戦初本塁打などで3点を奪うも九回、早大に3点を返され試合は振り出しに。しかし同点で迎えた十回、慶大は阿加多(法4)、渡邊暁(商3)の連続三塁打などで2点の勝ち越しに成功する。最後は竹内大(環4)がしっかりと締め、ゲームセット。絶対的な強さを誇っていた早大から先勝した。
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慶大:福谷、○竹内大―阿加多
早大:吉永、安達公、丸山、内田、●有原―地引
慶大出場選手
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ポジション |
選手名(学部学年・出身校) |
1 |
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福富(商4・慶應) |
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6 |
牧野(商3・千葉東) |
2 |
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影山(総4・鎌倉学園) |
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79 |
松本大(環3・桐光学園) |
3 |
[5] |
横尾(総1・日大三) |
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4 |
大川武(環4・済々黌) |
4 |
[4]5 |
山﨑錬(商4・慶應) |
5 |
[2] |
阿加多(法4・慶應) |
6 |
[3] |
倉橋(総4・済々黌) |
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H3 |
渡邊暁(商3・慶應) |
7 |
[9] |
谷田(商1・慶應) |
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7 |
佐藤旭(商2・慶應) |
8 |
[1] |
福谷(理4・横須賀) |
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1 |
竹内大(環4・中京大中京) |
9 |
[8] |
辰巳(文4・郡山) |
東京六大学野球リーグ戦最終カードである早慶戦。今日もおよそ2万9千人もの人が応援に駆け付けた。スタンドを埋め尽くす満員の観客が生み出す特別な雰囲気。この中で多くのドラマが生まれてきた。この日も伝統の一戦と呼ぶにふさわしい熱戦が繰り広げられた。
試合は初回、いきなり動く。早大先発の吉永から先頭の福富が放った打球は綺麗な放物線を描きレフトスタンドへ吸い込まれる。チームの切り込み隊長に先頭打者本塁打が生まれ、慶大が先制に成功する。その裏、慶大の先発としてマウンドに送り出された福谷も二死満塁のピンチを迎えてしまう。しかし、6番の茂木をしっかりと打ち取り、ここは無失点で切り抜ける。
ここから福谷は回を追うごとに尻上がりに調子を上げ、7回まで三塁を踏ませない好投で早大打線を完全に圧倒する。一方で打撃陣は、今シーズンここまで12個の四死球のうち、5個をこの日に記録するなど明らかに調子の悪い吉永を相手に毎回ランナーは出すものの決め手に欠け、思うような攻撃が出来ない。
しかし、五回表、一死から死球で出塁した福富が敵失と相手バッテリーエラーの間に生還し1点を追加する。なおも四球2つで二死満塁とすると、ここで吉永は降板。エース格として早大を引っ張る期待の新人も早慶戦の先発という重圧の前に思うような成績は残せなかった。その後、ワンポイントリリーフした安達公に倉橋(総4)が抑えられ、さらなる追加点を奪うことはできなかった。
七回、安達公の後を継ぎ2イニング目に入った丸山から、こちらは慶大期待の新人・横尾が遂にやってくれた。初球をフルスイングするとバックスクリーン横に飛び込む豪快な一発。リーグ戦初本塁打を放ち、そのパワーを早慶戦に駆け付けた大観衆の前で披露した。
好投を続ける福谷は八回、連続ヒットで無死一、三塁のピンチを迎える。しかし、続く1番・中村をファーストファールフライに打ち取ると、大野大、吉澤は連続三振。このまま慶大が勝利を手にするかに思われた。
しかし、九回に波乱が待っていた。先頭の4番・杉山が二塁打で出塁し、一死三塁となると、なんでもない茂木のファーストゴロを捕球した倉橋のタッチがかわされ、これが内野安打になり1点を返される。次の打者に四球を与えたところで慶大ベンチは左のエース竹内大をマウンドへと送りだす。しかし、早大の攻撃は止められない。今日途中出場の早大主将・佐々木にタイムリーヒットを打たれると、続く代打の徳井には四球を選ばれ一死満塁の大ピンチ。ここで、1番・中村にレフトへのタイムリーヒットを許す。しかし、二塁から本塁生還を目指した佐々木をレフトに入っていた佐藤旭(商2)が落ち着いて刺しサヨナラは免れた。竹内大が後続を断つも、慶大は試合を振り出しに戻されてしまった。
ここで終わらないのが早慶戦である。十回、慶大の攻撃。この日3本のヒットを放っている阿加多が4本目となる三塁打で出塁すると、代打の渡邊暁もセンターオーバーの三塁打を放ち慶大が勝ち越しに成功する。なおも無死3塁で迎えるは先ほど矢のような送球で追加点を阻止した佐藤旭。ここでライト前にタイムリーヒットを放ち佐藤旭が試合の流れをぐっと手繰り寄せる。
最後は竹内大がしっかりと締めてゲームセット。早大の完全優勝阻止へ負けられない初戦を勝利で飾った。
十回の攻撃には目を見張るものがあった慶大だが、それまでは毎回ランナーを出しながらも歯がゆい攻撃が続いた。この早慶戦を秋につなげるためにも宿敵からの圧倒的な勝利が欲しいところだ。
(文・木村 駿)
選手コメント
山﨑 錬主将(商4)
(今日は色々なことがあった試合だったが、勝って早大に意地を見せられたのではないか)勝ち点をとろうと言ってやっているので、勝てたのはよかったと思います。(3-0という理想的な展開で試合を進めていたが、九回に追いつかれた場面については)あそこで点を取られてしまったのですが、勝ち切れたのは良かったと思います。明日も同じような場面があれば、9回で勝てるように頑張ります。(十回表に2点勝ち越した場面のベンチの雰囲気は)押せ押せというか、勢いがあったと思います。(先発の福谷投手の投球は)序盤はランナー出していましたけど、途中からは安定して見られましたし、彼らしいピッチングだったのではないかと思います。(自身のバッティングは)感覚は悪くなかったので、微調整して明日の試合に入りたいと思います。(明日への意気込みは)連勝して、早稲田の完全優勝を防ぎたいと思います。
福谷 浩司(理4)
(今日の試合を振り返って)勝って何よりです。それだけです。(今日は変化球が多かったが)それは自分の状態、相手バッターの状態をみて判断しました。効果的に抑えられて良かったですね。(明日に向けて)明日もできれば勝ちたいですね。
影山 史貴(総4)
(今日の試合を振り返って)大変だったんですけど最終的に勝てて良かったです。 (早大・吉永投手の印象は)思ってたほどではなかったんですけど、やっぱり抑えてるだけあって良いピッチャーだなと思いました。 (明日への意気込みを)優勝はないんですけど、2連勝して良い形で終われたらと思います。
阿加多 直樹(法4)
(今日の試合を振り返って)勝てたのでとりあえずは良かったかなと思います。(相手の吉永投手の印象は)今日たぶんあんまり調子良くなかったと思うんですけど、シンカーがやっぱり良いかなっていう印象で、DVDとか見てて、シンカーを狙ってではないですけどストレートを狙ってシンカーを打てたので良かったです。(4安打放ったが)たまたまですね。ランナーがいなくて甘いところに投げてたので、それでたまたまですね(笑)打てて良かったです。(九回の逆転を阻止した好ブロックについて)レフトの佐藤旭がいい送球をしてくれたので何としても止めないとなと思って必死でしたね。(十回の三塁打について)有原はストレートしかないなと思ってたので、変化球はファールにしてストレートをとらえようと思っていたので、それで打てたんで、たまたま長打になったんですけど、結果的に良かったです。(打率.452だが)キープとか考えちゃうとダメだと思うので、上げるつもりで頑張ろうと思います。(福谷投手の印象は)良かったですね、結構。変化球で結構ストライクが取れてたので楽な ピッチングが出来ました。(竹内投手の印象は)リリーフってあんまりないと思うんですけど大助なりに精一杯頑張ってくれたかなと思います。(明日への抱負は)明日も勝って気持ちよく終わりたいなと思います。雨ですけど、雨だったら良い休憩にしたいと思います。2連勝したいなと思います。
倉橋 法志(総4)
(今日を振り返って)勝ってよかったです。(自身に関しては)もっと打ちたかったです。あと最後ちょっと守りがまずかったのが…。(九回裏、茂木選手に内野安打を許してしまったが)タッチしようと思ったのですが、足が滑ってしまって。(早慶戦初スタメンだったが、普段の試合と比べて特別に感じるか)お客さんがいつもより入るので。(一塁のポジション争いが激しいが)僕がちょっと調子いい方で、前から出ている鈴木とかがちょっといま調子落としているので。(明日に向けて一言)2連勝できるように頑張ります。
辰巳 智大(文4)
(今日の試合を振り返って)とりあえず勝つことができて良かったです。 (立大戦から二週空いたが)秋に向けて戦いは始まっていると思っているので、この早慶戦で勝って弾みをつけようと思います。 (早慶戦ということで意識したことは)特にないです。いつも通りやろうと思っていました。 (早大先発・吉永投手について)自分のバッティングができなかったので悔しいです。次は打ちたいです。 (五回のファインプレーについて)今日は打てなかったので、その分守りで貢献できて良かったです。 (明日に向けて)明日も絶対に勝って2連勝したいです。
福富 裕(商4)
(先頭打者ホームランを放ったが)1番打者は割と苦手なんですけど、今日はあのような形で流れを作れたので良かったです。ファーストストライクから行こうという意識がありました。 (途中交代は死球の影響か)はい。肩甲骨に当たって腕が上がらなくなってしまって厳しかったです。 (次戦の出場は)気合いでなんとかなればと。 (もつれた長い試合でしたが)勝てたので良かったです。 (次戦への意気込みをお願いします)連勝します。
渡邊 暁眞 (商3)
(今日の試合を振り返って)九回に土壇場で追いつかれて、どうなるかなと思ったんですけど、なんとか勝ち切れてよかったと思います。(代打で送り出されたときの気持ちは)阿加多さんが三塁打打ってくれて、楽な気持ちで打席に入れました。(決勝点となる三塁打の感触は)ランナー三塁だったので、最悪犠牲フライでもいいかなと思ったんですけど、できれば越えてほしいなと思って一生懸命走っていました。(ガッツポーズも飛び出したが)もう、いいところで回って来たので、最高の気分でした。(大観衆の声援は力になったか)お客さんがいっぱいいた方が僕は気持ちよくプレーできるので、最高でした。(明日に向けて意気込みを)優勝はもうないですけど、早慶戦に勝つというのはまた別物なので、それに向けて、また明日気持ちよく勝って二連勝で終わりたいと思います。
佐藤 旭(商2)
(先勝したが)最後ってことで気合も入ったし、お客さんも入ってモチベーションも高かった。勝ててよかった。(そしてあの難しい場面での出番だった)準備もしていたし、来たらホームで刺す気でいたので、刺せてよかった。(刺した時の気持ちは )無我夢中で投げていた。なにも考えられなかった。(貴重なタイムリーも打った)前の阿加多さんと渡邊暁眞さんが打って勝ち越した後だったので楽に打席に入れた。もう一点欲しい場面だったので打ててよかった。(明日に向けて)連勝で勝ち点取って、春のシーズンすっきり終わりたい。
谷田 成吾(商1)
(初めての早慶戦だったが)やっぱり普通の試合とは違うなという感じです。(どういう点でそれを感じたか)ライトを守っていて、周りがすごかったですね。一塁側だったので、早稲田側にずっと囲まれていたので、これが早慶戦かと思いました。(今日のスタメン出場は)今日の朝、言われました。ちょっとドキドキしたんですけど、結果が残したかったので(1本出なかったのは)しょうがないです。(吉永投手との対決は)2打席目は僕がふがいなかったんですけど、1打席目はとらえられましたし、自分でも良かった打席もあったので次当たった時に打ちたいなと思います。(今日の経験は今後にどう影響するか)1回早慶戦を経験して、あとは慣れだけだと思うので出たらきっちり仕事をしたいなと思います。気持ち的にもすごい楽になりますし、余裕を持って次の試合に臨みたいなと思います。(今日は打てなかった早慶戦での初ヒット、初本塁打への意識は)そうですね。早めに打ってチームの貢献して慶應を勝利に導きたいなと思います。頑張ります。
横尾 俊建(総1)
(今日の試合を振り返って)吉永に三振を取られてしまいましたが、試合は勝てたので気にしていないです。(初めての吉永投手との日大三高対決を終えて)やっぱり意識はしていたので、そのせいで空回りしてしまったと思いますが、次に対戦する時はしっかり打とうと思います。(三回に吉永から受けたデッドボールについて)吉永に怒っておきます。(初めての早慶戦について)勝てたことを幸せに思います。(七回にホームランを打った時の気持ちは)打った瞬間はホームランになるかわからなかったので一生懸命走りましたが、結果的に入って良かったです。(明日への意気込み)明日もこのままの勢いで勝って、チームの順位を3位に上げたいと思います。
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