【男子テニス】ヒヤリの危機乗り越え、初戦勝利! 関東学生リーグ明大戦

チームの努力を体現する逞しさで大きな2勝を挙げた谷本

チームの努力を体現する逞しさで大きな2勝を挙げた谷本

快晴の早大東伏見コートにて、慶大庭球部が関東学生リーグの初戦を迎えた。第1戦は王座決定試合出場を目指す上で一つ目の山場となる明大戦だ。法大戦、早大戦に弾みをつけるためにも一気に討ち取りたい慶大だったが、予想を遥かに上回る苦戦を強いられることとなった。  

 

2013/08/30 関東学生リーグ戦第1戦@早稲田大学東伏見キャンパス

○慶大6-3明大
D1 志賀・近藤 6-2,7-5,6-3 古橋・小野
D2 矢野・髙田 3-6,1-6 奥田・弓立
D3 井上・谷本 5-7,6-2,6-4 深田・諱
S1 志賀正人 6-4,6-0 小野陽平
S2 近藤大基 3-6,6-2,6-4 奥田圭都
S3 髙田航輝 4-6,6-2,0-6 諱五貴
S4 谷本真人 6-4,6-3 弓立祐生
S5 矢野隆志 7-6,5-7,6-2 熊倉周作
S6 権大亮 6-0,6-3 澁田大樹
 

 

第2セットを落とすも、しっかり初戦勝利を収めた志賀主将(左)・近藤(右)

第2セットを落とすも、しっかり初戦勝利を収めた志賀主将(左)・近藤(右)

「チーム全体が今日は緊張した」(志賀主将・政4)という言葉通りの緊迫感をはらんだ幕開けとなった。まずダブルス1の志賀・近藤(環3=湘南工科大附属高)の相手は先日の全日本選手権でベスト4に入った、小野・古橋ペア。互いに強力なサーブでキープし合う立ち上がりとなったが、2回目のリターンゲームで慶大が仕掛ける。サービスダッシュを試みる相手に対し、志賀が落ち着いてセンターを狙い中央に寄せると、隙ができたストレートに近藤が豪快に叩き込み、崩す。相手にミスが出てブレークに成功すると、そのまま流れに乗って6-2で先制した。しかし第2セットに入るとその流れを手放してしまった。ボレーが決まらず追う展開となるが、ツーバックをとったリターンゲームでも前に落とされ、チャンスをつかめない。

志賀がサーブで攻め、近藤がネットで躍動する形が得点パターンの一つ

志賀がサーブで攻め、近藤がネットで躍動する形が得点パターンの一つ

 

だが2-4で迎えた第7ゲームでそのチャンスがやってきた。前がかりになる相手の頭上を抜くロブでその勢いを削ぐと、サーブを決めてサービスキープ。さらにリターンでは冷静に相手コートを見てミスを誘い、慶大ペアのボルテージは上がっていく。ここでブレークに成功し、次もキープすると5-4とチャンスのリターンゲームを迎えた。だがここで相手が好サーブを連発し、あっさりキープを許す。すると逆に慶大の動きがかみ合わなくなり、ずるずると逆転を許し、セットカウントで追いつかれてしまった。最終セットもやはり接戦となったが「ファイナルで志賀さんとよく話してやることを明確にしてできた」(近藤)という言葉通り冷静だった。安定したサービスゲームをきっちりキープしていくと、第8ゲームでは近藤のリターンエースがさく裂し、5-3と一歩抜け出して近藤のサービスゲームを迎えた。立て続けにサービスポイントを奪ってついにマッチポイント。近藤のファーストサーブから志賀のスマッシュがきれいに決まり、フルセットの初戦で勝利を収めた。

苦しみながらも地力で勝利した井上(左)・谷本(右)

苦しみながらも地力で勝利した井上(左)・谷本(右)

 

一方ダブルス3の井上(経3=慶應義塾高)・谷本(環2=名古屋高)も苦戦を強いられた。第1セット序盤で追いかける展開となると、追い上げむなしくこのセットを落としてしまった。だが第2セットに入ると慶大ペアは冷静だった。ラリーでは相変わらず劣勢だが、厳しい体制からのショットをミスなく決めると、井上が相手の打球に飛び込むように食らいつき流れを呼び込む。ここでブレークに成功すると、ネットプレーも豪快に決まり、6-2で第2セットを奪い返した。プレッシャーのかかる最終セット、いきなり最初のサービスゲームでブレークを許してしまう。負けじとブレークしかえすと、2-2までブレーク合戦が続いた。しかし、谷本のサービスゲーム、爆発力のあるサーブで次々にサービスポイントを稼ぐ。一瞬でサービスキープを決め、流れをつかんだかに思えた。だが、ブレークチャンスをものにすることができず、均衡は崩れない。それでも、4-4でのやはり谷本のサービスゲーム。好リターンから攻められ苦しくなったが、我慢強いストロークで押していくと、ついにネット前に短い浮き球が上がる。すかさず谷本が猛ダッシュでネットに詰め、ほぼネットと並行に角度をつけたグラウンドスマッシュ。奪われかけていた流れをたちまち引き戻した。すると井上も思い切りのいいポーチボレーをベースライン際に沈める。最後まで粘られたこのゲームを完璧なサービスエースで終わらせると、風は慶大に吹いていた。苦戦していたリターンも決まり、気迫のボレーを突き刺す。最後は谷本が一歩も引かないストロークで押し勝ち、慶大に貴重な1勝をもたらした。

浮上できず悔しい黒星発進となった矢野(右)・髙田(左)

浮上できず悔しい黒星発進となった矢野(右)・髙田(左)

この日今一つ勝負強さを欠いたのは、ダブルス2に登場した矢野(環3=出雲高)と髙田(環2=湘南工科大附属高)。サービスゲームで試合が始まったが、ボレーがアウトになったり、安易にネットにかけてしまったりと、攻撃がかみ合わない。リターンゲームでもリターンが思うように入らないうえ、不意打ちを狙うストレートを読まれて返り討ちにあってしまった。そこからはなんとかサービスキープして離されず3-4まで進んだものの、ネットダッシュを試みてもボディを狙われ、相手を追い詰められない。巻き返せず3-6で第1セットを落としてしまった。第2セットに入ると、相手の勢いがさらに増してくる。あっという間に3ゲームのリードを相手に許すと、4ゲーム目で何とか髙田がサービスキープに成功。しかしそこからいい流れが続かない。リターンゲームはおろか、サービスゲームでも深いボールに食い込まれ、完全に相手ペース。最後は相手がスライスでコントロールし、ネットに向かって逃げるようにバウンドしたボールにラケットが届かず、無念の初戦黒星となった。

第2セットでは壮絶なストローク戦を制するも、最後は力尽きてしまった髙田

第2セットでは壮絶なストローク戦を制するも、最後は力尽きてしまった髙田

 

このダブルスでのストレート負けが影響したのかどうか、矢野と髙田はシングルスでもそろってフルセットの末敗れてしまった。矢野に至っては第1セットをタイブレークの末先取し、第2セットでは5-3とチャンスを握った場面もあっただけに、決めきれなかったことが惜しまれる。最終セットでは、乗せたら手の付けられない明大の恐ろしさを痛感するような内容となり、「少し自分から舞台を降りてしまったところがあった」(原コーチ)ようにも思える大差での敗北となった。

パワーアップしたフォアハンドで快勝を収めた権

パワーアップしたフォアハンドで快勝を収めた権

 

対照的に、リーグ戦ならではの強さを見せつけて快勝したのは、夏関、インカレと苦杯をなめてきた権(総3=秀明英光高)だった。この日、権は持ち前の鋭いバックハンドに加え、「フォアハンドでしっかりラケットを振り切って打つようにして」(権)、弱点のない攻撃的なラリーが冴えわたっていた。インパクトの瞬間も見えないほどのスイングスピードからエースを量産すると、浮いた球はスマッシュで叩きこみ、6-0と相手を完封。第2セットでは少し反撃にあったが、えぐるようなストロークにセカンドでも威力の落ちないサーブで攻め、最後はリターンをエースで叩き返してゲームセット。「チームを引っ張る」(権)ような圧勝で初戦を飾った。

力強いストロークで強敵を下した谷本

力強いストロークで強敵を下した谷本

 

次に金星を挙げたのは、昨年大会で大ブレークの弓立との2年生対決となった谷本だ。互いに武器のパワーヒットをさく裂させ、エースを奪い合う展開となったが、時折ダブルフォルトを犯す相手に対し、谷本にもあっけないミスがでることがあり、シーソーゲームのまま第1セットは進んだ。だが、4-4で迎えた第9ゲーム、先に抜けだしたのは谷本だった。腕を大きく使ったストロークで相手のサーブやエースショットを拾うと、逆にアプローチショットで攻勢に転じる。相手の守りに入った緩いサーブを見逃さず叩き、ブレークに成功すると、そのまま6-4でこのセットをものにした。続く第2セットでは、相手のドロップショットなどに翻弄され、1-3と追いかける苦しい展開。だがそこからまたも谷本の鋭いエースが続々と決まる。試合を見守った原コーチも「チーム全体で取り組んできたフィジカルの効果、練習量がでた」と称賛する5ゲーム連取で逆転し、強敵をストレートに討ちとった。   ここまでで4勝3敗、勝利まであと1勝という場面で奮闘したのはシングルス2の近藤、そしてシングルス1の志賀だった。

コンパクトに振りぬく近藤のフォアハンド

コンパクトに振りぬく近藤のフォアハンド

 

「緊張して足も動かなくて」と振り返った近藤は序盤、相手の鋭く低いストロークに苦戦し、1-4と大きくリードを握られてしまった。徐々にコースを狙って打ち込む余裕も見られるようになったが、反撃も間に合わず、3-6で第1セットを落としてしまう。しかし第2セットは一転して近藤ペース。相手に粘られたサービスゲームでもなんとかキープして5-1とすると、次のリターンゲームでは決めきれなかったが、それ以上の追随を許さず6-2で最終セットに臨んだ。そこで相手も意地を見せ、どちらに転ぶかわからない競り合いとなる。「最後の方は緊張のせいで体が結構きつかった」(近藤)と、重圧や疲労も近藤に襲い掛かった。しかし風が吹く中迎えた5-4の第10ゲーム、慎重なラリーから近藤が先に仕掛けてエースを奪うと、続けてコーナーにエースを叩きこみ、雄叫びをあげて自分を励ます。さらに最後も前へ駆け込みながらの打ち込みがエースで決まり、頼もしい勝利をチームにささげた。

重力を無視してネットより高く飛び上がる志賀主将のスーパーショット

重力を無視してネットより高く飛び上がる志賀主将のスーパーショット

 

一方の志賀主将もほぼ同時に勝利を挙げた。相手もまた明大の不動のシングルス1であり、幾度となくぶつかり合ってきたライバル、小野だ。第1セットでは競り合いから相手にリードを握られたが、焦りの色を浮かべることもなく4ゲーム連取で逆転。その勢いは第2セットに入っても衰えない。相手が手も足も出ないエースで滑り出すと、リターンゲームでも相手の強烈なサーブをものともしないリターンで楽々とブレーク成功。体の不調にも悩まされた相手を寄せ付けることなく6-0で勝利を収めた。

 

慶大の主力の一翼を担う矢野、髙田が合わせて3敗してしまうという波乱の幕開け。チームの勝利すら危ぶまれるような危機的な雰囲気に3面全体が包まれる場面すらあった。それでも振り返れば6-3と手堅い初戦勝利。「まだまだ100%ではなくて、半分くらいしか出せてない」(志賀主将)と選手たちの表情は厳しいが、それもそのはず、慶大の目標は王座進出の先にある大学日本一だ。まだまだ通過点で立ち止まってはいられない。次戦までの3日間の中で確実に選手たちは態勢を立て直してくるだろう。今日は出場機会のなかった選手たちもチャンスを心待ちにしている。9月3日の亜大戦でシンデレラボーイとなるのはだれか。次の戦いの舞台は有明テニスの森公園。慶大の本領発揮をぜひ会場で目撃していただきたい。

(記事 伊藤明日香)

 

◆試合後コメント

原コーチ(H20卒)

(今日の試合全体を振り返って)リーグ戦の初戦なので、どのチームも緊張しますし、その中でどういう勝ち方をできるかということでした。結果的には接戦になって、ここが5-4になるか6-3になるかで大きな差だったと思うんですけど、そこをしぶとく勝てたので、とことんしぶといチームとして他校にプレッシャーをかけたいです。あとは今回中3日あるので、勝負の基本の部分をもう少し徹底して、もっと楽に勝てるようにやりたい。あんまり相手を調子づかせたり、取らせないような徹底した基本を、これまで一年間やってきたことを修正していければ何の問題もないと思います。(今日の9試合の中で特に良かった試合は)いろんな試合があったんですけど、ダブルスが終わってシングルスの下位が入った時に谷本選手が当たった弓立選手は去年のリーグ戦ですごくキーになった選手で、いろんな選手に勝っていて、うちもそこに勝てなかったんですけど、(今回は)完全に体力勝ち、フィジカルで勝てたと思うので、もちろん谷本選手の努力もすごくあったと思うんですけど、チーム全体で取り組んできたフィジカルの効果、練習量がでたかなと思います。あとは最後の近藤、志賀の試合というのは、ポイントが自分にかかっていても自分のプレーに徹して、なおかつ前に出ることとか、自分がこれからチャレンジしていかなきゃいけないことにチャレンジして勝ったというすごく価値のあることだと思うので、必ず次に繋がると思います。その3試合がすごく大事な試合だったと思います。(今日落とした3試合を振り返ると、次回どのような改善が必要ですか)髙田にしても矢野にしても、最終セットは簡単にいってしまったんですけども、そこは少し自分から舞台を降りてしまったところがあったと思うので、そこで踏みとどまろうとする気持ちが必要なのと、あとは、次の試合ではまた新しいメンバーが出てくる可能性が高いと思うので、そのメンバーは、ある意味チャンスだと思って奮起してとことん相手に対してプレッシャーをかけられるしつこい試合ができるんじゃないかと思っています。(次戦に向けて)とことんしぶといチームで日本一を狙いたいと思うので、また準備をして臨みたいと思います。

志賀正人主将(政4=秀明八千代高)

(今日の試合をシングルスとダブルスで振り返って)2勝を持ってこられたのが良かったですけど、ダブルスでセカンドセットを落としたりだとかまだまだちょっと不安なところもあるので。なんとしてもやっぱり1として、しっかりと相手をたたきのめすことが大事だと思うので。シングルスはその辺良かったと思うんですけどダブルスで周りのコートまで元気を与えられるようにやっていきたいと思っていました。(初戦ということで緊張もあったか)そうですね。もちろんありましたし、ダブルスが2個ファーストセットでとられてて僕らもなんとかしなきゃいけないということで緊張しましたけど、それは僕だけではなく、チーム全体が今日は緊張したと思うんで。これからちょっと工夫していければと思います。(志賀選手から見てチーム全体の雰囲気や調子はどのように映ったか)まだまだ100%ではなくて、半分くらいしか出せてないんで。チームが大切にしているファーストサーブの確率だとかファーストボレーをしっかり入れるだとか、リターンをまず入れるだとか。そういうところにフォーカスしていきながら、徐々に徐々に上げていくしかないかなという感じですね。(次の試合に向けて)次の試合、亜細亜戦が4日後なのでしっかりと調整してから9-0をつけに、早稲田戦に向けて弾みになるようにやっていきたいです。

近藤大基(環3=湘南工科大附属高)

(今日のシングルスを振り返って)すごく緊張しました。相手が力を抜いてポンポンポンポン打ってくる選手で最初全く合わなくて。緊張して足も動かなくて。最初はミスの連続だったんですけど、途中からもうメリハリつけて守る時は守るし、しっかり振り切って、それだけを意識していました。最後の方は緊張のせいで体が結構きつかったんですけど、いつもそういう状況で練習しているので。冷静にいけたことが勝因かなと思います。(ダブルスを振り返って)ダブルスは2,3でパス打って取られて。今日はもう一日緊張しっぱなしというか。セカンドセットもその流れが悪くてとられてしまったんですけど、ファイナルで志賀さんとよく話してやることを明確にしてできたことが勝因かなという感じです。(初戦ということで緊張もあったか)そうですね。あとは2、3が。まあ3がなんとか踏ん張ってくれて良かったんですけど。2が負けてしまったりとかもあって、ダブルスで勢いづけないとチームも勢いに乗らないので。なんとしても勝たなきゃ勝たなきゃという意識がやっぱり緊張に繋がりました。(近藤選手から見て、チーム全体の調子や雰囲気はどう映ったか)やっぱり明治も強いので。今日すごくてこずりましたけど、ちゃんと5-4じゃなく6-3で勝ち切れたことはいいと思います。しかし、今日高田とか矢野がシングルスダブルス両方で負けてしまったので、他大からもプレッシャーにならないですし、高田と矢野が負けてしまったのがすごく痛いなという感じはあります。(次の試合に向けて)次もシングルスダブルスあるので、今日の反省を活かして次に繋げていけたらなと思います。

権大亮(総3=秀明英光高)

(今日の試合を振り返って)最初から自分のプレーがすごく良くて、結構相手を圧倒できて、結構チームを引っ張ることができたと思います。(前回までの個人戦と比べ、どんなプレーが成長しましたか)フォアハンドでしっかり、ラケットを振り切って打つようにしていて、それがインカレの時よりもいい精度でボールが入ってくれたので、そこがインカレから変わった点だと思います。(明大戦全体を振り返って)もっと簡単に勝てたんじゃないかと個人的には思うんですけど、やっぱりダブルスを一本落として、その二人がシングルスでも負けてしまったということで、そこは何か改善をしなきゃいけないというか、課題が残る試合だったと思います。(次の試合まで数日空きますが、どのような準備をしたいですか)とにかく気持ちの準備をして、1ポイント目からファイトできるようにやっていきたいと思います。(次戦に向けて意気込みを)次回はダブルスで出場のチャンスがあるかもしれないんですけど、単複2本、しっかり取ってきたいと思います。

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