嵐のような初戦・明大戦から早4日、慶大男子庭球部が関東大学リーグの第2戦・亜大戦に臨んだ。ここを無敗で切り抜けて続く重要な2戦に勢いをつけたい慶大だったが、S4に登場した矢野(環3=出雲高)がストレートで敗れる波乱も。多少の不安が残る内容とはなったが、その他は抜かりなく勝利を収め、「早く終わって疲れを残さない形で」(坂井利彰監督)締めくくった。
2013/09/03 関東大学リーグ第2戦@有明テニスの森公園
○慶大8-1亜大
ダブルス
D1 | ○ | 志賀・近藤 | 6-1,6-2 | 小堺・長船 |
D2 | ○ | 矢野・髙田 | 6(3)-7,7-5,6-2 | 田村・安藤 |
D3 | ○ | 井上・谷本 | 7-5,6-4 | 白井・秋山 |
シングルス
S1 | ○ | 志賀正人 | 6-0,6-0 | 小林浩貴 |
S2 | ○ | 近藤大基 | 6-1,6-2 | 白井卓也 |
S3 | ○ | 谷本真人 | 6-4,5-7,6-3 | 小堺遠馬 |
S4 | ● | 矢野隆志 | 3-6,1-6 | 長船雅喜 |
S5 | ○ | 権大亮 | 6-2,6-1 | 高山和也 |
S6 | ○ | 渡邉将司 | 6-1,6-1 | 大塚陽平 |
おなじみの有明テニスの森公園に場所を移しての第2戦、亜大との対戦となったが、慶大はやはりダブルスで快調なスタートダッシュを切った。オーダーは初戦と変わらず。まずダブルス1に入った志賀主将(政4=秀明八千代高)・近藤(環3=湘南工科大附属高)は、コントロールに僅かな乱れを見せつつも、それを補って余りある攻撃力で終始相手を圧倒。瞬く間にポイントを奪ってストレート勝利をチームに持ち帰った。
ダブルス3の井上(経3=慶應義塾高)・谷本(環2=名古屋高)は、今日も元気いっぱいの雄叫びをコート三面に響かせた。試合は、前がかりな慶大ペアに対し、相手が器用にパスショットで反撃に出たためシーソーゲームとなる。第1セットも5-5まで競るが、強気に打って出た慶大ペアがブレークに成功して先取した。第2セットに入っても競り合いは避けられない。それでもやはり慶大が先に抜け出し、その勝負強さを証明した。
初戦に続き苦しんだのはダブルス3の矢野・髙田(環2=湘南工科大附属高)。「出さないという選択肢もあった」(坂井監督)というように、調子はまだ全開ではなく、立ち上がりで勢いに乗れず第1セットを落としてしまった。しかしそれでも先に勝利した仲間たちに触発されてか、第2セットからは慶大ペアが奮起。引き気味だったネットプレーからも得点が生まれセットカウントで追いつくと、最終セットは強気のプレーが復活した。「彼らを一年間ずっと信じてやってきたから、彼らを外さないで託した」という坂井監督とチームの信頼に報いる逆転勝利を挙げた。
納得のダブルス全勝で前半を折り返した慶大。そのシングルスのオーダーには初戦から変更が見られた。初戦でシングルス3に出場し黒星のついた髙田を外すと、シングルス4以下を一つずつ繰り上げ、シングルス6に今季のリーグ戦では初登場の渡邉(総2=名古屋)を投入。チームを活気づける新風を吹き込んだ。この作戦がはまり、渡邉は攻撃的なフォアハンドと懐の深いロブで主導権を握って6-1,6-1と快勝を収める。
また、シングルス5の権(総3=秀明英光高)はこの日も好調。大会前に「キャプテンの志賀が、権が今回のリーグ戦の中では鍵だと全体に向けて言ってくれた」(坂井監督)ことが覚醒の引き金を引いたのだろう、ポイントを重ねるうちに粘り強さが増していき、勝負どころも確実に決める。一本一本確かめるように気持ちの入ったショットが決まり、6-2,6-1で快勝を重ねた。
ここまでで慶大の勝利が確定し、試合は中盤にさしかかったが、シングルス3、4は吹っ切れたような相手のプレーに苦しんだ。まずシングルス4で登場した矢野は、ミスから流れに乗れず接戦となったが、思い切ったショットがアウトの判定を受ける場面が続くと次第に思い通りのプレーができなくなっていく。結局浮上へのヒントを掴めないまま、まさかのストレート負けを喫した。一方の谷本も、序盤から相手にリードを奪われる。なんとか形勢逆転して第1セットは取ったものの、第2セットは反撃の勢いに食われ、フルセットへもつれこんだ。第3セットはどちらも死力を尽くす壮絶な打ち合いに。それでもミスを恐れずエースを狙った谷本が相手を振り切り、リーグ戦4勝目を挙げた。
シングルス上位陣は格の違いを見せつけた。シングルス2の近藤はサービスゲームで完全に相手の勢いを削ぐと、轟音とともにストローク、スマッシュを叩き込んでのストレート勝利。シングルス1の志賀主将に関しては、ピストルのように鋭いストロークが容赦なく相手コートを打ち抜き、相手に1回もサービスキープを許さず完全勝利を遂げた。
この日8名の選手たちをフルに躍動させた慶大。特に志賀と近藤、さらに谷本はここまでのリーグ戦4戦全勝と頼もしい。個性豊かな面々が揃う慶大だが、上述した志賀主将と権のエピソードにも見えるように、チームが「大切にしている哲学」(坂井監督)は血潮のように選手たち一人一人に流れている。団結したチームが次に挑むは昨年の王座出場校・法大。ここで勝てば王座出場はほぼ確実、だがそれはゴールではない。打倒早大、そして全国のチャンピオンへ。慶大が夢に続く入口に立っている。
(記事 伊藤明日香)
◆試合後コメント
坂井利彰監督
今日の亜大戦を振り返って
矢野が一本負けてしまったのが。矢野は初戦も負けていて、今日のダブルスは逆転勝ちで勝ったんですけど、シングルスでは負けてしまったというのが残念というか、調子がなかなか出ないで苦しんでいるので、きっかけさえあれば調子は出てくるので、それは期待するというのが、今日の率直な感想。逆に前回と今回と振り返ったときに、矢野と髙田が初戦では負けて、今日は逆転で勝てたということは収穫で、(彼らをダブルスで)出さないという選択肢もあったかもしれないんですけど、彼らを一年間ずっと信じてやってきたから、彼らを外さないで託したというところがチームとしてあって、託したところを彼らは感じてやってくれたので、それはすごく収穫だったかなと。まあ厳しい試合だったとは思うんですけど、そこですかね。あとは他の試合はしっかり勝ってくれたので、しかも早く終わって疲れを残さない形で次の法政戦、早稲田戦、日大戦に臨めるので、そういった意味ではよかった。女子みたいに次の日に持ち越してしまうと、疲れが溜まっちゃうので。そことのせめぎ合いなので、男子は早く終わって良かったかなと思っています。
初戦、第2戦とS3の谷本選手が激戦を制して大きな勝利を挙げていることに関して
(※慶大の戦略に関わる部分のため一部割愛。後日掲載します。どうぞご理解ください。)谷本は2試合出ているので、前回はダブルス終わった30分後にシングルスに入っているし、そういう意味ではタフな形で入ってるんですけど、4戦出て2年生で勝っているというのは頼もしいので、ここでピークというのではなくて、これからが大事な試合が続くので、そこでも力を出してほしいなと思います。
下位のシングルスに出場している、権選手、渡邉選手も好調ですが、彼らに関して
権は3年生ですが、1年生のころから試合には出ていて、期待していた選手なんだけども、2年生のときになかなか力を出せずに苦しんだ時期があって、今回のインカレでも2回戦で早稲田の松崎くんに本当に惜敗して、その時に自分の中に持っているものを出さなきゃいけないという気持ちが出てきて、尚且つそこに対してキャプテンの志賀が権が今回のリーグ戦の中では鍵だと全体に向けて言ってくれた。そういう、学生が、キャプテン自らちゃんと声をかけて鼓舞してくれるというのが、やっぱり学生スポーツ。監督もコーチもいるんですけど、あくまで主役は学生だから、その学生同士がそうやって「お前が鍵だ」と「絶対やろうぜ」ということを言って、権が今までなかなか出せなかったパフォーマンスを出せたっていうことは、僕はチーム力だと思っているんですよ。チーム力が出せるようになってきていることが、今インカレでも結果が出てきたり、見えないところでチームが進化しているゆえんだと僕は思っている。監督やコーチがああやれこうやれって言ってやるのもいいんだけど、うちのチームはやっぱり学生たちが自分たちでどうしたいのか、主体的になってやるというところが権に関しては出てきている。そして渡邉将司に関しては、もうスーパーサブ的な、本当に勝負勘がすごくあって、ここぞというところで力を発揮してくれる選手なので、まあダブルスは個人戦で結果がちょっと出せてなかったり、関東学生でもなかなか力が出せなかったりとか伸び悩んでいた部分があったんですけど、ここぞという、チームが苦しいときは「俺がやってやる!」という漢気がある選手なので、そういった意味ではチームは彼のことをすごく信頼しているから、チームが苦しくなったときは将司だという気持ちはみんな持っているので、快勝してくれたということはチームにとっては大きいと思っています。
お話が変わりますが、9月半ばに行われる国別対抗戦デビス杯のようなプロの団体戦と、こうした学生の団体戦との違いは
そもそも仕組みがだいぶ違って、日本代表は初日にシングルス二試合、中日にダブルス一試合、最終日にシングルス二試合という組み立てなんですね。だから選手が二人いれば初日にシングルスに出て、その二人がダブルスを組んで、というように試合に出れば成り立つんですけど、学生の試合は最初にダブルスが三つ入るのでダブルスのプライオリティがすごく高いんですよね。ダブルスでやっぱり主導権を握り、シングルスがNo.1からではなくてNo.6から入っていくと。その下位の選手がどう主導権を握って勝っていくかということもすごく重要なので、チームとしての層の厚さも問われるし、ダブルスの重要性もある。そういった意味では国別対抗戦は二人とかいればカバーできる部分はあるんですけど、やっぱり踏ん張る選手というところが、まあデ杯も確かに中日のダブルスの選手が踏ん張るのが重要ということはあるんですけど、やはり学生の仕組みだと層の厚さとダブルスの重要性があって、さらには、プロの場合は一年間一緒に練習しているわけではないし、学生の場合には一年間一緒に練習してきて、その総決算としてリーグ戦を迎えるというところが違いますよね。ただ、一方で苦しいときに踏ん張る力、チームとしてのひたむきさとか、大切にしている哲学は踏ん張りどころで出ると思うので、今うちのチームで大切にしているのはひたむきさと、勝負勘、勝負どころでどういうプレーができるかというところに重きを置いていて、ひたむきな選手が徐々に増えてきているので、男女でチームとして同じ方針でやるようになってきていて、それがお互いにいい影響を与えあっていて、尚且つひたむきに頑張るだけもね、勝負どころで力を発揮しないとダメだから、緊張したところでどうやって力を発揮するかというための準備というものも取り組んできているので、その両輪がチームの中でも浸透しているということがこのチームの強さだし、そういうところがデ杯でも学生スポーツでも本当に大事になってくるので、そこはプロもアマチュアも変わらないと僕は思います。
貴重なお話をありがとうございました。最後に男女とも大事な一戦となる第3戦に向けて一言お願いします。
本当に肩肘張らず、緊張感を楽しんで、ベストプレーをしてくれることを臨んでいる。やっぱりせっかくここまで練習をしてきて、力を出せないまま終わってしまうのはもったいないということが一点と、やっぱり例年法政に勝って満足するとか、山梨学院に勝って満足するとかそういうところがまだあって、僕らはチャンピオンを目指しているから、そこで勝ってほっとするのではなくて早稲田にちゃんと勝つということが目標なんだよということを忘れないで次の試合に臨みたいと思うんですよ。今まではそれがわかってはいても何故か法政戦に勝って満足しちゃうというところがあったり、去年だったら専修戦に勝って満足しちゃうというところがあったので、絶対に最終目標が早稲田だということを忘れずに、ベストプレーをこころがけて次の試合に臨んでほしいと考えています。
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