―昨季1年を振り返っていかかでしたか
多くの方々にサポートを頂き、目標である大学選手権ベスト4を達成できました。宮川前主将を中心とした学生たちが最後まで諦めず努力した結果であり、監督1年目の私の至らなさをよく学生がカバーしてくれました。ただ一方で、対抗戦や日本選手権で大敗した悔しさの方が強く私の心に残っています。勝敗が大切なのは言うまでもありませんが、慶應の試合を観に来てくださるファンやOBの方々はどんな試合でも慶應らしい気持ちが入った試合を期待されている。その期待に応えられなかった責任は強く感じています。
―調子の波を安定させることができなかった理由はどこにあるのでしょうか
メンタル面、フィジカル面、スキル面、すべてにおいて足りない部分があったからですが、何より学生スポーツにおける「メンタル」の重要性を再認識した1年でした。
―大学選手権で明大に敗れた後どのような心境で東海大戦に臨まれましたか
自力でのベスト4進出の可能性は無くなりましたが、かろうじて可能性は残されました。試合後のロッカールームで、「自分たちに出来ることは最高の準備をして東海大戦に挑むこと。仮に明大に勝っていたとしてもそれは同じだったはず。とにかく可能性を信じて、自分たちでできることに集中し、東海大戦を今季のベストゲームにして勝とう。」と選手たちと誓い合いました。
―実際に国立の舞台に立って感じたことはありますか
試合には敗れましたが、帝京相手に残り20分までは10点差と夏合宿や対抗戦よりは粘ることができたことで、打倒帝京という目標が選手たちの中でより具体的になりました。一方で歴然とした力の差があったのも事実です。この国立で感じた悔しさを2014年度のモチベーションにしていきます。
―帝京大や早大との差はどこにあるでしょうか
チームとして帝京大は打倒トップリーグを公言、早大はその帝京大を倒すことを公言しています。慶應が2013年シーズンに公言していた目標は「大学ベスト4」。まずその志の高さに違いがあった。また、選手個人を見ても、帝京や早稲田には、トップリーグ、海外、更には2015/2019年ラグビーW杯出場を本気で目指す選手も多く存在する中で、慶應の部員の大半は大学まででトップレベルのラグビーのキャリアを終え、一般就職することを考えている。それは一方で慶應らしさでもありますが。昨年度の大敗の後、選手たちともこの志の大切さについては話し合い、今年度はチームとして打倒帝京を公言して行きます。また大学まででトップレベルのラグビーから退くことを逆に最後力を出し切るエネルギーに転換し、勝ちたいというハングリーさで負けず、高いモチベーションでトップチームに食らいつくチームを作り上げます。
―社会人との差で一番大きい部分はどこでしょうか
トップリーグのチームとは全ての面においてあまりにも差があります。選手、経験、環境、コーチング、予算等々。更にその中でもトップリーグの上位チームはまた別格です。しかしそれはやる前から分かっていたことで、神戸製鋼戦はそこにいかに立ち向かうかがポイントでしたがその差は想像以上でした。
―昨年1年通しての課題はなんでしたか
最大の課題は帝京、早稲田に大量失点を喫したディフェンスです。慶應伝統のチームカラーであるディフェンスを武器にできるよう、規律から見直し、春先から徹底していきます。またアタック面も規律を見直しこれも春先から徹底していきます。そして、どんなゲームも慶應らしい気持ちを感じる試合に出来るようメンタル面も強化します。
―SOとはどのようなポジションでしょうか
以前からチームの司令塔ですが、現代ラグビーではさらにSOに求められる役割が大きくなっています。アタック面ではさることながら、ディフェンス面も最もタックルする機会が多いポジションの一つであり、試合を分析すると一般的にフランカーやセンターの次にタックル回数が多いのがスタンドオフになります。つまり現代のラグビーでは、キックやパスを駆使してアタックを組み立てるのに加えディフェンスでも強くないといけないというスーパーマン的な能力が求められます。
―そんな中、立川春道選手(クボタスピアーズ)がスーパーラグビーのブランビーズへの入団が決まりました
ブランビーズは私が現役時代の慶應がお手本にしていたチームです。当時はエディー・ジョーンズがヘッドコーチで、グレーガン・ラーカムのハーフ団でボールを動かす素晴らしいアタッキングラグビーのチームでした。また、立川選手だけでなく田中史朗選手や堀江翔太選手(ともにパナソニックワイルドナイツ)を含めスーパーラグビーで日本人がプレーするということは日本のラグビーのレベルがあがっている証拠。一ファンとして毎週楽しみに観ています。
―大学では山沢拓也選手(筑波大)や松田力也選手(帝京大)など1年生ながらSOのレギュラーとして活躍している選手がいます
山沢選手に関してはサッカー出身ということもあり、キックという武器を持っています。パスとランの能力も高い。また、ディフェンスの時にはFBのポジションに入るなど、筑波大は彼の良さを最大限に生かす工夫をしている印象です。松田選手はWTBやFBもこなすなど才能が豊かです。学生代表の主将をつとめるなどリーダーシップもあり、また大学選手権の決勝で後半の勝負所で2つトライを奪うなど大舞台に強い「持っている」選手です。2人とも慶應のライバルとしては非常に厄介ですが、これから先どんな選手に成長していくのか楽しみです。
―慶大のSOは宮川前主将(環卒)が卒業し誰が担うのでしょうか
慶應にベリック・バーンズは居ませんので(笑)。今いる戦力でどのような組み合わせが最大の力を発揮するかを柔軟な発想を持って考えていきます。絶対的なSOがいないことを逆手に考えて、バックス全員がSOマインドでプレーすることでカバーすることも大切です。いずれにせよ、宮川が抜けたことでバックスはポジションが一つ空くわけですので、それをチャンスと捉えて昨年出場できなかったメンバーが奮起することを期待しています。
―今重点的に取り組んでいることはありますか
フィジカル強化と基本技術の二点です。フィジカル強化ではウェイトトレーニングを継続しつつ、ラグビーで使える体作りを意識したメニューを新たに取り入れています。また、アタック・ディフェンスの両面で規律を見直し、細部にこだわった練習をしています。
―新主将の木原主将はどのような主将ですか
人間的に素晴らしい男で、人の気持ちがわかる男です。
―和田監督自身昨季との心境の違いはありますか
昨季は就任1年目ということで、正直手探りの状態でした。また、青山学院戦の敗戦や早慶戦での大敗は、ラグビーの怖さ、学生スポーツの怖さを改めて思い知らされました。春や夏の練習試合では分からない、秋・冬の真剣勝負を経験して始めて分かったことも数多く、それらの経験をいかして、昨年よりも練習の質・量ともに高め、より強いチーム作りをして行きます。
―春シーズンに選手に求めることはなんですか
去年から言い続けていることとして、まずは試合に出ようが出まいが部員としていかにしてチームに貢献するかを考え、実行すること。これは春シーズンだけでなく年間通じで求めて行きます。ラグビーの面では昨年のテーマであったフィジカルとファンダメンタルスキルの2本柱に加え、今年は「ディシジョンメイク」が3本目の柱。「ディシジョンメイク」とは、つまりは複数の選択肢から最良のプレー選択をして行こうという話です。さらにもっと分かりやすく言えば、もっと頭を使ってプレーしようという話です。そのために練習メニューも工夫し、より選手に判断を要求する練習を取り入れます。また毎日違うメニューを入れるなど選手の頭を活性化する工夫をしています。昨年は体の筋細胞を大きくしましたので、それに加えて今年は頭の脳細胞を刺激し脳の神経回路を強く太くするイメージです。
―今季の展望はいかかですか
昨年度以上に厳しいシーズンになると予想しています。昨年はチャレンジャー精神で挑めましたが、今季はどのチームも慶大には負けるわけにはいかないと挑んでくる。対抗戦の強豪チームは昨季の主力の大半は今季も残ります。リーグ戦、関西リーグにも強敵は多い。そういう意味で非常に危機感を抱いています。一方で、慶應にはまだまだ伸びる余地がある選手が多く、チームプレーも改善の余地が多くあり、昨年以上の結果を出せる可能性は十分あると信じています。監督として、このチームが持っているポテンシャルを秋・冬のシーズンに100%発揮させてあげたいという思いで取り組んでいます。
―最後に、Webをご覧の皆様にメッセージをお願いします
いつも応援いただきありがとうございます。昨季に関しては大学選手権ベスト4という目標は達成できましたが、大敗を喫した試合もあり、誰よりも我々が一番悔しい思いをしました。その悔しさをエネルギーに変え、今季は打倒帝京大、大学日本一、勿論、対抗戦で早稲田にリベンジすることも大きな目標とし、どの試合も慶應らしい気持ちが入ったゲームをお見せできるよう、学生と一緒になって毎日ハードワークして行きます。2014年度も応援宜しくお願い致します。
(取材 住田 孝介)
今回をもちまして、この度の蹴球部新年度特集は終了となります。お忙しい中取材に応じてくださった監督、選手の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます
慶應スポーツ新聞会蹴球班一同
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