【ラグビー】完敗するも見せた確かな成長/日本選手権1回戦 神戸製鋼戦

この試合唯一のトライを挙げたFL廣川

この試合唯一のトライを挙げたFL廣川

大学選手権ベスト4に入った慶大は2季連続で日本選手権に出場。相手は昨季と同じくトップリーグ3位の神戸製鋼となった。小雨の降る中始まった試合は、序盤から神戸製鋼がフィジカルの強さを発揮し得点を重ねる。慶大は低く刺さるタックルを武器に粘り強く守るが、得点は1トライ1ゴールにとどまり7-76の完敗。1回戦敗退となり今季の戦いを終えた。

 

第52回日本ラグビーフットボール選手権大会1回戦 vs神戸製鋼コベルコスティーラーズ

2015/2/8(日)11:45K.O.@名古屋市瑞穂公園ラグビー場

 

得点
慶大   神戸製鋼
前半 後半   前半 後半
1 0 T 4 8
1 0 G 4 4
0 0 PG 0 0
0 0 DG 0 0
7 0 小計 28 48
7 合計 76
 

得点者(慶大のみ)

T=廣川

G=青井

 

ポジション    
1.PR 青木周大(商4・慶應) →16堀切厚輝(環2・國學院久我山)
2.HO 神谷哲平(総4・桐蔭学園) →17末永晃二(商3・慶應)
3PR 大塚健太(環3・國學院久我山) →18出口桂(商3・明善)
4.LO 西出翼(経3・慶應NY)
5.LO 白子雄太郎(商4・慶應)
6.FL 廣川翔也(環2・東福岡)
7.FL 岩本龍人(政3・國學院久我山) →20 鈴木達哉(環2・茗溪学園)
8.No.8 森川翼(環4・桐蔭学園) →19徳永将(商3・慶應)
9.SH 宮澤尚人(法4・慶應) →21中村敬介(経3・慶應)
10.SO 石橋拓也(環4・小倉)
11.WTB 浦野龍基(政4・慶應志木) →22下川桂嗣(商4・修猷館)
12.CTB 川原健太朗(環4・小倉) →23金澤徹(商1・慶應)
13.CTB 田畑万併(環3・桐蔭学園)
14.WTB 吉迫雅俊(商2・慶應志木)
15.FB 青井郁也(商1・慶應)
 

CTB田畑のタックルがトライのきっかけをつくった

CTB田畑のタックルがトライのきっかけをつくった

2季連続で同じ顔合わせとなった日本選手権1回戦。昨季0-100の大敗を喫した慶大はこの一年間の成長を見せたいところだ。だが、試合は開始からトップリーグ3位の神戸製鋼がその強さを見せ、慶大は自陣でのプレーを強いられる。3分、スクラムからトライを許すと、10分には自陣でパスを回しているところをカットされトライを献上。14分にも追加点を許し、早くも0-21と突き放されてしまう。それでも、フィジカルの強さを生かして前進してくる相手に対し慶大は低いディフェンスで応戦。しばらくはスコアの動かない時間が続く。31分にスキを突かれトライを許すが、前半終了間際の39分、ついに待ち望んだ瞬間が訪れる。まずはディフェンスで相手のペナルティを誘い、敵陣深くでマイボールラインアウトを獲得。このラインアウトのサインプレーでHO神谷からPR青木、FL廣川と素早くつなぐと、廣川が見事に抜け出しそのままゴールラインを駆け抜けた。FB青井のゴールも成功し、7-28で前半終了。ついに奪った神戸製鋼からのトライに選手は大きな喜びを見せた。

 

1年時からAチームでプレーしてきた石橋、来季からはトップリーグでの活躍が期待される

1年時からAチームでプレーしてきた石橋、来季からはトップリーグでの活躍が期待される

前半終了間際に一矢報いた慶大だが、後半も厳しい戦いは続いた。3分にモールを押し込まれトライを決められると、その後も立て続けにトライを許し11分には7-45と点差を広げられてしまう。それでも慶大は副将青木らが鋭いタックルを決め、アタックでは途中出場のSH中村敬が独特のステップで敵陣に攻め込むなど奮闘を見せる。だがボールを持ってもコンタクトで勝る相手に奪われてしまうという展開が続き、次々と神戸製鋼にトライが生まれる。30分にはまたもモールトライを決められ7-71。大差がつくも、慶大は最後まで諦めず得点のチャンスをうかがう。すると終盤、WTB金澤が自陣からゲインし中村敬へとパス。中村は右サイドにキックパスを出すが、走り込んだWTB吉迫には惜しくも合わない。37分には神戸製鋼の選手がシンビンで1人少なくなり慶大は敵陣に入ってフェーズを重ねるが、ここもあと少しのところでトライならず。果敢に攻め続けたものの最後はパスが乱れたところを相手に拾われダメ押しのトライを決められてしまった。7-76となりノーサイド。ここで慶大の今季の戦いは幕を閉じた。

 

トップリーグとの差はやはり大きかった。それでも「昨年よりは圧倒的に差が縮まった」(SO石橋)と、チームは確かな成長を遂げていた。特に光ったのは一年間力を入れてきたディフェンス。フィジカルで圧倒してくる神戸製鋼に対し、全員で低く刺さり続け粘り強く戦った。春はなかなか勝利できないという苦しみも味わった今季の慶大。しかし、「苦しいことを沢山経験したからベスト4にも進めたし、日本選手権にも出られた」(青木)。つらい時期を乗り越える中でチームは結束を強め、成長し、昨季に続いて大学ベスト4の座をつかんだ。来季は「これを最低限の目標として、その上で日本一を目指してほしい」(SH宮澤)。さらなる飛躍が期待される来季。慶大はどのような戦いを見せてくれるのだろうか。悲願の日本一に向けて、慶大蹴球部は新たなスタートを切る。

 

写真は大学選手権準決勝敗退が決まった直後、「主将としてみんなに支えられた」と仲間に感謝した

写真は大学選手権準決勝敗退が決まった直後、「主将としてみんなに支えられた」と仲間に感謝した

【ケイスポ的MOM】チームをまとめた頼れる主将 木原健裕

1年間、主将としてチームを率いてきた木原健裕。この日は負傷が響き出場はならなかったが、ベンチからグラウンドで戦う選手たちに声をかけ続けた。「試合中かなり興奮していた」と、トライの場面では両手を突き上げ大きな喜びを見せた。常に熱いプレーと言葉で仲間を鼓舞しチームをまとめてきた木原主将。彼のその姿は来季以降の慶大を担う後輩たちにも大きな影響を与えたことだろう。全力でチームを引っ張ってきた頼れる主将がひとつにまとまった「最高のチーム」を作り上げた。

 

(記事 吉山祐未)

 

コメント

和田康二監督

(今日の試合について)大学では4チームしか出場することができない日本選手権に出場できたことを嬉しく思います。1年前に神戸製鋼さんに100-0で負けたことを思い出します。この一年間は特にディフェンスに力を入れてきました。ゲーム前に低く鋭いタックルで挑戦しようと確認しました。今日のゲームでも成果が出ている場面がありました。このチームは本当にファイトしてくれました。後輩達にも素晴らしいものを残してくれたことに感謝したいです。2季連続でベスト4となったがチームの成長をどう評価するか)この2年間、難しいことというよりはフィジカルの部分、基本的な部分の積み上げというのを意識してやってきました。今日の試合でもその成果が出たというところもありましたし、そういう意味では学生が良く頑張ってくれたなと思います。あとは大学の中でも帝京さんという存在もあってまだまだ強化していかなければいけない点が多々あると感じているのも事実なので、慶應全体としてそこを来年度以降にどうつなげていくかだと思います。

 

木原健裕主将

(今日の試合について)チームは練習を重ねるたびにひとつになっていきました。日本選手権に向けて本当に素晴らしい準備ができたと思います。自分としては出場できずに、もどかしい部分もありましたが、チームを信じて声をかけ続けました。最高のチームでした。今日はディフェンスで刺さって止めようと話していて、選手もそれをやり切ってくれたと思います。結果、76-7で去年を上回ることができました。後輩たちも感じたことがたくさんあると思うので、それを来年以降生かしてほしいと思っています。(出場はならなかったが主将から選手たちには何か話をしたか)練習を重ねるたびにチームがひとつになっていくのを感じて僕も一緒に戦いたいなという思いでいっぱいだったんですが、先ほども言いましたが今日は試合前に今までやってきたディフェンスの部分で見せようと話しました。僕も試合中かなり興奮していたんですけど声を出し続けて、みんなも最後までやり切ってくれました。

 

青木周大副将

(今日を振り返って)みんなそれぞれ目標を達成できたのですが、負けたので悔しいです。後半立て続けにトライを取られたところは慶應の弱さだと思っています。(神戸製鋼の感触は)僕自身、今年一年間、トップリーグに通用するような選手になりたいと思って練習してきました。去年は全く敵わないと思いましたが、今年はやりあえている部分もあって、チーム全体の成長を感じました。(今年はどのような一年だったか)春シーズンは勝てなくて、悔しいことが沢山あった一年でした。4年生は時間が経つのが早いと言うのですが、個人的にはすごく長い一年間でした。苦しいことを沢山経験したからベスト4にも進めたし、日本選手権にも出られたので、良かった一年間だったとも思います。(大学4年間を振り返ると)楽しいことは一瞬で、9割以上が苦しいことばかりでしたが、その一瞬嬉しいことのために4年間という長い時間をかけることに意味があると思っています。最高の4年間でした。(後輩に向けて)慶應は日本一になれるチームだしならなきゃいけないチームだと思っています。しかし、良い時と悪い時の波があって常に安定したパフォーマンスを見せられないところが課題で、僕たちもそれを突き詰めきれなかったので、そこを詰めていってほしいです。僕も残された時間で出来ることをやっていきたいと思います。

 

宮澤尚人副将

(今日の試合を振り返って)神戸製鋼はフィジカルがすごく強くてダイレクトプレーと言いますか、ボールをあまり下げずにフィジカルの強さを生かしてアタックしてくるというイメージがいろいろな試合を見てありました。実際やってみるとその通りで、後半は特に徐々に受けにまわってしまって失点してしまったと思います。(4年間の大学ラグビーを振り返って)下級生のころから試合に出場する機会をいただいていたんですけど、逆に3年生の時はなかなか試合に出られなくて悔しい思いをしていろいろな経験をしたんですけど、最後4年生で出ることができて良かったなと思える1年間にすることができて充実した4年間だったと思います。(後輩に向けて)僕たちが入部した時や1年生だった時は正月越えできなくて、こうして日本選手権に出場することはある意味夢の世界だったんですけど、後輩はもう2年連続で出ているのでこれをスタンダードというか最低限の目標として、その上で日本一を目指して強いチームを作っていってほしいなと思います。

 

神谷哲平

(今日の試合を振り返って)もうちょっとやれるかなと思っていたんですけど、コンタクトの力の差であったりスキルの差であったりやられちゃったなという印象ですね。僕はHOなのでセットプレーの安定が第一だと思っていて、その安定ができなかったことが反省点ですね。でも去年と違ってトライを取れたことは後輩のために残せたことになるんじゃないかなと思います。(4年間の大学ラグビーを振り返って)僕は高校の花園を目標にずっとラグビーをやってきたので大学はあんまり続ける気はなかったんですけど、続けてよかったなと思えましたね。嫌なこともいっぱいあったんですけど、最後に振り返ってみて自分が楽しかったと思えるように今まで努力してきてよかったなと思います。(後輩に向けて)ただ単純に楽しむことを追求すればいいということを伝えたいです。

 

廣川翔也

(今日を振り返って)ディフェンスは通用出来たところがあったと思います。自分たちのミスで最初取られてしまい、ペースが崩れてしまったので、そこは悔しいです。全体的に見ると出来たところもあるので来年度につながる試合だったと思います。(神戸製鋼の感触は)やっぱり強いですが、去年はディフェンスばっかりだったのに比べて、今年はアタックも少しできたと思います。(トライを決めたが)抜けることができて良かったです。嬉しかったです。(今年はどんな一年間だったか)去年の神戸製鋼戦で試合に出られるようになったのですが、春は怪我をして試合に出られず夏合宿から復帰しました。自分らしく何も考えずにやろうと思ったらこのチームに上手くはまって、4年生と沢山試合をできて良い時間を過ごせたと思っています。(今後に向けて)まずは来年度も試合に出続けられるように一から頑張ります。

 

森川翼

(試合を振り返って)楽しもうと思っていて、通用したところも少しあって自分としては最後にラグビーを楽しめたかなと思います。(今季を振り返って)木原組はすごくいい代だったなと思います。春は負けが続いて、でも最後の日野自動車戦で勝てて、夏も内容はあまりよくなかったんですけど最後の立命戦で勝てたので、一つ一つ結束を固められたというか。最後帝京には勝てなかったんですけどベスト4に入れて、今日も含めて最後まで熱くラグビーができました。試合に出ていない同期も含めてみんなで戦えたのかなと思います。(大学でのラグビー生活を終えて)僕は2年生から出させていただいてすごくいい経験をさせてもらえたなと思います。正直1月2日に帝京に負けた後にまだラグビーやりたいなという気持ちも自分の中にあったりして、そういう部分で本当に自分はラグビーが好きだったんだなと思いますね。社会人になったらもう第一戦でラグビーをすることはないので、この4年間で学んだことを生かしていきたいですし、また何か熱くなれるものをつくれたらなと思います。

 

石橋拓也

(今日を振り返って)引退試合を楽しく終われて良かったです。(神戸製鋼と戦った感触は)昨年よりは圧倒的に差が縮まったと思いました。一年やってきたことが証明できたと思います。(SOとして意識したことは)アタックは青井がしてくれるので、ディフェンスを僕からテンポつけていこうと思いました。ディフェンスは抜かれることがなかったですし、崩されてトライされるシーンもなかったので、自分の役割を果たせたと思います。(今年を振り返ると)マークが強くて厳しい一年でしたが、楽しくできたので後悔はないです。(4年間が終わったが)ポジション変更があったり、自分の転機になる4年間だったと思います。(後輩に向けて)実らない努力は努力じゃないと伝えたいです。(今後への意気込み)(NTTコミュニケーションズで)一年目から試合に出ることが目標です。しっかり頑張っていきます。

 

川原健太朗

(今日の試合を振り返って)神戸製鋼とはコンタクトレベルが全然違いました。何か一つ爪跡を残そうと思って臨んで、その結果相手はすごく強かったけど去年よりはいい試合になったので良かったかなと思います。(4年間の大学ラグビーを振り返って)今年はこの試合以外だと対抗戦も大学選手権も全試合フル出場できたので本当に充実していました。4年間ラグビー漬けの毎日だったんですが、何か一つのことにこうして取り組めたということはすごく良かったと思います。(後輩に向けて)ただがむしゃらにラグビーを頑張れというだけなので、勝利のことだけを考えて頑張ってほしいと思います。

 

下川桂嗣

(今日の試合を振り返って)去年も出場したんですけど、今年は前半は見て後半から出たら去年よりはやれていたと感じました。気持ちの部分でも、正直去年は(神戸製鋼が)強そうで嫌だなと思っていたんですけど今年は去年よりも何か一つはやろうという前向きな気持ちでやっている選手が多かったと思います。大差はつきましたけど、去年よりはいい試合ができたかなと思います。(4年間の大学ラグビーを振り返って)僕は浪人して入って高校時代にもラグビーの代表選手になっていたわけでもなくて一番下からのスタートだったと思います。そういう人も、周りに高校時代の代表選手もいる中で浪人だからと諦めることがないように同期が支えてくれましたし、コーチの方々も自分のような選手をサポートしてくれました。他の大学なら特にみんな肩書きもあるし慶大じゃなかったらだめだったと思いますし、慶應で良かった、この代で良かったと思います。(後輩に向けて)帝京大に勝つという目標を掲げながらできなかったということは情けなかったんですが、この悔しさを忘れないで毎日の練習を帝京大が相手だったらどうやるかとかを考えてやるということが帝京大に勝つ唯一の方法だと思います。きついと思うんですけど最後に笑えるように頑張ってほしいです。

 

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