須田芳正監督
ずっと守備のトレーニングをしてきて、「堅守速攻」の「堅守」を体現できた。
――結果面から昨季を振り返って
昨年の目標をインカレ出場に掲げていて、それを達成できたのでチームとしては非常に良いシーズンだったと思います。
――インカレで阪南大に敗れ、感じた課題は
チーム力がすべて劣っていたなと。ミスが続いて失点したのも含めて、すべて実力だなと感じました。一回戦で力尽きていたんじゃないかなと思います。技術的なものもそうですし、戦術的なところもそうでした。一番はメンタルが疲れていて、それらが原因でミスが生じてしまったと、今思えば、そのような感じがします。なので一年間をトータルで見れば、精一杯やったと言えると思います。
――昨季は、一昨季より失点数が大幅に減ったが
一昨季に残留争いに巻き込まれた一番の原因は、間違いなく守備の部分にありました。なのでそこの強化から昨季は入って、失点を半分以上に減らそうということを目標にやってきて、トレーニング面も攻撃に関しては、極端にいえばゼロ。ずっと守備のトレーニングに時間を費やしてきました。1対1の練習から入って、3対3をやって、それからディフェンスラインとボランチの6人で守ること。そして11人全員で守ること。とにかく失点を減らす努力をしてきたので、(リーグ戦の)22失点という数字に表れたんじゃないかなと思います。
――攻撃面は、武藤嘉紀(昨季卒、現FC東京・日本代表)選手が抜けた影響は大きかったと思いますか
去年のテーマは「堅守速攻」と言っていましたが、実質「堅守」だけでした。ここの部分のトレーニングを徹底的に積んできて、「速攻」の部分はやっていなかった。そういう意味では、武藤とか端山豪(総4・東京ヴェルディユース)がいなくなったことによる(攻撃面の)影響を気にしないで、割り切った戦い方をしてきました。なので得点数が減ったことより、失点数を減らせたことにポイントがあったと思います。
※端山はけがなどでチームを離れる時期もあった
――昨季の序盤戦は良いスタートを切れました
それは大きかったです。開幕戦は全22節のうちの一試合に過ぎないけれど、一昨季は10位、つまり下位で終わったことを考えると、勝ってスタートを切ることが特に大事だと思いました。だから初戦に勝負を懸けて、ここで勝利することに全員のベクトルを向けさせて、それで勝てたからスタートダッシュが切れたと思っています。間違いなく、昨季の重要なポイントの一つだったと思います。
――後期は開幕戦こそ勝利したものの、苦戦してしまいました
前期で勝利を重ねられたのは、しっかり守れていたから。そこでセットプレーで先制点を取って、自分たちのペースで試合を運べたと思います。後期は堅守“だけ”でした。例えば、13節の順大戦は88分まで守れていたけれど、セットプレーで均衡を破られて、その後も毎試合同じような形で失点して、自分たちはセットプレーで点を取れなかった。基本的な戦い方は変わらず、「堅守」。15節の明大戦で4失点はしたけれど、あとはそんなに失点することはなかったです。しっかりと守ることから始めたけど、先手を我々が取れなかった。だから勝ち点も重ねられなかったのだと思います。
――「堅守」というベースができたのは、メンバーをある程度固定したからでしょうか
固定させたからというより、11人全員に守備の意識を持たせたからだと思います。FWもまず守備から。一昨季までは比較的前線からボールを奪いに行こうとしていたのですが、逆にしっかりとブロックを作って、相手にスペースを与えないような守備を全員で共有できたからだと思います。
――総理大臣杯の出場権を逃したことが、チーム作りに影響することはありましたか
それはなかったのですが、もっと大きなところから見ると、やっぱり全国大会を経験することは非常に重要かなと思いました。予選で負けることで、チーム作りに影響することはまったくなかったですが、中期的、長期的に見ると、あのような場を踏むことは、究極の目標が関東リーグを制覇することだけではなくて「日本一になること」なので、大舞台での公式戦の経験を積むことは非常に大切かなと思いました。
――昨季に最も成長を感じた選手は
皆それぞれ成長したんじゃないかな。特に4年生になると、責任感が生まれて成長してくることもあるし、2年生が体力的にアップして成長してくることもあるし、全員が成長したと思いますね。
――インカレ直前に増田湧介主将(昨季卒)が離脱して、その影響は大きかったですか
それは大きかったと思います。キャプテンという精神的な支柱が離脱したので。ただその中でも、副キャプテン(並木凌介、保田隆介)や4年生が中心になって、チームを鼓舞し続けてくれました。もちろん離脱は痛かったけれども、最後まで崩れることなくできたと思います。
――昨季で一番印象に残っている試合は
まずは前に触れた開幕戦。それと、最後の早慶戦。リーグ戦10試合ぶり、そして早大に対しても久しぶりに勝った二つのゲームは本当に印象的で、感動的でした。
――インカレ出場権争いは、残留争いと比べてメンタル面の負担に違いはありましたか
違いはありました。残留争いをしているときの、あの危機感で、インカレ争いや最後の上位校との対決に臨めれば、もう少し上位にいけたんじゃないかなと思います。なのであのぐらいのメンタリティを保たないといけないことが分かりました。
今季は「速攻」の部分も。目標は「関東リーグ制覇」。
――今季はどのようなサッカーを目指していますか
基本的には昨季と変わらず堅守速攻をテーマに掲げてトレーニングをしています。
――チームの雰囲気に変化はありましたか
4年生がいなくなって、トップチームの半分が抜けました。なのでBチームからたくさん選手を昇格させましたが、シーズン当初の2月辺りはやっぱり「お客さん」。そこで、「我々はトップチームだ」と、このチームは、附属の小学校なども含めて「すべての屋台骨であるべきチームだ」という意識を持たせてきました。徐々に自覚が出てきて、トップチームのメンタリティにやっとなってきたところかなと思います。
――オフ期間に重点的に取り組んだのは、下のチームから上がってきた選手をトップチームの水に慣れさせることでしたか
まずはそういうところ。もちろん戦術的な部分として、守備の意識を持たせること。それと同時に、やっと3月に入ってから今度は「速攻」の部分に取り組みはじめました。目標の話になりますが、目標は「関東リーグ制覇」です。そのためには引き分けだけではダメだし、勝ち点3を取らないといけない。そうなると、得点を取る部分もトレーニングを積まないといけなくなります。今、チーム作りはそのような段階です。
――「速攻」という”新たな”要素も踏まえて、今季特に期待している選手は誰ですか
これも全員ですね。ボールを奪った瞬間、チーム全員でゴールに向かわないといけない。一人一人に、ポジショニングや動きの質にこだわってもらい、前への推進力、押し上げを全員で体現しないといけない。そのような意識を植え付けている最中です。
――全日本大学選抜に入った端山選手の状態は
昨季、彼にとっては最悪の年だったと思います。けがもしたり、本調子に戻らないままシーズンが終わってしまった感じでした。プレー自体が安定しなくて、非常に苦労したと思います。ただ端山も4年生になって、責任感や自覚が生まれてきたので、その部分がだいぶ変わってきたと思いますね。それが自然とプレーに出ていて、2月中はここでほとんど練習していなかったけれども、選抜などの練習で彼は非常に前向きにやって、良いものをつかんできました。彼がここでちゃんと練習していたのは、たった一週間ぐらい。その中で見た印象は、非常に充実しています。成長しているな、という印象です。(DENSO CUP SOCCER第12回大学)日韓(定期)戦にも行って、今季はユニバーシアードもあるので、まずはそのメンバーにも選ばれてかつレギュラーを獲得してほしいと思っています。昨季の経験は、彼にとって間違いなくプラスになっているはずですね。
――久保飛翔(環4・済美高)主将に期待することは
トップチームだけではなくて、120人ほどいる部員全員が一つのベクトルを向くようにしてもらいたい。そこを一番期待しています。
――新1年生について
珍しく、附属校から来る人数がすごく多いです。それはすごく良いことですね。2月当初から30人を越していた状態だったので。一人一人が真剣にサッカーに取り組むために、何の役割があるか必死に考える癖をつけてほしいと思います。人数が多いことをプラスにしたい。数も「力」なので。逆にマイナス面は、ぬるま湯になってしまうところ。(人数が)多ければ「俺は適当にやっていいんだ」というように、そのような人間が増えれば、チームに悪循環をもたらしてしまいます。とにかくチームのために、一生懸命に取り組んでほしいと思っています。
――今季への意気込み
目標は関東リーグ制覇なので、そのためには一戦一戦まずは精一杯戦って、勝ち点3を取ること。一戦一戦を大切に、その積み重ねが目標達成につながると思うので、まずは開幕戦の法政大戦で勝つために良い準備をしていきたいと思います。
(取材 木下彰)
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