「プロになりたいという、その気持ちだけはずっと曲げずにやってきた。」
――今季主将として1番意識していたことは
「あまり自分は自己主張が多いほうではないので、自分らしくというか色々な人の話を聞いたりして、それを自分の中でうまくまとめているのでそういうところを意識してやっています。」
――今季開幕からケガでチームを離れていた時、どのようにチームを鼓舞していましたか
「普段できない雑用などを積極的にやったり、外から見ていて感じる部分というのがとても多くあって、中でやっているときとは違う見え方もできますし、そういうところは気づいたらすぐに皆に声をかけるようにしていました。」
――前期リーグ早大戦で復帰されました。その時の心境は
「復帰戦ということで、すごい気合も入っていましたけど、それ以上に早慶戦という、それも自分が最後の学年の1試合目の早慶戦ということで、いつも以上に気合は入っていました。」
――前期リーグの後半から特に先制点を取られる試合が目立ちましたが、課題や改善点はどのような部分にありましたか
「今年のチームは攻撃に魅力を感じます。前で点を取れる選手や仕掛けられる選手はチャンスを作る選手がすごくいる中で、どちらかというと去年と比べて攻撃を重視している部分があるのかなというのがチーム全体で見られるので、その意識をもう少し守備から、前半だけでもまずは守備からという意識をもっとみんなで徹底させてやっていけば大丈夫だと思います。」
――開幕前にファジアーノ岡山へプロ内定が決まりました。率直な感想は
「素直に嬉しかった部分でもありますし、練習参加に行ったことで今の自分ではまだまだプロでは通用しないということもよく分かって、自分に何が足りないのかということをすごく明確にできたことが1番のよかった部分だと思いました。」
――プロではどういうことが期待され、どういう部分を発揮していきたいか
「ヘディングの強さや対人の強さというのはすごく評価された部分です。あとは、人間性の部分もすごく評価されて、どんなトレーニングも自分なりにしっかり真面目に考えながら取り組んでいるという部分でも、プレーだけでなくそういう性格的な面でも、チームに少しでもいい影響を与えられたらいいなと思います。
――人間性の部分は、大学サッカーを通じて築かれたものでもありますか
「そうですね。大学の部にいるといろいろ考えさせられることがすごくあって、それは大学に入学するまでなかったことなので、この大学4年間で培われた部分だと思います。」
――プロを意識したのはいつ頃でしたか
「サッカーを始めた小学3年生の時から、ずっとプロになりたいという、その気持ちだけはずっと曲げずにやってきました。」
――その中で、あきらめかけたような苦しい時期はありましたか
「中高大どのカテゴリーでもケガが多くて、その度に同期のみんなが活躍しているときに、自分なにやっているんだろうというような挫折はあったのですが、ケガをした時期に筋トレや体幹など下積みをしっかりやるというのは、いい経験だったと思います。」
「試合に出ていることの責任が増した」大学の環境
――高校時代に印象に残っていることは
「高校3年の時のインターハイの県大会の2回戦で、松山工業高と戦ったときに、新人戦は全試合9-0や8-0で勝っていた中で、油断をしていたというか、どうせいけるでしょというような気持ちがチーム全体にあって、その中で何もできずに負けて叩きのめされたというのがすごくつらかったですけど、そこでチームが一つにまとまって選手権に向けて頑張ろうと思えたので、その試合はつらかったですが、いい思い出にはなりました。」
――話をもっと前にさかのぼります。サッカーを始めたきっかけは
「あまりサッカーをやりたいとは思っていなくて、ずっと剣道をやっていたので、たまたま親の知人がサッカースクールのコーチをしていて、連れていかれたというのが始まりだった気がします(笑)」
――そのまま自然とのめり込んでいったんですね
「そうですね。サッカーをやっているうちに好きになったし、その中で最後までやり切りたいというか、中途半端で終わりたくないなというのがあったので、ここまで来ました。」
――目標にしている選手はいますか
「難しいな…。練習参加に行ってからは、岩政大樹(現ファジアーノ岡山)選手は目標にしています。プレーだけでなく、いろいろお話を聞かせてもらった中で、考え方というか、一つのことに対してすごい深いことまで考えて、なおかついろいろな基礎知識を吸収した上で自分なりの答えを出すというところが惹かれた部分でもあります。」
――慶應に入ろうと思った理由は
「高校も文武両道という目標を掲げていて、なおかつ小さい頃から親にサッカーだけやらずに勉強もしっかりしなさいと言われていて、そういう習慣がずっと自分の中でありました。慶應も文武両道というのを掲げていて、それを継続してやって両方やっていきたいなと思いました。さらに、プロを目指すうえで慶應の環境が充実していて、自分に1番合っているかなと思ったので慶應を選びました。
――慶應に入ってから、チームの印象はいかがでしたか
「一人ひとりが、自分の役割は何だろうということを模索していて、ひたすら自分の役割を全うしようと努力し続けるというか、1人ひとりが高い目標を持って普段の練習を取り組んでいる中で、カテゴリーが違っても切磋琢磨し合える環境があると思います。」
――高校と大学のサッカーの一番の違いは
「僕がプレーをしていて思うのは、試合に出ていることの責任が増したということですね。高校時代は、試合で全く緊張しなかったのですが、大学に入ってからは朝試合前にご飯が食べられなかったり、緊張しやすいのかもしれないですけど、とても緊張するようになって、責任が増したんだなと思います。」
――大学入学後、試合に出られなかった期間の気持ちは
「同期が活躍している中で、自分が出られないというのは悔しい気持ちがあったのと、でもチームの代表として戦ってくれているので試合の時は割り切ってしっかりチームのために応援するということは心がけてやっていました。試合に出ないからこそ、あまりコンディションを気にせずがむしゃらになんでもトレーニングできたというところで、今の自分があるのかなと思います。
――昨季の前期、並木選手とのポジション争いの時を振り返って
「ディフェンスはあまりスタメンを変えないので、正直けっこう割り切っていました。チームが大敗したりとか、並木選手か望月選手がけがをしないと試合には出られないという考えが自分の中にあって、そうした割り切りができていたので、練習中も自分にできないことを工夫してやってみたり、いろいろな可能性を見出してそれに向かって努力してみたりとか、そういう部分がしっかりできたので、悔しかったですけどそういう期間で成長もできたと思います。」
――昨季はインカレ出場などチームとして成果が見られたシーズンでもありました。振り返っていかがですか
「1,2年の時と比べて3年のシーズンを通して、ゴール前でしっかり体を張って守れるようになったと思います。最後の最後で1歩が相手より先に出せるようになったという部分で、苦しい時にどれだけ頑張れるかというところもすごく身についたのかなと思います。」
――最上級生、主将、プロ内定など、今季入って様々な面で変化があったと思いますが、今季ここまで振り返ってみていかがですか
「そんなに4年になったからといって変化があるのかなと思っていたのですが、シーズン始まってトレーニングしていく中で、今までも自分が引っ張ていくんだという気持ちで3年の時もプレーをしていたんですけど、それとはまた違った感覚で、全体をうまく見渡せるようになりました。あまり自分のことを考えることがなくなって、どちらかというと自分のことを考えるよりも先に全体のことを考えることが癖になっています。」
“勝利”というかたちで恩返しをしたい
――早慶戦についてお尋ねします。ここ3年間定期戦では3敗していますが、どう感じていますか
「年々定期戦で自分たちのサッカーができ始めていると思います。1,2年の時は全く歯が立たないという状況でしたが、去年は十分に勝つチャンスがあったと思いますし、前期のリーグ戦を振り返った時も確かに前半は悪かったですけど、後半は自分たちのゲームができていましたし、そういう意味ではそんなに悪いイメージはなくて、逆にいいイメージで早慶戦に臨めるのかなという感触はあります。」
――今年の早大の選手で意識する相手はいますか
「相手のキャプテンの金澤拓真(スポ科・4年)選手ですね。同じポジションというのもありますし、体格とかは違いますけどちょっと自分と似ている部分もあって、しっかり体を張って守ったり声を出してチームを鼓舞したり、そういう面では自分と似ているなと思うので、そこは負けたくないです。」
――久保選手自身、早慶戦に懸ける想いは
「チームのためという思いもあるのですが、自分が今主将になってプロに向けてこういう道を歩めたのも、1番は同期の支えがあったからだと思いますし、自分の時間を犠牲にしてチームのために働こうとしてくれている学生スタッフの皆だったり、自分を支えてくれた人たちがいっぱいいる中で、自分のためというよりは、その人たちに勝利というかたちで恩返しをしたいという気持ちがしっかりとあって、そういう意味では絶対に負けられないと思います。」
――注目してほしいプレーは
「ヘディングの強さや対人の強さというのは自分の持ち味なので、そこは絶対に負けたくないので注目していただければいいなと思います。」
――最後に、早慶戦への意気込みをお願いします
「勝利という形でたくさんの方に恩返しをしたいなと思います。」
(取材 池田麻里子)
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