ホッケー界のパイオニアとして君臨してきた慶應義塾體育會ホッケー部。今季の試合も残り1試合となった。第89回男子ホッケー・第23回女子ホッケー早慶定期戦が11月29日日吉ホッケー場にて開催される。それに先立ち、今回は第110代男子ホッケー部主将・谷直剛(政4)主将にホッケーに対する思い、そして早慶戦への意気込みを語ってもらった
※このインタビューは11月7日に行われたものです。
―秋季リーグは、もちろん優勝を目指したシーズンでしたが、初戦の早大戦で0-2と出鼻をくじかれ、最終的には上位進出も逃してしまうシーズンでした
リーグ戦はやはり大学ホッケーにとって軸の大会ですし、僕の代で春秋連続下位になってしまったのは悔しかったです。山学大は今年のインカレ王者ですし、そこ相手に通用する部分もあったので、もう少し踏ん張れたらなと思いました。結果はもう取り返せないので、秋季リーグの初戦で負けた早大には、定期戦でリベンジのチャンスがあるので、絶対にリベンジしたいです
―直近の10月末に行われたインカレでも初戦敗退(vs聖泉大学0-1)という結果になってしまいました
負けた瞬間は悔しいとか涙が出るとかではなくて、虚無感でいっぱいでした。自分たちでやりたかったホッケーは何なのかということを考えた時に、こんなもんだったのかなって。やりきれなかったという、ふがいなさが大きく残りましたね。
―「自分たちの目指すホッケー」とはどのようなものを目指していましたか
慶大のホッケー部は大体みんな、付属校の慶應高から続けていて、いわゆる強豪校と呼ばれるところには技術では遠く及ばないので、僕のチームが目指したホッケーというのは「リスクを分散するホッケー」というものでした。1点を取ることより、1失点をすることの方がダメージが大きいと考えていたので、そこに重点を置いていましたね。特に春季リーグは敵との打ち合いとなる試合が多く、大量得点大量失点という取り合いとなったところで、最終的に僅差で負けてしまうということが多かったので、秋季リーグはリスクを管理するということをやりたかったです。しかし、結果が出なかったのは、失点をしたくないという意識が強くつきすぎてしまって、積極さが欠如してしまったかなと感じていますね。
―では練習でも守備面での練習が多かったのでしょうか
そうですね。失点しないための練習に時間を多く割きました。
―今年のチームは1・2年生が多い若いチームでしたが、主将として率いることは大変でしたか
今年の1年生はいい意味で小生意気というか、活きの良いやつが多かったですね(笑)でも、選手に対してどのように向き合うかって考えた時に、今年の1年生がすごくいいなと感じるのは、自分の意見をしっかり持っている選手が多いということです。もちろん意見が青臭いというか、まだまだ未熟だなと思うこともありますけど、しっかり意思をもってホッケーができるということは、自分がフィールドに出た時にとても堂々したとプレーができるということだと思うので、それが今年の1年生ができているのは立派だなと感じています。ですから後輩たちの管理という面では、「ダメ」と言うことよりも、意見に対して尊重しながら僕の意見を伝えるということをしていました。
―学年が3つも違いますが、谷選手に1年生は意見をぶつけてくるんですね
めちゃめちゃ言われますね(笑)例えば今季DFのスタメンに定着した金田翼(法1)とかは、この前彼があるミスプレーをしたときに、「お前なんでそんなプレーするの?」って聞いたら、「谷さんだってこういうことするじゃないですか!」って逆に言われてしまって(笑)僕としては自分が同じミスをしているつもりはなかったんですけど、後でビデオを見返して見たら確かにやっていたんですね。そういう後輩たちの助言から、客観的に改めて自分のプレーを見つめなおすことができて、僕としてもよかった出来事でしたね。
―そのエピソードに表れているように、確かに威勢のいい後輩たちのように思います
本当に頼もしい奴らです。僕との代ではあまりいい成績は残せませんでしたけど、将来的に彼らがもっとホッケーが上手くなって、もっとチームの中心になって、もっとチームのことを考えられるようになったら、かなりこのチームは強くなるなと思いますね。逆に言えばいい後輩たちに恵まれたのに今年いい成績を残せなかったので、残り1試合早慶戦だけが残されているので、しっかり勝ちを一緒に味わいたいですし、味合わせてあげたいという気持ちでいっぱいですね。
―次は4年間一緒に戦った同期、また高校時代を含めると三木雅史選手(経4)は7年間一緒ですが、同期の存在というのはどのようなものですか
おっしゃる通り三木に関しては7年間一緒にやってきて、もう思い入れがいっぱいですね。一緒にインターハイ行きたいと思っていたら、本当にその思いだけでインターハイに行けたし、インターハイでも強豪相手(岩手・沼宮内高)に最後競ることができたのは貴重な経験でした。まぁ三木がPS戦で外して負けたんですけどね(笑)でもあの悔しさがあったからこそ三木は大学でもホッケーを続けてくれたし、一緒にやってきた最後の試合になるので勝ちたいなと思います。他の同期も、本名(智一・経4)や遠藤(錬・経4)も志木高からきて、最初は大変の時期もありましたけど今では一緒の方向を見て頑張っていますし、大学からホッケーを始めた水野(知紀・経4)も中学校の時同じサッカー部で一緒にプレーしていた仲ですし、みんないい奴らなので全員で勝ちたいですね。
―水野選手は大学からホッケーを始めて大変だったと思います
すごいうれしかったのは、チームが1度揉めて考え直して大きな決断をしたときに、水野が「谷が作ったチームは、こういう大きな決断をしたとしても簡単に壊れたりするようなチームじゃない」って言ってくれて、あんまりそういう話をすることが今までなかったから、うれしかったですし、頑張ろうと思いました。大学からホッケーを始めて大変なことも多かったと思うけど、最近は試合にも出ていますし、せっかくだから最後に俺がアシストして水野が決めてくれればうれしいなって思いますね。
―先ほどの話にもあったように慶大ホッケー部は一貫校からの選手が多いです。最近は高校生の部員も増えていますが、一貫校についてはどう思いますか
本当に部員が増えましたよね。僕らの同期なんて5・6人しかいなかったのに、今じゃ1代20人ずつが当たり前になっていてすごいなと思います。慶大はすごいグラウンド環境に恵まれていると思いますし、ホッケーを始める上で不自由ない環境だから、ぜひ高校生が上手くなってくれればそれは慶大のホッケー部が強くなることにつながると思いますし、高校生にはのびのび楽しみながら、一生懸命ホッケーをやってくれればなと思いますね
―他大学は推薦制度を使って強豪校から選手をピックアップするスタンスが主流ですから、かなり特徴的ですよね
もちろん強豪校から強い選手が来てくれるに越したことはないですし、ほしいですけれど、スポーツ推薦がすべてではないと思いますし、慶應高校から一生懸命練習して、大学でも成長して、強豪校出身の奴らに勝つという喜びはこの上ないですよ。今年の春季も明大に勝って(4/18関東学生リーグ春季 2-0)、その明大はインカレで準優勝ですから、今思えばすごいところに勝ったんだなと。そういう喜びはこの大学じゃないと味わえないと思いますね。
―谷選手自身、ホッケーを始めたきっかけは何ですか
僕は北京オリンピック(2008年)のホッケー競技をテレビ中継していて、それを見て面白そうだなと感じたところからです。元々中学校の時にサッカーをやっていて、高校入学後サッカー部のグラウンドを見に行ったら、隣でホッケーをやっていて、体験しました。とても楽しかったことに加えて、当時の先輩に「めっちゃ緩いし、楽しくできる部活だからぜひおいでよ!」と言われて、入部を決断しました。でも緩いんだったらやってみようかなと思って入ったら、全然そんなことなくて(笑)監督もすごく厳しくて、「死ぬ気で走れ!死なないから!」って言われた時は、こんなことあるのかと(笑)
―実際スティックをもって、プレーして、ホッケーのプレーに対する第一印象はどうでしたか
試合を見ていると結構簡単にボールがつながっていたので、面白いなと思うんですけど、実際やってみると最初は難しかったですね。ボールを止めることすらままならなかったので、それを思うと今の自分すごくうまくなったなって成長を感じられますね(笑)隣で高校1年生とかが練習を見ていると当時が懐かしくなります。
―ホッケーの人気面はまだまだ上がっていない現状ですが、どのようにして上げていきたいですか
ホッケーの人気はまだまだ上がっていなくて、友達と話しても「アイスホッケーやっているんだ」って言われてしまうのが現状です。先日のラグビー日本代表の例を見てもそうですが、結果が付いてくるのが第一条件なのかなと思います。それから僕が今一番思っていることとして、これから東京オリンピックがある中で、日本でホッケーの世界大会が開かれることはすごいことだと思うので、しっかり育成して日本でホッケー競技が輝いてほしいし、日本の皆さんに浸透してほしいなと思いますし、僕も卒業後は社会人としてそういう広報に何かしらの形で関われたらなと思っています。実際競技をやっていてすごく楽しいし、海外では人気のあるスポーツだから絶対に人を魅了する力があるスポーツだと思うんですけどね。
―やっていて楽しかったというお話がありましたが、大学4年間でホッケーを続けてきて一番印象に残っているシーンは何ですか
大学では2年前に早慶戦で勝ったことはすごく印象に残っていますね。勝った瞬間ももちろんですけれど、点を取った時も凄く鮮明に覚えています。あと、試合後に観客席の方々がグラウンドに降りてきて、全員で肩を組んで「若き血」を歌ったあのシーンは一生忘れないと思います。
―谷選手自身もゴールを決められました。あのゴール、とてもカッコよかったです(笑)
ありがとうございます(笑)個人的にもベストゴールに近いですねあれは。
―今年度も29日に早慶戦が開催されますが、早大に対する印象はどうですか
早大は日本代表の選手もいますし、純粋に強いチームだと思いますね。
―警戒する選手はいますか
やっぱり僕の同期のDF鵜飼慎之介(スポ4)と、FW宮崎俊哉(スポ3)の攻守の要の2人になると思います。この2人をマークすることがキーになるかなと思います
―逆に慶大のキーマンとなる選手は誰になると思いますか
本名になると思います。どうしても攻められるシーンが多くなると思うので、彼がどれだけ守れるかがキーになると思います。周りのサポートももちろん大事になりますね。
―やはり早慶戦は特別な舞台ですか
最近頭の中は早慶戦のことでいっぱいで、どうやって勝つかということしか考えてないですね。早慶戦は慶應義塾にいたら特別ですからね。皆さんが思っている以上にかける思いは強いです。ほかの体育会も見ていると、早慶戦は特別視しているし、見ている側もやっぱり早大に負けたら悔しいですからね。
―満員のスタンドの中でホッケーをすることとなると思いますが、やはり観客が多いと燃えますか
なかなかホッケーというスポーツで満員になることが少ないのですが、早慶戦の名前を借りている以上、恥じない試合をしなればならないと思っています。応援してもらうということはやっぱり力になるし、その期待に応えたいですね。
―早慶戦への意気込みを教えてください
高校生活と大学生活のほとんどをホッケーにかけてやってきたなかで、引退試合になります。自分のホッケーのすべてを出し切りたいですし、もちろん主将として最高のチームを見せたいと思っています。個人としてももう最後なので走れなくなるまで走り切って、頑張りたいなと思います。悔いの残らないように、その覚悟を持って試合に臨みます。
―最後にこのページを見てくださっている皆さんに一言お願いします
当日はルールブックも配ろうと思いますし、面白いスポーツですし、観客席も盛り上がると思います。観戦料も無料ですし、ぜひグラウンドにお越しください!必ず見に来てよかったと思える試合をしますし、魂込めたプレーをします!
―お忙しい中ありがとうございました
(取材:荒川智史)
男子第89回・女子第23回早慶ホッケー定期戦
2015年11月29日(日)
9:00 OG戦(20分ハーフ)
10:00 OB戦(20分ハーフ)
11:15 開会式
12:00 女子戦
13:30 男子戦
会場:慶應義塾大学日吉ホッケー場
観戦料:無料