【テニス】新体制始動企画『奪還』/♯1坂井利彰監督

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DSC_5297庭球部新体制企画第1弾は、坂井利彰監督だ。昨季で慶大庭球部の監督として10年という節目を迎えた坂井監督。監督就任当時、関東2部であった慶大を近年ではインカレ優勝者を輩出するなど、10年で強豪校の一角へと変貌させた。また、慶應チャレンジャーの創設など、日本テニスの発展にも貢献を忘れない。今回は、11年目のシーズンを迎える坂井監督に、昨季の歓喜「女子の早慶戦勝利」や今後の慶大庭球部のビジョンを伺った。

 「昨季は早稲田を倒したことが自信になったシーズンだった」

――女子がついに早大を倒した昨季を振り返っていかがですか

昨季を振り返ったときに一番大きかったことは女子が早稲田に勝ったことですね。やっぱり今まで勝てそうで勝てない「早稲田コンプレックス」というのがあって、それを女子が一回破ったということです。男子も女子と一緒に練習してきた上でなので、男子にとっても大きな自信にもなりました。一方で、王座であと一歩ということに関しては、まず一歩一歩ステップアップしてきた結果なので、なによりの早稲田を倒したことが自信になったシーズンだったなと思います。

――今季はどのようなチームにしていきたいですか

本当に自分たちのすべてを発揮してもらいたいので、「勢いのあるチーム」にしていってほしいですね。下級生にも気持ちの強い選手がいますし、エースの上杉もいますし、そういった意味では男子については、エネルギーのあるチームですし、女子については、安形、村瀬が早稲田との試合でもポイントゲッターとして活躍してくれていて、押野と江代もそうで、昨季に早稲田からポイントを挙げた選手たちがいるので、勝負強いチームになるんじゃないかなと思います。

――メンバーに限らず、部員全員に求めていくことはなんですか

我々は自主性を求めていて、自分たちでテニスを作るし、自分たちで部の運営もするし、自分たちで何をするのか。慶應というチームが出来上がってきているので、あとは日本一になりたいんだという気持ちが強いチームにしてほしいです。

――主将、主務の幹部4人に加えて求めることはありますか

最高学年の背中が、リーダーシップがチームのカラーになるので、そういった意味で背中で引っ張っていってほしいです。男子の井上については塾高出身で慶應のテニスがわかっている選手ですし、女子の安形はポイントゲッターとしてチームを引っ張ってきた選手なので、それぞれに良い特徴があるので、それを出していってほしいなと思います。

「慶應チャレンジャーが慶大庭球部の勢いにつながる」

――慶應チャレンジャーを運営する意義について教えてください

世界のトップ100位の選手が間近にいて、直接のそんな選手に質問ができて、試合中の心境や、日頃の練習に臨む気持ちなどを聞くことができましたし、彼らからの大会の評価も高いものをもらって自信もつきましたし、チームにとって大きな勢いになっています。大会運営というのは大変ですけど、毎年得るものは大きいですね。

――インカレインドアの総括をお願いします

もちろん上杉が出場できていたり、優勝者を出すことができたりしていればよかったんですけど、そのときそのときのベストを尽くしてくれているので、選手たちになんの不満もありません。押野がベスト8に入ったことなど収穫もありましたし、やっぱり一歩一歩着実に成長していくということは確認できているので、今のチームの方向性については自陣を持っています。

――同大会では早慶に代わって他の大学が上位進出者の多くを占めていたことについて、どう感じましたか

明治、法政、園田、関大とか、元々層が厚い学校で、それはわかっていて、我々はそこで勝負しても勝てないのはわかっているので、いかに少ない戦力で団体戦に勝ち、個人戦で勝つということが目指していることなので、層が厚ければそれに越したことはないんですけど、それを求めても仕方ないので、自分たちのやり方でやっていくしかないと思います。

「地域に愛されるチームへ、

そして日本のテニス界に貢献できる存在に――」

――慶大の監督になって10年という節目を終えましたが、その点についてどうですか

本当に部員が頑張ってくれていること、コーチングスタッフなど環境が整ったこと、OB会などのサポート、慶應庭球部に関わってくれている人すべての思いが集結してきているからこそ結果が出てきているわけで、自分は慶應庭球部に関わっている人の思いをいかに監督として現場に集中させるか、ということが自分の仕事であると感じています。もちろん現場で指導することもそうですし、全体のマネージメントをすることも自分の仕事であると見えてきた10年であると思っています。最初は、自分がプロで経験してきたことを教え込もうということが出発点であったんですけど、だんだん選手の持っているもの引き出すか、慶應庭球部として大切なものを全体に浸透させていくか、そういったことが年を重ねるごとにその両面が自分に身についてきたというのが、この10年という時間であったと感じています。

――慶應庭球部という組織の魅力を教えてください

まず、文武両道ということですね。勉強と、テニスというものを深く追及することを両立することが第一ですし、大学生なので自分で考えて自主的にやっていくこと、やればやるだけ強くなれる組織だと思います。クルム伊達選手、添田選手や伊藤選手などの日本のトップ選手が練習に来てくれたり、慶應チャレンジャーがあったりと世界のテニスが蝮谷に凝縮されています。個人競技なんだけど、チームワークが養えるという魅力が庭球部にあると思います。

――近年力を入れている一貫校の指導について教えてください

男子の主将主務どちらも同じ蝮谷で練習をやっている塾高出身ですけど、どうやってリーダーシップを持ってもらうか、各部門の中で大事な部分を担ってもらうかを考えてやっています。今、内部進学者の割合が部員の半分なので、いい融合をしてきているんじゃないかなと思います。

――近年結果も出てきたことで慶應大学という選択肢が大きくなってきていると思います

慶應の庭球部でテニスをしたいと思ってくれる人が多くなってきているのは自分もうれしいですし、本当に10年前は関東の2部リーグでやっていて、慶應の庭球部でやりたいと思ってくれる人の数は少なくて、徐々にその数が増えてきて、受験なので100%という枠がないのが厳しいところですけど、そういったなかで受験してくれてチームの中心として頑張ってくれていて本当にうれしい限りです。

――監督自身の目標を教えてください

監督になったからには、男女共に王座で優勝したいという思いが強くあります。でも、1番の目標というのは、毎年卒業していった部員が社会で活躍してくれること、そのための力になることですね。監督としてテニスを通して学生にきっかけを与えることが仕事だと思っているので、秘めているのもを引き出してそれを高いレベルに持っていくことができればと思います。王座を取るのはもちろんですが、その先が大事であると思っています。

――最後に慶應庭球部のビジョンを教えてください

慶應庭球部の中でまとまりができているので、次は慶應チャレンジャーでできたように「日本のテニス界に貢献する」ことをやっていきたいですし、「地域に愛されるチーム」でありたいです。日本テニスに必要な人材や価値を提供できる組織でありたいです。徐々にそこに前進しているところであり、慶應チャレンジャーがそのきっかけであると思いますし、そこを通して車いすテニスの普及活動などをできていて、それは2020年のパラリンピックに繋がっていたり、錦織以外の若手選手は慶應チャレンジャーに出場していて、オリンピックの支援にもつながっています。何よりオリンピックについては、1920年のアントワープオリンピックですべての競技を通じて日本人として初のメダルをとったのが、慶應庭球部出身の選手であったということは、我々にとっての誇りですし、もっとそれを知ってもらいたいですし、部員もそこに続きたいという気概を持っていってほしいです。

(企画・取材:太田悠貴)

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