【フェンシング】世界選手権銅メダリストに直撃!-三宅選手独占インタビュー

熱心に取材に応える

 男子団体、史上初のメダルを獲得したフェンシング日本代表。その団体メンバーの一人として慶大の三宅諒選手(文2)も試合に出場、銅メダル獲得に貢献した。今回は、押しも押されもせぬ日本フェンシング界の大エース・太田雄貴選手(森永製菓)を脅かす存在として最近、頭角を現している三宅選手に独占取材を敢行した。

銅メダル獲得の瞬間

―世界選手権に出場して、団体の部で銅メダルを獲得したが感想は

 とにかくうれしい。僕はスタメンではなくリザーブで試合には出なかったが、選手に一番近いところで応援するのが僕の仕事だったが、最後に太田さんが一本取った時はうれしかった。フェンシングは個人競技なので、応援することはあんまり好きではなかったが、世界選手権というフェンシングで一番大きな試合となると、自然と一本取った時に「やった」という気持ちがわいてきた。

―試合に出る機会は少なかったと思うが、太田雄貴選手や千田健太選手(ネクサス)のプレーを見て感じたことは

 僕はシーズンを通して海外に転戦するのは1年目。だが、淡路(=卓・日大)さん、太田さん、千田さんは何度もやっていたので、試合のときの落ち着いた雰囲気や、「自分のプレーをする」という姿勢はすごく勉強になった。

―試合に出られなかったことに対する悔しさは

 試合に出られなかった悔しさはそこまでなかった。どちらかというと「今回勉強させてもらおう」という気持ちで臨んでいたし、実際結果からみても順当だったので、全然問題なかった。ただ、今回の経験を生かして、来年こそは自分がメンバーとして活躍したいという気持ちになっている。

―団体戦は個人戦とは雰囲気は違いは

 1人でなく4人で戦うものなので、根本的に数が違うし、気持ちの面でもどこで自分のピークを持ってくるかとか、どうやって試合の流れを作るということが大事になってくるので、どんなに負けてても自分がへこんでたり落ちてるプレーをすると、周りに移ってしまうので、自分から点数を取りに行って、周りのテンションも上げてくという戦い方になってくる。技術の問題じゃなくて、気持ちが大事になってくるというのが団体戦だと思う。

悔しさの残った個人戦

―個人戦の結果については

 まずは6人から7人の予選プールにいれられて5本勝負で、順位をつけていくが、海外のグランプリは1位から16位までは予選プールをやらなくてよくて、決勝トーナメントから参加できる。ベスト1から16までを除いた17番目から決勝トーナメントでどこに入るかを予選プールで決めていく。

 僕は世界ランキング24位だったので、予選プールでは1番ランキングが上だったが、結果は2勝3敗だった。本来なら全勝してもよかったところを2勝3敗だったので反省しなきゃいけない。当然悔しい気持ちもあった。

 次の日には(決勝トーナメントに出場する)64人を決めなくてはいけなくて、16人プラス何人かを決めるためにそこで予選トーナメントがあった。僕はそこで韓国の選手に負けてしまった。本来なら勝てる相手だし、実際過去に勝った相手だった。周りの反応も本来なら勝てたのにという感じだった。あと技術面に関して技がワンパターンになっていた。切り替えができなかったのが敗因かなと思った。

試合直前の三宅(提供:フェンシング部)

―大会前に設定した目標は

 目標はベスト16だったので、非常に悔しい。だが今でよかった。もし今回勝ててても来年勝てないかもしれないし、今のうちに課題が見つかったことがよかった。僕は今年海外の試合はないが、年末から年明けにかけて課題に取り組みたい。

―試合に臨むにあたって調子は

 実は熱をだしてしまった。イギリスに入って時差調整をしてパリに入って行くという予定だったが、イギリスについたその日の夜に40度の熱を出してしまった。1週間近くある調整機関も熱で寝込んでしまっていて、自分のリズムが狂ってしまった。その時は強気でいけると思っていたが、後から小さなところから自分の流れを作っていけたらよかったと反省した。遠征の最初の段階でつまづいてしまったのが自分の弱いところかなと思う。

―他に見えた課題と、得られた収穫は

 見えた課題はさっきも言ったように、自分の技の少なさ。収穫は、今回団体のイタリア戦で出場したが、その時に見事にやられてしまった。自分は今まで遠征のとき強いといわれているイタリア、ドイツ、フランスの選手とあまりやっていなかった。僕の世界選手権の目標はイタリア、ドイツ、フランスの選手とやることでぼこぼこにされて負けることだった。とにかくまだ1年目なので、世界に行って世界の強さを知りたいというのがあった。単純にイタリアの選手は強いということが実際にわかって、自分の練習のモチベーションが上がるのが収穫だと思う。

―イタリア、ドイツ、フランスの選手は違う点は

 まず身長が違う。あとは距離感がすごい。剣さばきも力強いし、距離感もすごいので、そこはみならっていきたい。日本人は繊細さやスピードがあるが、ヨーロッパの選手は粗削りだけれども、確実にポイントがつく。

―ヨーロッパの選手はリーチが長いと聞くが、その点は

 リーチが長いと突きに来られた時に手を延ばされると、こっちが突けない。リーチが長いというのはフェンシングでは有利なこと。

―アジア大会に自分が出たいという気持ちは

 機会があったら出たい。そういう盛り上がった大会に出たら自分の中で得られるものもあるだろうし、更なるパフォーマンスができると思うのでそういう大きな大会に出ていきたいと思う。

 

―アジア大会は中国であるがブーイングは

 特にフェンシングはビデオ判定をしなければわからないくらいデリケートなスポーツなので大変。ただ、(アジア大会に出場する)太田さんたちはそういうのを乗り越えられると思う。アウェーの洗礼はスポーツをやっているとつらいものがある。

 

―今回パリでそういうのは

 日本ではフェンシングではそんなに普及していないが、フランスはすごい普及している。特に観客の目が肥えていて、フランスの選手が出てくると地響きがするくらい盛り上がる。観客は勝負の要素にかかわってくると思う。

目指すべき道

―三宅選手は日本でフェンシングを盛り上げたいという気持ちは

 僕は学生会を作っている。太田さんは選手会を作っているが、その下に学生会を作って学生でフェンシングを盛り上げていけたらと思う。まずはフェンシングを知ってもらいところから初めて、そこからフェンシングを好きになってもらいたい。フェンシングが好きだという気持ちがあれば広がって行くと思う。

―三宅選手が目指していく理想の選手像は

 今、選手会で「本物のアスリートを目指そう」というスローガン掲げている。アスリートの信条は勝つことがすべて。だが、果たして勝つことがすべてだけがみんなに認められるのかと言ったらそうではない。強さだけではなくて社会貢献したり、周りに人間を大事にしたり、メディアへの対応もしっかりしたり、そういう総合的に本物のアスリートを目指したい。

―技術的な面では

 海外の選手を見るとすごい攻撃力が高い。たとえば、一度突きに行くと決めれば、ちゃんと突きに行く。中途半端なプレーがなく、思い切りのいいフェンシングができている。なので、自分で考えて出した答えを信じて行動できるプレーヤーになりたい。

―日本の男子フルーレは重点強化種目となっていて、激戦区になると思うが、その中で目指す目標は

 努力したら努力した分勝てると思っている。太田さんに続けるようにと言っていたら、太田さんを越すことはできない。常に気持ちは太田さんを越せるように、太田さんに勝てるようになりたい。

―目標は金メダルか

 ロンドン五輪で金メダルを取れるように頑張りたい。

―早慶戦は早稲田の方が数年優勢だが

 前回のカンカレの団体で中大などを相手に惜しいところまで行った。そういう惜しかったという気持ちは重要で、もうちょっと練習すればいけるんじゃないかという気持ちになれる。そういうのがリーグの入れ替え戦やインカレにつながっていくと思う。早慶戦では早稲田に対して、慶應はここまでできるんだぞというプレーをチームで見せれればと思う。

―2年後のロンドン五輪に向けてやっていきたいことは

 基本的には世界選手権の反省と同じだが、技を増やすこと。そして体力面での強化を目指すこと。あとは生活面でも自分に隙を作らないようにすること。体調管理や身の回りの整理や人との付き合い方など、自分に非の打ちどころのない2年間を過ごしていきたい。

 取材中、大学生らしく単位の心配もしていた三宅選手。世界選手権が終わったばかりにも関わらず、取材後もさらなる高みを目指してナショナルトレーニングセンターで激しい練習をしている様子がとても印象的でした。

 これからのご活躍をお祈り申し上げます。

By.Ryutaro Moto、Yutaka Okumura

Camera.Michio Ikezawa

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