ついに2016年度慶大蹴球部の戦いが始まる。昨季は惜しくも大学選手権セカンドステージ敗退、ベスト16という結果に終わった蹴球部。昨年度に引き続き「大学日本一」を目指すには何が必要か。ケイスポでは、春季大会開幕を控えた、新幹部陣、ヘッドコーチにインタビューを行った。
4回にわたってお送りする新年度特集の初回を飾るのは、鈴木達哉主将(環4)だ。昨年度はFLとしてAチームに定着し、力強いボールキャリーを発揮。攻撃の起点となった。今年度は主将としてチームをまとめ上げる。新主将となった今の心境や新チームの状態についてお話を伺った。
―昨シーズンを振り返っていかがですか。
昨シーズンは、体制が変わったこともあって、春の練習では戦術の落とし込みが中心でした。それで基礎的なことがあまり出来なかったんですけど、その中でもチームで戦術を共有して、序盤こそは良い戦いが出来ました。しかし終盤にかけて、詰められていなかった部分が出て来てしまったのかなと思います。
―大学選手権セカンドステージ敗退という結果に終わってしまいました。
単純に、悔しかったです。4年生をもっと上のステージに立たせてあげたかったという気持ちがあります。
―今季から主将に就任されるということだが、どのような経緯で主将になったのですか。
同期の投票で選んで頂いて、その後金沢ヘッドコーチに相談し、就任しました。
―主将になることについて、予想はしていましたか。
僕自身は、副将の豊田(祥平・総4)に主将になって欲しいなという思いがあったので、特に予想などはしていなかったのですが、選ばれたからには役割を全うしようという気持ちでいます。
―他に主将候補として挙げられていた選手はいますか。
僕と、豊田と、廣川(翔也・環4)、プロップの角田(匠輝・法4)が候補にいました。その中から選んで頂きました。
―実際に主将に就任して、ここまでの手応えはいかがですか。
やはり(金沢ヘッドコーチ体制)2年目で、細かい戦術の部分は変わらず、僕達も分かっているので、その点で安心感があります。そして、去年であれば戦術の落とし込みをしていた時間に、今は基礎的なことをしっかりとやれているので、チームとしては伸び幅が大きいのではないかと感じています。
―目指している主将像はありますか。
あまり口は上手くない方なので、普段の練習から体を張って、先頭に立つキャプテンになれればと思います。
―主将になってから、練習中の態度や姿勢を意図的に変えることはありましたか。
あまり練習中に気持ちの入らない選手もいると思うんですけど、その中でも自分から声を出したり、思い切り練習に取り組むことで、雰囲気を盛り上げようとはしています。また、練習以外でも他の選手に積極的に声掛けをして、良い練習に繋がればいいなと思っています。昨年まではあまり喋るプレイヤーではなかったんですけど、今年は意図的に(喋る量を)増やしています。
―昨年以上に周りの選手を見る機会が増えたのでは。
昨年は余裕がなかったというのもあるんですけど、最上級生になり、主将という役を与えて頂いたので、昨年よりも周りを見て、良いアドバイスを送れるようにしています。
―主将ならではの苦労を感じたことはありますか
思っていたよりも、この役職からチームの全体を捉えることが難しいなと。今までは、自分が練習で全力を出せれば良い、という考えでやっていたんですけど、やはりチームが勝たないといけないので、選手全員が今日の練習に全力が取り組めているか、ということを凄く意識するようになって、そこが結構難しいです。その点、同期の4年生や幹部がサポートしてくれるので、恵まれているのかなと思います。
―矢川前主将(環卒)から何か声は掛けられましたか。
「今まで通り、体を張って先頭に立ってくれればいい」と言われました。しかし、自分自身が昨年のままではいけないと思っているので、何とかコミュニケーションの面でも上手くやるようにしています。
―矢川前主将はどのような主将でしたか。
高校の時から、ライバル校の一つ上の先輩ということで、知っていました。ゲームをコントロールするポジションを務められていたということもあって、試合中は周りをコントロールしてくれて、練習でも声掛けのタイミングなどがいいなと思って見ていました。
―矢川前主将から見習いたい点は。
そういったコミュニケーションの部分では、見習いたいと思います。ですが、やはり矢川さんと僕ではタイプが違うと思うので、全て見習うのではなく、部分的に取り入れていこうと思います。
―金沢ヘッドコーチからはどのような言葉を掛けられていますか。
「昨年通りにやって欲しい」ということが一つと、「チームの雰囲気の浮き沈みに気付いて、それを修正出来るようになって欲しい」と言われています。これは幹部全員が言われているんですけど、僕が一番、その役を担うべきだと思っています。
―金沢ヘッドコーチと話す機会は増えましたか。
増えましたね。ミーティングもよくしますし、練習前に、今日はどのようなメニューでやるのか、など自分から聞きに行くようになりました。
―副将の豊田選手はどのような選手ですか。
後輩にも慕われていて、僕と違って喋るのも上手いやつなので、足りないところを補ってくれる副将だなと思っています。
―豊田選手との連携は。
よくミーティングでも話はしますし、一緒に寮に住んでいるので、話す機会は多いです。
―豊田選手に期待することはありますか。
僕は試合中だと集中し過ぎてしまうことがあるので、そこで上手く(周りを)見てくれればと思います。あとは、プレー面でもLOの仕事をしながらも他に求められていることをこなせる器用さがあるので、そこでも期待しています。
―他の同期の4年生に期待することはありますか。
僕らの代は、周りに関心があって、些細なことにも気付ける代だと思います。全員がリーダーだという意識を持って、下の代に接してもらいたいです。
―新チーム発足からここまで調子はいかがですか。
ここ2ヶ月は、プレーの基礎的な面や、フィットネスと筋力を上げてきました。今はちょうど測定を行っているんですけど、成果が目に見えて表れています。体の質が良くなって、筋肉で体重が上がっている選手が多いです。
―どのようなチームを作っていきたいと考えていますか。
これは同期のみんなとも話したんですけど、応援して頂けるファンの皆様、OBの皆様が誇りを持てるチームにしていきたいです。その為には、勝つことが求められていると思うので、グラウンド内外に関わらず、しっかりやって、勝てるチームを目指して頑張っています。
―鈴木選手が現在重点的に行っていることは。
僕は今、体重があるので余分な脂肪は落として、出来るだけ筋肉の量を増やしていこうという段階です。無理矢理体重を上げるより、質の良い体作りを目指してやっています。
―今後プレー面で伸ばしていきたい点は。
昨年は突破の役割を担って、おそらく今年もそうなると思うんですけど、ハンドリングの面だったり、周りを上手く活かせるプレーもやっていきたいと思っています。
―ハンドリングを上達させる練習は行っている最中ですか。
チームでも基礎的なハンドリングの練習はやっているんですけど、今年はよりボールを動かすラグビーを目標としていて、バックローに求められるスキルの水準が上がったので、スタンドオフと連携を取りながら、個人練習も別に行っています。
―目指しているFL像は。
慶應のFLといえば、泥臭くタックルし続けるというイメージがあると思います。もちろんそれもこなすのですが、今までの慶應のFLにはなかった、しっかり突破も出来るFLを目指しています。
―今シーズンはどのような目標を掲げていますか。
打倒帝京です。ただ、大学選手権出場枠が一つ減ってしまったので、キーとなるターゲットは早大です。そこには絶対勝たないといけないです。
―打倒帝京に向けて、これからどのような努力を積み重ねていくべきだと考えていますか。
一日一日、帝京大よりも良い練習を積み重ねていくしかないです。具体的には、昨年とメンバーが大きく入れ替わったところがフロントローなので、スクラムなどのセットプレーでしっかりやっていかないと、打倒帝京は見えてこないと思います。
―主将の目から見て、現チームの強みは。
若い選手がどんどん上のチームに上がってきていて、まだ試合に出てない選手が多いんですけど、彼等がこれからどのような活躍を見せてくれるのかを楽しみにしています。
―特に注目する選手は。
WTBの小原錫満(総2)ですね。昨年はケガもあってあまり出られなかったんですけど、今は上のチームに定着していて、スピードもあってとても勤勉な選手なので楽しみにしています。
―当面の春季大会ではどのような試合をしたいですか。
積み上げてきた基礎の部分をどれだけ出せるか、というところです。また、昨年とラグビーの軸は一緒なんですけど、新しく取り入れたこともあるので、それがしっかり機能するのか、確かめながらやっていきたいです。
―WEBをご覧になっているファンの皆様にメッセージをお願いします
昨年はファンの皆様に悔しい思いをさせてしまったと思うので、今年はしっかり結果を残せるシーズンにしていきたいと思っています。応援よろしくお願いします。
(取材 ・ 小沢浩市)
鈴木達哉(すずき・たつや)
2016年度主将、環境情報学部4年。茗渓学園出身、ポジションはFL。昨年度は抜群の突破力を発揮し試合全体を勢いづけた。今年度は主将としてチームをけん引する力にも期待がかかる。