今年で第99回目を迎えた同慶ラグビー定期戦。大勝利を飾った早慶戦から一週間、遠征が続く慶大は舞台を東大阪市近鉄花園ラグビー場から石川県金沢市西部緑地公園へと移した。同志社大は昨秋の大学選手権で完敗を喫した因縁の相手。慶大にも気合が入る。前半は両者好ディフェンスで互いになかなかチャンスを作らせない。14-12と互角の戦いで前半を折り返したが、後半はたて続けに2トライを追加する。後を追う同志社大の勢いに圧倒され、残り5分で2トライを奪われるも逆転は許さず。最後は逃げ切った慶大の勝利で定期戦は幕を閉じた。
2016/6/12(日)13:00K.O.@石川西部緑地公園
得点 | ||||
慶大 |
| 同志社大 | ||
前半 | 後半 |
| 前半 | 後半 |
2 | 2 | T | 2 | 2 |
2 | 2 | G | 1 | 0 |
0 | 0 | PG | 0 | 0 |
0 | 0 | DG | 0 | 0 |
14 | 14 | 小計 | 12 | 10 |
28 | 合計 | 22 |
得点者(慶大のみ)
T=木口、松岡、廣川、山中
G=古田4
ポジション | 先発メンバー | 交代選手 |
1.PR | 細田隼都(商3・慶應) | →長尾昴(環4・茗渓学園) |
2.HO | 松岡大介(環4・小倉) | →中川丈豊(経2・慶應) |
3PR | 榎本雄一(商4・慶應志木) | →坂田拓海(経2・慶應志木) |
4.LO | 辻雄康(文2・慶應) |
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5.LO | 豊田祥平(総4・ 國學院久我山) | →中村京介(文3・明和) |
6.FL | 廣川翔也(環4・東福岡) |
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7.FL | 竹田和正(法4・慶應志木) | →永末千加良(法3・慶應) |
8.No.8 | 山中侃(商2・慶應) | →田中芳樹(政2・慶應) |
9.SH | 中鉢敦(経4・慶應) | →江嵜真悟(商2・小倉) |
10.SO | 古田京(医2・慶應) | →楠本遼(経4・慶應) |
11.WTB | 金澤徹(商3・慶應) |
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12.CTB | 堀越貴晴(総3・茗渓学園) | →高野慎也(商3・慶應) |
13.CTB | 木口俊亮(経4・仙台第三) | →今泉宏健(総3・清真学園) |
14.WTB | 高野慎也(商3・慶應) | →高木一成(1・慶應) |
15.FB | 丹治辰碩(政2・慶應) |
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最初に攻撃を仕掛けたのは慶大。相手陣でマイボールラインアウトのボールを確保すると、素早いパス回しで展開。CTB木口にボールが渡ると縦へ一気に突破し先制トライを決めた。7-0。幸先の良いスタートを切るもその後は両者拮抗した場面が続く。ともに敵を22mライン内に入らせず、粘りの防御で相手を封ずる。試合が再び動いたのは前半30分。同志社大はインゴール手前でのラインアウトモールで前進。最後は飛び出したNo.8秦にトライを奪われた。このトライを機に試合は展開を見せることとなる。慶大は、キックオフボールをキープしたNo.8山中のゲインを中心に相手陣へ攻め込むとゴール目前まで迫る。同志社大の固いディフェンスに攻めあぐねるも防御網を破ったのはHO松岡。ゴールポスト付近へ抜け出しすぐさまトライを奪い返した。コンバージョンも決まり、14-7となる。一方で同社大も反撃を仕掛けた。前半終了間際、同志社大SO永富のキックパスに合わせて走り込んだBks陣の連携で左隅へのトライに成功。しかしコンバージョンは決まらず、前半は14-12と慶大のリードで折り返した。
後半は両者ともに勢いが増し、互いに5mライン手前まで迫る場面が増える。先にチャンスをものにしたのは慶大。後半12分、LO辻、SO古田の力強い突破から最後はパスを受けたFL廣川がゴールポスト付近へ飛び込んだ。21-12。さらにその直後、同志社大のキックオフボールをキャッチした山中が抜け出しそのまま独走。40m近くを走り抜けトライを挙げる。間髪入れないスピードに同志社大もなすすべがなかった。再び7点を追加し突き放す。その後は、ラインアウトをはじめセットプレーも乱れずピンチも少なかった。しかしこのまま黙っていないのが同志社大。終盤になるにつれアタックのスピードが上がる。後半36分、同志社大は早いパス回しで展開すると、右隅にトライ。さらに、後半38分にもBks陣に抜かれトライを許してしまう。2トライを挙げ追い上げを見せる同志社大に、慶大も必死に攻撃を仕掛ける。再び隅を抜けようとした同志社大からのターンオーバーに成功すると、LO辻が相手陣に駆け上がる。インゴール寸前までボールを持ち込むもあと一歩ディフェンスを崩せず。最後はFB丹治が蹴り出しここでノーサイド。攻守にわたって奮闘し、終始リードを許すことなく28-22で勝利を収めた。伝統校対決で軍配が上がったのは慶大となった。
昨年の大学選手権での雪辱を果たす結果となった。4年生の経験豊富な選手が名を連ねる同志社大に、慶大はチームとして戦うことで勝利した。先週の早慶戦に続いて、再びディフェンスの強さを発揮した慶大蹴球部。選手自身もその手応えを感じている。「同志社大のアタックを封じ込めることができた」(LO辻)。倒れてもすぐに起き上がり素早くラインを整える。結果として生まれるのが防御から作る試合だ。Bks陣もWTB金澤、FB丹治を筆頭に積極的なジャッカルでボールを奪いターンオーバー。自ら攻撃の起点となる。そして仕掛けるアタックで見せるのは豊富な運動量。HO松岡、FL廣川をはじめFW陣のフィットネスも発揮された。15人全員が常に立ち仕事をこなす。このタイガー軍団の団結が勝利を呼び込んだ。ここからさらに目指されるのは、最後まで粘り強く一貫したディフェンスで相手を封じ込めるプレーだ。大学日本一達成に向けさらなる磨きをかけてほしい。次戦はいよいよ春シーズンの集大成となる春季大会5戦目、相手は拓殖大だ。春の総括として、一貫した“慶大らしいラグビー”で白星を飾ることに期待したい。
【ケイスポ的MOM】スピードで攻撃に勢いをもたらす NO.8山中
今春、全早慶明戦で頭角を現すと春ここまで多くの試合に貢献。突破力を持ち味に前に出るプレーで勢いを与え、今季チームとして安定しているセットプレーもFWの一員として支えている。そんな彼が今試合魅せたのはフィールドを切り裂くラン。「最後はスピードで勝った」。ボールをもつと自陣から相手陣まで一気に駆け上がりビックゲインを見せた。「(リハビリ中の先輩がいるので)僕自身は現在二番手」と語る山中。春に積み上げる経験値を生かし、慶大の絶対的存在へと成長する姿をみせてほしい。
(記事・室塚あす香)
コメント
金沢ヘッドコーチ
(今日の試合を振り返って)選手がグラウンド中盤をどのように過ごすかというのが難しく、前半の始めはそこに手間取ってうまく流れに乗れなかったのかなと感じました。自分たちがアタックしたときにミスが起こり相手に取られるという流れをどう過ごすかが一番難しく感じました。また、終盤にはディフェンスで粗くなり2本たて続けに取られてしまうところがあったので、次戦に修正したいと思います。(前半を受け後半どのように修正したか)少しキックを使っていこうという話をしました。風上にもなりましたし、あとはやはり今日はアタックをしていてもミスで相手ボールになってしまうことがあったので、それも受けて、今日は少しキックを使っていこうという話をしました。(伝統校対決を三戦経てチームが意識面で変わったところは)グラウンドに寝ている人が少なく、よく立っている状態でディフェンスに行けるようになってきたのかなと。いつもディフェンスには誇りを持つように言っていますが、その意識は変わってきたように思います。(次戦は春の集大成としてどのような戦いをしていくか)変わらず慶大らしさは出していきたいと思います。慶大らしさはディフェンスなので、ディフェンスの締まったゲームをしていきたいと思います。
LO辻雄康(文2)
(試合を振り返って)ラスト20分以外はディフェンスで慶大がやってきたことができました。具体的には、ディフェンスで周りをみて一人一人がスペーシングをしっかりとりコミュニケーションをとりながらディフェンスラインに立つということができました。それによって同志社大のアタックを封じ込めて点を取られないようにできたのでよかったです。(昨年度の大学選手権で戦った同志社大と再び戦うことになった)昨年度ぼろ負けして、個人的にもチームとしても同志社大に勝つということは、自分たちの自信にも繋がるし悔いを返せることにもなると思っていました。今日試合をして結果的に勝つことができたのでよかったです。(接点での印象は)接点は昨年より個人的な印象として当たり負けしてない部分があって、ボールを持って前に進む意識ができたので、自分個人としては昨年度より成長できたのではないかと思います。(今日のご自身のプレーを振り返って)もう少し低いプレーができたらよかったです。また、ミスが多く、慶大が流れに乗っているところで自分がミスしてしまうところがあったのでミスを少なくすることが課題となりました。(強味としているプレーは)スピードのつけたアタックができているのかなと思います。ただ今日はそれがあまりできませんでした。後半ラストのプレーで自陣から敵陣までボールを持って走れたんですけど、そこでも詰めが甘くて判断ミスしてしまうところもあったので次回からは修正して、自分の持ち味を試合中に見せていければと思います。(次戦に向けて)次の試合も必ず勝って慶大は強いということを他大に証明できるようなプレーをしたいと思います。
FL廣川翔也(環4)
(今日の試合を振り返って)色々な課題はありますが、春に僕らが一番意識していた試合なので、勝てたというのが本当に良かったです。(昨年の大学選手権に比べて、同志社大の印象は)やはり同志社はブレイクダウンに懸けてきていて、一人目、二人目と圧力をかけてくる部分は変わっていなかったです。前半はその部分で受けてしまいました。後半からは、相手がテンポをつくってきた中で、入らせないように意識できました。なので自分たちのラグビーができたと言いますか、チームとしてはうまく対応できました。(個人としての収穫や反省は)ブレイクダウンでボールを獲りなさい、と金沢HCに言われています。ただボールに絡みに行っても、レフェリングのところで倒れているだとか、横から入っていると言われてしまいました。もっときれいに接点に入らないといけないな、と課題を感じています。春シーズンずっとフォーカスしてきたのですが、きれいにターンオーバーできる、というレベルまではまだまだだと思います。(次に向けて)ディフェンスのところ、ブレイクダウンのところで、中途半端にならずに両方ともさらに究めていきたいです。
No8 山中侃(商2)
(今日の試合を振り返って)今日は同志社という強い相手だったのですが、前半は良いディフェンスで同志社のアタックを抑えて、後半、僕は途中ケガで抜けてしまったのですが、最後粘って勝てたので凄く嬉しいです。(ご自身のプレーを振り返って)僕はアタックの方が得意なのですが、今日はゲインラインを越えてトライ出来ました。仕事が出来て良かったです。(トライの場面を振り返って)キックオフ直後、相手の間が空いていたので、当たることよりも抜けることを意識しました。最後はスピードで相手に勝って、トライ出来ました。(ここ最近先発起用が続いているが、ご自身の調子は)No8に強い先輩がいるのですが、今は怪我で出場出来ていません。僕自身は現在2番手だと思っているんですけど、復帰するまでに、その先輩に勝てるくらいの力をこれから付けたいと思います。(これから克服したい点は)ディフェンスがあまり得意ではないので、そこを改善していきたいです。(次戦に向けて)来週もトライを狙って、勝利に貢献したいです。
CTB 今泉宏健(総3)
(今日の試合を振り返って)同志社が外に回してくるラグビーをしてきて、それが僕達のスタイルとは違ったので前半は対応が遅れたのですが、後半は前に出てディフェンスすることで対応出来たので、それが勝利に繋がったと思います。(試合始まってすぐの出場となったが、準備の方は)正直準備は出来ていなかったです。昨日も試合があって、今日は後半から試合に出る準備をしていたんですけど、最初から出ることになったので80分間出れるような気持ちをすぐに作って、試合に出場しました。(それでも序盤から良いアタックの場面が見られました)自分がゲインをしないと、慶應のラグビーが始まらないと思ったので、1次攻撃からしっかり体を当てていくことで、チームの攻撃の流れを作ることが出来たと思います。(ご自身のアピールポイントは)倒れないプレーと、キレのあるステップです。(春シーズン、チームのここまでの調子は)今日のように勝てたことは収穫ですが、明治などには勝てていないので、強い相手とやった時にも競り勝てる力をこれから付けていきたいです。(次戦に向けて)厳しい試合になると思いますが、一人一人が強く向かっていくことで、今日のようにいい試合が出来るよう頑張ります。