対抗戦開幕直前インタビュー第二弾は、豊田祥平副将(総4・國學院久我山)だ。春は幹部陣がケガで不在の中、グラウンドでチームを統率してきた。自身も今春から復帰し、Aチームでのプレー経験は多くはない。その中で任されたゲームキャプテンをここまでこなしてきたのも強い責任感とチームからの信頼感があるからだろう。副将として、選手として、どのような考えを持ちこれから対抗戦を迎えようとしているのだろうか。
————今季ここまでを振り返っていかがですか?
豊田:やはり慶大はディフェンスのチームであると僕は考えていて、今年もディフェンスにフォーカスしてやってきました。ディフェンスの理解だとか、システムを自分たちの中にしっかり落とし込むことができてきて、実際に試合でもうまく機能する場面も増えてきました。ただ、勿論そうはなっていない部分も残っていて、そこは秋でどれだけ成長できるかが鍵になってくると思います。
————春季大会のグループB2位という成績については?
豊田:日本一のチームである帝京大を破ることを僕らは目標にやっているので、満足はできていないですね。大東大には負けてしまいましたし、結果には満足していないです。ただ、試合内容では成長を実感できた部分もありましたし、そういう意味で春は実りあるシーズンでした。
————春の開幕前インタビューでは今季の目標について、「絶対にケガをしないこと」と話していました。ここまでは順調なのでは?
豊田:そうですね。大きなケガではないんですけど、一回夏季合宿最後の同志社大戦でケガをして途中交代になってしまったのは自分の中では反省というか、今年の目標をもう達成できなかったという点で残念なんですけど、それでもすぐに復帰してグラウンドに立ち続けることが自分の役目だと思って切り替えています。
————今はもうケガは癒えていると。
豊田:はい。
————大学に入学してAチームで継続して活躍できているのは今季が初めてだが、ここまでの手応えは?
豊田:夏合宿以降はバックロー、フランカーでも試合に出させてもらっているんですけど、やはり自分の中で一番足りていないのは経験だと副将に指名されたときから思っているので、そういった意味ではここまで上のチームで出続けてその不足分を補うことができているように思います。
————豊田選手といえば本職はロックですが、これまでにフランカーの経験は?
豊田:高校時代にちょっとやったぐらいで、試合ではほぼなかったですね。でも、フランカーになってもラインアウトリーダーということでラインアウトには基本的に参加しているんで、そういう意味ではロックとあまりプレーは変わっていないと思いますね。あと個人的にはディフェンスのラインスピードを上げることをすごく意識していて、タックルへの意識はバックローになって更に高まったのかなと思います。
————佐藤大樹選手(総3・桐蔭学園)がケガから復帰したということで、これからはバックローでの出場が中心になると。
豊田:そうですね。勿論ロックもできるんですけど、メインはバックローでやっていきたいと思います。
————今季は開幕から鈴木達哉主将の欠場が続き、ゲームキャプテンを任される機会が多かったわけですが、キャプテンとしてどういったことを意識してプレーしていましたか?
豊田:ゲーム中に考えられることは限られているので、2、3個だけでもフォーカスポイントをチーム内で共有させることと、チームトークで、ただ良くなかったことを話すのではなくて、次につながるチームトークをするために自分がどう引っ張っていくかということを意識していました。
————チームトークというのは?
豊田:トライを取られた後や逆にトライを取った後の短い時間で「次はどういうフォーカスを持ってやっていくのか」ということを確認しています。それは練習も然りなんですけど、全員の意思統一を短時間でどうやって図るかという効率を意識してやっています。
————それを徹底することでトライされてもすぐに立て直しが効くようになると。
豊田:そうですね。次はどうやってプレーしていこうかと。メンタルもそうなんですけど、特に複雑なディフェンスの動きを確認しています。
————金沢HCからゲームキャプテンを任されたときに何か指示されたことはありましたか?
豊田:自分から何かを働きかけるよりかは、背中というかプレーで引っ張るのが僕はメインなんですけど、僕が言われたのは、チームトークの内容をどれだけ充実させるかということですね。起こってしまったことに対して言うんじゃなくて次につながる言動を意識しています。あとはまとめ方ですね。いろんな人がただただ喋るんじゃなくて、しっかりまとめて全員が理解できるトーク内容にしなさいということを言われました。
————試合以外でも、Fwdリーダーの佐藤大選手やBksリーダーの清水祐輔選手(環4・明和)といったチームの幹部が戦線を離脱していた。豊田選手にかかる負担は相当大きかったのでは?
豊田:自分自身がやらなきゃという思いはあったんですけど、それでも同級生や下級生が自発的に声を出して引っ張ってくれることも多くて、そういう意味では助かりました。
————今季は「One Team」というスローガンを掲げて、チームの風通しを良くして、全員のベクトルが同じ方向に向くようにしたいと開幕前インタビューでは話していました。ここまでそういったチームが作れている実感はありますか?
豊田:今はチーム全体というよりかは、だんだん試合が近づいてきたので上のチームにつきっきりなんですけど、下級生から上級生、下のチームからAチームまで全員が同じベクトルが向くように、春の最後の方は学生でミーティングをしていました。夏合宿に入ってからは上のチームメインでやってしまっている部分があったので、またこうやって日吉に全員が集まったときに同じベクトルに向くためには、この秋から僕らが中心になって引っ張っていかないといけないなという気持ちはありますね。
————豊田選手から下のチームの選手に声をかけに行ったりすることは?
豊田:あります。全員が参加していた山中湖の合宿は、部屋割りがチーム関係なく一緒だったので、そういう声かけもしていました。
————夏合宿の話がありましたが、夏合宿ではどういったことにフォーカスを当ててやってきましたか?
豊田:ディフェンスのシステムと、相手に走り勝つスタミナ作りに大きくフォーカスしていて、僕らは(その中でも)ディフェンスのセットとライズをポイントに挙げていました。相手よりも早く起き上がることで立っている人数を増やして運動量で勝つことと、走ってディフェンスのセットを早くすることを意識していました。
————合宿が終わってみて、課題を克服できた実感はありますか?
豊田:合宿中に他校と合同練習を何回かさせてもらうことがあって、そこで通用する部分と、新たに課題が出てきた部分がわかりました。特にセットプレーは成長できたのかなと実感できる部分です。チーム全体としては、ディフェンスのセットがすごく良くなってきていて、相手よりも早くセットできる確率も上がってきているので、少しずつ全員に早くセットしよう、早く起き上がろうという意識は高まってきているのを感じます。
————夏合宿の中で、豊田選手から見て「あっ。この選手一皮剥けてきたな、秋以降の戦力になるのでは」と思った選手はいましたか?
豊田:弟(豊田康平=総2・國學院久我山)ですね。去年Aチームにも入っていた4年の木口(俊亮=経4・仙台三)や染原(健人=理4・修猷館)がケガをして、それを埋める3年生の今成(哲=経3・城北)なども何回かケガで休んだときに、結構Aチームに定着できたのではないかと思います。セブンスの日本選抜にも選ばれて、一昨日まで香港で試合をしていましたし、これからも何回か代表に選ばれていくと思うので、そういう経験も糧として更に頑張ってほしいと思います。あとは、松村凜太郎(商3・慶應義塾)です。去年も出ていたんですけど、春の最初の方でケガをしてしまって。でも拓大戦で復帰してからは、3年生にもかかわらずリーダーシップを取ってくれて、そういう意味ではリーダーが少なかったときは凄く助かりました。あと、部で一番激しく、熱いプレイヤーで、ムードメーカーとは少し違うんですけど、みんなを気持ちで引っ張ってくれる選手です。
———夏合宿では目標でもある帝京大と練習試合を行いました。今季これまでの取組みが試される場だったと思いますが、自分たちの予想よりも帝京大との距離は縮まっていましたか?それともそうではなかったでしょうか?
豊田:まだまだ差があるのは実感しましたね。最初の10分、自分たちが凄く静かな時間があって、入りの部分では帝京大が上回っていました。あと、運動量の部分で、相手のディフェンスのセットが速かったです。でも、差はあるにしろ、詰められない差ではないとも感じました。
————18日には対抗戦初戦の筑波大戦が行われます。今季の筑波大の印象はどうですか。
豊田:今季は対戦していなくて、春の試合も少し見たんですけど、それも練習試合なので…。ただ、昨季は2試合やって最初は勝ったんですけど、最後は負けてしまったんですよね。凄く成長力の高いチームというのが印象的なので、夏合宿の練習試合では同志社大に(筑波大が)負けていたんですけど、侮れないというイメージです。
————筑波大のフォワード陣については?
(ここで同室で一足先に取材を終えていた鈴木達哉主将(総4・茗渓学園)が)
鈴木:ブレイクダウンが強い印象があって、フォワードでもハンドリングの能力が高い選手が多くて、こちらと同じ走るラグビーに適したフォワードなのかなと思いますね。
————筑波大とは力関係では例年拮抗しており、それだけに重要な一戦になります。どういったことに注意して試合に臨みたいですか?
豊田:やはり運動量で負けないこととディフェンスですね。相手よりも速いディフェンスセットを意識していきたいです。あと、僕がこだわりたいのはセットプレーのところです。フォワードはスクラムでターンオーバーを狙って、ラインアウトはモールで押していってという具合で、セットプレーの部分で負けたくないという気持ちが強いです。
————最後に対抗戦に向けての意気込みをお願いします。
豊田:僕自身初めての対抗戦ということで、思い入れというか懸ける思いは人一倍強い自負はあります。自分だけじゃなくてチーム全体が活躍して、日本一につながる試合をひとつひとつしていって、更に秋で大きく成長していきたいと思っています。
(取材・江島健生)