【ラクロス(男子)】終盤怒涛の追い上げも引き分け/早慶ラクロス定期戦

昨年早慶定期戦での、慶大の劇的逆転勝利は記憶に新しいだろう。今年の早慶戦も昨年同様、白熱した試合となった。前半、主導権を握ったのは早大。AT小笠原圭充(商3・慶應義塾)が1Qに得点を決めたものの、早大の機動力に押され14で前半を終える。しかし後半からAT井上裕太(経4・慶應義塾)、AT浅岡大地(文2・慶應義塾)ら慶大AT陣に火が付き、67とし1点差まで詰め寄る。そして残り時間4分でAT浅岡がこの日2点目の得点を決め、ついに慶大が追いつく。残り時間、両校激しいオフェンスを展開したが、得点は入らず試合終了。早慶ラクロス定期戦規定により、両校優勝という結果になった。

トロフィーを受け取る井上主将

25回早慶ラクロス定期戦

2017/5/21 () 14:10 F.O. @慶應義塾大学日吉陸上競技場

 

慶大

経過

早大

1

1Q

2

0

2 Q

2

3

3Q

1

3

4Q

2

7

合計

7

 

今季の飛躍が期待されるAT小笠原

 まずは流れを掴みたい1Qであったが、開始すぐ早大に先制されてしまう。しかし、慶大も黙ってはいない。開始4分でAT小笠原がゴールの裏側から回り込んで鮮やかにゴールを決め、すぐに同点とする。10分に早大に追加点を取られるものの、DF片山瑛人(経3・慶應義塾)らの好ディフェンスもあり、1Qを2失点に抑える。オフェンスでは惜しいシュートもあったが得点には結びつかず、わずか1得点と課題が残った。

1on1で実力を発揮したMD中居

 2Q序盤は、両校パスミスが多く得点が入らない 。このまま膠着状態が続くと思われたが 、2Qラスト6分、ついに早大がこの均衡を崩す。相手DFのロングシュートなどが決まり 、一気に2点を奪われる。なんとかこのQで得点して後半に繋ぎたい慶大だったが、シュートがゴールに嫌われ無得点。3点ビハインドで前半を終えた。

 

早大AT陣に果敢に立ち向かったDF片山

 そして3 Q。開始4分でまたしても早大の得点を許してしまい、差は4 点に広がってしまう。しかし選手たちの中で諦めているものは一人もいなかった。主将の井上が「絶対自分たちの時間が来ると全員が信じていた」と語るように、ついに3Qラスト6分“自分たちの時間”が来た。ゴール裏でボールを持ったAT井上がフリーになったAT小笠原を見逃さず、すかさずパス。AT小笠原もそれに応えゴール正面からすくい上げるようにシュートを決める。ついに1Q以来の得点を挙げる。これで火が付いた慶大。今度はAT浅岡のパスからAT井上がジャンピングシュートを決める。オフェンスの流れが良くなれば、ディフェンスにも活気が出る。早大のシュートをG杉本健(経3・慶應義塾)が好セーブ。続くオフェンスでは、AT浅岡がゴール左45度からシュートを決め、この3分間で一挙3得点を挙げ怒涛の追い上げを見せる。3Qで4-5、1点差まで迫る。 

 

”慶應の90番”の力を見せつけたAT浅岡

 勝負の4Q。しかし開始早々 、慶大にミスが出る。立て続けに危険なファールを犯してしまい、ペナルティにより一時的に1人少ない4人でディフェンスを守らなくてはならなくなった。この隙を早大に突かれてしまい、2点を奪われてしまう。しかしここで諦めないのが慶大の強み。12分、最年少でU22の日本代表にも選ばれている期待のルーキー ・AT立石真也(政1・慶應義塾)がディフェンスにマークされながらも強引にシュートを決める。さらに10分には井上がディフェンスを3人躱して 技ありの得点を奪い、ついに1点差まで詰め寄る。慶大が追いつくためには、ここから絶対に得点されるわけにはいかない。DF片山、MD中居諒介(経2・慶應義塾)らの好ディフェンスでここを守り切り、オフェンス陣に望みを託す。そしてラスト4分、その期待に応えた男は途中出場のAT浅岡。AT井上からのパスを受けると、ディフェンスをかわしゴール正面から見事な同点弾を決める。ここでついに試合が振り出しに戻る。最後まで両校意地とプライドをかけ得点を奪いに行くが、互いに力を振り絞りゴールを守り抜き 、そのまま得点は入らず試合終了。早慶ラクロス定期戦規定に則り、両校優勝となった。同点弾を含む2得点の活躍を見せた浅岡は、今試合の最優秀選手に選ばれた。

 

両校健闘を称え合った

 2年連続の早慶戦勝利とはならなかったが、昨年同様、非常に見応えのある試合となった。毎年スロースターターと形容されがちな慶大。 今季も、主将の井上は「追い詰められないと乗れない」ことが課題だと語る。選手たちは優勝したことよりも、早慶戦で宿敵を破ることが出来なかったことで悔しさをにじませていた。しかし偶然にも、今年のリーグ戦初戦の相手は早大。 この試合の悔しさを胸に、リーグ戦では陸の王者の本領を発揮してほしい。

 

井上裕太主将(経4・慶應義塾)

 

(試合を振り返って)毎年早慶戦って面白いゲームになりますよね。最初1-5になった時は「今年もこういうゲームなのか」と思っていました。でも1-5まで離されても、部員たち全員「やばい!」というよりも「絶対自分達の時間が来る」という雰囲気で、落ち着いていました。それで点が入り始めると乗ってくるのが慶應の良さであり、そこまで追い詰められないと乗れないという意味では悪さでもあると思います。今日の試合は乗れて同点まで追い上げられたという点では良かったと思います。(今年もスロースターターは健在ですか)健在させたくないんですけどね。六大学戦の早稲田戦では良いスタートを切れたので、入りはなんとかなると思ったのですが、他の試合ではやっぱり最初が弱かったです。(原因としては)気持ちの部分が大きいと思います。テンションは上がっているんですが、最初に相手の様子や出方を見てしまう傾向があると思います。そのせいで、テンポが作れずにゴールに向かうスイッチが入らない。去年もスロースターターとは言われていましたが、仁熊(仁熊健太・商卒)のような切り込み隊長がいたので、同じようにそういうことをする人がいないと、スロースターターは治らないと思いました。そのためには僕がやらなくちゃいけないんですけど、自分が成長しきれていない、殻を破れていないので難しいという状態です。だから、それは自分自身の課題でもあるという感じです(今日の試合は小笠原選手が早い時間に得点を決めていました)そこで後に続かなくちゃいけなかったですね。それが残りのAT3人の役目で、小笠原が決めたら次は自分や立石、浅岡が行くという形ができれば、今年も強いチームが作れると思います。(それがシーズンを勝ち抜く課題ということですか)そうですね。アタックの部分が大きいです。(自身の得点シーンを振り返って)あのプレーを早稲田のDFに最初からやっておけば、とすごく後悔しています。点を決めて嬉しかったんですが、あれを1Qからできなかったという悔しい思いは残ります。エンジンさえかかってしまえば慶應のアタックは本当に強くて、少なくとも学生で止められるチームは無いと思います。(DFMDの動きは)まだMDの迫力が足りないと感じます。決めてほしい所で頼れるMDが正直いないという印象で、まだまだ洗練できる部分はあると思います。今まで慶應はシステムで守るということをやっていて、今年もそうなんですけど、河村剛志(商4・慶應NY)という大きな穴があります。そこを激しさや運動量でカバーしなければならないので、その辺りをもう少し頑張ってほしいと思います。今年の慶應のスタイルを作ってほしいですね。

 

浅岡大地(文2・慶應義塾)

 

(率直な感想は)優勝とは言えど引き分けなので悔しいです。4Qまで試合に出ていたので勝ち切りたかったです。(今日の試合振り返って)途中出場でしたが、得点を決めて良いパスも出せたので、流れを壊さずにいれたかなという印象です。もっと点に絡めたと思うので、やれることはたくさんあったなと思います。(試合に出るときはどのように声をかけられましたか)声は特にかけられてないです。今日の試合は裕太に負担がかかっていたので、僕が出たという感じです。(オフェンスの流れを変えるプレーが目立ちました)1年から早慶戦でベンチ入りさせてもらってたんですけど、1度も出ることが出来ず、悔しかったので早慶戦への思い入れが強かったです。今年は3度目の正直で、自分から試合の流れを変えたいと思って集中していた結果が出たのではないかと思います。(好ディフェンスもありました)ATはオフェンスだけでなく、ボールを相手に奪われたとき最初のディフェンダーになるので、取られた分を取り返すんだという思いでした。MVPに選ばれた感想は)悔いが残った試合で、反省点を考えていたら名前を呼ばれたので、選ばれるとは思ってなくて驚きました。選ばれた以上は、慢心せずに毎日頑張って練習していきたいと思います。(リーグ戦に向けて)今年のAT陣はプレースタイルが豊富で、各々強みをたくさん持っているので、4人で連携をとっていいプレーをしてベンチにいるときはしっかり声を出して、一戦一戦しっかりやって、全日でファルコンズに圧勝して日本一になりたいと思います。(リーグ戦初戦は早大です)引き分けなんてもう嫌なんで、次の早大戦は絶対に勝ちたいです。

 

片山瑛人(経3・慶應義塾)

 

(今日の試合を振り返っていかがですか)序盤結構苦しい展開で、調子が悪かったんですけど、途中からチームのみんなが諦めずに頑張ってくれて追い上げることができました。最終的に逆転はしたかったんですけど、いい試合だったと言えると思います。(開幕前の対談で1on1では負けないと言っていましたが、今日はそれを達成することはできましたか)まぁ、大体達成できました。(早稲田の個人能力の高いATにはどう対応されましたか)結構負けてしまったんですけど‥‥まぁやられましたね。(今日は長い時間試合に出場されて、チームのDFとして手応えは感じられましたか)はい、そうですね。4Q出てもそんなに疲れずにできたと思うので、これからも頑張って行きたいです。(途中、相手のエキストラマンオフェンス等でDFの苦しい展開が多かったと思いますが、いかがでしたか)苦しかったですけど、意外としっかり守ることができました。ゴーリーの杉本君(経3・慶應義塾)が頑張ってくれて、そんなに怖くはなかったです。(次のリーグ戦に向けて、課題は見つかりましたか)チームのことなんですけど、序盤いつも調子が出ずに、後で追い上げるという展開が起きて、そこを最初からしっかりしたプレーができるように、自分もなりたいと思います。

 

小笠原圭允(3・慶應義塾)

 

(試合を振り返って)スタメンだったので第1Qからガンガン向かっていこうと思っていて、結果的に慶應の先制点が取れたのはすごく良かったと思います。早慶戦全体としては、委員長をやっていたので疲れました。(個人としては2得点の活躍でしたが、ご自身の得点を振り返って)1点目は自分でも本当にきれいに決まったなという感じで、自分の持ち味を全部出せたシュートだったのですごく良かったです。2点目も混戦で厳しい体勢ではあったのですが、決めることができました。結果あのゴールが(慶應の)2点目で、慶應の流れをうまく引き寄せられたシュートなんじゃないかなと思うので、個人的には満足はしています。ただ2点という点数としてはまだまだ満足はいっていなくて、もっと取れた場面がたくさんあったので、ATとしてもっと点を決められるように頑張っていきたいと思います。(引き分けで両校優勝という結果になりましたが、今の率直なお気持ちは)個人のプレーとしては多少満足しているのですが、7-7という結果は、勝ちきれなかったというところが残念ではあります。最後は追い上げムードだったのであそこでもう1点決められるようなチームを作っていきたいです。自分は最終Qに出られなくて、見ている側としても「出られていればなぁ」とかいろいろ考えるところはあったので複雑ではあります。(今日は比較的長い時間の出場となりましたが、レギュラー定着に向けて自信につながりましたか)人と違った自分の持ち味というのを結構出せていたので、この部分を買ってもらえれば今後もレギュラーに定着できるのではないかなとは思います(今日の結果を受けて、リーグ戦に向けて改善したい点は)自分の武器を磨きつつ、他の面をいろいろ修正していきたいと思っています。自分はミドルレンジのシュートがそんなに得意ではないので、それを多少克服しつつ、あとは決定力とアシスト力をもう少し伸ばしていけたらなと思います。

 

中居諒介(経2・慶應義塾)

 

(試合を振り返って)ミーティングでイメージしていた試合展開とは違い、前半1-5で早稲田がリードし、早稲田を追う展開となったことが残念でした。(一対一の持ち味を発揮できたことについて)試合になると熱くなりすぎてしまい、1on1で結構抜けていたにも関わらず、その後のプレー展開が悪くなってしまいました。(目標の川崎選手に近づくことはできましたか)今日はいつもの川崎さんのプレーに近づけたと思います。1on1だけですが。(開幕前対談での点を取るという目標について)点を取りたいがあまりに単調なオフェンスになってしまいました。自分が点を取りにいくという意識が強く、周りを見ないで攻めた結果、ボールダウンしてしまうシーンが多かったと思います。(全体的に、勝ち負けは別として、初めての早慶戦はいかがでしたか)最初は緊張すると思いましたが、試合展開が予想と違ったということもあり、意外といつも通りにプレーができました。(今後のリーグ戦に向けての目標、強化すべきことについて)自分はオンボールが得意なので、それ以外のオフボールの動きとディフェンス全般の向上が目標です。特にオンボールについては相手がショートディフェンスの時にしか抜けることができていないので、どんな相手にも抜けられるような選手になりたいです。MD全体では、今日の試合で点を取っている選手がいなかったのでMDも点を取るということが課題です。

 

(記事・内田貴啓/写真・川下侑美、染谷優真、新井賀南子他)

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