部員たちにとっても初めての海外遠征だ。スケート部ホッケー部門は8月21日からカナダのトロントで遠征を行っている。氷上練習や、現地の大学との練習試合が予定に組み込まれていて、本場のアイスホッケーを肌で感じながら、秋のリーグ戦に向けて更なる強化を試みる。
今回、トロント遠征に先立って行われた壮行会において、竹田恒治慶應義塾体育会アイスホッケー三田会会長、山中武司ヘッドコーチ、安藤直哉主将(政4・慶應義塾高)に、遠征についてお話を伺った。
※本取材は7月27日(木)に三田キャンパスで行われた壮行会の際に、行ったものです。関係者の皆様に、掲載が遅れましたことをお詫び申し上げます。
竹田恒治慶應義塾体育会アイスホッケー三田会会長
アイスホッケープラス国際人になるためのきっかけにしてもらいたい
――今回のトロント遠征を行うこととなった経緯について
世界のグローバル化が急激に進んでいく中で、慶應義塾大学としてもホッケー部門としても、やっぱりグローバルな社会に対応できる人材を育成していかなくちゃいけないということから、OB会の中に国際交流部会を作って、海外遠征をしようと決めて、3年がかりで今回派遣することとなりました。従って、今回カナダに行って単にアイスホッケーの試合だけやってくるんじゃなくて、幅広く向こうの人たちと色んな機会を作って、歴史の違いだとか文化の違い、価値観の違いを肌で感じて、自分たちが国際人になっていくにはどうしたら良いかということを考えてもらいたいという機会ですね。アイスホッケープラス国際人になるためのきっかけにしてもらいたいという2つが大きな目標です。
――海外遠征というのは創部以来初めてなのでしょうか
以前に韓国の延世大学と定期的にやっていたんだけれども、やっぱり国際化するためには韓国だけに捉われず、欧米に出ていかなくちゃいけないということで、幅広く色々なところを探して、やっぱり行くんであればアイスホッケーの本場のカナダしかないと、まずカナダに絞って、結果的に縁があってトロント大学と今回こういう交流計画を結んで派遣するということになりました。
――トロント遠征を実現させる中で難しかった部分は
やっぱり一番難しいのは財源をどうするかということで色々苦労したんですけれど、早慶定期戦をテレビ中継してくれていますんで、そこの広告代という新しい収入源というのを作って、それをグローブファンドという新しいファンドを作って、そこで3年間蓄積して、やっと今回の費用を全てカバーできることになりました。基本的には選手の負担ゼロでOB会が全部負担すると。それはアイスホッケーというのは日本でも練習に非常にお金がかかり個人負担が非常に大きいので、あんまりそういうことで選手あるいはご父兄にそういう負担をさせたくないということですね。他の体育会が海外に行く場合は個人負担というのはあるらしいんだけども、スケートの場合には個人負担なしで全部OB会が担うということでなんとか賄うことができました。
――遠征において不安に感じていることは
不安に感じていることは特にないんだけれども、まあ9月からシーズンが始まるんでケガとか健康を害すようなことはあってはならないんで、体調の管理だけは十分に気をつけてもらいたいです。
――遠征中のトレーニングは具体的にどのような内容になるのでしょうか
色々あるんだけれども、ワークショップという形でフィジカルトレーニングをどうしているかということを向こうの選手と一緒にやったり、両校の選手とコーチでミーティングをやったり、トロント大学のコーチの指南を受けての合同練習だったりとか、公式試合は一試合だけなんですが、その前日に総領事館のパーティに両校の選手呼んでやったり、あとはカナダのメダリストの講義を聞くとか、練習だけではなくて幅広い交流を重視した内容になっています。
――遠征を迎える選手たちへ向けて
カナダというのはアイスホッケーのレベルが非常に高いんだけれども、慶應らしい試合を是非してもらいたいと思います。
山中武司ヘッドコーチ
少しでも多くのことを学んで帰って来られるようにしたい
――今回のトロント遠征を行うこととなった経緯について
OB会の方々が考え始めた当初はまだコーチではなかったので存じ上げていなかったんですが、以前から本場カナダへという思いのもと、OB会の国際交流部会の皆さんが進めて色々考えてくれて、経緯としましては東京の方にアイスホッケー界では有名な以前日本の代表選手だったメル若林さんという方を栄木副部長がご存知で、そのメル若林さんのつてがトロントにあったということで、そこを切り口に紹介して頂いてようやく漕ぎつけたという感じです。
――過去に海外遠征は
以前韓国に遠征したことが3、4年に一度あったという話は聞いてます。
――遠征が決まった際の選手たちの様子は
やはりカナダというホッケーの本場に行けるということで、非常に喜んでいました。
――遠征において不安に感じていること
カナダは非常にレベルが高くて、ホッケーの面で言いますと体が大きい相手と対戦するので、対等に試合ができるか、ケガなく帰ってこれるかというところは心配なんですけど、やはり体で体感して覚えることが大事ですので、大柄な相手に向かっていける体力をオフから今までの間、しっかり身につけています。
――遠征までの予定は
8月から氷上練習でもう一度体を作り直して、8月中旬に仙台でミニキャンプを5日間ほど強化合宿を行なって準備をしてから、その後トロントに行く予定になっております。
――遠征中のトレーニングは
スケジュール的には向こうのトロント大学のコーチの指導のもとでの練習が何度かある中で、練習試合含めて3試合行えるということになっています。
――遠征へ向けて
実りある合宿にしていきたいと思いますので、1日1日、一試合を大切にして、気づいたことがあればメモを取ったり質問したりして、少しでも多くのことを学んで帰って来られるようにしたいです。
安藤直哉主将(政4・慶應義塾高)
この遠征を有意義なものにして、後輩にも将来遠征を
――今回のトロント遠征を行うこととなった経緯について
結構長い間OBの方たちが海外遠征に行きたいということを僕たちが入学する前から話してくださっていて、それの資金集めであったり細かい話だったりというのを詰めて、今回やっとトロントに行くことが決定したという流れです。
――今まで海外遠征の経験は
僕たちが入学してからは一度もなくて、それまで2回か3回、韓国の延世大学という提携校との練習試合はあったと思います。
――遠征に要した準備期間は
1月に選手とOB含めた会議を最初に行いまして、そこから毎月やっていました。
――その中で難しかった部分は
そうですね。やっぱり資金面であったり、あちらとの細かい調整というのはやっぱり僕たちの力だけではどうにもならないところもあったので、OBの力を借りながら、ただ選手としてもどういう遠征にしたいかっていうのを発言するというバランスは結構気を使うところがありました。
――なぜカナダ、トロントなのでしょうか
トロントっていうのはアイスホッケーの聖地的なところであるので、カナダの中でもトロントに行くっていうのはやはりアイスホッケーをやっているからならではのことだと思います。
――遠征が決まった時の気持ちは
1年の時から遠征にいつか行くかもしれないということは聞いていたので、新鮮な気持ちはあまりなかったんですけど、本当にこういう遠征が実現するっていうのはある意味で信じてなかった部分もあったので、本当に現実になってしまうんだなと驚く気持ちでした。
――選手たちの反応は
やはり海外遠征ということで、人生に二度とないような機会ですので、もちろん嬉しい声がほとんどでしたが、例えば費用はどうするのかとか相手がどれだけ強いのかとか、ある意味不安で試行錯誤のところもあったんですけど、みんな前向きにこの遠征を良いものにしようという気持ちは最初から伝わってきました。
――事前に勉強会を行ったとお聞きしました
相手のトロント大学のことであったりカナダのことを、なかなかあまり詳しくほとんどの部員が知らないので、それぞれ役割分担をして相手がどういうところであるかとか細かいところを共有して、全員で事前に勉強した上で遠征が有意義になるようにしようという形でやりました。
――その中で興味深かったことは
やっぱりあっちの方が日本に比べてアイスホッケーのリーグであったり、学生のアイスホッケーをやる環境がすごく整っているなというのを、色々調べていくにあたって感じました。アイスホッケーというのが国のスポーツだっていう面で、環境が素晴らしい国なんだな、と。やはり毎年オリンピックで金メダル取ったりする理由があるんだなっていうのを感じました。
――遠征において不安に感じていることは
僕自身は英語が全く喋れないので、語学力にはものすごく不安がありますし、細かいことでいうと相手と体格差というのはすごくあって、平均身長と平均体重それぞれ10cmと15kgくらい差があるので、僕は体格には恵まれた方なんですけど、ケガとか体の大きさの差っていうのは多少不安はあります。
――遠征までの予定は
試験後の最初1週間こっちで練習しまして、その後仙台に合宿で1週間行きまして、その後にトロントに行きます。
――遠征へ向けて
僕自身初めての遠征を慶應の主将として率いなければならないことを誇りに思うと同時に、責任はすごく感じているので、これまで準備してくださった方であったりこの場を用意してくださった方のためにも、この遠征を有意義なものにして、後輩にも将来遠征を体験させてあげたいと思えるようにできれば良いなと思います。
(取材:髙橋春乃)