慶大バレー部にとって、2017年は激動の1年だった。春には1部リーグ昇格を決めて嬉し涙を流し、全日本インカレでは2回戦敗退となり悔し涙をこぼした。さらなる進化を期待される今年、慶大バレー部を率いるのが伊藤祥樹(総4)新主将だ。レギュラーの半数が引退し、チームコンセプトも変わった慶大バレー部は、これからどんな強さを見せるだろうか。春季リーグ初戦を4月7日(土)に控えるなか、伊藤主将に今季にかける熱い思いを語ってもらった。
自分ができる仕事を考えた
――昨年度を振り返って
昨年は、若手の力も発揮しながら、上級生の力も合わさっていて。サーブアンドブロックというチームスタイルがある程度徹底できたことが1部昇格につながったんじゃないかなと思います。
――ご自身はコーチとしてチームを支えていたが
もともと肩をけがしていて、レギュラーとして活躍することは厳しい状況でした。その中で自分ができる仕事を考え、アナリストからの情報と監督との繋ぎ役を担っていました。
――実際にはどういうことを
多くは、相手の状況に対してこちら側がどういう風に対応していくかということを考えて指示を出していました。
――自分もプレーしたいとは
あまりそういう気持ちはなくて、自分の持っているノウハウなどを後輩に伝えて、後輩がどれだけプレーしてくれるかということを考えていました。
部員全員の活動を背負った
――主将に決まった経緯は
私たちは発表の時まで聞かされていなくて、突然発表という感じでした。
――なぜご自身が選ばれたと思いますか
同期の中でリーダーシップをとってできるのかなというところと、他の同期がきっちりとした自分の個性やキャラクターがあったので、その中で私がキャプテンに一番近いキャラクターだったというだけで、上手くチームが回るように考えて選択をしたんじゃないかなと思います。
――主将と発表された直後のお気持ちは
「部員全員の体育会の活動を背負ったな」という感じで、どれだけ満足度の高いものにできるかということにおいての責任感は感じました。
――部員からはどんな反応が
ちょっと本人たちに聞かないとわからないです(笑)。
――どよめきなどはなく?
そうですね。岩本龍之介(商4・仙台第二)と私のどちらかがなるという形でしたので、まあ「伊藤か。」という感じじゃないでしょうか(笑)。
――増田拓人(H30環卒)前主将からは何か
「頼むぞ」ということは言われました。キャラクターが増田さんとは大きく違うので、そこに関しては特にアドバイスというようなことはなかったんですけど、それが増田さんとしての気の遣い方なのかなと思います。
個人を活かし、チームを回す
――主将に就任してから心境や意識に変化は
一番は、責任感がすごくて。これまで過去の先輩方が築き上げてきた伝統を壊したくない。「日本一」という目標を掲げた以上、それに見合ったことをやらなくちゃいけないな、そういう風に思いました。
――主将として心掛けていることは
周りを見て、個人の良いところを伸ばしたいなとは思っています。これまで、1年生などはあまり発言する機会がなくて。それを変えて、みんなで作り上げていこうとしています。1年生だろうが上級生だろうが関係なく、良いことを発言したら採用する。そういう風潮を作りたいなとは思っています。
――大変だと感じることは
とくにないです。
――では逆に楽しいと感じることは
みんなが生き生きプレーしている姿を見るのはすごく楽しいと思いますし、目的意識をきっちり持って、みんなで前を向いて一緒に取り組んでいるというところがすごく楽しいです。
――バレー部の主将に求められる素質は
それは人それぞれだと思うんですけど、私の場合は「試合で活躍する、背中で引っ張るタイプのキャプテン」ではないので、「個人を活かしながら、意見を汲み取りながら、上手く回す」という感じですね。
――岩本副将について
冷静沈着に物事を見ています。私が結構あつくなって行動を起こしてしまうタイプなんですけど、私にアドバイスしてくれたりして良い方向にもっていってくれるというか、私の悪いところを補ってくれる存在だと思っています。
――普段は2人で話し合ったり?
2人というか、同期みんなで結構チームのことについては話し合うことが多いんですけど、その中でも岩本は、私がバレーボールにおいて一番信頼していて。練習の強度、メニューの相談、その他諸々含め色々な相談を岩本にはよくしています。
――新4年生の意識が変化している?
そうですね。チームのことを見ようという意識はみんな持ってくれているのかなと思っています。チームを率いるにあたって、「4年生が一番団結しなくちゃいけないよね。バラバラになっちゃいけないよね。」ということを話し合ってきたので、同期の団結というのは自信がありますし、悪いことがあったときにちゃんと本気で言い合える仲というのを築けているのかなと思います。
チーム力を見てもらいたい
――新入生が加わり、チームの雰囲気は
良いと思います。新入生は伸び伸びプレーしていますね。
――3度の合宿を通じて
チームスタイルが確立されたことが一番大きいんじゃないかなと思っています。
――手応えは
「リードブロック(トスを見てから跳ぶブロック)を徹底して、リードブロックからレシーブでつなげて、そこから攻撃に展開する」というのはだいぶ徹底されてきました。それがチームとしての強みであるというのも、みんな実感しつつあるのかなと思います。
――今年のキーマンは
吉田(吉田祝太郎=政2・慶應)ですかね。スパイカー陣を活かすのがセッターであると思っています。どれだけコミュニケーションがとれて、正確なトスを上げ続けるか。「一つ高い次元でのゲームメーク」っていうのができたらもっと強くなるのかなと。そう思う理由が、うちのスパイカー陣は、はっきり言って波があって…強いときはものすごく強いんですよ。だから、今日はどの選手が調子良くてどの選手が調子悪いかということを瞬時に見分けて、じゃあどういうゲームメークをしようか、と考えられるのが一番なのかなと思っています。
――試合におけるご自身の役割は
私は「試合に出て背中で引っ張るキャプテンではない」と先ほどお伝えした通り、けが人がいなければコートに入ることは多分ないと思っています。ゲームになったらコートの6人がどう頑張るかというのを外からサポートする。ですが、試合中のサポートでこういう風にしようとするのもなかなか難しいので、試合以外でのところでどれだけ意識づけられるか。「コートの中の若いメンツが、どれだけ能動的に自分たちで試合を作れるか」ということを考えてやっていくのが自分の役割なのかなと思います。
――コーチということ?
コーチというわけではないんですけど、ある意味コーチなのかな?プレイヤーとしてもやりつつ、外から見ていて良くない点をアドバイスしたりして一つにまとめられたらいいなと。コートに入っていると、なかなかチームのことまで目が配れず、今どういう状況でどういうことをしなくちゃいけないのかというのが難しくなる。試合になったら、私たちは外からアドバイスはできますけど、コートの中の人たちがメインになってやるしかないので。結局、変えるのは彼ら。そこに関してはマルキ(マルキナシム=総3・川越東)や吉田には、「お前らがちゃんとやらなくちゃいけないんだよ。チームのことをよく見て、引っ張っていく立場なんだよ。」ということは伝えてあります。
――試合中注目してほしいところは
まず技術面で言うと、リードブロック。この期間ずっと練習してきたので、リードブロックからのレシーブ、ディフェンス力の向上というのを皆さんに見ていただければいいかなと思っています。その他には、チーム力というのも見てほしいです。うちのチームってみんながみんな自分の良さを持っている。それがチームで一番まとまっているのが慶應なんじゃないかなと思っているので、チーム力についても見ていただければいいかなと思います。
――ご自身の今年の目標・意気込みを
部員がこの部活動において生き生きと満足感をもって成長してくれるかっていうのが自分の中で持っている一番のテーマなので、それが達成できれば一番いいのかなという風には思います。ですが、それを達成するためにも、やっぱり目標がないとそこに到達までのプロセスで生まれてくるものってない。そういうことを考えたときに、やはりチームとしては「日本一」を狙う。そのために個人が考えて行動して、チームに貢献していく。その貢献がチームの組織力となって日本一に近づく。それが一番自分が目標としているところであり、個人の目標というか、チームの目標が個人の目標であるという風に私は思っています。
――応援している方に一言
この部活って、OB含め保護者の方や色々なファンなど、日頃からたくさんの人に支えられて成り立っているな、と感じています。ありがとうございます。私たちも、応援して下さる皆様に感動を与えられるバレーボールを心がけているので、引き続き応援お願いします。そして、私たちをぜひ見に来てください!
――ありがとうございました!
(取材:藤澤薫 写真:内田貴啓)
◇プロフィール◇
伊藤祥樹(いとう・しょうき)
1996年9月18日生まれ/総合政策学部4年/清風/190cm/センター