第82回早慶バレーボール定期戦まであと2日。特別企画最終回の今日は、早慶男子主将対談をお送りする。コートの中でチームを牽引する早大・藤中優斗主将(スポ4・宇部商)と、コートの外からチームを支える慶大・伊藤祥樹主将(総4・清風)。正反対に見える主将像をもつおふたりに、主将としての覚悟や最後の早慶戦に向けた意気込みなど、たっぷりとお話を伺った。
(※この取材は4月14日(土)に早稲田スポーツ新聞会と合同で行いました。)
――面識は
藤中 お互い知っていますけど、話したことは…
伊藤 話したことはないですね。
――それぞれの大学にお知り合いはいらっしゃいますか
伊藤 小林光輝(スポ4・創造学園(現・松本国際))とは、ドリームマッチで一緒のチームだったので。
――お話はされるんですか
伊藤 会ったら挨拶くらいはしますけど、とくにめちゃめちゃ仲が良いとかいうわけではないですね。
早大・藤中主将
――それぞれ早大・慶大に進学した理由を教えてください
伊藤 僕は学生主体でやっているというのに魅力を感じたのと、勉強も頑張りたいという風に思っていたので、両立できる慶應を選びました。
藤中 僕は、監督から声を掛けてもらって行きたいなって思ったのと、1個上の喜入さん(喜入祥充=H30スポ卒・現サントリーサンバーズ)とか憧れの先輩とかがいたので、その人たちと一緒にやってみたいなという思いもあって、入学を決めました。
――ご自身の部活の特徴はどんなところでしょうか
伊藤 慶應は、先生が何も言ってこないっていうところもそうですけど、自分たちで考えて練習に取り組むっていうところが特徴だと思います。
藤中 僕らも学生主体ということで取り組んでいて、僕ら4年生中心に練習メニューとか全部考えて。松井さん(松井泰二監督)があんまり来られないときが多いので、それでも自分たちでやってっていう感じで。とりあえず全体で仲が良いです。
伊藤 松井さん来ないんだ。
藤中 あんまり。学校始まったらもう火曜日は会議で来られないとか、水・木・金はちょっと来れるとか。木曜日は絶対来れる。結構忙しくて。
伊藤 へー。松井さんって教授?
藤中 たしか、准教授だったと思います。
慶大・伊藤主将
――主将に就任されたのはいつごろですか
藤中 全カレ(全日本インカレ)終わってからすぐですね。
伊藤 そうですね。
――どうやった経緯で
藤中 同期の話し合いでした。僕とかじゃなくて(小林)光輝とかでも全然できるんですけど、色々同期と話し合って、僕になって…頑張っていこうと思いました(笑)。
伊藤 僕は、OB会と監督が決めました。
――いつ頃から「主将」や「最上級生」を意識し始めましたか
伊藤 僕はずっと入学してきてから、このチームの在り方とかについて、自分が4年生になったら絶対に変えてやろうって思っていて。3年生からもそうですけど、変えてやろうっていう気持ちはすごいあって。そこから、後輩たちや同期にアプローチしてっていう感じでしたね。
藤中 1年のときは自分の仕事でいっぱいいっぱいで、2年のときは1年生を見るっていう感じで、3年生になってから4年生の手助けっていうか、下も見るけど上と一緒に頑張っていこうって。僕らのスタイルでもあるので、まあ3年生になったときに、4年生と一緒に、来年僕たちの代だからっていうので、ちょっと準備とかしていこうと思っていました。
――実際に主将としてリーグ戦を戦って大変なことは
藤中 自分のプレーとか以前に、チームのことをしっかり見ていかないといけない。まあそれでも自分のプレーもしっかりやらないといけないですし、チームが上手く回るかとか、声掛けだとかをより意識するようになったりました。あと負けたり、ちょっと上手く回らなかったらやっぱり責任を感じてしまうので、それはちょっと大変かな。
伊藤 逆に、今僕はコートに入っていないので、そこのところを外からサポートできる範囲が限られていて、コートの中でどういう風に彼らが主体的に変えられるかっていうのをサポートするっていうのが大変ですね。
――やりがいを感じるときは
伊藤 やりがいというか、新しく色々な仕事を割り振ったりとかしてて、コートの中の人間もコートの外の人間もみんなが自分の責任を果たそうとしている姿を見ると、やりがいを感じますね。ただ、リーグ戦が始まってからは、やっぱり上手くいかないことが多くて、そこに対しては責任も感じています。
藤中 具体的に言うと、水曜日の練習で僕らちょっと雰囲気が悪くて、ちょっと上手く練習できなくて。そのときに松井さんからもちょっとご指導あったんですけど、そういったときに上手く練習メニューを考えたり、チームが円滑に回るようにっていうのを、僕ら4年生が主体で考えていかなくてはいけないので。3年生のときはそういうのを全く考えていなかったので、そういうことを任されるってなったときに、上手く回らないときこそやりがいを感じるなって思います。
――主将としてのモットーは
伊藤 僕は「個性を生かすこと」を大事にしています。色々な部員がいて、色々な価値観の人がいて、それを一つの部としての方針で押さえつけてしまうのはもったいないので、1年生であろうが4年生であろうが、発信し続ける姿勢は大事だと思いますし、その中で良い意見を採用するというのは、学年問わずやってきていることなので、個性を生かすということを僕は大事にしています。
藤中 僕も似たような感じなんですけど、僕自身ががつがつ言うようなタイプではないので、みんなの意見を尊重したいというか。「4年生が絶対」みたいなところはありますけど、その中でも下の意見もしっかり聞く、独りよがりにならないようにチームをしっかり見る、ということを自分のなかで大事にしています。
――同じ主将という立場でお互いに聞いてみたいことは
伊藤 聞いてみたいことというか、やっぱり早稲田は、4年生が最後はどうにかするっていうのを3年間これまで見てきて。そういうスタイルがあって、負担大きそうだなって。逆に僕たちは4年生がコートの中に1人も入っていないので、それよりもどっちかっていうと「下をどう生かせるか」っていう感じなので。違いあるのかなーって。
藤中 やりながら、僕らがグチグチ言うだけではちょっとチームも…たしかにプレーで引っ張っていかないとっていう部分では、僕ら4年生はまだ…あ、光輝は多分大丈夫だと思うんですけど、僕と幸也(鵜野幸也=スポ4・早稲田実業)に関してはまだまだだと思ってるので、そこは大変かなって。
――藤中さんからは
藤中 今、実際に下の学年が出ているっていう形で、どういう風にやっているかをやっぱ参考にしたいなって。なんかその、自分が出てない立場としても、でも言うときはしっかり言わなくちゃいけないっていう。どういうふうにメリハリつけてるのかなって。
伊藤 あー。それは後輩たちに役割を与えて、色々な意見を出してもらう。ただ、最終決定権は自分にあって、色々な意見は聞くけど、自分の軸はぶらさないっていうのが、自分では大事なのかなと。やっぱり、聞いてそれに流されていうるような主将だと、チームもまとまらないと思いますし、自分の中で軸を作って、それに対して良い意見だったら採用していくっていうのが大事なのかな。
藤中 すぐぶれちゃうの(笑)。「あ、その意見良いね」みたいにすぐフラーっといっちゃう。
伊藤 (笑)けど、それが体現できないっていうのがなかなか厳しいですね。自分の頭で思い描いているイメージとかあるじゃないですか。それがこう、表現できないっていうのが難しくて。表現させるために、キーマンを一人作って、その選手にこういうイメージでやるっていうのを刷り込んで、それを体現してもらう。もう一人の身代わりみたいなやつをつくって、それをやらせるっていうことを今やろうかなって思います。
――身代わりできそうですか
藤中 身代わりですか…できるかな…
伊藤 彼は自分でプレーで表現できるので大丈夫だと思います(笑)。
――今日(4月14日)対戦してみてお互いの印象は
伊藤 今日に関してはクイックがずっと通されてしましました。そのためのサーブカットとか、ディフェンス面が良いなっていうふうに思いました。
藤中 慶大のサーブは強いので、サーブで攻められてこちらのレシーブが乱れたら厳しいと意識、警戒していました。今回も富澤太凱くんのサーブでやられてしまったので、僕らもサーブレシーブを頑張りたいと思いました。しかも前衛が高かったので、ちょっと注意したいです。
――お互いに今のコメントを聞いてみて
伊藤 高いのはそうですね。実際に今日も崩してるボールとか、段トスになるボールとかは仕留められていた部分もあって、そこは利なのかなって思いますけど、そこに持ち込む展開が難しいというか。やっぱりレセプションにやられたっていうイメージですね。
藤中 まあレセプションが安定しているっていう感じでしたけど、僕らの中ではまだ、結構今日も崩されていて。フローターはぼちぼち、まだ合格点はあげられないですけど、ジャンプサーブに対してまだ全然対応できていないので、僕らの中でも、今日の慶應さんの富澤くんのサーブのような強いサーブが来たときに、って今日も課題が見つかったので、頑張らなくちゃいけないなって思います。
――お互いに警戒したい選手は
藤中 富澤選手を乗らせちゃうとちょっと怖いかなっていうのはあります。
伊藤 …いやもう全員警戒しなきゃいけないですね(笑)。イメージ的に誰か一人が強いっていうバレースタイルではないので、全員で上手く短所やできないところを補っていくっていうのがあると思うので、誰か一人を警戒したところで勝てるという風には思っていなくて。まずは警戒というよりも自分たちのプレーをすることが大事なのかなと思います。
――リーグ3日目が終わった現時点で、今後のチームの修正点は
藤中 プレー面で言うと、まだ僕らもコンビ力があんまり発揮されていないのと、レセプションをしっかり出すっていう2点ですね。春リーグはファーストブレイクを僕らは意識しているんですけど、そこの部分をまた春リーグ通して修正していけたら良いかなと思います。それから、今日の…何度も申し訳ないですけど、富澤くんのサーブで攻められたときにちょっとチームがバラバラになっていたので、そこでとチームでぎゅっと、サーブを切ろうっていう感じになれるように。僕のそこはスキルだと思うんですけど、そこを課題として修正していけたら良いなと思います。
伊藤 まずは、コートの中でまとまって、実力が出せることが第一だと思います。細かいプレー面では、サイドアウト側もブレイク側もまだまだ精度が荒いというか、調子の波とかに左右されてしまうことが多いので、それが少なくなると良いのかなと思います。
――部内で対立が起こった場合は放置(見守る)しますか、介入しますか?
伊藤 えー…
藤中 難しいですね。
伊藤 これまでは、介入してきたんですけど、これからは自分で考える力がちょっと足りないって気づいたので、そういうのも増やしていこうかなと。今日も、今ミーティングやっているんですけど、僕はもう何も言わないよって言って、ミーティングをさせています。
藤中 そうですね、僕もそんな感じで、考えさせるっていう感じ。最初は極端な話放置しておいて、変な方向にずれてたりとか、おかしいなって思ったら、僕らも助言っていうかヒントっていうか、僕らが正解っていうわけではないですけど、そういう助言をして介入してあげますね。
――上手くいっていない選手、調子が悪い選手がいたら、褒めて伸ばしますか?喝を入れますか?
伊藤 まあ選手によって違うんですけど、最終的にはプラス思考になったほうが、伸び伸びとできる選手が多いので。本当に悪いときは、喝は入れます。そのうえで、ただ言うんじゃなくて、なんで悪かったのかを後から考えさせるようにします。
藤中 まあ基本はほめて伸ばす。プレー以外とか仕事の面とかでできてなかったら、そこはしっかり厳しいことは言いますけど、プレーに関して、スパイクミスとかに関してであれば「気にすんなー」であったり、「まあ次も攻めろよ!」みたいな感じで、ポジティブになるように声を掛けるようにしています。
――早慶定期戦で自分たちのチームでキーマンになりそうな選手は?
伊藤 やっぱりセッターっていうポジションで、ゲームコントロールしなくちゃいけないので、吉田(吉田祝太郎=政2・慶應)。良くも悪くも現状波があるチームなので、それをコントロールして、上手く調子の良い選手を生かしてくれるんじゃないかなって思います。
藤中 まあこの選手が鍵になります(笑)。理由としては、下の選手、村山(村山豪=スポ2・駿台学園)とか宮浦(宮浦健人=スポ2・鎮西)とか、正直言って強いので、勝ちこんでくれるので、まあ波があるっていったら、正直僕とか幸也かなって思ってて。去年から変わったのも幸也だけですし、まあこの子が、この人が(笑)、しっかりやってくれれば、大丈夫だと思うので、思いを込めてこの人にしました。
――今年の早慶定期戦の見どころは
伊藤 早慶戦自体をビックイベントにしようとしていて、試合以外の他のイベントとかもありますし、楽しんでいただくっていうのが一番のコンセプトなので、そういったところにも注目していただきたいです。試合に関しては、慶應が早稲田を食うか、っていうそこですね。そこが見どころだと思います。
藤中 例年以上にビックイベント的な感じで早慶戦を行うと思うので、例年以上に観客が入って、盛り上がりが必ずあると思うので、お客さんに楽しんでいただくっていうコンセプトの中で、僕らもしっかり盛り上げていけるようにっていうのを意識してやっていきたいと思います。
――最後に意気込みをお願いいたします
伊藤 今年は例年以上に大々的に開催されるので、それだけ準備も多くの人が時間をかけてやってきていますし、また入場料も頂くということで、見に来てくださった方々に喜んでいただけるように、感動を与えたられるように、というのを心がけ、来てよかったと思っていただけるような試合にしたいと思います。
藤中 毎年行っている定期戦なので、いつもと違う、リーグとかとは違う雰囲気の中でできるのもすごい楽しみですし、その伝統、歴史のある試合で、堂々とプレーできるように、頑張っていきたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材:早稲田スポーツ新聞会 松谷果林/慶應スポーツ新聞会 藤澤薫)
第82回早慶バレーボール定期戦は6月10日(日)とどろきアリーナにて開催されます。
◇プロフィール◇
藤中優斗 (ふじなか・ゆうと)
1996年4月20日生まれ/早稲田大学スポーツ科学部4年/宇部商業高/身長183センチ/最高到達点325センチ/サイド
伊藤祥樹 (いとう・しょうき)
1996年9月18日生まれ/慶應義塾大学総合政策学部4年/清風高/身長190センチ/最高到達点325センチ/センター
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