秋のリーグ戦が始まって以降、澤近智也(環4・高知学芸)の躍進は止まることを知らない。パスを受けてジャンプショットを決めたかと思えば、リバウンドを体格差のある相手から勝ち取る。スティールから速攻に持って行くことも、綺麗なアーチを描いて外から3ポイントを決めることもある。インサイドで大型ビッグマンと対等に戦う澤近は、今の慶大にとってなくてはならない存在だ。
高橋晃史郎(2018年卒)らが引退して以降、全体的にサイズの小さくなった慶大は、どうしてもインサイドがウィークポイントと思われがちだ。その中で澤近は「自分が頑張って慶應も負けてないぞと思わせたい」と語る。ここまでの12試合、サイズの大きな相手にも慶大が負けず劣らず戦うことができているのは、澤近のこのような思いが全面に出るフィジカルの強さの賜物だ。
いかにして澤近はこの体の強さを掴み取ったのだろうか。チームの大黒柱となっているフィジカルを鍛えたのは、これまでの練習環境にある。昨年までの練習でマッチアップするのは、高橋や木村能生(2018年卒)といった大型選手だった。長らく練習でもミスマッチな相手と戦ってきたことが、澤近の強さになっている。
澤近の活躍はリバウンドだけにとどまらない。リーグ戦が始まって以降2桁得点が当たり前のようになり、得点とリバウンドのダブルダブルを達成することもしばしば。FG成功数のランキングでは上位に位置する。この2ヶ月で得点面においても大きな飛躍を見せているのだ。オフの期間にシュート練習にも積極的に取り組んだそうだ。その練習を後押ししたのが、春のトーナメントで山﨑純(環3・土浦日大)に頼ってばかりで何もできなかった自分への戒めと、4年生で話し合いを繰り返した結果に芽生えた最上級生としての自覚。リーグ前半戦、怪我で長期離脱していた山﨑の不在を、澤近の得点力が十二分にカバーした。
攻守ともに毎試合奮闘を見せる澤近だが「自分だけにならないように」と自分が活躍することに強いこだわりは持っていない。自分で攻められる時は攻めるが、チームの勝利のためには鳥羽陽介(環4・福大大濠)や髙田淳貴(環3・城東)、山﨑がシュートを打った方が得点に繋がると考えているからだ。コート外でも後輩から4年生に話しかけるのは躊躇してしまうだろうと、話しかけやすいキャラクターを自然に出せるようにしているという澤近。コート内でのコミュニケーションも円滑になっている。コート外でもコート内でもチームのことを考える姿勢が慶大に良い流れをもたらしていると言えるだろう。
9月30日に迎えたリーグ第12節、一巡目で大敗を喫した上武大を迎えての一戦。序盤から慶大の出来が思わしくない中、澤近はいつもと変わらず目の前の相手と戦うプレーで、1Qに10点を挙げチームを鼓舞。その後も40分間コートに立ち続け自身は26得点15リバウンドのダブルダブルを達成、見事リベンジを果たした。貢献度が高まっている分、澤近にかかる負担は並大抵のものではないだろう。しかし、「自分の疲労はチームには関係ない」と澤近はしっかりと前を見て言い切った。
「体を張ったプレーや、あまり数字には現れないところでチームに貢献したい」と白星でスタートした後半戦に決意を新たにした澤近。12戦を終え6勝6敗。1部昇格には決して楽な立ち位置ではない。しかし慶大には前をしっかりと見つめ、チームを第一に考え、目の前の一戦一戦と常に向き合ってきた大黒柱がいる。大型選手にも負けないフィジカルでゴール下を守る澤近が、これから続く上位校との対戦でも慶大の勝利への道を支えていくはずだ。
(記事:船田千紗)
☆リーグ戦第13~15節スケジュール
日付 | 開始時刻 | 対戦相手 | 会場 |
10/6(土) | 12:10 | 国士館大 | 日体大世田谷キャンパス |
10/7(日) | 13:50 | 日体大 | 日体大世田谷キャンパス |
10/8(月) | 14:40 | 法大 | 日体大世田谷キャンパス |