12月1日(日)、早稲田大学において第53回少林寺拳法早慶定期戦が開催された。新人の部では見事に1人も負けることなく完勝を果たす。本戦の部では接戦を繰り広げるも、あと一歩及ばなかった。
慶大 | 新人の部 | 早大 |
高橋良希(総1・ハロー校・五級) | 〇2-0 | 鬼頭良空(六級) |
多田光伯(商1・逗子開成・五級) | 中止 | 芝田健自(三段) |
千田有希乃(薬1・桐生・二段) | 〇2-1 | 首藤けい(六級) |
小松英之(政1・慶應・五級) | 2-2 | 井上将(初段) |
金デヒョン(法2・清州大成・五級) | 〇2-0 | 笠井直樹(六級) |
3勝0敗1分け | 結果 | 0勝3敗1分け |
慶大 | 本戦の部 | 早大 |
佐藤太紀(商3・北見北斗・三段) | 〇3-2 | 安部宏哉(初段) |
入江誠志郎(経2・慶應・二級) | 1-1 | 大橋知直(三段) |
楠田マリア(経2・聖ヨゼフ学園・二級) | ●0-5 | 山口琴弓(三段)
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五十嵐幸佑(理3・札幌西・二段) | ●0-2 | 中村圭一郎(三段) |
田崎俊介(経3・慶應・三段) | ●0-2 | 居作和英(三段) |
森上雄大(総3・慶應・二段) | 〇2-1 | 刈谷壮基(三段) |
2勝3敗1分け | 結果 | 3勝2敗1分け |
12月1日(日)第53回少林寺拳法早慶定期戦
@早稲田大学早稲田キャンパス17号館空手場
少林寺拳法部は珍しいことに、早慶戦が新チームとなって迎える最初の舞台だ。しかし、選手の顔に緊張の色はなく、新主将の森上雄大(総3・慶應)を中心に今年も例年と同様に、熱い試合が行われた。
ルールを解説すると、試合は1分間を2セットで行われる。判定は技ありのみで、その本数の差によって勝敗が決する。最終的に、早慶定期戦の勝敗は各試合の勝利を合計した数で決定する。
慶大は試合前に円陣を組み、気合いは十分。会場は大いに盛り上がり、いよいよ試合が始まった。
新人の部では入部一年目の選手のみが出場し、見事な試合を見せた。先鋒は高橋良希(総1・ハロー校)。開始早々、中段蹴りを鮮やかに決め試合の主導権を握ると、終盤にも中段蹴りを決め相手を突き放した。見事に勝利を収め、早慶戦に勢いをつけた。次鋒の多田光伯(商1・逗子開成)の試合はアクシデントのため中止となる。中堅は女性拳士同士の戦い。千田有希乃(薬1・桐生)は相手に技ありを許すも、上段突きで試合を制した。
続く副将戦は、引き分け以上で新人の部の勝利が決まる大事な試合だ。小松英之(政1・慶應)は中段突きなどで2つの技ありを連取する。しかし、早大にも意地がある。1分間の休憩の後、早大に追いつかれる。あと一歩のところまで追い詰められるも試合終了。引き分けとなり、新人の部の勝利が決まった。
最後はいよいよ大将戦。金デヒョン(法2・清州大成)は、ここまで負け無しで来ただけに、大将として絶対に負けられない。最初はほぼ互角の戦いを繰り広げる。そして、金の技ありが決まったかに思えたが、審判の協議の末無効となった。しかし、金は自らの体格を生かし、再び見事な中段蹴りを決める。再び協議となるも、金の技ありが認められ、勝負あり。見事に新人の部を無敗で終えた。
続いて本戦。慶應は新人の部の勢いのまま、2年連続の定期戦勝利を目指す。先鋒として入ったのは、昨年の早慶戦にも出場した佐藤太紀(商3・北見北斗)。前半29秒に先制を許すも、落ち着いたプレーで点を取り返し、1-1で前半を折り返す。慎重な試合運びが目立った前半から一転、後半は両者攻勢に転ずる。激しく展開する試合にあっても、佐藤は冷静さを失わなかった。早稲田の先鋒・安部宏哉(政経3・麻布)が攻めこんできたところを狙い、後半15秒、2秒に連続得点を奪って勝利した。
佐藤の粘りで初戦をものにした慶應は、次鋒に入江誠志郎(経2・慶應)を送る。前半は探り合いの状態が続き、無得点のまま後半へ。試合が動いたのは、後半残り15秒の時だった。
早大・大橋知直(文構2・早稲田実業)の突きが有効となり、早稲田が欲しかった先取点を挙げる。追い込まれた入江は、再開直後に攻め込む。この攻撃で鮮やかな蹴りが決まり、引き分けに持ち込んだ。
3戦目は、女性拳士による中堅戦。勝利すれば、早慶戦優勝がぐっと近づく大事な一戦だった。しかし、ここで早稲田の中堅・山口琴弓(教育2・桐蔭学園)が圧巻の試合運びを見せる。開始直後に上段突きで先制すると、前半だけで3点を奪って主導権を握る。後半開始後、慶應の中堅・楠田マリア(経2・聖ヨゼフ学園)も反撃を図るが、山口がそれを確実に防ぎ、さらに2度の有効を取り、5-0と楠田を圧倒した。
三将戦に出場したのは、チームのムードメーカーでもある五十嵐幸佑(理3・札幌西)。
勢いづく早稲田を食い止めたいところだったが、隙のない守りに阻まれ、なかなか点を奪うことができない。逆に、後半残りわずかとなったところで連続失点を許してしまい、惜しくも敗れた。
後がなくなった慶應は、チームの命運をエース・田崎俊介(経3・慶應)に託す。この副将戦での敗北は、チームとしての敗北を意味していた。そんな重圧からか、プレーにも焦りが生まれる。前半は自身でも「もっと積極的にいくべきだった(田崎)」と振り返るように、慎重な試合運びのまま無得点。後半に入ってからは先制を許すなど、最後まで自分のペースに持ち込めなかった。残り時間わずかとなったところで攻めこむも、逆に有効を奪われて万事休す。2年連続の早慶定期戦優勝とはならなかった。
チームとしての敗戦が決まった中での大将戦。主将・森上雄大(総合3・慶應)は「状況をのみこめなかった」と振り返るほどのショックを抱えながらも、自身を奮い立たせた。1点のリードを許して迎えた最終局面、気迫の攻勢で2点を奪取。敗戦で静まり返っていた慶應サイドから、この日一番の歓声が沸き起こった。
新体制として、早慶定期戦優勝という最高のスタートを切ることはできなかった。しかしこの敗戦は、最高のチームになるための大きな第一歩になったのではないだろうか。新人の部の奮闘、森上主将の気迫、部員全員で流した涙。それらすべてが、各々の記憶に強く刻まれたことだろう。次なる舞台は5月の関東大会。勝って泣くための準備は、もう始まっている。
(記事・写真:菊池輝、野田快)
◎選手コメント
田崎俊介(経3・慶應)
――大会を終えて、率直な感想は
早慶戦勝利を目指し練習してきたため、結果を出したかったのですが、非常に悔しい結果となりました。
――どういった想いで早慶戦に臨んだか
例年、慶應が接戦を制し、早稲田に勝利するという展開だったため、今年も勝って連勝するという気持ちで臨みました。また、沢山の先輩方や先生、監督に御指導をして頂いたので、勝利し、良い報告をしようと決めていました。
――厳しい局面での副将戦となった
私は慶應のエースとしてメンバーに選んで頂いたため、なんとしても大将である森上に繋げようと考えていました。負けてはいけない場面でしたが、冷静な試合運びを心がけていました。
――ご自身の試合を振り返って
前半は少し見合う時間が長かったと反省しています。自分からもっと攻撃を仕掛け、積極的にいくべきでした。後半は先に一本取られてしまい、焦りの中さらに一本取られ、完全に冷静さを失ってしまいました。どんな場面でも自分の試合展開をできる精神面、そして必ず一本が取れる自分の技を磨くことが足りないと思いました。
――今後の目標は
まずは来年度最初の大会である、関東学生大会での優勝です。我々60期が幹部となって最初の学生大会のため、この悔しさを糧に、チーム一丸となって優勝を目指します。
森上雄大(総3・慶應)
――大会を終えて、率直な感想は
やはり、負けてしまったことはどうしようもなく悔しいです。主将として誰よりもメンバーの努力を見てきたので、勝たせてあげられなくて本当に申し訳ない。でも、やれることは全てやったという自負もあり、清々しさも感じています。
――チームとしては負けが決まった中での大将戦となったが、どのような意識で試合に臨んだのか
負けが決まったことも大きかったですが、副将の田﨑は我が部のエースということもあり、私を含め部員全員が、状況を飲みこめないような状態でした。でも最後の1秒まで諦めず、必死に戦ってくれた田﨑を始めとするメンバーのためにも、ここで折れるわけにはいかない、負けるわけにはいかないと自身を奮い立たせました。
――ご自身の戦いを振り返って
結果としては勝利できましたが、内容としては反省ばかりです。早慶戦という大舞台で1番平常心を欠いていたのは、主将の私かもしれません。
――チーム全体としての反省点や収穫はあったか
少林寺拳法は基本的に個人競技であり、団体戦は早慶戦くらいしかありません。その意味では、部としてチームで戦うという経験そのものが、大きな収穫だったと思います。
また出場した2年生たちから、「来年は必ず雪辱を晴らす」と言ってもらえたことが嬉しかったです。早慶戦の重みを理解した上での言葉には重みがあったし、本当に頼りになる後輩たちです。
――新人の部について
本当によく頑張ってくれました。経験者が多い早稲田に対し、今年も大学から始めた初心者ばかりの我が部ではありましたが、早慶戦という大舞台で練習以上の動きを見せる彼らには本当に勇気づけられました。なにより、勝つために自分から攻める姿勢を見せてくれたことが嬉しかったです。
――今後に向けて
今年の早慶戦は終わってしまいましたが、私が主将を務める新体制はまだ始まったばかりです。来年の早慶戦はもちろん、5月の関東大会、11月の全日本を見据えて今から精進していく所存です。今後とも応援のほど宜しくお願いします。