春季の重要な試合である第49回全関東学生弓道選手権大会団体戦が、6月15、16日に日本武道館で開催された。本大会は関東の大学が集まり、例年白熱したトーナメントが展開される。各大学による迫力のある応援も今大会の魅力の一つだ。昨年は男女共決勝トーナメントに進出した慶大だったが、結果は男女共に予選敗退。昨年の雪辱を晴らすことはできなかった。
第49回全関東学生弓道選手権大会団体戦
6月15日 @日本武道館
※一回の試合で4本矢を放つ。男子団体は6人、女子団体は3人で構成され、予選はそれぞれ計24本、12本のうち、的に中(あた)った本数の多い上位16チームが決勝トーナメント進出となる。
台風並みの大雨が降る中、今年も武道館で熱い戦いが繰り広げられるだろうと思われた今大会。しかし、今年の慶大は何かがおかしかった。
昨年惜しくも決勝トーナメント二回戦で姿を消した男子部は、3選手が下級生というフレッシュなメンバーで臨んだ。しかし、前半12射を終えた時点でわずか6中。普段の慶大からは考えられない的中で予選を折り返す。ここから修正し決勝に駒を進めたい慶大だったが、前半二中していた牧原が2本ともに外すなど的中を伸ばすことができず。24射13中という結果で、慶大男子部の戦いはあっという間に幕を閉じた。
まさかの敗退を喫した男子戦の後に行われた女子戦。慶大は下級生の頃から試合に出続けている3選手で臨む。しかし、男子部の悪い流れを断ち切ることはできない。前半6射を終えて、0中。アリーナに潜む魔物が容赦なく慶大に襲いかかる。後半戦は落を務めた橘田英里香 (経4・慶應女子)が2射2中と粘りを見せるも他が結果を残せず。12射3中という結果で予選敗退となった。
前日の団体戦の悔しさを胸に臨んだ個人戦決勝。慶大からは本郷一輝(法4・慶應湘南藤沢)、牧原俊介(経3・慶應義塾)、柏木咲良(経2・筑波大附属)の3選手が出場したものの、入賞は叶わなかった。
第49回全関東学生弓道選手権大会個人戦決勝
6月16日 @日本武道館
※射詰…サドンデス形式で各選手順番に矢を放つ。3本目までは尺二(36cm)の的、4本目以降は八寸(24cm)の的を使用する。順位決定は同じ的を狙い、中心に近さで順位を決定する遠近競射が行われた。
厳しい予選をくぐり抜けた選手だけが立てる決勝トーナメント、前日の雪辱を晴らすべく、まずその舞台に上がったのは柏木。射を終えた選手がすぐに移動することや一本ごとに歓声が響くことで集中力が乱される中、見事1本目を的中させる。慶大弓術部女子としての意地を見せたい柏木だったが、2本目はわずかに枠に入らず。ここで決勝トーナメント敗退が決定した。
女子に続いて行われた男子個人戦の決勝トーナメント。本郷、牧原共に一本目を的中させ、慶大選手の入賞に望みをつなぐも、2本目には両選手とも的を捉えられず。入賞が期待された慶大の選手達だったが、誰も遠近競射に辿り着くことができず、慶大の戦いは幕を閉じた。
試合後、主将の本郷はアリーナという舞台の特殊性について話してくれた(後述)。彼によると、武道館は普段の試合会場と大きく2つ異なる。
まず、全方位から響く歓声。武道館は珍しく声をあげて応援することが許されている。そのため、会場には大きな声で応援が降り注ぐ。次に、上がひらけていることで狂う遠近感。普通の弓道場と違い、射場と的はこの大会のために急遽設営されたものであるためだ。様々な特殊条件が重なり、それに対して準備しきれなかったことが、今回の結果につながってしまった。
昨年の雪辱を果たすことは叶わなかった。しかし、再来週に行われる選抜大会に向けて、課題は浮き彫りになった。崩れてしまった慶大の「柱」を立て直すために与えられている時間は2週間。「悪いところはどんどん変える」(本郷)という言葉通り、この2週間は慶大を大きく成長させる期間になるだろう。今日の敗北を今後の慶大の糧に。ただで立ち上がるつもりはない。
(記事:五十右瑛士 写真:五十右瑛士、左近美月、松嶋菜々美)
以下、選手コメント
本郷一輝(法4・慶應湘南藤沢)
主将としてチームを牽引した本郷
──アリーナという特殊な会場、ここに向けて準備してきたことは
うるさい会場なので、この雰囲気に慣れるためにいつもの道場でも音声を流したり、似たような試合形式で練習試合もしてきました。
──遠近感の違いについては
遠近感についてはしょうがないですね。これを再現することは難しいですし。そこらへんは経験値によってしまうので、それ以外の技術的な部分でどうにかして、練習と同じ形で引けるようにするしかないです。
──団体戦を振り返って
正直、アリーナというものは特別というか、練習でも出たことがないような結果だったので、チームとして色々やるべきことが浮き彫りになったのかなと思います。
──個人戦を振り返って
そうですね、準備不足というのが大きかったのかなと思います。色々忙しかったので、まあそれを言い訳にはしたくないんですけど。そこは反省して、これは団体戦にも言えるんですけど、もっともっと準備できるところがあって、そこを入念にしていくしかないんじゃないかなと思います。あとは、アリーナって本当に特殊で。自分の中では頑張っていたつもりなんですけど、終わってみれば全然頑張っていないというのがアリーナなので。振り返るともう少し粘れる部分があったんじゃないかと思ってしまうのがこの会場なんです。そういう特殊な緊張感とかプレッシャーというのがこの結果につながったのかなと思います。
──再来週に行われる選抜大会に向けて
慶應というチームにとって、選抜に選ばれている7人というのは今年のチームの「柱」なので、その柱がなぜ崩れたかというのをもう一度よく考えて、しっかり対策したいと思います。良いところは変えずに、悪いところはどんどん変えていくつもりです。
──ありがとうございました。