第55回ラグビー祭
慶大14-27明大
7月6日(土)15:00K.O.
@慶大日吉グラウンド
春季大会を1勝4敗で終えた蹴球部。春シーズンの最終戦、相対するは昨年度大学選手権の王者・明治大学だ。慶大は試合開始直後にトライを許したものの、ディフェンス陣の奮闘から前半を0-5で折り返す。後半は点の取り合い。突き放しにかかる明大に対し、慶大はFL河合秀和(総4・國學院久我山)がトライを挙げるなど食らいついたが、一歩及ばず14-27で敗れた。
前夜の雨を感じさせる慶大日吉グラウンド。子供から大人まで多くの観客に見守られる中、試合は慶大のキックオフで始まった。
先制したのは明大だった。前半2分、一瞬の隙から、ディフェンスラインを突破され、相手HOにトライを許す。その後も明大FW陣の強力なスクラムとBK陣の素早いパス回し、スピード感に圧倒され防戦一方の展開が続いた。
しかし、慶大は粘り強いディフェンス、そして低く鋭い伝統の「魂のタックル」で最初の1本以外トライを許すことなく、前半0-5で折り返す。
迎えた後半。またしても先にスコアを動かしたのは明大だった。13分、パスミスをつかれ攻め込まれ、自陣ゴール前でのラインアウトからパスを回されトライを献上。15分にも相手WTBにセンター付近から独走を許しトライを献上し、スコアは0-15。このまま試合は明大ペースで進むかと思われましたが、ここで終わらないのが慶大。30分、FL河合が相手タックルを飛び越えてかわし、相手ディフェンスを引きずってそのままトライ。
「個人的に、慶大は決めきる力・取りきる力が高くはないと思っていて、その中で自分が(トライを)取らなければいけないと思っていた」と川合が待望のチーム初得点をもたらした。
WTB高木一成(商4・慶應)のコンバージョンキックも成功し、7-15と追い上げる。
34分にトライを許したものの、39分に再び慶大に見せ場が訪れる。WTB菅涼介(政2・慶應)、SO鎌形正汰(商3・慶應)のゲインで相手ゴール前に攻めこみ、最後は粘るディフェンスを振り切り、WTB菅が中央でグラウンディングに成功。CTB栗原由太主将(環4・桐蔭学園)のコンバージョンキックも決まり、14-20とあと一歩のところまで追い上げを見せた。しかし、試合終盤明治の力強い攻撃からトライを許したところでーノーサイド。14-27で敗北を喫した。
春シーズン最後の試合となった明大戦。勝利という形では飾れなかった慶大だが、多くの収穫を得る試合になったことは間違いない。「後半になるにつれて互角のスクラムが組めた」と川合が試合後に語ってくれたように、慶大の選手達は試合の中でも成長を遂げている。
そんな彼らが暑い夏を乗り越え、さらに強くなった姿で我々の前に現れてくれるのを期待せずにはいられない。「春シーズンは満足する結果にはいかず、悔いが残ってしまった」という栗原主将の言葉には、悔いを残さないためには勝利しかないという強い決意が見える。
120周年を迎える慶應蹴球部の秋。関東大学対抗戦、そして全国大学選手権。1999年度以来悲願の日本一への戦いはもうすぐそこだ。
(記事:刀禰仁生 写真:堀内大生、萬代理人、栗栖翔竜)
(試合後コメント)
栗原徹HC(ヘッドコーチ)
──春季大会が終わってから今日までの約3週間はどのような練習を積んできましたか
すごく基本的な、ベーシックスキルをたくさんやってきました。
──今日の試合を振り返ってみていかがだったでしょうか
みんな選手たちは一生懸命やれたかなと思います。
──夏また秋に向けてはいかがでしょうか
ベースはしっかり出来つつあるので、ベースをもう少し高めつつ、秋は一発勝負なので作戦も考えながら準備していきたいと思います。
──今日はラグビー祭ということで多くの観客に見守られる中での試合となりましたが
選手たちの力になったと思いますので、いつも以上にみんな頑張れたと思います。引き続き直に応援して頂ければと思います。
CTB栗原由太主将(環4・桐蔭学園)
──試合を振り返って、率直な感想を
(チームのみんなが)よく頑張ってくれたなというのと、これが現実だなというのと…。この2つです。明治さんが5トライだったのに対して、僕たちは2トライでしたが、これが彼らとの差なのだと思います。ですがその中でも、みんなしっかりとマインドを持って体を張ったプレーをしてくれました。負けてしまいましたが、ポジティブには捉えています。ただ、勝とうという気持ちでやってきたので、とても悔しいですね。
──「差」について具体的に感じたことは
フィジカルの部分であったり、スキルの面であったりです。僕たちも我慢できた場面はありましたが、明治さんは点を取れる状況でしっかりと取れていたので…。
──明大の突破を許してしまう場面も多く見られました
前半は多かったですね。うちのディフェンスも意思統一がなかなかできておらず、外に引いてしまっている部分がありました。後半ではそこを修正するために、「外に回される前に詰める」ということを意識しました。止められる場面も増えていったのでよかったと思います。個人としては、ミスも多かったのでまだまだですね。
──前半と後半それぞれについて簡単に振り返ると
前半は、我慢しながらディフェンス8割という気持ちでした。抜かれる場面は多かったですが取られたトライは1本だったので、よかったのではと思います。後半に関しては、エリアマネジメントのところで僕たちが少し見すぎてしまった部分があったり、疲れなどによってディフェンスが我慢しきれなくなってしまったりしました。見えた課題をその都度共有して、試合の中で改善していければと思います。
──これで夏前の試合は最後となりましたが、今日見えた課題は
僕自身としては、ディフェンスを頑張ろうということと、アタックの場面でもう少し周りを生かせるようなプレーをしていきたいなと思いました。チームとしては、気持ちの部分は大丈夫だと思うので、あとはスキルやトライを決めきる力を磨いていければと思います。
FL川合秀和副将(総4・國學院久我山)
──今日の試合を振り返って
春シーズン最後の試合ということで、一人一人が責任感を持って体を張るプレーをしていたことはチームの成長かなと感じています。前・後半とアグレッシブにディフェンスをして、春シーズンを通して自分たちが目指していたものが出せたことはすごい良かったです。ただ、結果は負けてしまったので、スキルの部分ではまだまだ足りないので、夏に向けて課題を設定して取り組んでいきたいと思います。
──王者明治戦に向けてのゲームプラン
いつも通り自分たちで考えながら、臨機応変に対応していこうとしました。基本的にはそんなに悪くなく、ガツガツくるFWに対してしっかりアグレッシブにディフェンスをし、相手の強いスクラムに対しては、更に低いスクラムで対抗していこうとしました。結果的に、後半になるにつれて互角のスクラムが組めたので、FW陣としてはプラスな試合となりました。
──トライを振り返って
がむしゃらに飛び込みました。個人的に、慶大は決めきる力・取りきる力が高くはないと思っていて、その中で自分が(トライを)取らなければいけないと思っていたので、狙い通りトライを取り、流れを変えることができて良かったです。
──オールスターでは味方として、今試合では敵として戦った明大FW陣について
(明大FW陣の)レベルは高く、走力もあり、体の強さもありますが、体が大きい分自分達の(タックル)は低く突き刺さるので、自分たちの強みを生かしてやれば、対等以上に渡り合えると思っていて、そういった部分ではある意味自信の持てる試合となりました。
──夏合宿における、FW陣の強化ポイント
セットプレーはもちろんのことながら、BK陣と連携をとったディフェンスや、今年から(BKヘッドコーチに就任した)三井さんが目指しているアグレッシブなディフェンス、コネクトスリーなどといった部分を完成形に持っていくことが夏合宿中に達成しないといけない課題だと思っています。
──秋に向けて
もう後戻りはできないので、夏合宿を通じて、部員一人一人が春のシーズンで明確となった課題を改善し、日本一へ向けた意識を統一する事で、結果は自ずとついてくると思うので、まずは日々の準備からしっかりしていきたいと思います。
WTB高木一成BKリーダー(商4・慶應)
──今日の試合はどのような気持ちで臨みましたか
僕たちの代の春シーズン最後の試合ということで、自分たちが今までやってきたことを全て出して、試合にもしっかり勝とうという意気込みで臨みました。
──試合を振り返って
我慢強いディフェンスもできたのですが、詰めきれない部分もあり、一発で持っていかれてしまった場面もあり、そこは明治さんの力だなと思いました。そこをしっかりと突き詰めて、次秋に試合をする時は勝たなければいけないなと思いました。
──明大の印象は
明治はフォワードがすごく大きいのでフォワード勝負にはなると思って臨んで、今回フォワードが頑張ってくれて、しっかり対抗できたというのが今回の収穫になりました。
──エリアマネジメントの出来は
上手く脱出できなかった部分が多々あったのでそこは修正していかなければいけないなと思いました。上手くできた部分もあったのでそこは継続していきたいなと思います。
──秋に向け意気込みを
大学日本一を取るためにものすごく重要な夏になると思うので、この夏が勝負だと思ってチームの底上げをしていければいいなと思います。
CTB菅涼介(政2・慶應)
──久しぶりのAチームでした
私生活の部分から見直して、内面を伴っていくということを監督と話していて。実現できたかはわからないですけど、それがプレーに出せたらいいなという思いでした。
──私生活というのは例えばどんなことを
毎日部室を掃除するようにしていました。
──今日の試合を振り返って
明治さんのフィジカルにやられてしまって、ディフェンスでも、アタックでもあまり活躍できなかったので、また一からやり直していかなければと思います。
──明大の印象は
(味方の)FW陣がすごくゲインしてくれていたので、そこでBKは楽をさせてもらったなと思います。
──今後に向けて
フィジカルの強化と、基礎的なスキルも磨いて「個々で勝てるプレーヤー」になりたいです。
H O田中慶伸(総2・慶應)
──自身Aチーム初スタメンになりましたが、どんな意識で試合に臨みましたか
僕は今までBチームでも後半スタートが多かったので、試合の入りから自分の100%の力を持っていくということを意識しました。
──前後半を通じて個人的な振り返り
前半の頭に、相手のスクラムだったりフィールドプレーのアタックだったりで受けた部分がありました。それを後半で修正できたのはよかったんですけど、それがもっと最初からできてればな、と思っています。
──スクラムに関して、序盤は押されていたように思えました。明治のスクラムの圧力はどうでしたか
明治は、春を制した力があります。
僕たちも相手の様子見みたいなところがあって、合わせちゃった部分があり、それが原因で受けてしまったかな、と思います。
──試合前、明治大学に対して警戒していた点はどういったところでしたか
明治は春を制していて、僕は少なくともチャレンジャー、失うものは何もないから。自分のできる事を全部やろうという気持ちでぶつかりました。
自分一人で止められなくても、2人目のサポートといった自分の役割をもって動くことを意識していました。
──ラインアウトではスローワーも務めましたが、満足度はいかがでしたか
僕はスローが苦手ですが、比較的うまくいったのかな。満足度は高いです。
ただ、チャンスで決めきれなかったところがあったので、そこは反省していきたいと思います。
──ゴール前での粘りもあった反面、一発で抜かれてしまう場面もありました。その要因は何でしたか
キックのチェイスの時、みんなで面となって追わなきゃいけないところで、誰かひとりの集中力がきれてしまったところがありました。そういうところを意識していく必要があると思います。
──春シーズンを終え、対抗戦まで時間が空きます。この期間で個人としてどんな点を強化していきたいですか
フィジカルの部分をしっかりやっていきたいなと思っています。
あとは、スローの精度だったり、スクラムでのFWとのコミュニケーションの取り方をしっかり意識して取り組んでいきます。
【Starter 】
1.PR(プロップ) 有賀光生(総4・國學院久我山)
2.HO(フッカー) 田中慶伸(総2・慶應)
3.PR(プロップ) 室星太郎(総4・静岡聖光学院)
4.LO(ロック) 相部開哉(政3・慶應)
5.LO(ロック) 今野勇久(総1・桐蔭学園)
6.FL(フランカー) 川合秀和(総4・國學院久我山)
7.FL(フランカー) 大谷陸(政3・慶應)
8.No.8(ナンバーエイト) 濱野剛己(総3・桐蔭学園)
9.SH(スクラムハーフ) 若林俊介(政3・慶應)
10.SO(スタンドオフ) 中楠一期(総1・國學院久我山)
11.WTB(ウィング) 宮本恭右(環3・慶應)
12.CTB(センター) 栗原由太(環4・桐蔭学園)
13.CTB(センター) 菅涼介(政2・慶應)
14.WTB(ウィング) 高木一成(商4・慶應)
15.FB(フルバック) 小谷田尚紀(経3・慶應志木)
【Booster】
16. 山本英晴(商4・慶應)
17.朝田将多(環1・國學院久我山)
18. 瀬田俊幸(経3・慶應志木)
19. 池田勇希(商3・熊谷)
19. 川端隼人(理4・國學院久我山)
20. 良知健佑(商4・慶應NY)
20. 内田尚輝(経4・慶應)
21. 上村龍舞(環4・國學院栃木)
22. 鎌形正汰(商3・慶應)
22. 大木魁(環3・桐蔭学園)
23. 野畑諒也(法2・慶應)
23. 佐々木隼(総1・桐蔭学園)
【選手変更】
16分 SH若林俊介→23 上村龍舞
40分 WTB宮本恭右→25 大木魁
49分 FL大谷陸→19 池田勇希
57分 SO中楠一期→24 鎌形正汰
68分 HO田中慶伸→16 山本英晴
68分 PR有賀光生→17 朝田将多
68分 PR室星太郎→18 瀬田俊幸
71分 WTB高木一成→26 佐々木隼
75分 NO.8濱野剛己→22 内田尚輝
75分 LO今野勇久→21 良知兼佑
80分 CTB菅 涼介→27 野畠諒也