10月9日により、全日本大学対抗テニス王座決定試合(通称:王座)が開幕する。慶應スポーツは、選手と監督に王座にかける思いを伺った。第1弾は、中村礼主将(総4・須坂)と福田真大主将(商4・慶應湘南藤沢)による対談である。
(取材日:9月26日)
――お互いに見て、両主将はどのようにチームを引っ張っていると思いますか
福田:(中村)礼は背中で引っ張るというよりかは、一人一人と細かくコミュニケーションを取りながら良い意味ですごい仲良く周りと意思疎通をしながらやっていると思います。僕にはそういった部分がないので、うまく輪を作ってやっているなと思います。
中村:(福田)真大は私とは逆のタイプだと思っています。結構いつもおちゃらけているんですけど、やるところではしっかりやっていて、試合では全く違う雰囲気でプレーしているなと思っています。
福田:それはそうだろ(笑)
中村:背中でも引っ張りますし、最近は言葉でもしっかりチームを引っ張りますし
福田:最近は(笑)
中村:試合などでの気迫を見て後輩達もついていっているのかなと思います。
福田:ありがとうございます!(笑)
――主将となり春から今までチーム作りをしてきましたが、現状としては何%くらい自分の理想を達成できていると思いますか
福田:僕は80%くらい達成できていると思っています。メリハリをつけたチーム作りを心掛けていて、具体的には部室では和気あいあいとしながら、コートでは別人のように練習をするというチームを目指してきました。最初の方は、そこの境目というところがうまくできていなかったんですけど、今になってはみんなそこのあたりを理解し始めしっかり実行できていると思います。足りない20%は、早稲田に勝てていないという部分があり、やはり結果を出してこそだと思うので、そういった部分がまだ足りていないとこかなと思います。
中村:私は85%くらいですかね。男女でチーム作りといっても雰囲気が違っていて、女子は今年ポテンシャルが高い子達が1年生で入ってきて、今までの庭球部ではやらされている感や、上からトップダウンで言っている感じがあったのですが、今年は下からも話しやすいチーム作りを目指してきました。リーグ戦などでも、もちろんピリピリする場面もあるのですが、その中でも目指してきた良い意味でゆるい感じや話しやすい雰囲気ができた点が85という数字に表れています。足りない15%は、まだまだ足りない部分がありますし、リーグ戦が2位で通過ということで王座優勝に向けて勝負強さなどが挙げられると思います。
――春の対談ではお二人ともプレーよりも言動でチームを引っ張りたいと仰っていましたが、具体的に心掛けてきたことは何ですか
福田:先程も言ったことですが、僕の中ではメリハリが一番大事だという意識があり、やはりメリハリとは空気を読む力なのかなと僕の中では思っていて、しっかり周りに空気を合わせることと、もう一段階上のこととして自分からそういった空気を作ることが挙げられます。4年生は3年半部活をやってきているのでそういった空気を作り出せるんですが、後輩はまだ足りていないのでそういった部分を身につけて欲しいなと思いメリハリを重点に置いてチーム作りをしています。
中村:私はボトムアップのチーム作りを目指していて、主将だからといって近づき難い存在になるのは嫌でした。そういった意味で、引っ張るというよりかは一緒に頑張ろうということをモットーにしていました。
――春から今にかけてチームとしてどういった点が成長したところとして挙げられますか
福田:春の段階では、自分が自分がという選手が多くて自分の結果が大事という雰囲気があったのですが、今はリーグ戦に出たことでそういった感じがなくなり、自分も強くなるし、周りも強くなろうという考えができる選手が多くなったなと感じています。例えば、練習中に一緒に練習している仲間に対して、「もうちょっとこうした方が良いよ」といった声掛けや会話が増えてきて良い雰囲気だなと思います。
中村:言いやすい雰囲気というのが生まれてきたことが挙げられます。加えて、去年の女子の課題として勝負所の場面で取りきれないことが挙げられるんですが、福田が普段から言っている「試合の雰囲気を練習に持ち込み、練習の雰囲気を試合に持ち込む」ことを意識してやることで緊張しすぎずに思いっきりの良いプレーができ、試合で生きていると思いますし、それが成長した点かなと思います。
――秋のリーグ戦を振り返って
福田:男子は、本当に死ぬかと思いました(笑)特に法大戦と亜大戦が自分の中ではキツかったです。他の選手が勝ち星を取ってくれるかなと思っていたんですけど、全然そんなことなくて(笑)最終的に自分の試合の結果によって勝敗が決まる形となったので、本当にキツかったです。これで引退したら本当にヤバイなっていう感じがあったので頑張れたのかなと思います。ただ、法大戦後に亜大戦があり、やはりみんな法大戦が山場だと思っていたので、逆にそこを乗り越えたことで安心感が生まれてしまい良くない雰囲気が生まれ、結果としてダブルスで1ー2となり、シングルスの最初3本で巻き返してチームとしてはリーグ戦を通して踏ん張る力は付いてきたと思いますが、踏ん張るのではなく最初のダブルスで3ー0つけてリードして、次のシングルス下位の人3本で決めるということを王座ではやっていきたいなと思います。
中村:女子は、男子も一緒だと思いますが、王座に向けてリーグ戦を1位で通過したいという思いが強く、今年は本当に王座優勝ができるかもしれないと周りからは言われている中で、初戦の筑波大戦を躓いたことはすごく焦りを生みました。しかし、今年女子がリーグ戦のモットーとして掲げた中に“責任感“と“どんな状況でも前向きに“があり、そういった状況の中でも、一つ負けたからといって王座への道が途絶える訳ではないので、もう全勝するだけだと前向きな気持ちを持ってやれたことが良い結果に繋がったと思います。早慶戦でも厳しい場面はありましたが、そこはチーム力で助け合いながら勝てたのではないかなと思います。男子が先に試合をやってくれていたことで色々と学べて良かったです(笑)
福田:勘弁してほしい(笑)
――秋のリーグ戦において、個人の試合で印象に残った試合は
福田:法大戦はリーグ戦の中ではもちろん良かった試合でしたが、僕の個人的な試合で言えば早慶戦のダブルスの試合が印象に残っています。今までの早慶戦ではダブルスはほぼ(慶大が)勝っていて、必ず取らなければならない試合だったんですが負けてしまい自分の中ではショックということで印象に残っています。やはりそこがまだ自分には足りないところなのかなと思います。もう残りわずかしかないですが、そこを変えるためにもっと努力して王座では勝ちたいなという気持ちが大きいです。場面場面で言えば、法大戦や亜大戦のシングルスが印象に残っていますが、リーグ戦全部を見返し、王座を考えるとやはり早慶戦のダブルスが挙げられます。
中村:私は4年目にして初めてリーグ戦に出場させていただいて、正直自分の試合で印象に残っている試合はないんですが(笑)
福田:笑笑
中村:チームに良い雰囲気を持ってくることや、勝ちだけではなくて何かプラスアルファでできることを意識してプレーしていて、早慶戦の時は、結果的に見れば自分が負けていたらチームとして負けていたので、その試合というよりかは全体を見返して大事な一本を取れたことが印象には残っています。
――秋のリーグ戦でチームとして良かった点
福田:チームとして良かった点は二つあります。一つ目は法大戦と亜大戦でダブルス1ー2という結果から、シングルスでしっかり巻き返せたことが良かったです。二つ目は今村(昌倫=環3・清風)と羽澤(慎治=環2・西宮甲英)の安定感がチームとしては本当に有り難く、法大戦で4ー4の場面を今村が勝ってくれるなど、本当にあの二人が実力的にも精神的にも柱となってくれていることは、二人には負担をかけてしまっていますが、チームとしては良いところなのかなと思います。
中村:初戦負けてから、次戦以降全員が自分の試合に責任感を持ってプレーできたことが挙げられます。もちろん負けてしまった試合もありましたが、例えば、隣のコートが一進一退の試合をしている中で、自分の試合が負けたらそのコートにも影響すると思うので、その選手が考えてその試合を長くできるようにプレースタイルを変えてみるなどチームとして戦えたことが良かったと思います。初戦負けて難しい立ち上がりとなりましたが、全員が同じ方向を向いて全力で戦えたところが良かった点だと思います。加えて、佐藤(南帆=環1・日出)・永田(杏里=総1・南山)は(シングルスとダブルス合わせて)10戦戦ったんですが、全部出させてしまい申し訳なさもありますが、二人は何も言わずに1年生ながら良い雰囲気を作り試合をしてくれたことは本当にチームとして大きかったです。また、去年悔しい結果でリーグ戦を終えた末野も今年は自分で結果を変えられたと思いますし、平田(歩=総2・岡山学芸館)もインカレで悔しい思いをしながら踏ん張りました。そういったところを含めた全員のチーム力や去年より成長したいという気持ちが大きく出たのではないかなと思いました。
――秋のリーグ戦での課題と、王座に向けてその課題をどのように改善しようとしていますか
福田:課題は完全にダブルスなのかなと思っています。やはりD3が一回も取れないというところがチームとしての課題であり、D1もD2も全勝ということが一回もなかったということで、やはりD1・D2が100%取れる状況でないとD3にプレッシャーとなり思い切ったプレーができないと思います。なので、D3を強化するためにもD1・D2が100%取れるくらいの実力をつけて王座に行かないといけないかなと思います。
中村:前向きに考えすぎて、すごい悪いところは出てこないことはないですが、課題は沢山あります。個人個人のプレーや試合の運び方などがありますが、王座に向けて試合の運び方に関していうと、最初D2がうまくいかず1ー1でスタートした時と後半戦になってうまくいき2ー0でスタートした時とでは試合の運び方や緊張感が違ったので、まずはそこを改善すること。また、今年は下位の競争力がチームの課題として挙がっていて、やはり下位で勝つと緊張感なども変わってくるので、今までと変わらず丁寧を心掛けてやっていきたいと思います。
――秋のリーグ戦での早慶戦を振り返って
福田:早大は強かったなという一言に尽きると思います。今まで取れていたところが取れず、D1もS1もS2も取れず、やはりそこが早稲田の自信があるところだと思うのでリーグ戦では厳しい戦いとなったと思います。逆に今まで取れていなかったところが取れたところは良い収穫だと思っていて、D2では初めて川島がダブルスに出場しましたがそこで取り、加えて伊藤が粘りのテニスを展開して、1年生の時にインカレ王者となった相手に勝ったのでチームとして大きな収穫となったと思います。
中村:早慶戦に臨むにあたって、春早大相手に5ー2で勝利しましたが、その結果があったとしても油断する気持ちは1ミリもなく、早大はリーグ戦までにチーム力を上げてくるチームだとわかっていたので、そこを踏まえてしっかり戦えたことと、あと一戦落としたら王座に行けないだろうという気持ちだったので、本当に取るしかないという気持ちで挑み、試合も流れが両チームに行き交う怒涛の試合で最後末野が取ってくれましたが、かなり体が限界に近い状態の中で踏ん張る姿を見せてくれたことで、厳しいながらもどうやったら勝ちに結びつくのかをチームみんなが感じられたと思います。辛い試合でしたがこれからの自信になる試合となったと思います。
――女子は、21年ぶりに早大に対して春秋勝利を挙げました。試合を制することができた要因を挙げるとすれば
中村:21年ぶりなんですね(驚)周りからは、強い1年生が入ったとかポテンシャルが高い人が多いからと言われると思いますが、その中でも上級生も出てしっかり2本取っていますし、去年までは王座も出れず早慶戦も勝てないということが続いたのでかなり戦略的な分析もしましたし、何をどうしたらうまくいくのかを考え、特に男子よりも女子の方が試合前の雰囲気が影響することが多いのかなと私個人は感じているので、そういった細かい部分を突き詰めていったことが要因かなと思います。
――王座でも戦うかもしれない早大の選手相手にどういった対策が必要になってくると思いますか
福田:注意するところが多いです。やはり、ダブルスで1ー2が付いてしまうとシングルスでこっちにはプレッシャーがかかり相手は楽になると思うので、ダブルスの入りが重要なのかなと思います。
――王座で期待する選手を挙げるとすれば誰ですか
福田:甲斐直登(環4・日出)ですかね。同期でずっとやってきていて、彼が高校2年生の時に全日本ジュニアベスト4に入るという輝かしい功績がある中で、大学に入ってからはまだそういった戦績が出ておらず、彼自身苦しんでいるところはあると思いますが、今回のリーグ戦では苦しい状況で勝ち切ってくれて、早大戦では負けてしまいましたが悔しがる姿やその後の努力を見ると、王座では頑張って欲しいですし期待しています。
中村:めちゃくちゃ難しいんですが、、
福田:自分って言っときなよ(笑)
中村:(笑)私としては、下級生が強いと言われている状況なので、あえて上級生に期待して欲しいかなと思います。上級生としてチームを引っ張ってきた人達が何人もいるので、そういった選手の頑張りを見て欲しいです。そういったところがチーム力にも繋がっていると思うので、あえて上級生でお願いします!
――個人として、王座に向けた抱負
福田:早慶戦で二本取ってくることが個人の目標です。僕は早慶戦のシングルスで勝ったことがないので、最後となる王座ではダブルスしっかり取ってシングルスでは今までの負けた屈辱を晴らしたいと思います。
中村:個人と言われてもやはりチームが優勝することが目標なのでなんとも言えませんが、もちろんまだ試合に出場できるかわかりませんが、キャプテンとして変わらず言えることはチームを優勝させることなので、雰囲気をあげることはもちろんですし出るなら一本取ってくることなど、チームの日本一に何かしらで貢献できればと思います。
――チームとして、王座に向けた抱負
福田:ラストイヤーなので優勝したいという気持ちしかないです。正直、去年優勝できるかなと思っていましたがやはり考えが甘かったなと思っていて、この期間厳しく自分たちを追い込んで王座で嬉し涙を流せるよう追い込んでいきたいです。
中村:王座優勝すること!やはり男女で優勝したいです。誰かが頑張っというよりかは、全員が頑張り、チームに貢献したという形で終わりたいと思っているので、選手だけでなく、リーグ戦で審判やボーラーをやってくれた子、加えて出たくても出れない状況にいながらもチームの為に一緒に頑張っているサブのメンバーなど全員の力があってこそだと思うので、全員が気持ちよく終われれば良いかなと思います。
――忙しい中、ありがとうございました!
(取材:堀内大生)