ライバル撃破へ、その舞台は整った。11月21日(土)に行われるFINAL4。慶大は因縁の相手・立大と対戦する。特に4年は新人戦の頃から立大になかなか勝ち切ることができず、この試合に対する勝利への執念を燃やしている。今回は勝利の鍵を握るトップ幹部、清水珠理主将(商4・慶應女子)、日野美咲(商4・慶應女子)、野々垣眞希(商4・慶應女子)の3名に話を伺った。取材では、3人の絆の強さはもちろん、チームに懸ける思い、そして「慶應女子ラクロス部」として戦う誇りが垣間見えた。
――まず初めに、他己紹介をお願いします
清水→日野:日野選手は基本的にふわふわしている選手です。迷ったらやってみようというタイプの人で「これやった方がいいかな」とか話しているときに、「なんでやらないの」って後押しをしてくれる人です。自分の意志があり、頑固なところもあるので何か意志決定をするときにすごく助かるなと思います。
日野:もう終わりで大丈夫ですか、清水さん?(笑)
清水:もっとある?(笑)
日野:もう2、3個くらいあるかなって思うんだけど…
清水:そうですね(笑)あとは、コミュニケーションが上手いです。幹部として自分がプレーで引っ張るというのも必要なんですけど、周りが「一緒に頑張りたい」と思わないと意味がないので、コミュニケーションってすごく必要なスキルだと思います。そこがとても上手で、日野選手の周りには笑顔が溢れていますし、チームの中心にいると思うので、幹部としても人としても良いなと思います。
――日野選手、聞いて何か感じることはありますか
日野:よく見ていてくれてるなと思います、絞り出してくれました(笑)
――次に日野選手、野々垣選手を紹介してください
日野→野々垣:眞希は去年1年生の育成担当を一緒にやっていて、そういう面で2年間活動を共にしていたので、頼れるなと思います。でも、日本語がとにかく苦手で、みんなからも不安に思われていた部分があったんですけど、今では見違えるくらいDFの要としてみんなを引っ張ってくれています。成長したのを見て、私とか珠理とかも頑張ろうと思っています。
清水:ラクロスIQが3500くらいで、それ以外が3くらい。そこのギャップがね(笑)
日野:そうなんですよ(笑)興味のあることに関してはすごい。あとは、慶應が「攻めのディフェンス」を掲げていて、ディフェンスも攻め方にまでこだわるということを体現し、「ディフェンスの概念」を変えている選手なので、そういう面も後輩から尊敬されていると思います。試合中はけもののようにというか(笑)、人の3倍くらいは走っています。
――野々垣選手、聞いてみてどうですか
野々垣:日本語に関しては本当に、苦手で(笑)(日本語に)困ったら、動く(笑)
――野々垣選手から見た清水主将は
野々垣→清水:珠理とは高校の時から一緒にラクロスをやってきたんですけど、その時からずっと努力をしていて「努力の鏡」だなと思います。それがあったからこそ1年生の時からフィールドに立っていると思います。一緒にやっていてそこの自信は誰よりもあるなと感じていて、頼れる存在。DFで困ったときにも、珠理もDFはめちゃくちゃ上手くてそこで頼ることもあるので、主将ではありますがトップ幹部として一緒にやれるのは嬉しく思っています。
――眞希とディフェンス入っているときは無敵だなって――
――清水選手、どうですか
清水: 眞希とディフェンス入っているときは無敵だなって思います。
――トップ幹部とはどういう役割何でしょうか
清水:基本的には練習メニューを考えてその振り返りをしたり、関東制覇するためにどういう練習が必要なのかを考えたりします。今年は組織的な部分でチームの価値を上げるという部分で全員が関わり、技術的なことだけではなくチームの価値を上げていくというところにもみんな協力してくれたと思います。
――自分以外のプレーで喜んだり悔しがったり――
――トップ幹部として意識や変化していることはありますか
日野:去年までは自分のプレーに集中していたところが大きかったんですけど、必然と自分以外のプレーで喜んだり悔しがったり、自分以外のプレーに関われるようになったなと思います。だからこそ、プレースタイルも変わったというか、視野が広くなったし、周りの選手を活かしてプレーをすることにフォーカスしたシーズンだったかなと思います。
清水:日野選手は「活かされる」選手だったんですよ。自分の最後のプレーにこだわってやってきたんですけど、トップチームのメンバーも変わってくるので、自分がこの代ではどのような役割をするのがチームに一番貢献できるのかというのを考えて。日野選手は「活かされる」側ではなく視野を広く持って「活かす」側への変化が一番大きいかなと思います。
――日野選手自身もそういった変化は自分で感じていますか
日野:やはり今年の得点を見ると数人だけが取るというより、色々な人が取るというスタイルに変わってきています。そういう、色々な人が得点が取れるというのが自分のいる意味に感じられて、それを嬉しく思えていることがだいぶ変わったのかなと思います。「去年も先輩が私にチャンスを与えてくれていた」。そういう部分にも気づくことができたのが大きいなと感じます。
――野々垣選手はどうですか
野々垣:先ほどゼット(=日野)も言ってくれたんですけど、慶應ディフェンスって他の大学のディフェンスと少し違っています。ディフェンスって基本は「守る」だと思うんですけど、慶應は「奪う」、攻撃の起点を作るというのが役割を担っています。幹部になってからはその体現はもちろん、考え方を変えることを意識してやっています。
――FINAL4目前となっていますが、「攻めのディフェンス」の満足度は
野々垣:全体的にボールに対しての執着心、「奪ってやるぞ」という気持ちが前よりは変わってきているなと思っています。攻めに対する気持ちがディフェンス陣にも出てきているのは変化が出てきているなと思います。
――清水選手、主将・トップ幹部として意識していること、もしくは変わったことは
清水:「主将としてできないことをやろう」というマインドになったなと思います。主将になった当初は何をしたら良いのか分からなかったし、最終的な意思決定として主将の意見が求められて、何でもやれてしまう立場でした。でも、コロナで自粛期間があって「主将としてやっていることって何だろう」って考える時間があって、そこから「主将にしかできないことをやるべき」と考えが変わりました。
――「主将にしかできないこと」。例えばどんなことですか
清水:先ほど少し話しましたが、「チームの価値を上げる」ということ。シーズンが終わった時に試合に勝つ・負けるはあるんですけど、加えて「慶應女子ラクロス部」だからやったことや成し遂げたことを、「慶應女子らしさ」を見つける。それを個人で考えてもらう所にフォーカスして、ただラクロスをする1年ではなく「価値」を考える。そして「自分自身の価値」に気づいてもらう。そんな取り組みをしました。
――「先駆者としての誇り」が浸透している――
――「慶應女子らしさ」とは清水選手にとって何でしょうか
清水:一番大きいのは「先駆者」というのがあります。周りがやっていることを真似する、当たり前だからやるというのを打ち破り、今までやってこなかったことや当たり前に対する問いを常にしている。だからこそ、チームに「Pioneer’s Pride」という「先駆者としての誇り」というのが浸透しているのかなと思います。
――自分の中で一番強みにしている部分は何ですか
日野:頑固に貫き通すところだと思っていて、その一つが自分の軸にある「ドロー」。試合のポゼッションに大きくかかわるドローの部分を4年間こだわってやってこれました。その中で去年から上げさせてもらっているんですけど、自分だけが上手くなってもしょうがないということ。決勝などで対戦する相手はレベルの高い相手になるし、自分だけではどうしようもないし、そういう部分も含めてチームメイト全員にドローの大切さを理解してもらう。それと同時に、切磋琢磨できる相手と一緒に成長しあうという所にこだわってやってきました。その結果、ドローの質も上がりましたし、準決勝・決勝でも良い勝負ができると自信を持って試合を迎えることができるので、こだわりぬくというのは自分のなかで大事なのかなと思います。
野々垣:けがで練習に参加できていない時期があったんですけど、そういうのもあって練習に対しての価値、練習をやれることのありがたさを分かっています。そういう面では「次があるから今日は適当で良い」という気持ちでやるのではなく、常に100%以上のプレーで練習から取り組んでいることが試合でいつも通りのプレーができていると思います。けがの経験があったからこそ、練習であったり試合で強度の高めのプレーができているのかなと思います。
清水:よく褒めてもらえるのは「責任感」という所。1年生の時から試合に出させていただいたり代表の練習とかにも呼んでもらったりしていて、色々な経験をしてきたからこそそれをチームに還元する責任があるし、選ばれているからには大事なところで大事なプレーをしなくてはいけないという風に思っています。あとは、何かを要求するなら自分も同じこと、それ以上のことをやっていなければいけないなという責任感があります。引っ張っていく立場だからこそ自分がしっかりするという所が上手く作用していれば、それは自分の強みだと思います。
――立教戦を直前に控えて、どんな気持ちですか
日野:すごく楽しみでしょうがないです。新人戦の大会が3つあるんですけど、立教が3連勝していて、私達的には1年生の時から最後は倒したい相手です。それだけ力が入っているのが4年生、後輩にも伝わっていると思います。気合入りすぎて、試合の最初から空回りしてしまいそうなんですけど、それくらい楽しみで倒したい相手なのでFINAL4決まってから立教を相手に想定して準備しています。早くやりたいけど、その試合を終わりたくないという気持ちです。
野々垣:私もすっごい楽しみで、後輩に「どうしてそんなに楽しみなんですか?」って言われるくらい。去年、優勝したチームではあるんですけど、逆にそれによって私たちはチャレンジャーとして捉えることができているので、怖いもの知らずでどんどんチャレンジしていきたいです。また、私たちの代にとっては立教はライバルだと考えているので、そこをFINAL4は絶対に突破したいと思っています。
清水:やっと戦えるという思いが大きいです。1年生の時から意識してきたチームで、日本一になるためには立教に勝たないといけないとずっと思っていました。この代の立教に勝つことにすごい意味があると思っているので、FINAL4という舞台で戦えることをすごく楽しみに感じています。また、予選ブロックで同じだった青学大と学習院大の思いも背負い、責任を持って勝ち切りたいです。
日野:あと、大久保HCから言われた言葉で印象的な言葉があって、「立教にはあと1点、2点足りない実力だ」と言われていたんですけど、それと同時に「もし今年の立教を倒せるなら今年の慶應しかない」というのがあって。それを聞いて私たちは「きたきた」と気合が入ったのはあります。
清水:あれはスイッチ入ったよね
――勝負のポイントだと考えられるのは
清水:ずっと言われているのは「大事な場面で大事なプレー」。得点チャンスはあると思うんですけど、シュートを決めきることができるかが試合の勝敗を分けるというのは意識して練習しています。
――出し切れるように――
――後悔なく――
――笛が鳴るまで全力で――
――最後に意気込みを一言お願いします!
日野:一つ目はとにかく楽しむ。あと多くても2戦なので、自分の4年間を出し切れるように楽しみたいです。二つ目はその中でも、フィールドで戦わせてもらえている立場として自分の役割であるドローや、攻めの機会を広げていくという部分でチームの代表としてチームメイトや応援してくださっている方々に感謝を伝えられるようなプレーをしたいです。
野々垣:関東制覇というのを目指して爪痕を残して後悔なく終えたいなと思っています。この部に関わっている方全員が私たちの試合を見て、楽しい気持ちでチームを終われたら良いなと思います。
清水:色々なことがあった年で、試合が行われない可能性もありましたが、特別大会、FINAL4、FINALも行われ、その舞台に立たせてもらえることに対して、運営の方々をはじめ周囲の方々のおかげだなと実感しています。そういう方々への最大の恩返しはフィールドに立っている自分たちが全力でプレーをすることしかないかなと思っているので、とにかくフィールドに立ったら応援席も含めてすべてを出し切るにこだわって、笛が鳴るときまで自分のすべてを出し切りたいと思います。
――お忙しいところ、ありがとうございました!
(取材・記事:菊池 輝)
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