10月8日から始まる全日本大学対抗テニス王座決定試合(通称:王座)。慶應スポーツでは、「男女アベック優勝」を目標に掲げる慶大の選手、監督にお話を伺った。第1弾は、チームの大黒柱である男子主将・白藤成(環4・西宮甲英)と女子主将・永田杏里(総4・南山)です!
――今シーズンを振り返って
白藤:主将になって、新チームが動き出してから最初にあったのが春の早慶戦でした。男子は早稲田に差をつけられ、シングルスでも2勝しかできなかったという結果だったので、夏のリーグ、王座に向けこのままじゃだめだという危機感を春に感じましたね。今年の代では、チーム目標に加えて全日本選手権に出場する選手を増やしたいという方針もありました。外部大会の出場も多くしてきた結果、多くの経験を積めました。インカレでも上位選手を輩出でき、タフなリーグ戦も勝ち抜けました。リーグ戦は3年ぶりだったので経験したことあるのは4年生だけ、4年生も試合自体は経験したことがないという状況の中、しっかり関東を勝ち抜けたところは大きかったです。目指していたものも達成しながらチーム力も上がり、もうすぐ始まる王座に向けていい準備ができたのかなと思います。
永田:白藤も言った通り、リーグ、王座に向けて試合経験を積もうと外部大会に出ること、対抗戦もリーグ前に入れて経験を積めたのは大きかったと思っています。リーグが始まってからは本当にタフで、王座に行くまでも厳しい道のりでしたね。リーグを厳しい戦いの中勝ち切れたことは自信になりましたし、女子に関しては王座2連覇を達成するという気持ちがチームのみんなに改めて芽生えています。
――お互いに、どんな主将ですか
白藤→永田:永田は、背中で見せるタイプなのかなと思っています。女子部員の中でも憧れの的だし、プレーや背中で引っ張って、性格的にもさばさばしているというか、いい意味でアスリートっぽい感じですね。女子チームは結構個性的な選手が集まっているので、個々に力があってしっかりしているチームです。そんなチームを客観視してうまくまとめていると思います。
永田→白藤:すごい褒めてもらったのでプレッシャーなんですけど(笑)。白藤もさっき私に言ってくれたように背中で見せるタイプだなと思っています。あと、関西人なので結構面白いんですよ(笑)。面白いので、まじめな話をする中でも、チームの雰囲気をちょっとした笑いで和ませる、チームの雰囲気をよくするのがうまいです。
――お二人が主将になった経緯は
永田:自分からというよりは、選んでいただいてという感じです。
白藤:自分もそうなんですけど、きっかけは一つあります。いろいろあって僕は2年遅れで大学に入りました。前年度主将だった羽澤(慎治/R4環卒・西宮甲英)が高校の時は後輩だったんですけど小さいころからずっと一緒にやってきた存在でした。その羽澤が昨年王座で悔しい思いをしたときに帰りのバスで主将を任せていい?みたいに聞かれて…。羽澤に頼まれたからこのチームを何とかして今年こそ王座優勝に導きたいと思ったのがきっかけではあります。
――チームを離れる時期もあったと思いますが主将としてチームをまとめるために心掛けたことはありますか?
永田:正直、海外に行っているときは時差もあるので日本でミーティングの時間に現地は真夜中だったりとミーティングに参加できなかったことも多かったです。海外の試合に出ているときは主将としての仕事ができていなかったことも事実でした。その中で副将の今田(穂/環4・啓明学院)だったり主務の石島(和香/商4・田園調布学園)がフォローしてくれて助かりました。だからこそ自分が帰ってきたときには下級生などとコミュニケーションを取ったりというのは心掛けました。もともと自分からコミュニケーションをとるタイプではないんですけど大事だなと感じたので、そこは意識しています。
白藤:自分は切り替えを大切にしています。さっき永田が関西人で場を和ませるみたいなことを言ってくれたんですけど、逆にここ緩ませたらダメだなというところはしっかり厳しく言うようにしています。基本年齢差もあるのでなじみやすいようには接しているんですけど、締めないといけないところは逃さないようにしていますね。
――お互いのプレー面の魅力を教えてください!
白藤→永田:僕と永田ってプレースタイルは真逆で、どちらかというとテクニックであったりネットに出たりとか女子の中では少ない器用でテニスが上手いタイプなので、そのテクニックの部分がうらやましいというか僕にもあればいいのになと思います。あとやっぱり永田もジュニアの時から経験が豊富なので競った試合でもなんとかなるだろうと永田の試合を見ていて思うので、うまさと心強さが魅力ですね。自分がもし女子チームにいて永田の下にいたら永田の存在は心強いだろうなと思います。
――永田選手ご自身が思うプレーの強み、武器は何ですか?
永田:バックでスライスを使ったりループボール混ぜたりとか緩急使ってチャンスがあったら前に出てという感じのプレーが強みですね。
――インカレの準々決勝やリーグでの早慶戦シングルス、神鳥(舞/スポ2・早実)選手との試合など大接戦を勝ち切る勝負強さが光っています。
永田:ただがむしゃらにやっているだけなんですけど(笑)。いい緊張感の中で、リーグ戦は応援もあったので楽しめていたのかなと思います。応援もすごく力になりました。ありがたかったです。
――永田選手からみて白藤選手のプレーの魅力は
永田:とにかく球が速いです。さっき自分の緩急がうらやましいと言ってたんですけど、自分は打てないから緩急で補っているという感じで。一球の質が高いので、一撃で仕留められるからいろいろやる必要がないんですよね(笑)。そこは本当にうらやましいです。
――白藤選手ご自身はどう考えてますか?
白藤:僕はジュニアのころから器用じゃなくて。だから逆に球のスピードで勝負していくしかなかったので、苦手なところを補っていくうちにそれが武器になったという感じですね。
――リーグの早慶戦のシングルスでは勢いのあるプレーが印象的でした。
白藤:実はダブルス終わった後に体がしんどくて。僕はリーグ終わってから10日くらい寝込んでしまったんですけど、それくらい疲れもピークに来ていてシングルスの試合ギリギリまで体に力いれないようにしているくらいでした。このまま戦えるのかなという状態でコートに立ちましたね。横のコートで林(航平/理3・名古屋)もタフな試合をしていたり、チームにとって僕が競るよりもしっかり勢い持って勝ったほうが勢いも付くと思ったので自分のコンディションも見たら短期決戦で試合を決めようと心がけていました。
――シーズン通して最も印象的な試合は
白藤:やっぱり春の早慶戦ですね。(シングルス・3―2で勝利)5時間半くらい長い試合で、3セット取ったら勝ちというルールの中であと1セット取られたら負けるという100%負けるんじゃないかというところから挽回できたあの試合は、人生の中で最もタフだったしベストマッチでしたね。
永田:私はリーグの早慶戦の神鳥選手とのシングルスですね。
――勝利まであと1セットのところから追いつかれ、最終セットにもつれ込む大接戦でした。
永田:そうですね。第2セット5―1でリードしているところで、自分が特別引いたとかすごいミスしたという感じではなくて相手が単純に巻き返してきたという感じで、しかも自分にチームの勝敗も懸かっているというなかでこれ負けたらやばいな、というところもあったんですけど、やるしかないと思って。そこで勝ち切れたのは自分にとっても自信になったと思います。
――試合後には涙もありました
永田:試合が終わってほっとしましたね。試合で勝って泣くってなかなかなくて、みんなもなかなかないと思うんですけど(笑)。自分も初めてかもしれないくらいの経験で、ほっとしたというのが一番でした。
――白藤選手は勝って泣いたことってありますか?
白藤:ないっすね(笑)。僕大学入るまで負けても泣いたことも勝って泣いたこともなくて。
永田:すごい。小学生の時も?
白藤:いや、ないかも。僕映画見てもあんま泣いたりことないんで、人としてどうかなと思いますけど(笑)。大学入ってからは何度かありましたね。全部悔し泣きです。去年の早慶戦でダブルスで負けたとき、横に後輩がいて悔しそうな顔しているの見たら急に泣いちゃって。次は去年インカレで負けたときで、その時は本当に悔しくて。あと今年の春の早慶戦でも悔しくて。それも自分の責任感からでしたね。
――後輩という言葉が何度かありましたが、チームとしては下級生主体の若いチームです。
白藤:人を見るのが結構得意で一人一人の性格は理解しています。僕は高校通信制だったりして今回初めてできた後輩だったので僕なりに一人一人の調子に敏感に反応するようにしています。例えば疲れてそうだったら声をかけたりとか意識してやっています。
――永田選手からみて男子チームはどんなチームですか?
永田:4年生でメンバー入りしているのはリーグ戦では白藤だけで、白藤がいるからこそ下の学年がついていけてるというのがあるし、出場できていない4年生も練習の中で引っ張っているからこそチームとしてまとまっているかなと思います。
――永田選手からみて女子チームは
永田:女子も人数は少ないんですけど一人一人個性があって、自分も白藤が言っていたように一人一人のその日の状態を結構見るようになりました。よく他人に興味ないでしょって周りから言われるんですけど(笑)。主将になってからは意識してチームを見るようにしています。プレースタイルも個性が一人一人あってみんなが自分のその個性を出せるようにしたいと思っているので、そこを意識してます。
――白藤選手からみて女子チームは
白藤:永田が言ったように一人一人実力もあって、女子のほうが個々がしっかりしています。いつも男子がコーチ陣に怒られているって感じなので。女子のほうが大人だなと思います。主将が永田でその背中をみんなが見てっていうようにすごいまとまりを感じます。
――王座まで1週間を切っています。昨年の王座を振り返って
白藤:本当に人生で一番悔しかったのが去年の王座だったので、藤原(智也/環3・東山)も泣いてたし、僕もそれこそ一番泣いたのが去年の王座だったんですけど。本当に悔しかったですね。
――女子は優勝を果たしました
永田:うれしかったですね。一年間、対抗戦、練習試合、すべて王座優勝のためにやってきたので一年かけて取り組んできたことがやっと成果としてあらわれました。その分緊張もしましたけど、王座優勝はその分大きかったです。
――愛媛のコートの印象は
永田:結構遅いですよね。なのでラリーがよく続くイメージがあります。
――注目する選手は
白藤:もちろん全員なんですけど、やっぱりエースの藤原と、リーグ全勝した下村(亮太朗/法2・慶應)ですかね。
永田:エース佐藤(南帆/環4・日出)と1年生の中島(玲亜/総1・岡山学芸館)ですね。中島はリーグ戦でも気迫を出して戦っていて自分自身刺激にもなりましたね。
――どのようなプレーを見せたいですか?意気込みをお願いします。
白藤:去年は決勝のダブルスで負けてしまったのが後悔であり悔しさもあり、チームにとって大きかったと思うのでまずは自分がダブルスに出るならダブルスをとりたいです。準決勝、決勝とどの大学と当たるかまだ分からないですけど、王座は対戦するであろう大学が限られてくると思います。コート上に立ったらやることは限られるので、それまでの分析だったり準備の部分を徹底していきたいです。コート上ではベストを尽くしたいです。
永田:王座は初戦から緊張する中での戦いだと思うんですけど、そうなったら足を動かして気合で行くしかないです。監督がよく軸足、という事を言っているんですけど意識することは試合が始まったら技術面よりも足を動かして声を出して頑張るというところ、それを徹底していきたいです。
――お忙しい中、ありがとうございました!
(取材・松田 英人)