慶大ラグビー部は11日に下田寮にて記者会見を開き、2期4年の任期を終えた栗原徹監督の退任と、青貫浩之新監督の就任を発表した。
青貫新監督は、慶大卒業後ラグビーから退き、味の素株式会社に入社。マーケティング部署にて新商品の開発やテレビCM制作をしながら、ラクビーとはほとんど無縁の生活を送ってきた。タイで4年間マネジメントの仕事も経験し、帰国後は2019年より4年間栗原前監督のもとで週末FWコーチを務めていた。新監督の指名を受けた昨年度からは、1年間かけてスムーズにバトンを渡せるよう密に連携をとっていたという。特に組織面では、今後のチームを担っていく3年生以下とのコミュニケーションに積極的に関与。自身の1番の強みを「学生の身になって一緒に考えること」とした上で、「どうやって勝つかを突き詰めて考え、賢く勝つ『知』の部分は崩さずに継承したい」と、前監督が築いてきた慶大ラグビーを受け継ぐ意向を示した。
一方で、2019年より4年間務めた栗原前監督は、「タフではあったが、学生とともに試行錯誤の中進んできたかけがえのない時間。学生には、目的意識、課題意識を自分事としてとらえるようにと話してきた。ラグビーに対する姿勢や周りに対する配慮はさらに良くなったと思っている。強くなる土台が少しできた」と自身の4年間を振り返る。年代は離れているが清真学園中高・慶大と出身が同じ青貫新監督には、「人間性、タフさ、誠実さ、どれをとっても一級品」と絶大な信頼を寄せていた。中でもバトンを渡す1番の決め手となったのは、学生と向き合う姿勢であるという。「ラグビーはYouTubeでも自分で学べる時代。何よりも大事なことは8:2ぐらいの比重で学生と向き合い、人間的な成長を促すこと。それができる人間は誰なのかと考えた時に、ラグビー経験者の中だけで考えるのはすごく浅はか。自分の周りを見回した時に青貫新監督が最も適した人材だと確信した」。
栗原前監督自身は、今後もラグビー指導者としての可能性を探る予定だという。和田康二ゼネラルマネジャーは、「本当に多くのものを残してくれた。経歴や国内外の優秀な指導者とのつながりから、最先端のラグビーナレッジを常にアップデートしてくれた。これからも、直接の関わりはなくとも近くにいてほしい存在」と思いを口にした。
また、青貫新監督は、約16年勤めた味の素株式会社を3月末で退職。「仕事をやりながらというのは部にとっても学生にとってもよくない。ほとんどの時間は学生と接して、監督業に専念する」と気を引き締めた。新チームの目標に関しては、「1番大事にしたいことは、日本一を目指すことから逃げないこと。日々、日本一の取り組みにこだわる。細かい戦術は教えられないが、慶應の原点であるディフェンスを軸に、全員でハードワークをして少しずつスコアを積み重ねていく、そんなラグビーを」と意思を固めた。
新主将には岡広将(新総4・桐蔭学園)、副将には山田響(新総4・報徳学園)が選出。「取り柄は厳しさと誠実さ。学生に対しても公平に、そしてフラットに、一緒に成長していきたい。魅力的な人間を育て、魅力的な組織をつくることで、慶應らしいひたむきなラグビーを体現したい」。そんな新監督の思いとともに、新チームは今月14日より本格的に始動する。
(取材:長掛真依、愛宕百華)