2023年12月17日(日)第60回全国大学ラグビーフットボール選手権大会 対 天理大学 @ヨドコウ桜スタジアム
●慶大 12{0―22、12―19}41 天理大○
慶大は前半4分、ラインアウトモールから先制トライを許す。その後互いに攻めるも得点の動かない時間が続くが、20分にペナルティゴールを許すとその後連続トライを重ねられ0―22で前半を折り返す。後半29分に橋本、38分に中矢がトライをあげ反撃するも、惜しくも及ばず。12−41でノーサイドとなり、岡組の挑戦は幕を閉じた。
大学選手権 3回戦 | ||||
慶應義塾大学 | 2023/12/17(日) 14:00 K.O. @ヨドコウ桜 | 天理大学 | ||
前半 | 後半 |
| 前半 | 後半 |
0 | 2 | トライ(T) | 3 | 3 |
0 | 1 | コンバージョン(G) | 2 | 2 |
0 | 0 | ペナルティゴール(PG) | 1 | 0 |
0 | 0 | ドロップゴール(DG) | 0 | 0 |
0 | 12 | 計 | 22 | 19 |
12 | 合計 | 41 | ||
後半29分 橋本(T) 後半38分 中矢(T) 後半38分 山田(G) | 得点者 | 前半4分 宮田(T) 前半5分 筒口(G) 前半20分 筒口(PG) 前半29分 ハビリ(T) 前半37分 北條(T) 前半38分 筒口(G) 後半11分 藤原(T) 後半20分 弘田(T) 後半21分 筒口(G) 後半40分 川越(T) 後半41分 中村(G) |
大学選手権の初戦の相手は天理。舞台は昨年涙を呑んだ、ヨドコウ桜スタジアムだ。当日は試合前から肌寒い風が吹いており、チームテントで慶大スタッフがグッズを販売していたが、備品が飛ばされてしまうくらいの強風であった。慶應にとっては前半は風上、後半は風下となった。
試合開始直後から、ゲームは動いた。相手のキックオフがそのままタッチを割り、マイボールでのセンタースクラムとなる。このチャンスを上手く生かしたかったが、相手のスクラムのプレッシャーもすごくコラプシングを取られてしまい、岡は「ごめんごめん!」とフィフティーンに詫びる。タッチで攻め込まれると、その後モールで取り切られ先制トライを許す。
その後は得点は動かず、慶大は得意のハイキック戦法を駆使し、大野も必死にハイボールキャッチを試みる。すると9分、山田がハーフウェイラインから蹴ったキックは50:22となり、チャンスを迎える。ラインアウトをキープし、数フェイズ重ねたのち、山田がドロップゴールを蹴るも惜しくもポスト左へ。外れはしたものの、キックを用いてエリアを取ることに終始成功できていた。
16分、今度は三木が先ほどの山田と同じような50:22を決めチャンスを作る。ここでもFWが近場でアタックを重ねるが、パスが相手側に溢れてしまい逆に左サイドを駆け上がられ、ペナルティゴールで3点を加えられる。27分、ノックオン後、相手ボールのスクラムでコラプシングを取られると、自陣への侵入を許し、最後はハビリにトライを決められ0―15となる。この後31分、慶大ベンチが動き、主将の岡が吉村と交代することになる。ただスコアまでは一歩遠く、0−22で前半を折り返した。
慶應のキックオフで後半が始まった。後半から木村が井上に代わって出場し、2分のスクラム、スタンドにいる部員から「きむ行くぞ!」と大きな声援。後半に入っても、開始冒頭からハイキックを蹴る戦術を貫き、攻撃を展開する。11分にトライを許すが、コンバージョン時に、佐々と橋本が猛チャージしてプレッシャーをかけ、天理のゴールは失敗。橋本と佐々が顔を見合わせ小さくタッチ。劣勢の中でも、勇気のある明るいプレーがたくさんあった。会場は大阪のため、どちらかというと天理のホームだが、観客席からは「慶應ー!」という声援の方が多く聞こえた。
慶應の反撃は29分、敵陣少し入ったところでのマイボールスクラムで、途中出場の村田が3人交わしながら40メートルほどランで駆け上がった。サポートについていた大野、そして最後は橋本に渡り反撃のトライをあげる。スクラムから流れるような一連のプレーだった。そして38分には、自陣からBK中心にパスを繋いでいき敵陣まで行くと、相手のペナルティもありチャンスとなる。モールは組めなかったが、その後三木がタックルを受けながら佐々のサポートを味方に体を回転させながらインゴール目前まで運ぶと、最後は中矢がねじ込みトライ。中矢にとっては地元・大阪での凱旋トライとなった。しかし、反撃は及ばず12−41でノーサイドとなり、岡組の挑戦は幕を閉じた。
惜しくも、目標の「正月越え」はならなかった。しかしこの1年間、体を張ったプレーや、伝統の「魂のタックル」は、多くの人に感動と勇気を与えてくれた。観客に一礼した後、グラウンドを後にする慶應の選手たちだったが、中山だけただ一人遅れてグラウンドを去った。中山は立ち止まり、スコアボードを睨んでからその場を後にした。その眼差しからはこの敗戦の悔しさ、来年への覚悟を感じるものがあった。中山は今年スクラムリーダーを務め、対抗戦から全試合に先発出場し、飛躍の1年となった。下級生らはこの悔しさを糧に、来年以降にぶつけてほしい。4年生にとってはこの試合を持って引退することになるが、この代の4年生は振り返れば入学当初はコロナ禍の真っ最中。練習どころか、入学式すらなかった。同期にも会えない中、「自分は本当にラグビー部に入部したのかな」と当時を振り返る部員もいた。しかし青貫監督も「我慢を重ねてきた代」というように、部員全員で壁を乗り越え、4年生になり最後の1年にして「国立で100回目の早慶戦」という二度とない最高の舞台も経験した。それは日頃から地域貢献の取り組み、小学校にタグラグビー教室を開催するなど、日本ラグビーの先駆者として応援されるチームを目指してきた中で、多くの方々からの「ありがとう」があったからこそ実現したに違いない。この代をもう二度と見れないことはとても寂しいが、まだ慶應蹴球部は山登りの途中である。来年はまた新しいチームとして目標に向けて、山を登り続ける。
(記事:野上 賢太郎 写真:野上 賢太郎)
青貫浩之 監督
——本試合の総括
今日の試合、格上の天理大学さんに対して、ファーストプレイから挑戦していこうという思いで望みました。特に、ディフェンスとエリア取りにこだわってチャレンジすることを、みんなで統一していましたが、セットピースのプレッシャーやブレイクダウン、全てにおいて天理大学さんのプレッシャーを受ける形になってしまいました。それが後半の最後まで修正できませんでした。ここまで1年間積み上げてきましたが、この敗戦をしっかり受け止めて、また来年この場に戻って来れるようにチャレンジしたいと思います。本日はありがとうございました。
——ハイパントはどういう狙いで
ハイパントに関しては、対抗戦7試合を通じてこだわってきた戦法で、相手が天理大学さんだからというよりは、我々の強みを前面に出そうという意図でした。50%―50%のキックを蹴って、こぼれ球を相手よりも早く拾うことを徹底してやってきましたが、ほぼノックオンになってしまい、相手ボールになってしまったところが痛かったかなと思います。
——4年生たちは入学当初はコロナ禍で活動できない日々も続きましたが、それを乗り越え「国立で100回目の早慶戦」など最上級生となり素晴らしい経験をしたのではないでしょうか。
本当に我慢に我慢を重ねてきた代だったのかなと思います。入学してから半年ぐらいはオンラインでトレーニングをし、同期にも会えない中で最大限の努力をしてきたのが今年の4年生だと思っております。私はコーチを長年やってきましたが、今年の4年生は真面目に取り組む学生が多く、主将の岡を中心に、練習に対して真摯に取り組む素晴らしい4年生が集まった代だなと。私自身、監督1年目で未熟な部分もありましたが4年生に助けられたなと思っています。特に岡主将については、チームをまとめて春から大変だったと思いますが、心からありがとうという言葉を伝えたいと思います。
岡広将 主将
——本試合の総括
青貫監督がおっしゃった通り、天理大学さんにやりたいことをやらせてしまった、自分たちのやりたかったことを徹底できなかったところが敗因かなと思います。この1週間良い準備はできたのですが、1年間の積み重ねの部分で負けてしまったのかなと思うので、下級生には、経験や後悔を活かして、糧にしてもらえればと思っています。
——後輩にメッセージを
2番の中山大暉には本当に1年間助けられたというか、主将経験のない自分を助けてくれたり、FW内のまとめ役だったり、一番お世話になった下級生かなと思っています。来年以降リーダーだったりチームをまとめる側になると思うので、そこに関して自分の経験だったり、相談に乗ったり、何か伝えてあげられればなと思います。僕はラグビー生活を終えますが、後輩たちに向けてとしては、自分たちが望む結果にはならなかったかもしれませんが、そこを来年挑戦してもらいたいです。
慶應義塾大学 | ||||
# | 氏名 | 身長(cm)/体重(kg) | 学年学部 | 出身校 |
1 | 井上 皓介 | 176/106 | 経4 | 慶應 |
2 | 中山 大暉 | 176/102 | 環3 | 桐蔭学園 |
3 | 岡 広将 | 173/107 | 総4 | 桐蔭学園 |
4 | シュモック オライオン | 181/100 | 環4 | Mount Albert Grammar School |
5 | 中矢 健太 | 184/104 | 総3 | 大阪桐蔭 |
6 | 樋口 豪 | 174/98 | 文4 | 桐蔭学園 |
7 | 富田 颯樹 | 173/93 | 経4 | 慶應志木 |
8 | 冨永 万作 | 187/102 | 商3 | 仙台第三 |
9 | 橋本 弾介 | 169/77 | 法2 | 慶應 |
10 | 山田 響 | 174/82 | 総4 | 報徳学園 |
11 | 伊吹 央 | 176/81 | 経2 | 慶應 |
12 | 三木 海芽 | 167/83 | 総4 | 徳島県立城東 |
13 | 山本 大悟 | 174/87 | 環2 | 常翔学園 |
14 | 大野 嵩明 | 177/80 | 法4 | 慶應 |
15 | 今野 椋平 | 183/86 | 環2 | 桐蔭学園 |
16 | 酒井 貴弘 | 169/98 | 商4 | 慶應 |
17 | 木村 亮介 | 173/103 | 環4 | 慶應 |
18 | 吉村 隆志 | 177/108 | 環3 | 本郷 |
19 | 浅井 勇暉 | 188/107 | 総3 | 仙台 |
20 | 本郷 海志 | 171/93 | 経4 | 慶應志木 |
21 | 小城 大和 | 168/73 | 商3 | 北嶺 |
22 | 村田 紘輔 | 174/85 | 経3 | 慶應 |
23 | 佐々 仁悟 | 173/80 | 総4 | 國學院久我山 |
天理大学 | ||||
# | 氏名 | 身長(cm)/体重(kg) | 学年 | 出身校 |
1 | 富田 凌仁 | 170/105 | 4 | 若狭東 |
2 | 寺西 翔生 | 169/195 | 3 | 常翔学園 |
3 | 宮田 悠暉 | 175/103 | 4 | 広島工業 |
4 | 鄭 兆毅 | 185/107 | 4 | 竹圍 |
5 | 渡邉 完徒 | 182/100 | 3 | 明和県央 |
6 | 川越 功喜 | 180/87 | 1 | 天理 |
7 | 太安 善明 | 176/92 | 1 | 天理 |
8 | 上ノ坊 悠馬 | 181/97 | 2 | 市立尼崎 |
9 | 北條 拓郎 | 172/80 | 4 | 天理 |
10 | 筒口 允之 | 171/82 | 3 | 長崎南山 |
11 | 藤原 竜之丞 | 167/72 | 3 | 日本航空石川 |
12 | マナセ ハビリ | 175/95 | 4 | 高知中央 |
13 | 上野 颯汰 | 180/90 | 3 | 関商工 |
14 | 弘田 士道 | 170/75 | 1 | 京都工学院 |
15 | 上ノ坊 駿介 | 181/88 | 2 | 石見智翠館 |
16 | 稲嶺 翔太 | 172/105 | 2 | 石見智翠館 |
17 | 森 仁之輔 | 178/105 | 2 | 東福岡 |
18 | 井上 魁 | 174/105 | 1 | 松山聖陵 |
19 | 藤岡 洸雅 | 179/192 | 2 | 姫路工業 |
20 | 岡崎 慶喜 | 180/100 | 2 | 石見智翠館 |
21 | 高岸 尚正 | 168/74 | 4 | 常翔学園 |
22 | 中村 仁 | 170/80 | 1 | 松山聖陵 |
23 | フィリモネ サイア | 181/92 | 1 | 青森山田 |
慶應義塾大学 |
| 天理大学 |
101.5kg | FW平均体重 | 98.3kg |
812kg | FW合計体重 | 786kg |
178cm | FW平均身長 | 177.3cm |
◎交替/入替
慶應義塾大学 | |||
種別 | 時間 | IN | OUT |
入替 | 前半31分 | 18・吉村 | 3・岡 |
入替 | 後半0分 | 17・木村 | 1・井上 |
入替 | 後半4分 | 23・佐々 | 15・今野 |
入替 | 後半21分 | 22・村田 | 13・山本 |
入替 | 後半27分 | 20・本郷 | 6・樋口 |
入替 | 後半31分 | 19・浅井 | 4・オライオン |
入替 | 後半31分 | 21・小城 | 9・橋本 |
入替 | 後半35分 | 16・酒井 | 2・中山 |
天理大学 | |||
種別 | 時間 | IN | OUT |
入替 | 後半21分 | 17・森 | 1・富田 |
入替 | 後半26分 | 19・藤岡 | 5・渡邉 |
入替 | 後半28分 | 16・稲嶺 | 2・寺西 |
入替 | 後半28分 | 18・井上 | 3・宮田 |
入替 | 後半31分 | 22・中村 | 10・筒口 |
入替 | 後半31分 | 23・伊藤 | 12・ハビリ |
入替 | 後半32分 | 20・岡崎 | 4・鄭 |
入替 | 後半32分 | 21・高岸 | 9・北條 |