2019年4月29日以来、実に5年ぶりの開催となった早慶アメリカンフットボール対校戦。祝日ということもあり、駒沢陸上競技場には大勢の観客が駆けつけた。第1Qは、懸命な守備で早大のタッチダウンを防ぐも、キックで先制を許し0ー3。続く第2Qでは、タッチダウンを3本決められるなど大量失点も、WR・水野覚太(政4・慶應湘南藤沢)が50ヤード超えの爆走からタッチダウン。キックも成功させ、7ー24とする。第3Qでは早大の猛攻に遭い、我慢の時間が続く。7-30で迎えた最終Q、後半から出場のQB・松本和樹(経4・慶應)が立て続けにパスを成功させて大きく前進すると、WR・久保宙(経3・慶應)がタッチダウン、そしてトライフォーポイント(以下、TFP)のタッチダウンも成功させる。さらに、QB・松本も自らタッチダウンを決めて21ー30と点差を縮めるが、慶大の追い上げもここまで。終盤には、セーフティで早大に2点を献上し、そのまま21ー32で敗北した。
4月29日(月)@駒沢陸上競技場 第72回早慶アメリカンフットボール対校戦
| 慶應義塾大学 UNICORNS | 早稲田大学 BIG BEARS |
第1Q | 0 | 3 |
第2Q | 7 | 21 |
第3Q | 0 | 6 |
第4Q | 14 | 8 |
計 | 21 | 32 |
5年の時を経て再び歴史が動き出した、アメフト早慶戦。この大舞台でチームの司令塔・QBを任されたのは、山岡葵竜(政3・佼成学園)。第1Q、RB・山内啓耀(経3・慶應)のランなどで敵陣に切り込んでいくが、思いどおりには攻撃をさせてもらえず苦しい立ち上がりとなる。K・佐々木雄大(経4・慶應)のキックも、風の影響も受けてかゴールポストまで届かず。先制とはならない。一方の早大は、パスやスクランブルなど多彩な攻撃でゴールラインへと迫ってくるが、LB・赤木龍士朗(政3・鎌倉学園)のタックルなどで押し戻し、なんとかタッチダウンを防ぐ。それでも早大にキック成功で先制され、0ー3。慶大QB・山岡も、WRの水野覚太やK・行友理貴(経4・慶應湘南藤沢)へパスを成功させ、早大に負けじと着実に陣地を稼いでいくが、インターセプトされ攻撃権を失ってしまう。その後は、早大のランプレーでずるずると押し込まれる展開に。それでも、DBの千葉陽太(環3・鎌倉学園)や横手謙太朗(医3・慶應)が早大の攻撃を必死に止め、失点を3点に抑える。
悪い流れを断ち切りたい第2Q、慶大の心中とは裏腹に早大は一層攻勢を強めていく。開始早々で早大にタッチダウンを許すと、TFPで冷静にキックを沈められ、0ー10。続く慶大の攻撃では、フレッシュ(新たに1st downを得ること)獲得も早大のナイスプレーが光り、ファンブルからランプレーで立て続けにタッチダウンを許し、0ー24と大きく突き放されてしまう。それでも、DL・天野甲明(政2・鎌倉学園)の渾身のQBサックで早大の攻撃を抑え、残り1分1秒で自陣8ヤード地点から慶大の攻撃を開始する。タッチダウンには92ヤードの前進が要求される、かなり厳しい状況。このまま無得点で第2Qを終えてしまうのかという焦燥感の中で、思いがけずその瞬間が訪れる。山岡が久保宙へのパスを成功させて流れを引き寄せると、さらに山岡が水野覚太へ華麗な超ロングパス。得点への期待に胸が高まる中、パスを受けた水野は50ヤードを超える爆走。追い縋る早大選手を振り切るとそのままゴールラインまで駆け抜け、慶大待望のタッチダウン。TFPも、佐々木雄大がしっかりと決めて1点を追加し、7ー24とする。直後の早大の攻撃では、WR・飯塚奏太(経3・慶應)がインターセプトし、追加点への期待が高まる。残り時間12秒、ロングパスが決まればタッチダウンというところで、チャンスを活かすことはできず。7ー24で、前半を終える。
第3Q、慶大は前半の勢いそのままに得点を重ねたいところだが、早大もそう簡単に流れを渡してはくれない。早大の度重なる猛攻に、LB・谷口智哉(環4・足立学園)らがブロックやプレッシャーで対応。キックで失点も、タッチダウンを防ぎ失点を最小限に抑える。攻撃では、慶大QBが松本和樹に交代。得点へと逸る気持ちゆえか、第3Qでは慶大の反則が目立つ。慶大はロングパスを狙って攻撃を展開していくが、インターセプトされてしまう。第3Qは、早大の攻撃時間が長くなり、我慢の時間が続く。守備では、昨年度までキッカーを務め、貴重な得点源でもあった丹羽航大(総4・慶應)がこの日は主戦場をDFに移しながらも、その存在感を発揮。それでも、迫り来る早大の猛攻に耐えきれず再びキックで3点を献上し、7ー30。パスが通ればタッチダウンというピンチの場面では、DB・近藤ラフィー順(商4・慶應)がナイスディフェンス。慶大はロングパスなどで見せ場を作るも、追加点とはならず。7ー30で、勝敗を決する最終Qへ。
運命の第4Q、ランを多用して力技で突破を試みる早大をなんとか抑え、慶大はここから反撃に出る。QB・松本和樹から久保宙へのパスを皮切りに、パスやスクランブルで立て続けに前進に成功。順調にフレッシュを獲得していく。そして最後は、松本からパスを受けた久保がタッチダウン。久保がTFPも成功させて8点を返し、15ー30とする。勢いに乗った慶大は、橋口塁(経2・慶應湘南藤沢)がボールの落下点で早稲田選手を倒し、朝比奈孝達(法4・立教新座)が早大のロングパスに対応してファンブルリターンとするなど、素晴らしいディフェンスも光る。再び攻撃権を奪取した慶大は、QB・松本が体勢を崩されながらも水野覚太へロングパス。次のプレーでスクランブルを成功させ残り約3ヤード地点まで前進すると、最後は松本が自ら飛び込みタッチダウン。キックは失敗に終わるが、21ー30と追い上げには成功。9点を追う慶大は、時間がない中で攻撃権を獲得すべくオンサイドキックを多用するがいずれも失敗。さらに、QBサックで倒され、セーフティで2点を失ってしまう。慶大は、タイムアウトで時計を止めながら最後まで懸命に戦い抜くが、願いは届かず。宿敵にして強敵、早大に21ー32で敗れた。
(記事・写真:長掛真依、写真:島森沙奈美、重吉咲弥)
▽以下、選手インタビュー
DB・横手謙太朗選手(医3・慶應)
ーー昨年度秋に完封負けしていた早大に21-32、試合を振り返って
相手の方がフィジカル、テクニック、気持ち、すべての面で一枚上手だった。自分たちの実力不足でした。
ーー5年ぶり開催、歓声に包まれた早慶戦の舞台は
やはり沢山の人の声援というのは、士気が上がります。次の早慶戦では自分や慶應のディフェンスがもっと会場を沸かせられるように、成長します。
ーー慶大DFはいかがでしたか
修正力が課題です。慣れない体型やプレーに対して焦ってしまったり、何回も同じプレーで出され続けたりするので、試合中に自分たちでいかに修正できるか、というところを研ぎ澄ましていかなければならないと思います。
ーーこの試合におけるDFのキーマンは
今回キーマンとなる人はいなかったと思います。
ーーオープン戦、リーグ戦に向けてどのように調整を
自分たちの立ち位置がわかったので、秋シーズンに向けて試合経験を積むと同時にフィジカルアップに努めます。
WR・水野覚太選手(政4・慶應湘南藤沢)
ーー昨年度秋に完封負けしていた早大に21-32、試合を振り返って
ただ悔しいです。勝てない試合ではなかったと思うのですが、自分たちのミスで追い込まれてしまっていました。個人としても、チームとしても、様々な改善点が見つかったのでそこは必ず秋に繋げたいと思います。
ーー5年ぶり開催、歓声に包まれた早慶戦の舞台は
たくさんの人に応援されているんだなと実感し、とても感動しました。確かに緊張はしましたが、それよりもこのような素晴らしい舞台で試合ができることの嬉しさが勝っていました。個人的にも高校や大学の友人が多くきてくれていたのでそこで良いプレーができて良かったです。
ーー攻撃面では、終盤にかけて一気にパスが繋がるようになりましたが、何か戦略等に変更は
特に大きく変えたことはないです。ただ前半で出た課題や相手の特徴等をハーフタイムでしっかり分析し、そこにアジャストしていきました。あとは後半から出場したQB松本(=松本和樹)のアツい激励でみんなにスイッチが入ったのもあると思います。
ーー反撃の1発となるTDの瞬間を振り返って
普段から練習していたプレーなので、試合でも決めることができて本当に嬉しかったです。決めた瞬間は頭が真っ白でしたが、点差はまだ大きかったのでもう1発決めようとすぐ切り替えました。あとはQB・山岡(=山岡葵竜)くんのナイススローに感謝したいです。
ーーオープン戦、リーグ戦に向けてどのように調整を
今年は日本一を狙えるポテンシャルがあるチームだと思います。秋の初戦で早稲田にリベンジし、さらにその先の日本一をもぎ取れるよう、まず春はしっかりと経験を積んでいきたいと思います。特にフィジカルの部分はチームとしてまだ改善できるところがあると感じたので強化していきたいです。
山岡葵竜選手(政3・佼成学園)
ーー昨年度秋に完封負けしていた早大に21-32。試合を振り返って
点差以上に実力差はあったと思いますが、去年の0本に対して早大相手に3本TDを取れたという事実は秋シーズンの自信にもつながる結果だったと思います。
ーー5年ぶり開催で、歓声に包まれた早慶戦の舞台でプレーした感想は
月曜日であったのにもかかわらず多くのお客さんが来てくれて、今まで味わったことのない緊張感がありました。スターターを任せられてすごく緊張しましたが、この経験が秋、そして来年に必ず活きてくると思います。
ーー反撃の1発となるTDは山岡選手のパスから、プレーを振り返って
何度も練習したプレーで、試合冒頭で似たようなシチュエーションで早稲田が見せたDF陣形的に、あのプレーが狙えるという会話をオフェンス内でしていました。前半残り時間が少ない中で、後半につながるビッグプレーを作れたことはすごく良かったと思います。キャッチ後のランは、WR・水野(=水野覚太)の個人技の一言に尽きます。
ーーご自身のプレーを振り返って
全く満足していない。WR・水野(=水野覚太)のロングパス以外の場面で前半のオフェンスは全く機能しておらず、慶應のDFとキッキングチームがもたらしてくれたビッグチャンスを得点に繋げることができませんでした。早稲田DFのプレッシャーは予想を遥かに超えるもので、自分たちがしたいことをさせてもらえませんでした。
ーーオープン戦やリーグ戦に向けてどのように調整を
日本一を争うリーグ戦の初戦が早稲田大学であり、絶対に負けられない戦いでもあります。夏を通して「オフェンスが牽引する慶應」を目指して練習に励んでいきたいです。