今年もラグビーの季節がやってきた。創部125周年という節目の年を迎えた慶大ラグビー部。今季は「No Magic」をチームスローガンに掲げ、キャプテン中山大暉(環4・桐蔭学園)を中心に「攻める慶應」を展開。春季には交流大会Bブロックで優勝するなど着実に地力をつけてきた。確かな自信を胸に臨む秋季は、対抗戦5位/大学選手権3回戦に終わった昨年の成績を超え、大学選手権ベスト4以上を目指す。
今季の慶大の好調を支えるのはスクラムとコンバージョンキックである。HOの主将・中山、成田薫(経4・慶應)と吉村隆志(環4・本郷)の両PRの3人は春季大会では不動のスタメンとして全試合に出場し、慶大のスクラムに強さと安定感をもたらした。今野椋平(環3・桐蔭学園)と新戦力・小野澤謙真(環1・静岡聖光学院)の2人のコンバージョンキック成功率の高さも得点力の向上のみならず試合のリズムをつくる上で大きな強みとなる。攻撃では「攻める慶應」をキーワードとして挙げ、アタック陣・ディフェンス陣が共に前に出ることを意識した積極的なラグビーを展開。春季交流大会5試合で決めたトライの数は「40」。これは昨年度の対抗戦で決めた総トライ数の2倍に上る。彼らの目指すラグビーが一つ形となったことがわかる。
そんな慶大が迎える対抗戦初戦の相手は筑波大学。昨季対抗戦では18―21、今春交流大会では43―45といずれも土壇場で逆転を許し敗北を喫した因縁の相手である。その強みはラインアウト。春季大会での対戦でも、慶大敵陣でのプレーの最中に「50:22」を決め、慶大ゴール前付近でのラインアウトからトライを奪っている。試合最終盤に幾度となく驚異的な粘りを見せてきたことも特筆すべき点だ。慶大の勝利には、過去の苦い記憶を払拭し、これらの筑波大の強みに対応しつつ、いかに最後まで自分たちの攻撃的なラグビーを貫徹できるかが重要となる。
昨季の対抗戦の最終成績は慶大が5位、筑波大が4位。今年6月に行われた春季大会でも僅差の決着となった様に、両校の力関係は拮抗している。トライのみならず、一つのペナルティの付与、一つのコンバージョンの成功の有無が勝敗の行方を大きく左右するであろう。対抗戦リーグにおいては、上位4チームに全国大学選手権への出場権が自動的に与えられる。帝京大など同リーグの他の強豪の存在を踏まえると、この試合は両校にとって是が非でも勝ち点4を手にしたい一戦。ラグビー発祥校として復活に燃える慶大。そのフィフティーンは伝統の黒と黄色のタイガージャージに身を包み決戦の時を待つ。
(記事:竹腰環)