【What is 〇〇部?】馬と共に頂点へ跳ぶ!!~”主役は馬” 馬術が教えてくれたリーダーシップ~/File.21 馬術部(後編)

馬術

慶大の体育会を深掘りしていく連載企画、「What is ○○部?」。21個目となる馬術部の後編では、馬術部主将の藤川奈緒(法4・慶應女子)に馬術競技の魅力や競技への向き合い方などについて伺ったインタビューをお届けする。

藤川主将と相棒のビオンデッツァ

――馬術を始めたきっかけは

藤川:きっかけは慶應中等部に入学した際、運動神経があまり良くなかったのですが、それでも運動部に入りたくて。これならできるかもしれない、と思ったのが馬術でした。
中学の頃は週に1回程度の頻度で練習していましたが、大学に入ってからは少しずつ試合に出させてもらっています。

 

――馬術競技の魅力は何ですか?

藤川:馬に乗ることで、自分の力だけではできないことができる、自分の想像を超えたことができるのが魅力だと思います。

 

――馬との信頼関係を築く上で意識していることはありますか?

藤川:馬が「嫌だ」と思ってしまったら、何もできなくなってしまいます。人間の力だけではどうすることもできないので、馬が「やりたい」と思ってもらえるように意識しています。馬が主役であり、人はあくまで「こうしてほしい」とお願いする立場であることを忘れず、思いやりを持って接しています。

 

――試合前や本番で緊張してしまうこともあると思いますが、どう向き合っていますか?

藤川:人が緊張すると、その気持ちが馬にも伝わってしまいます。例えば障害を飛び越える際に「飛べないかも」と思ってしまうと、馬もその不安を感じてしまうので、普段の練習を信じて「馬がやってくれる」と信じることを心がけています。

 

――慶應馬術部ならではの特色を教えてください

藤川:部員のバックグラウンドがとても豊かです。内部進学で馬歴がある部員、帰国子女や留学生、大学から馬術を始めた部員など、さまざまな人が在籍しています。他大学では一般生とスポーツ推薦生で試合に出る人とサポート役に回る人とで役割が分かれてしまうこともありますが、慶應では全員が試合に出場することを目指して練習しています。

――普段の練習の雰囲気はどうですか?

藤川:学年関係なく意見を交換できる雰囲気があります。上級生が下級生の担当馬に乗る時には、後輩が先輩にアドバイスすることもあり、純粋に知識を共有する気持ちで取り組んでいます。一方で、1年生がやらなければならない仕事もあり、上下関係はしっかりしている部分もあります。それでも、2、3年生全員でご飯に行ったり、部活後に部室でリラックスしたりと、和やかな面もあります。

 

――苦労した経験や難しかったことはありますか?

藤川:担当している馬が怪我や病気になった時は、自分の責任だと感じてしまい、かなり落ち込みます。また、馬との関係構築が感覚的な部分に依存しているため、なぜ上手くいったのかを言語化するのが難しく、後輩に引き継ぐ時に困ることがあります。座っている位置が少し違うだけで馬の反応が変わるので、上手くいった感覚を他者に伝えるのが難しいです。

 

――主将として部をまとめる時に意識していることはありますか?

藤川:一対一で話す時間を意識的に作り、見えない部分でのフォローを心がけています。また、競技自体は個人戦に近いですが、勝敗はチーム単位で決まります。練習の時から他の選手が良い演技をした際には声をかけ、チーム全体で支え合う雰囲気を大切にしています。

 

――馬術を通じて成長したと感じる部分はありますか?

藤川:人として寛容になれたと思います。馬に対しても人に対しても、自分の思いが100%伝わるわけではなく、上手くいかないことも多いですが、そこで怒らずに受け止める余裕ができました。馬術を通じて学んだ「割り切り」と「思いやり」が、人間関係にも活かされていると感じます。

 

――今年の目標を教えてください

藤川:6月の関東大会、11月の全日本大会、そして早慶戦での団体優勝を目指しています。馬も人も良い素材が揃っているので、部員一同で練習に励んでいます。

 

――将来的には馬とどのように関わっていきたいですか?

藤川:現役時代にお世話になった馬たちが楽しい老後を過ごせるように、養老牧場の支援をしたいと考えています。馬の老人ホームのような場所があり、そこに入るためにはお金がかかるので、そういった面でのサポートができればと思います。

 

競技者として、そして主将として、馬と真摯に向き合い続ける藤川主将。馬との信頼関係を大切にし、チームの結束を強めながら、高みを目指している。培った経験と揺るぎない思いを胸に、今日も頂点を目指し馬とともに跳ぶ。

(取材、記事:鈴木啓護)

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