1月の早慶アイスホッケー冬季定期戦では勝利を収めており、連覇を狙う今大会。日本一観客が集まる試合との呼び声通り、会場には多くの観客が訪れ、豪華な演出と熱のこもった応援が繰り広げられた。慶大は序盤から早大との激しい攻防を繰り広げたが、第1ピリオドに2失点を喫し苦しい展開に。GK・多田圭之介(政4・慶應)の好セーブが光るも、反則によるキルプレーが続き、なかなか流れを掴めず。第2ピリオドは攻撃のリズムも出てきたが、0-3と点差を広げられる。第3ピリオドにはパワープレーの中、FW・三田輝明(経3・慶應)のゴールで1点を返す。観客席も沸いたが、終盤の6人攻撃も実らず、1ー3で敗戦。日本代表経験者を多く擁する強敵相手に健闘するも、悔しい黒星となった。
2025年6月14日(土)17:00試合開始 @KOSÉ新横浜スケートセンター
| 1P | 2P | 3P | TOTAL |
慶應義塾大学 | 0(7) | 0(15) | 1(7) | 1(29) |
早稲田大学 | 2(23) | 1(11) | 0(26) | 3(60) |
※()内はシュート数
【メンバー】
慶應義塾大学
1. 勝見、芝田、三田、茨城、有馬
2. 小島(壯)、倉田、立島、古舘、土井
3. 石村、小島(佑)、栖原、仁王、久恒
4. 郷、木原、生原、沖野、大塚
GK:多田 控え:秋田
早稲田大学
1. 田村、榎本、高見澤、清水、田中
2. 共田、鈴森、村上、笹沼、飯塚
3. 竹内、松下、杉本、樋口、岩村、伊藤
GK:大塚
【得点者】
【1P】
3分10秒 早大 FW・村上太一(アシスト:FW・飯塚創哉)
14分31秒 早大 DF・共田野安
【2P】
15分9秒 早大 FW・清水朝陽(アシスト:DF・共田野安)
【3P】
10分18秒 慶大 FW・三田輝明(アシスト:FW・芝田光希、DF・有馬龍太)
第1ピリオド開始序盤からスピードに乗り、パックの奪い合いになる。キルプレー時には早大選手らのスピード感のあるパス回しからFW・村上太一(ス1・白樺学園)の鋭いシュートが放たれる。GK・多田圭之介(政4・慶應)が肩でセーブしたかのように思われたが、判定はゴール。先制点を許す展開に。反撃したい慶大は、DF・有馬龍太(経4・武修館)や1年生ながら第1セットに名を連ねたDF・茨城康瑛(法1・慶應)がシュートを放つも、ゴールキーパーの正面を突く。

シュートを放つ有馬龍太選手
その後、ディフェンディング・ゾーンでパスをカットされ、DF・共田野安(国教4・George Eliot Secondary School)に痛恨の追加点を許す。流れを変えるべく慶大は早くもタイムアウトを取るも、なおも早大選手に攻められる展開が続く。多田はFW・笹沼葵(教3・早実)が放った強烈なシュートをセーブするなど好プレーを見せ、観客を沸かせる。多田の奮闘に得点で応えたい中、FW・勝見斗軌(法4・Ontario Hockey Academy)がパックをゴール前まで運び、シュートモーションに入ったところで相手の反則を誘う。ペナルティ・ショットのチャンスを得る。会場が静まり緊張感に包まれる中、低く強いシュートを放つも、惜しくも決めきれず。

活躍が光った勝見斗軌選手
パワープレー時には茨城のパスを受けたFW・三田輝明(経3・慶應)がシュートを放つなど積極的な攻撃も見られた。しかし、反則が重なり、キルプレーの数的不利の状況が続く。第1ピリオドのスコアは0-2。2点ビハインドで終える。
第2ピリオドはキルプレーからのスタート。慶大は持ち前の堅い守備を武器に早大に攻撃の形を作らせず、徐々に主導権を握る。FW・栖原大河(経3・慶應)がシュートを放つなど、アタッキング・ゾーンでのプレー時間が確実に増す。勝見が相手選手に押されながらもパスを出すとそれを受けたFW・芝田光希(経2・都市大附属)がゴールを決めたかのように思われ、観客も大きく沸く。しかし、不運にもノーゴール判定となる。

芝田光希選手の幻のゴール
その後、第1ピリオドとは対照的に相手の反則が目立ち始める。パワープレーの時間帯が増える中、DF・有馬龍太(経4・武修館)が放ったロングショットが相手GKからこぼれ、ゴール前で競り合いになるも決めきれず。さらに、FW・郷基成(経4・慶應)に縦パスが通るなど良いプレーが多く見られるも、相手に阻まれる。再び訪れたパワープレーのチャンスだったが、相手にパックを奪われると、ディフェンディング・ゾーンに戻り切れず、GKと1対1の状況でFW・清水朝陽(社4・武修館)にゴールを決められる。流れに乗りたかった慶大にとっては重い失点となった。その後も数的有利の状況の中、攻められる展開が続く。各選手が体を張ったプレーを見せるが、得点には至らず。第2ピリオドを0-3の3点ビハインドで終える。
何としても得点したい第3ピリオド。立ち上がりから放たれるロングシュートを多田が連続でセーブ。この試合、幾度となくピンチを救ってきた守護神の好セーブに観客から拍手が起こる。

好セーブでチームを救った多田圭之介選手
パワープレーのチャンスが訪れると、ゴール前で待ち構えた三田が相手GKをかわしてシュートを突き刺し、ゴールを決める。慶大の初得点に観客席では歓喜の「若き血」が熱く響き渡った。

ゴールに喜びあう選手たち
しかし、終盤までスピードを落とさず、堅い守りを見せる早大選手らに追加点を阻まれる。試合時間が残り僅かになったところでゴールキーパーを下げ、6人攻撃で攻めるも、ゴールには至らず。追い上げも及ばず、1-3で悔しい黒星を喫した。
連覇を狙った今大会は悔しい黒星となった。しかし、随所に見られた好プレーで観客を沸かせ、体を張った攻撃的な姿勢は私たちに感動を与えてくれた。この春シーズンは厳しい戦いが続いたが、秋シーズンはきっと巻き返してくれることだろう。今後も慶大アイスホッケーの熱い戦いから目が離せない。
(取材:檜森海希、吹山航生、野田誉志樹、冨髙吉典、神谷直樹
記事:檜森海希)
【選手インタビュー】
主将・DF・有馬龍太選手
──守備の時間が長くなる展開だったと思いますが、その中でのご自身のプレーや、チーム全体の戦いぶりをどのように振り返りますか
確かに守りの時間帯は非常に長かったと思います。難しいプレイではなく、シンプルにDZ(ディフェンディング・ゾーン)を割り、前に前にと前線からフォアチェック(前線から相手にプレッシャーをかけること)で流れを掴むことを目標としていました。しかし、特に試合序盤の第1ピリオドはチーム全体として運動量が少なく、脚が動いていない時間帯が長かったと感じております。自分自身としてもそういった時間帯に個人技で難局を打開することができず、チームとして序盤から勢いに乗れなかったことが大きな反省点だと感じています。
──早慶戦を含めた春シーズン全体を振り返って収穫や課題
春シーズンの収穫としては、1年生の活躍もあり、勢いに乗ればこのチームで戦っていけることを各々が確認できたことだと思います。特に秩父宮杯での早稲田戦(5/31開催)ではこの点が顕著で、しっかりと対策をすれば互角に戦えることを肌で感じることができました。
一方で課題としては、勝利に対する執着心、精神的なタフさだと思っています。慶應にとって、今後簡単に勝利を勝ち取れる試合は一つもありません。現在のチームは、相手に攻め込まれる時間帯や、ビハインドから追い上げる展開等の精神的なタフさが求められる状況に非常に弱いと感じています。このタフさは日頃の陸上・氷上練習での追い込みや練習強度から強化されると考えているため、練習の強度もより一層高めていかなければと考えています。
──今後に向けた意気込みをお聞かせください
今後の意気込みとしては、今まで以上に選手一人一人のレベルアップに努めたいと考えています。どんなに素晴らしい戦術があっても最後は目の前の相手に勝てるかどうかの個人技が問われます。春シーズンでは個人で難局を打開できるような存在が不在だったと感じており、秋リーグに向けてこの点を強化していきたいと思います。
ゴールを決めたFW・三田輝明選手
──苦しい試合展開の中でのゴールだったかと思いますが、その瞬間の気持ちや、ゴールシーンを振り返ってどのように感じますか
3年生にして、早慶戦では初ゴールということで、得点を決めた瞬間はこれ以上にない喜びで溢れました。素直にとても嬉しかったです。また、得点の仕方というのも、よく練習していた形で得点をすることができたので、今後のアイスホッケーキャリアにおいて、自信に繋がる1点になったと感じております。
──早慶戦を通して得られた手応えや、今後に向けての課題について教えてください
早慶戦を通して、素直に自分たちの力不足を痛感いたしました。コーチが早稲田を徹底的に分析し、今回の早慶戦に向けた準備というのを、春大会後から突き詰めて行ってまいりました。しかしながら、緊張からなのか第1ピリオドはやるべきことをやれず、自分を見失っている状態からスタートし、エンジンがかかったのは第2ピリオドからでした。私たちの課題としては、この弱い部分をどう打開できるか。他の1部Aの大学に比べてスキルが劣っているのは、私たち全員が理解しているはずです。その中で走って、当たって、ゴールにパックを集めて、というシンプルなアイスホッケーをいかにできるかが今後の鍵になると感じました。幸いにも、1月にこの借りを返すチャンスがあるので、チーム一丸となって精進し、昨年度のように、感謝の気持ちを勝利という形で届けたいと強く思いました。