6月19日から22日にかけて行われたレスリング明治杯全日本選手権大会。3日目となる21日には尾﨑野乃香(環4・帝京)が62㌔級の準決勝、岡澤ナツラ(法1・慶應)がフリースタイル79㌔級の3位決定戦に出場した。尾﨑は難なく決勝進出を決め、世界選手権への進出へ期待が高まった。また岡澤も3位決定戦で見事勝利し、明治杯3位と輝かしい成績を残した。
2025年6月21日(土)@東京体育館
【試合結果】
〈女子フリースタイル62㌔級〉
2回戦
○尾﨑野乃香(慶大)[VSU 0:45=10-0]岩澤 希羽(秋田ノーザンハピネッツ)●
準決勝
○尾﨑野乃香(慶大)[VPO 6:00=10-2]榎本美鈴(自衛隊体育学校)●
〈男子フリースタイル79㌔級〉
3位決定戦
○岡澤ナツラ(慶大)[VSU 3:39=11-0]阿部宏隆(水戸市レスリングスポーツ少年団)●
昨年8月に開催されたパリ五輪の62㌔級に日本代表として出場し、見事銅メダルを獲得したことで今大会も最注目選手の一人として名前が挙げられる尾﨑野乃香(環4・帝京)。初戦となった2回戦では10ー0のテクニカルフォール勝ちで危なげなく今回の準決勝に駒を進めてきた。相手は昨年の天皇杯フリースタイル62㌔級の準決勝でも対戦し、勝利を収めている榎本美鈴(自衛隊体育学校)。試合は序盤から尾﨑が攻め込む展開が続き、今大会初となる失点こそ喫したものの、10ー2のポイント判定勝ちで危なげなく決勝進出を確定させた。
そして明日行われる決勝の相手に決まったのは元木咲良(育英大学助手)。昨年のパリ五輪では62㌔級で金メダルを獲得するなど、尾﨑にとってはまさに最強のライバルが決勝の舞台で立ちはだかることとなった。パリ五輪メダリスト同士の一戦を制して世界選手権への切符を勝ち取ることが出来るか注目だ。
昨年から天皇杯を初めとする主要大会で輝かしい実績を残し続ける期待の1年生の岡澤ナツラ(法1・慶應)。初出場となった明治杯では初戦を見事テクニカルフォール勝ちで突破するも、準決勝で惜しくも敗れたことで迎えた3位決定戦。相手は阿部宏隆(水戸市レスリングスポーツ少年団)。実は岡澤が中学の頃所属していたクラブチームの恩師とも言える存在だったという。
「3決は気持ちでぶつかって、高校生のときらしく6分間ずっと攻め切って、気持ち良く終わろうという想いで思いっきりぶつかって行きました。」後日行われたインタビューで語った言葉通り、試合開始直後から攻めの姿勢を貫き見事11ー0でテクニカルフォール勝ちを収めた。
試合後にはお互い声を掛け合い写真を撮るなどの光景も見られた。岡澤も「心に来る、一番思い出に残る試合だったと思います。」と語るなど、明治杯の舞台が勝敗の垣根を超えた再会の場となった瞬間だった。
(記事:野村康介 取材:塩田隆貴、野村康介、柄澤晃希)
【試合後インタビュー】
◇岡澤ナツラ(法1・慶應)
――初出場となる明治杯、これまで出場した他の大会との違いは
なんというか独特で、天皇杯とは違ってマット上にオリンピアンたちもいて、「俺が一緒にアップしていいのか」と思ったし新鮮なところもあって動いているだけで心身的に少し疲れるような重々しい雰囲気でした。
――トーナメントでの2試合を振り返って
最初の試合は体の動きもすごく調子が良くて、一回も組んだこともない相手で分からないことも多かったですけど、うまく自分の型にはめて戦えたかなと思います。不味かったところもなくて、初戦でかつ明治杯で初めての試合でうまく動けたから良かったと思います。準決勝で負けた試合は専修大学への出稽古で数え切れないくらい練習している相手(高原選手)で、100回やって1回勝てるか勝てないかくらいなので色々対策したんですけど、4点差という点数以上に実力に差を感じました。結果は悔しかったんですけど、3決に向けて切り替えました。
――大学生の選手との戦いで感じたこと
高校3年間あまりウエイトトレーニングをやってこなかったのでフィジカル面の差も感じましたし、全日本での戦い方っていうのも違っていて、高校生は6分間をガツガツ戦うんですけどこういう大会になると1日に6分の試合を何回もやるから、攻めるところは攻めて抑えるところは抑えるっていう戦い方が求められてくるんですけど、そこにまだ慣れていなくて、要らないところで攻めに行っちゃって逆にカウンターを食らうようなこともあって戦い方も甘かったなと思います。
――3位決定戦はどんな試合だったか
実は中学生のときのクラブチームのコーチが相手で、明治杯の3位を決める試合で中学校の頃にお世話になっていたクラブチームの恩師と戦えるのはすごく楽しかったです。自分のセコンドとも監督とかとも「最後はやっぱりやり切ろう」ということを話して、準決勝は勝つために色々な作戦も考えてビデオも見返したけど、3決は気持ちでぶつかって、高校生のときらしく6分間ずっと攻め切って、気持ち良く終わろうという想いで思いっきりぶつかって行ったし、向こうも思いっきり来てくれてすごくすっきりして終わることができました。試合が終わって(対戦相手の阿部選手に)話しかけられて写真を撮ったりもして、心に来る、一番思い出に残る試合だったと思います。
――よく知っている相手と戦うことの難しさは
4月のJOCの早稲田大学の相手(決勝で岡澤を5-3で下したガレダギ選手)も出稽古に行ったときにスパーをやってもらっていて、その人にも(高原選手と同じように)勝てたことはなくて、点数としても去年の全日本とか毎回2点差くらいで負けていて、そこを乗り越える力がまだなくて。知っている相手だと特に、自分は癖のあるレスリングをするから対策されやすいんですけど、そこを超えられる気持ちであったり、体の強さであったり根性であったりをレベルアップさせたいと思います。いつまでも超えられない選手になるのは嫌だから、いつかそこを超えて自分が決勝の舞台に立てるように、知っている相手にも戦えるようになるのがこれからの課題かなと思います。
――今後の戦いの意気込み
7月にU-20のアジア大会がキルギスであるんですけど、高校1年生のときもキルギスに行ってそこから3年連続でアジア大会とか世界大会に出たんですけど、1回も勝ったことがなくて、いつも体調が悪かったり怪我していたりというのもあって、今は天皇杯とか全日本とかで学んだうえでコンディションも良い感じですしこのままの調子で。アジア3回目だから3度目の正直ではないですけど自分が表彰台の頂点に立てるように、同期の瀧澤勇仁(経1・慶應)と一緒に行くので、チーム慶應で、陸の王者としてやってやりたいと思います。
――最後に、ケイスポ読者の方へ一言お願いします!
いつも色々な記事を読んでいただいて、クラスメイトにも「ケイスポ読んだよ!」みたいに声を掛けてもらえて非常にうれしいです。レスリングはマイナーなスポーツだけど、いろんな人に知ってもらって、競技をやらなくても観客として来てくれたらすごくうれしいです!僕はレスリングを盛り上げるために頑張って結果を出すので、これからも記事を読んで話しかけていただけたらと思います。
〈スコア見方〉
(例)[VSU、4:30=11-1]
・VSU→勝利方法、詳しくは下の図を参照
・4:30→試合終了時間(この場合は試合開始から4分30秒後に試合終了)
・11-1→試合終了時の点数(フォールによる勝利は点数を問わない)
VFA | victory by fall フォールによる勝利 |
VIN | victory by injury 負傷棄権による勝利 |
VCA | victory by 3 caution 警告3回による勝利 |
VSU | victory by technical superiority テクニカルフォール(10点差) |
VPO | victory by points ポイント判定勝ち |
VFO | victory by forfeit 不戦勝 危険試合による勝利 |
DSQ | disqualification 罰則による失格 |
2DSQ | double disqualification 両者失格 |