【レスリング】尾﨑野乃香 0.17秒の悲劇に涙のむ/明治杯全日本選抜レスリング選手権大会 4日目・プレーオフ

レスリング

6月19日から22日にかけて行われた明治杯全日本選抜レスリング選手権大会。4日目となる22日には女子レスリング62㌔級決勝に尾﨑野乃香(環4・帝京)が出場。決勝は接戦を落とし惜しくも準優勝に終わった。およそ2時間後に行われた2025レスリングシニア世界選手権出場を賭けたプレーオフも残り1秒を切ってからの悔しい逆転負けを喫し、代表入りを逃した。

 

2025年6月22日(日)@東京体育館

 

【試合結果】

〈女子レスリング62㌔級〉

決勝

●尾﨑野乃香(慶大)[VPO 6:00=3-3]元木咲良(育英大学助手)

プレーオフ

●尾﨑野乃香(慶大)[VPO 6:00=5-6]元木咲良(育英大学助手)

 

昨年のパリ五輪では本来の階級である62㌔級から一つ階級を上げ、68㌔級で銅メダルに輝いた尾﨑。昨年12月の天皇杯では慣れ親しんだ62㌔級で優勝を果たし、ロス五輪に向けて順調な滑り出しを決めた。今回の明治杯でも安定した戦いぶりで決勝に進出し、主要国内大会連覇に向けて期待がかかる。


また、昨年の天皇杯と明治杯との二冠を達成すれば今年9月に開催される2025レスリングシニア世界選手権の出場権を獲得でき、決勝で敗れても明治杯終了直後に行う天皇杯王者と明治杯王者によるプレーオフで世界選手権代表を決める規定となっており、今後に向けても非常に大きな意味合いを持つ一日となる。

まずは明治杯決勝。対戦相手の元木咲良(育英大学助手)はパリ五輪62㌔級の金メダリストであり、この階級における最大のライバルである。オリンピアン同士の決勝には両選手の多くのファンも応援に駆けつけ、13時40分頃、戦いのゴングが鳴らされた。

第一ピリオドは両者攻め手に欠き、膠着状態が続く。先に二度目のパッシブを受けた尾﨑がアクティビティタイムで得点を奪えず1点の先制を許し、0-1のビハインドで第一ピリオドを終える。第二ピリオド残り2分頃、元木も二度目のパッシブを受けアクティビティタイムとなると、尾﨑が背中を取ってテイクダウンで3点を奪い逆転に成功、3-1と2点のリードを取る。しかし残り1分頃、元木にテイクダウンを許し3-3と追い付かれる。同点で試合が終わった場合は最後のポイントを奪った選手の勝利となるため、尾﨑はポイントを奪おうと必死に攻め続けたが及ばず、ポイント判定負けを喫した。試合後、準優勝という結果に悔しさを滲ませ、表彰台でも笑顔は一切なかった。

明治杯の優勝を逃し、プレーオフを戦うことが決まった尾﨑。元木との再戦に向け入念にセコンド・コーチと話し合いを重ね、表彰式から1時間45分後の15時37分頃、世界選手権出場を賭けた一戦が幕を開けた。

試合は明治杯決勝と同じように、第一ピリオドは静かな展開で進む。互いに二度のパッシブによるアクティビティタイムでポイントを奪えずに相手に得点を与え、1-1の同点で迎えた第二ピリオド残り2分頃、尾﨑は元木の左足を攻めると素早く後ろに回り、テイクダウンで2点を勝ち越す。その後すぐさまテイクダウンで同点に追い付かれるも、残り1分頃、素早いタックルから右足を取ると粘られながらも相手をコントロールし、2点を奪って再び勝ち越し、5-3とする。世界選手権の切符獲得までおよそ30秒。今度こそ2点のリードを守り切りたい尾﨑だったが、再開直後に左足を取られてしまう。それでもなんとか堪え続け、勝利は目前かと思われた。しかし、相手に残り1秒を切ってからテイクダウンを許し、試合終了を告げるブザーが鳴ってしまう。

5-5と同点で終えるも、ラストポイントを奪った元木の勝利という結果に。尾﨑陣営はすぐさま最後のテイクダウンがタイムオーバーかどうかチャレンジを要求し、会場のスクリーンに映像が映し出される。「残り0.17秒の時点で、赤の選手の体がデンジャーポジションになっていますので、青の2点」というアナウンスが響き渡ると、育英大学応援団は大いに沸き上がり、元木は劇的な勝利に歓喜した。判定は覆らず、チャレンジ失敗により元木に1点が追加。僅か1点差の5-6で敗れ、世界選手権出場を逃した尾﨑。コンマ数秒耐え切れず、無念の敗戦に、マット上で涙をのんだ。

(記事:柄澤晃希 取材:野村康介、柄澤晃希)

〈スコア見方〉

(例)[VSU、4:30=11-1]

・VSU→勝利方法、詳しくは下の図を参照

・4:30→試合終了時間(この場合は試合開始から4分30秒後に試合終了)

・11-1→試合終了時の点数(フォールによる勝利は点数を問わない)

VFA

victory by fall  フォールによる勝利

VIN

victory by injury  負傷棄権による勝利

VCA

victory by 3 caution  警告3回による勝利

VSU

victory by technical superiority テクニカルフォール(10点差)

VPO

victory by points  ポイント判定勝ち

VFO

victory by forfeit  不戦勝 危険試合による勝利

DSQ

disqualification  罰則による失格

2DSQ

double disqualification  両者失格



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