慶應スポーツ新聞会

【野球】世紀の大一番、50年越しのリベンジならず。春秋連覇の夢ついえる。

11月3日(水) 慶大―早大 優勝決定戦 @神宮球場ouenn

伝説の『早慶6回戦』から50年。野手・正木が登板するなどまさに総力戦で挑んだ慶大。早大に2連勝し、勢いに乗る中で迎えた優勝決定戦であったが、最後は自力で勝る早大の前に、慶大最大の武器である「守備」が崩れ、賜杯を手にすることはできなかった。

    123456789 計

早大 300012103 10

慶大 000000050 5

慶大:●竹内大、田中宏、福谷、山形、金子、正木-長崎、松本和

慶大出場選手

 1 [6] 渕上(法4・慶應)

 2 [4] 湯本(商4・野沢北)

 3 [5] 山崎錬(商2・慶應)

   [1] 金子(環1・彦根東)

   [H2] 伊場(政3・慶應)

 4 [9] 伊藤(環3・中京大中京)

 5 [3] 高尾康(商4・慶應)

   [1] 山形(政1・土佐)

   [H5] 松尾(環4・鳥栖)

 6 [7] 竹内一(商4・慶應)

   [8] 宮本真(政3・慶應)

 7 [8] 青山(環4・関西学院)

   [7] 山口(商4・慶應)

 8 [2] 長崎(商4・高志)

   [2] 松本和(総4・金沢泉丘)

   [R] 新谷(政4・慶應)

   [1] 正木(政4・慶應)

   [H] 福富(商2・慶應)

 9 [1] 竹内大(環2・中京大中京)

   [H] 辰巳(文2・郡山)   

   [1] 田中宏(環4・佐賀西)

   [1] 福谷(理2・横須賀)

   [H3] 奥橋(環4・岡山城東)

チケット窓口に並ぶ長蛇の列。球場へ詰めかける大勢の報道陣。36000人、外野は立ち見客で溢れる超満員の神宮球場で、世紀の一戦は始まった。

エース竹内大が登板するも・・・

慶大先発は竹内大(環2)。早慶戦第1戦では7回を無失点。春季も1・3回戦で早大打線を封じ、チームを優勝へ導いたエース左腕に期待が集まる。しかし竹内大はその期待に応えることができない。打線を大幅に組み替えてきた早大打線、1番に座る首位打者の土生にヒットを許し、続く市丸にはエンドランを決められ、いきなり無死1、3塁のピンチを迎えると、続く宇高の犠牲フライで早々と先制を許してしまう。更に早大の攻撃が続く。4番山田にはまたしてもエンドランを決められ、ピンチを広げると、今日5番に入った地引のセカンドゴロの間に1点追加され、杉山にはタイムリーを許しこれで3点目。前回まではチャンスで凡打の山を築いてきた早大打線だが、この試合では徹底して反対方向への強い打球を放つ。更に足を絡める攻撃など、負けられない大一番できっちり竹内対策を講じてきたようだ。なおも松永にヒットを許し、2死1、2塁のピンチで8番松本の打球はライト前へ、2塁ランナー杉山が3塁を蹴ってホームへ向かうが、これはライト伊藤(環3)の好返球で間一髪タッチアウト。ようやくこの回の攻撃が終わる。

初回から3点の援護をもらって早大マウンドに上がるのは、もちろん100代主将、斎藤佑樹。この4年間、六大学野球を牽引してきた早大のエースは、早慶戦一回戦で先頭打者本塁打を許した渕上(法4)を三振に切ってとると、湯本(商4)、山崎錬(商2)を内野ゴロに打ち取り、初回をあっさり三者凡退に。この世紀の大一番で完璧な立ち上がりを見せる。2・3回を、ランナーを出しながらも無失点で切り抜けてきた竹内大だが、3回裏、早くも江藤監督はその竹内大に代打を送る。竹内大は斎藤とは対照的に、実力を出しきれないまま悔しい降板となった。4回のマウンドにはベンチ入り唯一の4年生投手、田中宏(環4)。この1年間、若手投手陣を懸命に引っ張ってきた春の胴上げ投手田中は、ピンチを招くものの、この回をなんとか無失点で抑える。

試合の行方を大きく決める次の1点をどちらが取るのか。30000を越える大観衆、そして日本国民の視線が一挙手一投足に注がれる中、その1点をものにしたのは早大だった。

5回、先頭の地引にヒットで出塁され、続く杉山、松永を打ち取る間にランナーは得点圏へ。田中が2死2塁のピンチを迎えると、ここで江藤監督は2日前に128球を投じた福谷(理2)をマウンドへ。この最大のピンチを、慶大の快進撃の立役者となった若き右腕に託す。福谷は起用にこたえ、松本をショートゴロに打ち取り、ピンチを脱したかに思われた次の瞬間、名手渕上が痛恨のエラー。この大一番で、慶大自慢の守備が崩れてしまう。この嫌な流れを福谷は断つことができず、9番斎藤にタイムリーヒットを打たれ、大きな大きな4点目を献上してしまう。

慶大打線も、マウンドに仁王立ちする斎藤に対し、反撃の糸口をつかめない。

6回、この回から慶大は、捕手に松本和(環4)、外野に山口(商4)、宮本真(商3)を投入し、守備から流れを引き寄せようとするが、早大の勢いを止めることができない。福谷が四球とヒットで1死満塁のピンチを招き、6番杉山にこの日3本目となる2点タイムリーツーベースを打たれ、決定的な追加点を奪われてしまう。7回にも、この回からマウンドにあがった山形(政1)が宇高にタイムリーを許し1点追加され、これで7点差。完全に早大ペースで試合が進む。

慶大打線は斎藤の前に全く歯が立たない。早慶1・2回戦の打線の好調がまるで幻影であったかのように、打線は凡打の山を積み重ねてしまう。そして7回を終えても無安打無失点ピッチングを続ける斎藤のピッチングに、球場は徐々にざわつき始める。

意地をみせた伊藤

そして迎えた8回。この回試合は急展開を見せる。エラーで出塁したランナーを1塁に置き、1死後の松本和の打席。松本はファールゾーンへ平凡なフライを打ち上げると、途中出場のファースト後藤がまさかの落球。松本は命拾いすると、斎藤の投じたこの日110球目の球をレフト前へと弾き返し、斎藤の大記録達成を阻んだ。するとここまで完璧な投球を見せていた斎藤が突如崩れる。続く奥橋(環4)、渕上、湯本の連続タイムリーで一気に3点を返すと、2死1、2塁のチャンスで打席には伊藤が入る。3年生ながらここまで幾度となくチームの危機を救ってきた不動の4番伊藤。4年生と少しでも長く一緒に野球をするため、思いっきり振り抜いた打球はセンターの頭を越え、走者一掃となるタイムリースリーベース。これで2点差。この伊藤の執念の一打に慶大応援席のボルテージは最高潮に。ここで斎藤は降板。早大は絶対的守護神、大石をマウンドへ送る。なおも2死3塁、打席の松尾(環4)のバットに期待が集まったが、松尾は大石の速球の前に簡単に追い込まれ。最後は鋭い変化球にバットが空を切り、追加点のチャンスを逃し、スタンドはタメ息で包まれた。

9回、慶大はまさかのハプニングが。先ほどの回、投手登録されていた最後の選手、金子(環1)に代打を送ったため、これでベンチには投手がいなくなってしまった。この緊急事態に、慶大はピッチャー経験のある内野手登録の正木(商4)をマウンドへ送る。しかし急造ピッチャーでは、さすがに早大打線を抑えることはできない。ヒットを許しながらもなんとか2死までこぎつけた正木であったが、四球と見方のエラーでこの回早大に試合を決定付ける3点を入れられてしまう。

これで勝負は決した。最終回は大石の前に全く歯が立たず、最後は代打、福富(商2)が大石のこの日最速153kmの速球を空振り三振。その瞬間、慶大の春秋連覇の夢はついえた。悔しい敗戦ではあるが、しかし今季、負ければ優勝の可能性が消滅するという崖っぷちの状態から何度も這い上がりここまで漕ぎ着けた慶大。その執念と彼らの意地に、私たちは夢を見せてもらった。

試合後、早大、斎藤佑樹がこんな言葉を述べた。

「いろんな人から『斎藤は何か持っている』と言われてきました。今日、何を持っているのか確信しました。それは仲間です」

早大入学後、常に注目され続け、間違いなく東京六大学の一時代を築いてきた斎藤。敵ながら、最後にこの言葉を述べることができる斎藤の人間性には頭が下がる。

春季のリーグ優勝、今季の快進撃からも、慶大ナインは「何か」を持っていると感じさせた。その「何か」とは、斎藤の言葉を借りると、「仲間」であろう。慶大ナインが神宮の社で躍動できたのも、ベンチ入りを逃した4年生たちの影の支えがあったからこそのものであった。湯本主将を中心とした今年の慶大4年生は、最高の団結を見せたチームであった。

その4年生の背中をずっと見てきた3年生。伊藤や伊場、金田(政3)らを中心に、4年生の意思を、この敗戦の悔しさを知る彼らが必ずや受け継いでくれるだろう。来春へ向けた戦いはすでに始まっている。今季チームを引っ張ってきた野手のほとんどが4年生であった。彼らが抜けた穴は計り知れない。その分、この冬のチーム内での争いは過熱するであろう。優勝を逃した悔しい思いを胸に、来春神宮で出会う新生慶大ナインに期待したいところだ。

by Shunsuke Yanami

選手コメント

湯本主将

(4年間を振り返って)あっという間に終わってしまったいました。今日負けたことは今でも悔しいです。(8回にはタイムリーを放ちましたが)でもやっぱり負けたら悔しいです。

青山

(この4年間を振り返って)4年間は早かった。今シーズンは特に慶応で野球ができる喜びを感じながらやりたいと思っていたので、本当に最後に勝てなかったのは野球人として悔しいが、自分のこれから先に活かしたい。一人の学生としいい環境で野球ができて幸せだった。

奥橋

(この4年間を振り返って)楽しかったです、以上。

新谷

(4年間を振り返って)楽しい4年間だった。春の明大2回戦、二塁から生還したのが一番思い出に残っている。

高尾康

(4年間を振り返って)色々あって、僕はケガもあって、割りと辛い時期も多かったけれど、春も優勝できたし、最後こういう最高の舞台で引退できたので、4年間の辛いことも苦しいことも全部報われたかなと思う。

渕上

(4年間を振り返って)色々なことがあった4年間だったが、終わってみればあっというまだった。

正木

(9回の登板について)竹内助監督が、「もうお前の責任じゃない」と送り出してくれた。それで、久しぶりの景色の中で、緊張せず楽しんで投げられた。(四年間を振り返って)野球を通して色々な人に会い、色々な経験ができた。なかなかできない貴重な経験だったので、これからの人生に生かしたい。

松本和

(8回、チーム初安打を放ち、斎藤のノーヒットノーランを阻止したことについて)とりあえず1本出てよかった。(六大学最後の試合、どのような気持ちで打席に入ったか)(野球を継続しないので)最後の打席になると思って入った。(初球のファールフライを早大・後藤が落球したことについて)持ってるなと思った。

松尾

(今日の敗戦で今季の優勝は逃してしまったが)もし今日勝って優勝でもしていたら、うまくいき過ぎかなというぐらい。でも後がない状態からよくここまで持ってこれたと思う。(今日の試合でも序盤の劣勢から追い上げを見せたが)まさかあんな形で追い上げられるとは予想もしてなかった。けども最後に意地が見られて、戦っている自分も感動するくらいすごかった。(4年間大学野球をやってきて一番嬉しかった瞬間は)やっぱり春に優勝出来たことが一番。今日は負けてしまったが秋のシーズンもすごい良かったと思う。(最後に4年間を振り返って)今ここにいるみんなと一緒に戦ってこれたことがすごい良かった。本当に幸せだったと思う。

山口

(4年間振り返って)最後は負けてしまったが、悔いはないので楽しく終わることが出来た。(社会人JX-ENEOSで野球を継続するが、抱負は)大学では日本一を経験することが出来なかったので、日本一になれるように頑張りたい。

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