【應援指導部】「打倒ワセダ」へ 心をひとつに突き“進”め / 慶早戦前 総合練習

應援指導部

慶早戦まで残り5日に迫った10月27日(月)。「打倒ワセダ」へ向け、應援指導部はこの代最後となる総合練習に挑んだ。優勝こそ逃したが、慶早戦の結果次第では単独2位の可能性を残す野球部。その野球部を鼓舞し続けてきた應援指導部員たち。大一番へ、声と心をひとつに戦い抜くその姿を追った。

【「進破」に込めた思い】
慶早戦前総合練習とは、文字通り應援指導部が野球部早慶戦の直前に行う練習だ。主に【試合前企画の説明】、【実戦形式の練習】の2パートに分けられ、練習時間は4時間に及ぶ。全部員が今年1年間の練習成果を試す重要な機会だ。

最初に行われたのは、試合前企画の説明。今季の試合前企画のコンセプトは「進破」。試合前から殻を破り、勝利へ突き進むという意味が込められている。選手たちがグラウンドに立つ前から、スタンド全体で勢いを生み出すこと、それが勝利への第一歩となる。

試合前企画の一つである「ステップス企画」では、吹奏楽団とチアリーディング部が息を合わせ、明るく軽やかなダンスを披露。部員全員が、笑顔を絶やさず楽しげに踊りきった。本番でも、その一体感あふれるパフォーマンスがスタンドを盛り上げるに違いない。

【応援の「実戦」へ】
続いて行われたのは、試合を想定した実戦形式の練習。エール交換と塾歌斉唱で始まると、場の空気は一気に引き締まった。特に重点が置かれたのは、劣勢時の立ち振る舞い。

初回の守備では、5安打を許し2失点という厳しい展開を想定。それでも部員たちは、どんな状況でも声を切らさず、観客に向けて一球ごとに気持ちを込めて声を届けた。

初回の攻撃前、枝廣代表の檄が飛ぶ。
「お前ら、そんなもんか。早稲田を倒すのは甘くないぞ!」

その一言で場内の空気がさらに張りつめ、表情を引き締めた部員たちが一体となって声を上げる。

「最後の総合練習、初回から全員で一つになって早稲田を倒すぞ!」

その合図とともに応援の熱は一気に高まり、1回裏の攻撃では声援に応えるように1点を返した展開を想定。直後のフィードバックでは、「初回の守備回は発声が良く、互いに鼓舞し合えていた」との評価が上がった。

【沈黙から再点火へ】
7回表の守備時の応援では、3点本塁打で追加点を許し、スコアは16に。打球の滞空時間(約5秒)後、一塁側、つまり早稲田側スタンドから大歓声が響き渡り、対照的に慶應側の応援席は一瞬、沈鬱な空気に包まれる――という状況を想定。

苦しい場面で、いかに観客の気持ちに寄り添い、諦めない空気にどう切り替えていけるか。「その反射神経を鍛えたい。劣勢時の応援席の雰囲気は、應援指導部の対応力にかかっている」と、野球サブの後藤さんは語る。

【クライマックス:9回の攻防】
9回の攻防は、スコア36、3点ビハインドという設定。「1年間取り組んできたことを信じて、最後まで、最後まで、応援しぬく」その意識を全員で共有し、最後の場面に臨んだ。

9回裏の応援前には、野球企画責任者の奥津さんが壇上から会場中央へ。「檄」の文字を背中に刻んだパフォーマンスを披露し、応援席のボルテージをさらに引き上げた。

想定シナリオでは、慶大が6安打を放ち1点差に迫ると、最後は6番・竹田の満塁ホームランで逆転サヨナラ勝ち。どんな展開でも諦めず、観客に寄り添いながらチームを鼓舞する――そんな應援指導部の信念が体現された。

【小休憩の合間にも研ぎ澄まされた集中力】
小休憩の時間にも、部員たちの集中は途切れない。ブロックのパートごとにタイミングを確認し合い、感覚のズレや好感触だった点を共有。アウトカウントの確認、指揮者の動きへの意識、楽器を大きく振りながらの動作確認、上段・下段の連携、マイクの使い方に至るまで、細部へのこだわりが随所に見られた。

 

【最後に贈られた3人の言葉】
練習後には、野球企画責任者である4年生3人が、後輩たちへ想いを語った。

N.Hさん:「今日の練習で、自分というキャンバスにどれくらい理想の応援指導像を描けたかが大事です。でも、まだ全部は描ききれていないと思います。やっぱり1、2、3年生はまだ青いなって思うところがあるし、4年生もまだ全然染められる。だから、土曜日に来た時には全員がいい意味で真っ黒になっているような、それくらい、この5日間で詰めてほしいなと思います。」

K.Lさん:「今日の練習が終わった時のみんなの顔を見て、『やりきったな』という気持ちが半分、でも『まだ挑戦したい』という熱意もすごく感じられました。そんな状態で迎える決戦って、本当にいい形だなと今すごく思っています。この残りの数日間で、もっともっと自分たちの可能性を広げて、限界を突破するところまで成長し続けてほしいなと思います。」

O.Hさん:「僕たち4年生もここから4日間、全力で成長して、競争して本番を迎えようと思います。だからみんなも、今、近くにいる4年生を見てください。その4年生に最後までついてきてほしい。全力で4年生の背中を掴んでほしい。じゃないと、4年生、先に走ってっちゃうから。全力で、みんなの手でその背中を押してほしいです。」

 

【練習後インタビュー:応援企画責任者・N.Hさん】

――4年間最後の総合練習でした。今日の練習を率直に振り返っていただけますか?

「今回は1日だけの総合練習でした。これまでは2日間で行ってきたものを、1日に詰め込む形にしました。もともと『1日でやりきる』というのは、予約の段階からの目標でもあって、ある意味では1年の集大成というか、信頼や期待を込めて、『2日間じゃなくても1日で足りるような状態に仕上げよう』という意味もありました。もちろん反省点は出ましたが、気持ちの面ではしっかり最後に持っていけたと思います。涙を流す部員もいて、全員の気持ちがひとつになったと感じました。僕自身も、今日出た反省点を残りの期間でいかに潰せるか、常に成長を追い求めながら土曜日を迎えたいと思いました。」

――早慶戦に向けて意気込みをお願いします

「正直、優勝はなくなってしまいました。ただ、順位の話でいえば、早稲田に勝てば4季ぶりの2位、いわゆる“Aクラスで終えられます。でも、それ以上にみんなに伝えたいのは、『この試合、このリーグ、この1年だけじゃない』ということです。慶應の野球や応援には、これまで脈々と続いてきた歴史があって、これからもっと発展していってほしい。そんな未来につながるような早慶戦にしたいと思っています。ですので、読者の皆さんもぜひ自分だけのスターを見つけて、応援してみてください。当日は一緒に神宮球場で盛り上がりましょう。」

新体制発足時から掲げてきた目標は「進」。大一番に向け、彼らはその言葉どおり、9回3アウト、その先に描く歓喜の瞬間へと、突き進む。

(取材:小野寺叶翔、竹腰環)

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