最終節で白星を挙げ、2部優勝および1部昇格を決めたソッカー部女子。監督に就任した21年の2部降格から、1部昇格を目指して指揮を執ってきた黄大城監督に試合後インタビューを行った。
◇黄大城監督

ーー今の率直な気持ちを教えてください。
(嬉しい気持ちというよりも)どちらかと言うと、ホッとしていますね。
悔し涙を呑んできた先輩たちが積み上げてくれたものを、今の選手たちがエネルギーに変えながら愚直に取り組み続けてきてくれていたので、今シーズンは自信を持って臨みました。そういった意味でも、結果を出すことができてホッとしています。
ーー7月下旬から9月下旬にかけてのリーグ戦中断期間、チームの状態があまり良くなかったと選手たちは話していました。テソン監督はこの期間、コンディションを上げるためどのようにマネジメントしていましたか。
中断期間が2ヶ月ほどと長かったので、選手たちのリーグ戦に対する熱量を保つことと、休ませることと、強化することとのバランスを意識していました。韓国遠征(8/2~8/4)に行ったり、早慶戦(8/17)があったり、関西遠征(9/14~9/17)に行ったりと、いろいろな環境の中で選手たちが同じ時間を共有できたというところは、多くの方に支えていただきながら、上手くいったところだと思います。
サッカーの面では、「自分たちがやらなくてはならないのはどこなのか、チャレンジしているのはどこなのか」というメッセージを間違えなければ、問題はないと考えていました。どうしても、結果が出ていないと選手たちは不安になってしまうこともあるのですが、僕としては、何をすべきなのか確固たるものを持って整理できていたので、あまり心配はしていなかったです。
ーーリーグ再開後は、83分に先制して勝利した立大戦や、87分に決勝点を挙げて勝利した順大戦など試合終盤までもつれる難しい試合もありました。再開後の戦いはいかがでしたか。
(自分たちのサッカーを)やり続ければ、時間の経過とともに、相手の方が疲弊してくるという感覚はもともと僕の中では持っていました。(試合終盤までもつれる展開は)意図した形ではなくとも得点や結果につながったので、選手たちの辛抱強さが表れたと思います。
また、後期に入ってから「ここまで来たら気持ちだ」ということは選手たちに言い続けてきました。目標に対する想いをピッチでどれだけ表現できるかという点が優勝を争う上で重要になるので、タフにたくましく戦ってくれたことが大きかったと思います。
ーー再開直前にインタビューに伺った際に、今年は監督就任5年目ということもあって集大成のサッカーになるとお話されていました。この1年間のサッカーを振り返ってください。
2位との得失点差を20点差以上離して(1位の慶大51、2位の国士舘大24)、1位でフィニッシュできたということは、僕の中で一番満足していて、嬉しい部分です。得点の形や得点の取り方に関することは今シーズンかなり言い続けてきましたし、映像も含めて提示し続けてきた部分で、今日の最終節は狙い通りの形も多かったですし、集大成として成果が出たことに選手たちも自信を持ってほしいと思います。
ーー試合後のミーティングではどんな言葉を掛けましたか。
まずは、「おめでとう」という祝福の言葉を掛けました。
加えて、僕は就任1年目(2021年)はサラリーマンをやりながら監督をやっていたのですが、(2021年シーズンを終えて)2部に落ちたタイミングで、仕事を辞めて選手たちと向き合うことを決めてこの4年間を過ごしてきたので、このように成果を残せたということで選手たちを誇らしく思いますし、(ソッカー部に専念するという)その決断をして良かったと思っているという話もしました。
自分の決断を正解にできるかということにおいては決断した後が一番大切なので、この部活に入ることを決めて、1部昇格を目標にいろいろなことを取り組みながら、いろいろな人と関わって、目標を達成できたというのは、選手たちにとって何にも代えがたい経験だと思います。この喜びを知ったからこそさらなる高みを目指していきたいですし、サッカーではないフィールドに変わってもこの経験を活かしてほしいということを伝えました。
ーーこの試合で引退となった4年生の選手たちにメッセージをお願いします。
芹(=坂口芹、総4・仙台大学附明成)は、「考えることが苦手」とよく言うのですが、ただただチームの一員として時間を過ごすのではなく、チームに対して自分がいかに貢献できるかを考えて、この部活に入って自分らしさを見つけられたと思います。キャラクターの濃い4年生の中で、全体を見ながら下級生を引き上げていくことや足りていないところにコミュニケーションを取ることは、彼女が追い求めてきたリーダーシップだと思いますし、それを体現してくれたのはすごく頼もしかったですし、彼女の強さを感じました。

左WBのレギュラーとして活躍した坂口
美桜(=中村美桜、理4・慶應湘南藤沢)は、今までに見たことがないくらい、自分に厳しく、いろいろなものを犠牲にしてまで決めたことに取り組める人で、彼女の凄まじい成長ぶりと努力があったからこそチームの努力の基準が上がったと思います。悩むことも苦しいこともあったと思いますが、チームのために、「手法はなんだって良い」と割り切って確固たる決断を下した彼女の人としての強さや素晴らしさを間近で見させてもらって、すごく勉強になりましたし、学ばせてもらうことが多い選手でした。

3年時にフィールドからキーパーに転向する大きな決断を下した中村
葵(=守部葵、環4・十文字)は、周りを照らせて、人に対してエネルギーを向けられる人は社会に出てもなかなかいないので、チームにとって貴重な人材であったと同時に、自分の感情に対して素直で、アウトプットできるからこそ、周りに与える影響が大きいこともあり、どうすれば彼女の良さを最大限に活かせるのか模索していました。けがをたくさんして本人が一番苦しかったと思いますし、彼女の分かりやすい葛藤も見てきましたが、4年生になって「自分のエネルギーをどのように周りに還元していくか」という点での成長が見えたからこそ、最後の3試合は彼女が持つエネルギーをチームに注いでくれることを信頼してスタートから使いました。けがも多い4年間でしたし、「お疲れ様でした」ということを伝えたいです。

けがに苦しめられながらも、チームを照らし続けた守部
藤子(=小熊藤子、環4・山脇学園/スフィーダ世田谷ユース、RB大宮アルディージャWOMEN内定)は、あまりコミュニケーションを取りに来るキャラクターではなかったものの、発言の意図を捉える能力に長けていたので、こちらから無理にコミュニケーションを取る必要がなかった選手です。何より、彼女が一番後ろにいることでチームに与えられる安心感は計り知れないものがありますし、歴代の主将と比べるとコミュニケーションの量は少なかったと思いますが、プレー面含め信頼を置いてこの1年間を過ごしていました。
「プロを目指したい」と言い始めた頃からは、プロを目指すこととソッカー部に貢献することを紐付けながら、多くの話をしてきました。プロでやることを決意してからの彼女のピッチ内外での姿勢は目を見張るものがありましたし、「目的が変わると行動の質が変わる」という下級生たちのお手本となる姿を示して、リーダーとして引っ張ってくれたと思います。
ここからは「頑張っていれば試合に使ってもらえる」「頑張っていれば結果が出てくる」というような世界ではないので、実力で勝ち取っていかなければいけないですし、ときには自分のエゴを出しながら高め合っていかなければならない環境なので、彼女がどれだけできるかというのは個人的には楽しみです。関わった選手が大舞台でプレーするということは僕にとっても1つのモチベーションにもなるので、頑張って欲しいという想いです。

鉄壁の守備でチームに安定感をもたらした主将・小熊 卒団後はプロの舞台でプレーする
ーー1部での戦いとなる来シーズンに向け、力強い抱負をお願いします。
正直なところ、すごく苦しい戦いになると思います。4年生に助けられてきましたし、(唯一のキーパーである4年の中村が卒団するため)キーパーがどうなるか分からないという点でも、ほんとうに厳しいと思います。ただ、ここまで確立してきた自分たちのスタイルを来シーズンも貫いていきたいですし、ソッカー部での4年間を通して何を学べるかということは変わらず大事にしていきたい部分です。だからと言って結果が出ない理由には全くならないので、自分の中で掲げているロマンと勝ち点を取るというところのそろばんをどのように弾いていくかを考えて、選手たちと一日一日向き合いながら、1部でも躍進したいです。


(インタビュー:柄澤晃希)


