【フェンシング】波乱に次ぐ波乱!熱戦の“覇剣”の行方は/第78回早慶対抗フェンシング競技定期戦大会

フェンシング

第78回フェンシング早慶戦が13日、日吉記念館にて開催された。慶大は、序盤の女子サーブル戦、男女エペ戦で3連敗し苦戦を強いられるも、4戦目の男子フルーレの勝利を機に女子フルーレ、男子サーブルと3連勝。3勝3敗の五分に持ち込むも、総得失点差で僅かに及ばず準優勝となった。学生選手権3冠の男子エペ戦が延長戦の末に敗れる波乱、エース飯村彩乃(法2・龍谷大平安)躍動の女子フルーレ戦の大金星など、早慶両校の実力伯仲の好ゲームとなった。

第78回早慶対抗フェンシング競技定期戦大会

12月13日(土)@日吉記念館

団体戦のルールについて

フェンシングの団体戦は、4人1組(控え1人)のチーム同士で行われる。試合は「リレー方式」と呼ばれる形式で進行し、1試合は全9試合×3分間で構成される。各ラウンドでは両チームの選手が順番に対戦し、得点はチームの累計得点として加算されていく。

各ラウンド「5点」が目標得点として設定され、優勢側の選手が5点取ればラウンド交代。この5点を積み上げ、9試合計45点を先に獲得したチームが勝利となる。制限時間内に目標点に達しなかった場合は、その時点の得点で次のラウンドへ移行する。ただし、劣勢側はこの3分間の制限時間の中で何点でも得点することが可能であり、1試合で一気に点差を詰めたり、逆転したりする場面も珍しくない。

そのため団体戦では、単なる実力差だけでなく、オーダーの組み方が勝敗を大きく左右する。「エースをどこにぶつけるのか」「相手エースとの勝負を誰が担うのか」といった相手選手との相性に加え、メンタル面や一度の些細な攻防が試合の流れを左右する。1本の重みが次の選手へとつながっていくため、フェンシングという競技の“チーム性”が最も色濃く表れる舞台だ。

 

女子サーブル戦

出場メンバー

久保田絢子(経4・慶應湘南藤沢)   

河野真央(経3・慶應女子)

森本紗加(法2・青山学院)

廣瀬はる(法2・学習院女子) 

選手   スコア 計  計 スコア   選手(早稲田)

①  久保田  2     5   5   伊藤

②  森本   6    10   5   山﨑

③  河野   0    15   5   板橋

④  森本   6  14 20   5   伊藤

⑤  久保田  2  16 25   5   板橋

⑥  河野   1  17 30   5   山﨑

⑦  森本   1  18 35   5   板橋

⑧  河野   6  24 40   5   伊藤

⑨  久保田  2  26 45   5   山﨑

早大は板橋の活躍で流れをつかんだ。第3試合で5―0、第5試合でも5-2と勝利し、序盤から点差を広げる。板橋を軸に流れに乗った早大は、その後も主導権を握り続け、終盤もリードを上手く保つ試合巧者ぶりをみせた。慶大は河野、森本が追い上げを見せ、4年生の久保田も粘ったが、立ち合いから主導権を握られ苦戦。積極的に攻める早大を前に、最後まで流れを引き戻すことができなかった。

剣をふるい続けた4年生・久保田

互いを労い合う選手たち

 

男子エペ戦

出場メンバー

伊勢碧(法4・慶應)

坂藤秀昌(法4・慶應)

髙橋未楽(環4・立教新座)

小城颯人(商3・慶應)

選手   スコア 計  計 スコア   選手(早稲田)

①  髙橋   5   5     4   中本

②  坂藤   5  10     0   大坂

③  小城   5  15     3   圓尾

④  髙橋   5  20 11   4   大坂

⑤  小城   5  25 20   9   中本

⑥  坂藤   5  30 23   3   圓尾

⑦  伊勢   1  31 27   4   大坂

⑧  髙橋   8  39 36   9   圓尾

⑨  坂藤   4  43 44   8   中本

驚異的な追い上げを見せた早大が、延長戦までもつれる大接戦を制した。殊勲はアンカーを務めた早大・中本。第5戦で一挙9点を挙げ流れを引き寄せると、3点ビハインドで託された最終第9戦では同点に追いつき、延長戦一本勝負も制して逆転勝利を収めた。慶大は序盤に10点以上の差をつけ主導権を握ったが、中盤以降は早大の反撃に対して受けに回る展開に。突き放すことができないまま、最後はアンカー坂藤が力尽きた。序盤2戦を制した早大が、早慶戦優勝へ価値ある1勝を挙げた。

髙橋(写真左)は果敢に前に攻めた

エペリーダーとしてチームをけん引した坂藤

最後は延長戦の末逆転負け

 

女子エペ戦

出場メンバー

渡辺瑚子(経4・慶應女子)

飯村彩乃(法2・龍谷大平安)

水野琉千明(法2・慶應NY)

花岡美咲(経1・徳島文理)

選手   スコア 計  計 スコア   選手(早稲田)

①  飯村   2     5   5   太田

②  渡辺   4    10   5   池田

③  花岡   4  10 15   5   西岡

④  飯村   4  14 20   5   池田

⑤  花岡   3  17 25   5   太田

⑥  渡辺   2  19 30   5   西岡

⑦  水野   2  21 35   5   池田

⑧  飯村   4  25 40   5   西岡

⑨  渡辺   4  30 45   5   太田

攻守で巧さを発揮した早大が中盤以こう慶大を突き放し今大会3連勝。池田、太田を中心に3人全員が着実に5点を積み重ね、一度も勝利を許さず勝負を決めた。上半身中心の攻撃に足先などの下半身への攻撃も絡め、慶大のディフェンスから効果的に得点を重ねた。慶大も飯村を中心に4人全員のリレーで食い下がったが、追い上げようと前に出たところを早大に狙われた。

早大の巧みな試合運びに苦戦/飯村(写真左)

水野(写真左)から飯村(写真右)へ

 

男子フルーレ戦

出場メンバー

飯村一輝(総4・龍谷大平安)

合田晴季(理4・慶應)

小西航路(経4・慶應湘南藤沢)

戸田拓海(医4・慶應)

選手   スコア 計  計 スコア   選手(早稲田)

①  小西   5   5     1   竹内

②  飯村   5  10     2   吉田

③  戸田   5  15     2   川邊

④  小西   5  20     1   吉田

⑤  戸田   4  24 14   8   竹内

⑥  飯村   6  30 17   3   川邊

⑦  合田   5  35 18   1   中本

⑧  小西   5  40 19   1   川邊

⑨  飯村   5  45 25   6   竹内

4年生が盤石のリレーをみせた慶大が第4戦目にして今大会初勝利を挙げた。第1戦の小西が5-1、第2戦の飯村、第3戦の戸田も共に5-2で制し、1巡目で15-5と大差をつけると、その後も4番手・合田の快勝もあり試合を優位に進め、最後は飯村が決め切った。早大は、中盤一時6点差まで差を詰めるも、4年生が気迫を見せる慶大に再び突き放された。

チームに勢いをもたらした小西

4年生の絆が光った

 

女子フルーレ戦

出場メンバー

渡辺瑚子(経4・慶應女子)

飯村彩乃(法2・龍谷大平安)

森本紗加(法2・青山学院)

花岡美咲(経1・徳島文理)

選手   スコア 計  計 スコア   選手(早稲田)

①  渡辺   5   5     4   沼田

②  飯村   5  10  5   1   太田

③  花岡   3  13 15  10   早川

④  渡辺   5  18 19   4   西岡

⑤  花岡   1  19 25   6   沼田

⑥  飯村  10  29 30   5   早川

⑦  花岡   6  35 32   2   太田

⑧  渡辺   2  37 40   8   早川

⑨  飯村   8  45 44   4   沼田

再び訪れた延長戦――今度は慶大がものにし、2勝3敗で最終戦に優勝の望みをつないだ。躍動したのは2年生エース・飯村彩乃。第6戦で一挙10点の猛追をみせると、アンカーを託された最終第9戦では一時「40-44」と相手にマッチポイントを握られながらも4連続得点で追いつき、延長戦一本勝負も勝ち切った。第1戦・第4戦を5-4で繋いだ4年生・渡辺、第7戦で逆転ゲームをみせた1年生・花岡、全員が役割を全うした上で掴んだ大金星だった。早大は、序盤の2連敗で主導権を奪われるも、中盤に立て直しシーソーゲームを展開。早川が第8戦で逆転するも、最後は沼田が延長戦の末に力尽きた。

1年生・花岡は第7戦で早大を逆転

4年生として役割を果たした渡辺

チームを率いた飯村(写真右)

劇的勝利後の歓喜

 

男子サーブル戦

出場メンバー

小澤祐太(経4・慶應)

服部玄太(法4・慶應)

赤川紘大(経3・慶應)

庄司圭佑(法3・山形東)

選手   スコア 計  計 スコア   選手(早稲田)

①  庄司   5   5     4   藤田

②  赤川   0    10   6   佐藤

③  小澤  10  15 14   4   吉田

④  服部   5  20 15   1   藤田

⑤  庄司   5  25 17   2   吉田

⑥  小澤   5  30 28  11   佐藤

⑦  服部   5  35 32   4   吉田

⑧  小澤   5  40 33   1   藤田

⑨  庄司   5  45 37   4   佐藤

 主将が意地を見せた慶大が3勝目を挙げ、星を3勝3敗の五分に戻した。試合を通して早大・佐藤のスピードと高さを活かしたアグレッシブな攻撃に苦戦するも、第6戦で相手した主将・小澤が逆転を許さず2点のリードを死守すると、後続が再びリードを広げ最後は3年生エース・庄司が勝負を決めた。

早大の猛追を凌いだ小澤

勝負を決めた庄司(写真手前)

 

最終結果は、男子戦を2勝1敗で慶大が制し、女子戦は2勝1敗で早大が勝利した。6試合合計では3勝3敗の五分となったが、総得失点差で早大が5点上回り、総合優勝を果たした。2022年以来3年ぶりの総合優勝を目指した慶大は、あと一歩及ばず。

昨年同様に得失点差の僅かな差が勝負を分けた。第5戦の女子フルーレ戦終了時点で慶大の総合優勝への条件は、最終男子サーブル戦にて“早大を31点以下に抑えたうえでの勝ち”。男子サーブル陣は難しい戦いを強いられた。

今大会には、団体戦で今季学生選手権3冠を果たした男子エペ陣や飯村兄弟(兄・一輝(4年)/妹・彩乃(2年))を始めシニア/ジュニア日本代表、強化指定選手など、若くして世界を経験してきた選手たちが両校から顔をそろえていた。今年にかける思いは強かった。

試合後、主将・小澤は「チームがどんな状況にあってもついてきてくれた後輩には感謝しかありません。自分の代で獲れなかった早慶戦の総合優勝はみんなに託しました」と語った。

チームを去る4年生たちの思いは後輩たちに受け継がれる。女子フルーレ戦で殊勲の勝利を手繰り寄せた2年生・飯村は「来年は今回よりも熱く、盛り上がる試合で総合優勝を狙います!」と力強く意気込む。

“覇剣奪還”へ、慶大フェンシング部の挑戦は続く。

 選手インタビューの全文はこちらから!

(取材:蕭敏星、塩田隆貴、竹腰環、山口和紀)

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