25年度に卒業を迎える4年生を特集する特別企画「光るとき」。第1回となる今回は、スケート部の主将・有馬龍太(経4・武修館)。1年時から試合に出場し、DFとして守備の要でありながら、点が欲しい時に得点を決めるチームの柱に成長した。4年生では主将としてチームを牽引し、1部A残留を果たした。4年間の大学アイスホッケー競技生活を終えた心境を伺った。
たまたま訪れた軽井沢で目にした小学生の全国大会。氷上の格闘技とも呼ばれる熱戦に心を奪われた有馬は、両親に「やりたい」と訴え、6歳でスティックを握った。それから十数年。慶大アイスホッケー部の主将として、最後の1秒まで泥臭く熱い4年間を駆け抜けた。
強豪大学の多くはスポーツ推薦で全国からトップ選手を集める。数ある強豪大学の中で、有馬が慶大を選んだ理由は明確だった。「スポーツ推薦のない大学の中で、唯一1部A(トップディヴィジョン)に所属しているのが慶大だった」。スポーツ推薦選手のみで構成される他大学に比べ、実力で劣る部分は否めない。しかし、「泥臭く頑張っているチームでプレーしたい」という思いで、一般受験を経て門を叩いた。

4年間で感じた慶大の魅力は、二つの「稀有な環境」にあるという。一つは、日本代表のコーチも務める山中武司氏など日本トップクラスの指導陣の下でプレーできること。そしてもう一つは、慶應義塾高校から競技を始めた選手と、幼少期からの経験者が同じ氷の上で刺激を与え合う文化だ。
実力差のある他大学と渡り合うため、有馬たちが徹底したのは「戦略」と、それを遂行する「泥臭さ」だった。「綺麗に相手を崩すのではなく、どんな形でも1点は1点。ゴール前に集まり、1点をもぎ取る」。その精神が慶大の強みとなった。
その結実が、大学3年時の早慶戦だ。実に52年ぶりとなる歴史的な勝利となった。有馬自身、1ゴール2アシストの大活躍を見せ、4-2で宿敵ワセダを下した。「半世紀ぶりの勝利という記念すべき試合でプレーできたことは光栄。内容も完璧でした」と語るように人生の記憶に刻まれる一戦となった。

最高学年となり主将に就任すると、新たな壁にぶつかった。チームの約9割を占める内部生たちの強い団結力は強みである一方、競技への向き合い方の甘さが残っている側面もあった。また、競技歴わずか数年の選手に技術を教える難しさにも直面した。
しかし、その経験こそが有馬を人間として大きく成長させた。
「入学前はアイスホッケーの実力ばかり意識していました。主将として人間としての大事な部分、責任感のあり方に気づかされたんです。この4年間で、競技者として以上に、一人の人間として成長できたと思います」。
主将として、氷上だけでなく陸上での私生活を含めた、自らの行動の重みを突きつけられる日々。責任感の重さを知った4年間だった。

この冬に行われた早慶戦で引退し、有馬はチームを次世代に託した。新主将・三田輝明(新経4・慶應)には「点が欲しい時に決めるプレー」を期待し、高校で競技を始めた選手たちが腐らずに成長し続ける「慶應スタイル」の継続を願っている。
「メンバーが良いから大丈夫、と慢心してはいけない。他大学には日本代表経験者がゴロゴロいるんです。数人良い選手が入ったからといって、簡単に勝てる世界じゃない。だからこそ、これからも愚直に、泥臭くホッケーを続けてほしい。高校から競技を始めた選手が腐らず練習し、試合に出て活躍してほしい。」
アイスホッケーを通して「人として大事な部分」を学んだという有馬。氷上を去った後も、その胸には大学競技生活で培った「泥臭いプライド」が刻み込まれている。
(取材、記事:檜森海希)

