今季、対抗戦では8人もの選手が出場し、固定できなかい印象が強いWTB。その中で特筆した活躍を見せたのが、早慶戦のロスタイムで“希望のトライ”を挙げた児玉健太郎(環2)と切れ味鋭いステップを武器に1年生らしからぬプレーを見せる浦野龍基(政1)だ。大学選手権でも若きトライゲッターたちに期待が集まる。(この取材は12月6日に行いました)
――現在のご自身の状態は
児玉 僕は結構調子が良いかなと思っています。身体も出来上がってきていますし、フィットネスも良いですし、個人的には調子は上がってきています。
浦野 対抗戦で何試合か出させてもらって、やっと大学の試合の雰囲気に慣れてきたというのがあるので、良い感じだと思います。
――試合に出始めたときは、大学のレベルの高さを感じましたか
浦野 そうですね、高校のときとは全然違うので、戸惑いとか不安とかはあったんですけど、試合を重ねて段々落ち着いてきて、色々出来るようになってきているかなと思います。
――今のチームの雰囲気は
浦野 当然あまり勝てていないので、決して良いわけではないと思うんですけど、でもチーム全体に、ここまで負けているなら、その負けているという実力を受け止めつつも、勝つしかないんだからやることははっきりしているねっていう感じで、決して悪い状態でもないと思います。
児玉 対抗戦中は、チームの状態が結果に出ると思います。みんな諦めずに一生懸命やっているので、大学選手権ではそういう諦めない気持ちで勝利をつかめたら良いかなと思っています。
――今年のチームは、試合中の判断がすべて選手に任されているということですが、試合を重ねていく中で判断面で成長したと感じる部分は
浦野 僕は、去年の監督の考えとかチームの方針とかはよく分からないので、今の感じが普通というか通常状態なので、判断するようになったなとかは特にないんですけど…どうでしょう(笑)
児玉 僕は去年を知っています(笑)。まあ、去年は試合中に指示とか言われて、頂いた指示の中で自分たちで判断するという感じでした。今年は自分たちで、ほぼ一からやる感じなので、そういった意味では型にはまらなくて良いですね。WTBだし、思い切ってビッグプレーは狙えるかなと前向きに捉えています。
――WTBは今年グレードの入れ替えが激しいが、今のWTBの状況は
児玉 AチームからFチームまで、誰が出るか分からないですね。
浦野 対抗戦とか公式戦に出場しているメンバーも、その試合ごとに違いますね。色々なメンバーがいるんですけど、一人一人持ち味が違うので、そこは一緒にやっていて面白いし、自分を磨くモチベーションにもなりますね。
――11番と14番どちらがやりやすいというのはあるか
児玉 去年は三木さんがいて、逆サイドは金本さんで、お二人とも良いランナーで。見る人によって違うと思うんですけど、やっぱり三木さんは抜けないなあと思います。金本さんももちろんですし。14番で出ていたんですけど、僕は足が左利きなので、キックを蹴れるように林監督が考えてくれました。左サイドにずっといたほうがプレーの幅が広がるので。
浦野 僕はどっちでも大丈夫なんですけど、キックは右ですし、ステップとかも右にいったほうが蹴りやすいのかなと思います。大学に入る前、WTBをやろうと思って大学の試合を観ていたら、1年生で児玉さんが14番で出ていたので、僕は11番をやろうと思っていたんですけど、丁度良く児玉さんが11番になってくれたので(笑)。
――他のポジションをやろうとは思わないか
児玉 ちょっとFB興味あるかなとは思いますね。今年は11番を頑張って、来年以降どうしようかなと思っています。高校時代はFBでした。
浦野 今若干FBのメンバー入りとか夢見たりするんですけど、自分の中で本職はWTBだと思っています。でも来年以降バックスリーの顔ぶれが変わらないので。で、色々な人がAチームで出ていて、その中で生き残るためにはFBも同じくらいできないとだめだなと感じているので、AチームでもFBで張れるくらいにしたいです。
――WTBとFBの最大の違いは
児玉 普通の人から見たら、FBはどちらかというと凄く走って、WTBはちょっとお茶目なやつが球をもらって爆走して(笑)、みたいに思っていると思うんですけど、慶應はディフェンスのときとかは、WTBはFBよりもむしろ裏方の動きをするべきポジションだと思っています。そして、FBはWTBと違って周りを生かして、判断の要になるポジションだと思いますね。
浦野 最大の違いは、使うか使われるか。WTBだったら、上手く使ってもらって生かされるポジションなんですけど、FBは他の選手を生かしてあげたりしないといけないので、そこが大きな違いだと思います。
――今はどこを重点的に練習しているか
児玉 僕はエリアを取ることが仕事の一つなので、キックの精度を磨いています。あと、ボールをもらった時にどれだけ走れるかですね。ディフェンスのときのバッキングもやっていますし。WTBは生かされるポジションではあるんですけど、球をもらえない時でもライン参加できるように意識して練習しています。
浦野 僕は色々な方面で足りない部分があると思うので、今は公式戦中ということもあるので、ディフェンスの判断ですね。あと慶應のWTBとしてどれだけ裏方で仕事ができるかが重要だと思うので、ディフェンスのときは逆サイドまで走ってフォローしにいくとか、サポートのタイミングだとかの判断を重視しています。
――お互いにどのようなプレーヤーだと思うか
児玉 僕も去年そうだったんですけど、1年生で対抗戦などの試合に出て、それがどういうメンタルか、わかっているつもりなんですけど、変なところでキックダイレクトを蹴るとか、浦野はそういうのはやらかさないですね。
浦野 やっぱりプレーとか、武器になるものをたくさん持っている人だなと思います。キックもランも、やっぱり違うなと思います。普段のプレーを見ていても勉強になることが多くて、僕が一番すごいと思っているのはメンタルですね。ラグビーに対してストイックですし、試合で相手にトライを取られて流れが向こうに持っていかれそうなときも、児玉さんがチームに声をかけてくれます。僕が落ちてるときでも、児玉さんが声をかけてくれるので、こういう人がいるからついていこうとか思うこともあるので、姿勢がすごいと思います。
児玉 最高ですねこれ(笑)。
――自身の強みは
児玉 WTBなので、初めて秩父宮に観に来た女の子とかは、相手をかわしてトライするところとかが格好いい、と思うかもしれないんですけど、玄人方々が観たときに「あいつ良いプレーだな」って言われたいので。やっぱり慶應の諦めないプレーっていうのが、慶應ファンが多い理由だと思いますし。相手が独走体勢に入っても、最後まで諦めないで追いかけたりするところだとか、コンバージョンキックとかもWTBは足が速いのでプレッシャーを他の選手よりも全力でかけにいったりだとか。そういうことは泥臭いけど、光ると思います。そういう部分は、大学に入ってから強みになったかなと思いますね。
浦野 僕の強みは、1対1になったときに相手をステップで抜くことかなと思います。キック処理とかは、大学に入ってから他の選手のほうが優れているので、今のところ自分の持ち味は1対1のステップだけかなと思います。
――お互いの第一印象は
児玉 浦野とはロッカーが同じなんですよね。そんなに萎縮するタイプでもないなあと。1年生はグラウンドの中でも先輩後輩を気にしちゃうんですけど、浦野はそういうのはあまりなくて。というか、1年生のときとか、僕はすごく生意気だったと思うんですけど(笑)、1年生はそういう風にふてぶてしくないと試合に出たときに活躍できないですよね。
浦野 最初、高校生の時にテレビで児玉さんを観ていて、肝が据わってるなあ、真面目なプレーヤーなのかなと思ったんですけど。大学に入って実際にお会いしたら、意外とお茶目な人だな、と(笑)。やっぱりそういう遊び心がないとだめなのかなと思いました。
――WTBの選手の中で、この選手のここがすごいというのはあるか
児玉 服部とブチさん(岩淵)とかだったら、フィジカルが強いし、位田だったらキレがあってディフェンスが上手いとか。色々ありますね。
浦野 児玉さんがおっしゃった3人もそうですし、新甫さんは研ぎ澄まされた安定感というか。ビッグプレーはあまりしないんですけど、陰で仕事をしていますね。キック処理も、ボールを落としたところを見たことがないですし、しっかりハイパンも挙げられるし、ディフェンスもピンチのところをちゃんと見てるし、すごく安定感のある選手です。
――対抗戦を今振り返ってみていかがですか
浦野 客観的に見て、慶應が弱い対抗戦って面白くないと思うので。やっぱり慶應とかが強くて、伝統の早慶戦とかがあるわけで、ちゃんとそういう伝統校が強くて、その他で帝京とか筑波とか、最近強いところがあるっていうのが面白いですよね。慶應が弱いことで、一大学ラグビーファンとしても、面白くないのかなと思いますね。
――対抗戦を通してのチームの雰囲気はどうでしたか
浦野 決して悪い雰囲気で対抗戦のシーズンを通していたわけじゃないと思います。やっぱり今シーズン負け星が多かったのは、それがチームの雰囲気なのかは分からないですけど、何かが足りなかったのかなと思います。
――対抗戦で特に印象に残っている相手は
児玉 早稲田の原田季郎選手。何回も対戦したことありましたけど、去年まで中鶴選手が出て、原田選手は中鶴選手より評価は下だったんですけど今年Aで出てきて。上手かったし、小さいけど強いし、早明戦でも最後ロスタイムでのコンバージョン、やっぱり気持ちが強いし、人間性が素晴らしいと思いましたね。
浦野 僕は早稲田と明治の伝統の一戦が初めてのビッグゲームだったので印象に残っています。印象に残っている選手は、みんなすごかったんですけど一人挙げるとしたら筑波の竹中選手ですね。同い年で対面で、今まで雑誌とかで見ていた有名人を相手に戦ったっていうのがすごい印象に残っています。
――実際に対戦してみてどうだったか
浦野 高校ジャパンだけあって強くて速かった印象があるんですけど、でも自分の持っている持ち味では勝っている部分もあったなと感じたし、そんなに負けてはいないかなと捉えられた、いいゲームだったと思います。
――早慶戦を改めて振り返って
児玉 ディフェンスが完敗。走れてないし、タックル高いし、応援してくれたファンの方々
に申し訳ない試合をしたなという感じです。
浦野 チームとして完敗だったというのが一番の感想です。ディフェンスもですけど、アタックでも自分たちのアタックが全然できなくて。ディフェンスの時間も長いし、オフェンスの差が点差に表れたのかなと思います。
――今までに54点も取られた経験というのは
児玉 いっぱいありますよ。小倉高校時代に。東福岡と対戦するときなんかにありましたね。
浦野 僕も全国的な強豪校相手には結構取られて。54点なんて比じゃないくらい取られたこともあるので、点差がショックだったという訳ではないです。
――浦野選手は初めての早慶戦の舞台でしたが
浦野 野澤さんに、試合前からビッグゲームは、特に早慶戦はいいぞという話があって。ひとついいプレーをする度にみんなが喜んでくれるしと。僕はビッグゲームは緊張するものだとネガティブに捉えていたんですけど、出てみたらこんなにたくさんの人が注目してくれているんだなと嬉しく感じましたし、小さい頃から知っている早慶戦という舞台に自分がいるということをありがたく思いました。
――大学選手権のトーナメント表が発表されましたが
児玉 流経大や天理大、どちらも外国人選手がいるチームなので慶應のタックルを見せやすいというか、フィジカルを持っている選手から来てくれるのは間違いないので、そこで気持ちを見せられれば他に怖いところはないので、気持ちを見せるか、見せずに終わるかっていう意味ですごく分かりやすいというか、いい相手なんじゃないかなと思います。
浦野 対抗戦でいい結果は残せなかったんですけど、大学選手権で勝って最終的にいい成績を残せれば。ここまで順位が下がったなら、後はもう勝つしかないと前向きに捉えていますし、他のリーグを戦ってきた上位の相手がどんなチームなのかなっていう楽しみもあります。
――大学選手権、どこか入りたい山はありましたか
児玉 とりあえず早稲田と試合したいなと思いました。
浦野 どこに入ってもやることは一緒なんですけど、流経大や天理大とやれるのは嬉しいです。でもやっぱり対抗戦で負けたところと戦ってリベンジしたいなっていうのはありました。
――大学選手権を迎えるにあたってチームとしてキーポイントとなるのは
浦野 今はその地味な練習でやっているタックルですね。慶應はディフェンスしてナンボなので。ディフェンスの悪い慶應は慶應じゃないと思うので、特にタックルが良くなれば、自分たちのペースになるし勢いも出てくると思うので、いいディフェンスが出来るかっていうところですね。
――大学選手権は4年生と共に戦う最後の舞台になるわけですが、今年の4年生とはどういう学年でしたか
児玉 一生懸命頑張っています。仲宗根さんもがむしゃらに泥臭くいつも練習を頑張って、最後まで残ってやっています。あまり口は上手くない方ですけど、やっぱり姿勢とか、そういうところで引っ張ってくれる人だと思います。
浦野 真面目で責任感の強い人が多いなと思います。4年生は遅くまで残って練習してますし、CDEFの試合に出られない4年生たちも、練習では一番声を出してチームを引っ張っています。やっぱり4年生は違うなって思います。
――特にお世話になった方はいますか
児玉 宮内さん。すごい男って感じでかっこいい人です。顔も内面も全てがかっこよくて、FLでは「THE慶應」っていう感じのすごいいい選手で。でもケガとか色々あって、この前も肉離れしちゃって。報われてほしいって思いますね。
浦野 同じ高校出身の朝夷さんは練習中とかは会わないんですけど、会うたびに調子どう?とか元気?とか聞いてくれるので、すごいありがたいなと思います。あと合宿で同じ部屋になった安村さんと中村圭介さんは、1年生と4年生で歳は離れてるんですけど、練習外もすごく仲良くしてくれてありがたいです。
――最後に、大学選手権に向けての抱負をお願いします!
児玉 4年生最後、負けたら終わり、ということで4年生の意地とか思いがグラウンドで表れて格別なプレーをしてくると思うんですけど、その4年生以上に2年生の僕が活躍してやろうかなと思ってます。
浦野 まず一番に出たいっていう気持ちですね、試合は出てナンボですから。出たほうが見るよりも100倍面白いですし。出られれば出られたで、自分も成長できると思うので。出てダメでも良くても、学ぶことは見てるよりもたくさんあります。4年生の方にたくさん出てほしいという思いもある反面、自分も出たいなっていう思いもありますね。でもやっぱり4年生の黒黄に懸ける思いを練習中や練習後の姿勢を見てきて分かりました。仲宗根さんも口で引っ張るのではなくて、真面目に練習して体を張って背中で語っている選手なんですけど、そういうものが1年生の僕にも伝わっているので、4年生の大学ラグビーを終わらせたくないなというのがあります。出て、勝つ。それだけです。
――お忙しい中、ありがとうございました。
By Tomoki Kakizaki
児玉 健太郎(こだま・けんたろう)
福岡県立小倉高を経て、現在環境情報学部2年。今季はケガの影響などで中々出場機会に恵まれなかったが、シーズンが深まるにつれてポジションを取り戻した。持ち味はロングキックと思い切りの良いランニング。1㍍82、80㌔
浦野 龍基(うらの・たつき)
慶應志木高を経て、現在法学部政治学科1年。シーズン当初はBチームでのプレーだったが、ジュニア選手権で活躍を見せてすぐさまAチームへ昇格。早慶戦にもスタメンで出場した。ジュニア選手権決勝ではFBとしてもプレーした。1㍍72、74㌔
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