(写真は慶大ソッカー部女子提供)
今季、21年以来5季ぶりに関東大学リーグ1部を戦う慶大ソッカー部女子。4月4日の開幕戦を前に、ケイスポでは黄大城監督にインタビューを行った。就任1年目の21年に1部で戦うも、白星を挙げることなく2部降格を喫し、以降、昨季まで2部での戦いが続いていた。就任6年目の今季、まずは1部での“1勝”を目指す指揮官が意気込みを語ってくれた。(このインタビューは4月2日に実施しました)
――2部優勝・1部昇格を達成した昨季を振り返って
就任してからいろいろと積み上げてきた中で、確立されていったものが花開して成果に繋がったのはなによりですし、その時々でサッカーを通して起こる事象に対して学生が向き合ってきた結果だと思います。勝ち点をあれだけ積み上げられた要因の一つとしては大きな連勝(13連勝)があったと思っていて、ちょっとしたきっかけで自分たちが自信を持ってやれたり、いいゾーンに入れたりするのは、学生スポーツの魅力でもありますし、選手の著しい成長があったからこそ結果を出せたので、選手の今後の人生にとっても大きな経験になったのではないかと思います。
――(25年11月2日に)昨季最終節が終わってからどういったスケジュールで活動してきたか
リーグ戦終了後、すぐに少し休みを設けて、そこから1ヶ月と少しの間練習に入りました。1部を見据える中で、大きな補強はうちの場合はできないので、自分たちがやっているサッカーにどう上乗せしていくか、4年生が抜けてしまって人数もままならない状況でしたが、テーマを設定して年末まで取り組んできました。1月は基本的にはオフで、家族との時間であったりとか、テスト勉強、アルバイト、旅行などプライベートの時間も大事にしてほしいと思っているので、1ヶ月はまるまるオフで休ませました。1月の最終週あたりから始動して、2月にキャンプに行きました。そこでは基本的には走り込んで、1年間戦うフィジカルをメインにアプローチをしました。ここ1ヶ月ほどはトレーニングマッチを組んで、戦術的な部分を落とし込むという形でやっています。
――1部で戦うために特に取り組んできたこと
通るパスが通らなかったり、通っても潰されてしまったり、抜け出したところを追い付かれてしまったりというのは、個人的なスキルというか能力なので、上げないといけないところで、スプリントはチームのポイントとして年末に外部のコーチを招へいして、速く走るためのトレーニングは今もアップの中でやらせていますし、そこにアプローチをしたというのが一つ。それからボールを蹴ること、それはすなわち遠くに飛ばすことと狙った場所にきちんと30m~40mボールを蹴るというところが二つ目。もう一つはヘディングで、セットプレーはどうしても鍵になるので、というところがメインです。
年が明けてキャンプ期間からは、攻撃のところでどう上澄みをつくっていくかというところを中心にやってきました。
――TEAM2026の強み
(高校以前に)サッカーでの成功体験を積んできた選手が例年に比べてそれなりには多いと思っていて、高校時代になかなか試合に出られなかった選手も引き上げられて1部昇格という大きな成功体験を掴んできたという部分で言うと、選手にもプライドや自覚があるのだろうなということは例年のチームに比べて感じています。1部というまだ見ぬ世界が広がっていることを考えたとき、不安や葛藤というのもあるとは思うのですが、4年生が今年は多いですし、フィールドの上でサッカー選手として堂々とプレーできるというところが今年の色だと思っています。
――一方で課題は
課題はまだまだ多いと思ってます。早慶(定期)戦でもそうでしたが、2部ではできたことが相手の圧力が上がるとできなくなってしまうところが一番だと思っています。また、ピッチの中で何が起こっているかというところで、こちらがいくら後から言ったとしても同じシチュエーションはなかなかないですし、気候であったりピッチコンディションであったりレフェリーであったり、コントロールできない部分も含めて、問題解決のバリエーションやそれを支える根本的なセオリーもまだまだ足りていないと思っているところです。
――慶應らしいパスサッカーを1部でも見せたいか
個人的にはパスサッカーを志向しているつもりはあまりなくて、相手を見て、自分たちの中でロジックを持って崩していく上でパスが必要になっていて、「相手がこうだからこれが効果的だよね」という原則があります。原則があれば例外もあると思っていて、その時々で起こる自分の周辺の状況や、味方が何をしたくてどう困っているのかというところに対する問題解決を思考してほしいというのが、僕が監督をしている上で選手に求めたいことですし、それが一つのサッカーの形として現れているのが今のやり方なのかなと思っています。選手が相手を見て迷わないように原則を提示したり、打開策を与えるのが僕の仕事であると思うのですが、ピッチ上でどう決断してどの引き出して開け、実行するというところがサッカーを通して得られる大事な要素だと思いますし、サッカーの本質的な楽しさを味わえるものだと思うので、そこへのこだわりは個人的に強いところです。
――就任1年目の21年に1部で戦ったが、0勝1分21敗で2部降格。当時を振り返って
当時はサラリーマン監督で、仕事も忙しかったのでほとんど練習には行けず、週末の試合だけ行くという形でした。急遽(監督を務める)人がいないからやるしかないという形でしたが、もちろん学生のために責務を全うしようと思っていた一方で、限られた時間の中でどう成果を上げるのかという部分はどうしても難しい部分でしたし、(20年は)コロナの影響で降格がなく、僕が監督になる前年度もリーグ戦で(一度も)勝っていないという中で、本来は2部からチームをつくり直さなくてはいけない状態でしたが、降格がないレギュレーションが故に本来(1部に)いるべきではない状態のチームが残っていたような形で、難しさを感じていました。その一方で、「なんとか1勝を挙げる」、「なんとか1部に残す」という想いで、毎週毎週常に100%で向き合っている学生が自分の前にいるということを考えた時に、葛藤していたというのが1年目でした。
(その後、サラリーマンの職を辞し、ソッカー部専任となった。「2部に落ちて、目の前で選手の泣き崩れる姿を見た時に、引き受けた責任として、このままサラリーマン監督はできないので(監督を)辞めますというのは無責任ですし、僕がサラリーマン監督として関わった4年生はそれでサッカー人生が終わってしまったということを考えた時に、何かしらの成果をしっかりと残したいと思い、仕事を辞めて、4年前にソッカー部専任になりました」(25年9月のインタビューより))
――今季のチームの目標であるインカレへの想い
男子の場合は(全国大会が)夏と冬2つあって、夏の場合は所属するリーグを問わず予選を勝ち上がっていけば出場できるものの、女子の場合は全国大会に出るためには1部にいなくてはいけなくて、冬のインカレしかないレギュレーションが前提となるということと、(インカレに出場すれば)どの大学よりも長く、その年度のチームでサッカーができるので、僕も大学時代にインカレのベスト4までいって、12月25日までサッカーをしたという部分で言うと、少しでも長くサッカーをさせてあげたいと思っています。また、全国大会という誰もが憧れる舞台で、負けたら終わりという緊張感の中でプレーをすることの喜びはひとしおなので、学生が掲げた目標に対して少しでも支援ができればと思います。一方で、個人的にもそうなのですがまだ1部で1勝もしていないので、まず1勝できるかというところからだと思います。
――昨季は「10連勝したらUSJ」というご褒美があったようだが、今季は何かあるか
毎年、状況によってチームの表情みたいなものがあって、その中でどう立て直すかだとか、どう加速させるのかということで、ピッチ内外で施策としてやっていて、どんなものかは分からないですが、そういったものはみんなが平等に得られて、わかりやすいものなのでその時々で状況を見ながらなにかできればいいなと思っています。
――キーとなる選手
挙げればキリがないですが、(1人挙げるなら)やはり野村(=野村亜未、総4・十文字)ですね。キャプテンがどういったキャプテンであるのかということと、どういった意味をもたらすことができるかということは個人的にはすごく大事だと思っています。今年はフォワードがキャプテンなので、常にフィールドの10人はキャプテンの背中を見てプレーするという状況の中で、もちろん点を取ってチームを勝たせることは当たり前ですが、チームメイトが体を張って守ったボールや、苦しくて苦しくてなんとか掻き出したボールを、前線でどう時間をつくってあげるのか、どういった声をかけてあげるのか。また、勇気づけるようなプレーをしてくれたときには後ろの選手にとって頼りになりますし、キャプテンというところと、2年連続2部得点王ということで2部で通用していた部分が1部でどう通用するかというところ、そういった意味でチームにもたらせる影響は大きいと思うので、大事な選手だと思います。

キーとなる主将の野村 開幕戦ではいきなりゴールを記録した
――今季の意気込み
まずはやはり“1勝”。大きなものを掲げてもしょうがないので、まずは地に足をつけた先に掲げた目標(インカレ)が見えてくると思います。
そこをしっかりと置きつつも、学生スポーツなので、たとえ結果が出なくてもそれが彼女たちにとってどういった経験になってどういった意味があるのかというのは常に外してはいけないものだと思っています。ピッチでも、そういった感覚の中で表現できるようなサッカーを追求してきた自負はあるので、慶應らしいサッカーで、1部の舞台でも堂々と選手が躍動できるように支援していきたいと思っています
(取材:柄澤晃希)


