【野球】“エンジョイベースボール”を掲げ 投手陣を磨く新コーチ~上田誠コーチ~/2026春季リーグ戦開幕前首脳陣インタビュー 第1弾

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東京六大学野球春季リーグ戦が4月11日に開幕する。3季連続5位という結果に終わっている慶大は、“強い慶應”を取り戻すべく、スローガン「ファンファーレ」のもと、約2か月に及ぶ春季キャンプやオープン戦を重ねてきた。今回ケイスポでは、選手を指導してきた慶應の首脳陣に取材し、“強い慶應”復活へのカギに迫った。

第1弾は、25年間慶應義塾高校の監督も務めた上田誠コーチ!(このインタビューは3月28日に対面で実施しました。)

 

――コーチに就任、復帰された経緯を教えてください

まず、慶應義塾高校で25年間監督をやって、今ソフトバンクの柳町(=柳町達、令2商卒・慶應)くんとかヤクルトの木澤(=木澤尚文、令3商卒・慶應)くんとかの時代にやってたんですね。それで、教え子の今幼稚舎で先生をやっている森林(=森林貴彦、慶應義塾高校硬式野球部監督)がずっと手伝ってくれていたので、早く監督を辞めて隠居して遊んでプラプラ飲みに行ったり、ゴルフやったりとかしたいなと思っていたら、「大学でコーチをやらないか」という誘いが2018年にありました。最後のご奉仕として当時の監督の大久保さん(=大久保秀明監督)の下で3年間、堀井さん(=堀井哲也監督)の下で2年間やって、僕も65歳で定年退職しました。

それで、また「遊ぶぞー」と思っていたら、ちょうど教え子が四国アイランドリーグという独立リーグの球団を買収したから「香川オリーブガイナーズを手伝ってくれないか」と言われて、香川で一人暮らしを始めて、独立リーグの球団社長を2年半やってたんです。球団社長といっても、トラックを運転したり、グラウンド整備をしたり、ピッチャーの面倒を見たりとかしていて。そこで、去年いた荒井くん(=荒井駿也、令8商卒・慶應)が大学4年のときにけがをして、満足のいく成績ができなかったけれど「どうしてもプロに行きたい、独立リーグでやりたい」と言ってきたので、堀井監督に「荒井くんを預かるから」と言って、独立リーグで今年一緒に頑張ろうと思っていたら、僕が球団のオーナー会社と大喧嘩しちゃって。それで頭して辞表を出したら、受理されちゃったのでそれで球団社長を辞める羽目になっちゃったんです。それで荒井くんが来てくれるのに申し訳ないなと思って堀井監督に挨拶しに行ったら「じゃあここ手伝って」と言われてここに来ました。

 

――慶應で再び指導されることに対してどのような想いがありますか?

前回5年間やったのは1、2年生やBチームの選手を底上げしてAチームに送り出すという役割でした。今年からは「ピッチングコーチをやってくれ」と言われたので、責任が重くて緊張の中で毎日過ごしているみたいな状態ですね。

 

――今回、投手コーチとしてチームに関わる中で、ご自身の役割をどのように捉えていらっしゃいますか?

3シーズン5位に低迷しちゃったので、それをなんとかしたいなという思いです。ピッチャーになにかあるのかなと思って調べたら、投手が故障してしまったり、うまく投げることができていなかったので、ピッチャーを再建するというのは偉そうだけれども、けがをさせない体づくりを中心にやりました。ここまでほとんどけが人なくたどり着けて、成長してくれたなと思っているのでなんとかリーグ戦で優勝したいなと思います。

 

――独立リーグでの球団社長や高校野球での指導など、これまでのご経験は現在の指導にどのように生きていますか?

もちろん大学野球もレベルが高いんですけど、独立リーグというのは、全国のプロに行けなかった連中が集まってきて、もう一つ夢を見たいという思いでやっているのでレベルが高いんですよ。四国からも13年連続プロに行って活躍していたりね。しかも、プロ同士なのでソフトバンクとか広島とかオリックスとか阪神とか年中プロと試合をやっているんですよ。その中でどうすればプロの選手を抑えられるかなとかそういうことを考えていたので、そんなに違和感なく今やっていますね。

 

――長年高校野球を指導されてきた中で、大学野球との違いや難しさ、面白さはどのように感じていらっしゃいますか?

独立リーグというのは、お客さんが150人ぐらいしか入っていなかったりで悲惨なんですよ。東京六大学は日本最古のリーグなので伝統もあるし、天皇杯をみんなで競ってやっているわけなので、こういうところでやれる選手は幸せだなと思います。それこそ早慶戦というのは、日本の野球界をリードしてきた試合なので、それに関われるというのは、僕も幸せだし、選手も幸せなのでそれを感じてやってほしいなと思います。

 

――日々の指導で特に大切にされていることは何でしょうか

“エンジョイベースボール”ですね。どうせなら楽しんでやってほしいな。だから辛いことを明るく楽しくやってほしいなと思いますね。例え話なんだけど、旅行会社にお任せして旅行するよりも、自分で地図や時刻表を見て、ここに行ってみようかと考える方がおもしろい。選手にもそれと同じだって言っているんですよね。自分で考えてやる力を身に着けてほしいなと。一生懸命指導をしていて、ある程度までは教えるけれど、そこから先は自分で考えなさいというのが慶應のやり方なんじゃないかな。それが一番おもしろいんだよねというのがエンジョイベースボール。

 

――選手と接するうえで意識されている距離感やコミュニケーションはありますか?

難しいですね(笑)。なるべく最近の歌を覚えて、藤井風とかあいみょんとか言いながら(笑)。アップ中に音楽がかかっていて、「これあれだよね」なんて言うと「そんな曲よく知ってますね」と言われるので、そういうのを距離感を縮めるツールにしようと思っています。

 

――首脳陣の一員として、監督や他のコーチの方々とはどのように連携を取られていますか?

堀井監督は僕が大学4年生のときの1年生なんですよね。だからいじめてきた相手なので(笑)。でも今は僕の上司なので、なるべく監督の思うようなチーム作りをしていきたいなと思いますね。それで、堀井監督はJR東日本という有名な社会人チームで日本一にもなっている人なので、僕が高校野球の監督をやったとき、年中相談に乗ってもらっていたんですよ。だから堀井さんは僕の野球の師匠なの。だから甲子園に行けたのも監督のおかげだと思っているんですよね。もう何日、何時間でも野球の話だったり練習方法の話を付き合ってくれた。昔からずっと付き合ってくれた人なので、逆に恩返しをしなくちゃいけないなと思ってやっていますね。

他のコーチも上田(=上田和明)くんというもう一人ジャイアンツのレジェンドがいるんだけど、彼も学生に降りて行って「俺はプロだ」なんて偉そうな言い方全くしないし、熱心にやっているし、小林(=小林宏)くんも六大学の盗塁王をとるような人だったんだけど、選手目線でやっているというのかな。こういう感じで連携も取れている。非常にやりやすくやっていますね。

 

――――就任されてから、チームにどのような変化や手応えを感じていらっしゃいますか?

速い球を放るとか、鋭い変化球を投げるとか、コントロールを良くするとか、いろいろテーマを出してね。2月のキャンプインから、「今週はインコースを投げる練習をしましょう」とか、「牽制の練習をしましょう」とか、いろいろテーマを出してやってきました。順調にここまで来ているなと思いますね。

 

――今年のチームの強み・特徴をどのように見ていますか?

粘り強いじゃないですかね。今日(桐蔭横浜大戦)も3点取られてもひっくり返したし、そういう試合ばっかりなので。3点取られても、4点目やらないというのは約束事だし、とにかくツーアウトからでも点を取るとかね。ちょっとでも隙があったら先の塁を狙うとか、技術を超えたところで粘り強い。例えば、明治や早稲田、法政は甲子園組がごそっと入っているじゃないですか。けど、うちは公立高校とか野球が好きで慶應の門を叩いてくれている人が多いので、ずいぶん違うと思いますね。そこを鍛え上げていくという感じでやっているので非常に楽しいですね。

 

――現時点での課題や、さらに伸ばしていきたい部分はありますか?

多すぎてちょっと言えないんだけど、その課題を1つ1つ潰そうとして、リーグ戦中でも調整なんか一切関係なく、練習に明け暮れていきたいなと思いますね。監督もそういう人なんで、調整は一切なく、同じ感じで試合をやる。多分日本の大学野球で1番試合をこなしてますよ。それか1番練習をやっている。そんなにやるのかみたいな。休みもないわみたいな感じなんだけど、ありとあらゆることをやってきたという感じがしますね。だからそれは自信持っていきたいなと思いますね。

 

――上田さんが思う、注目してほしい選手やポイントがあれば教えて下さい

今年の注目は、先発3本柱じゃないですかね。広池(=広池浩成、経4・慶應)渡辺和(=渡辺和大、商4・高松商業)、さらに沖村(=沖村要、商4・慶應)というのも出てきて、3人先発ピッチャーが揃ったので、それを中心にして試合を勝ち切る。ディフェンスをしっかりさせておいて、点を取るという。去年は打っても打っても点を取られていたので。今年ピッチャー陣が豊富なので、10人ぐらいはリーグ戦で投げられるピッチャーが出てきたので、それを強みにしたいなと思いますね。

 

――春季リーグ戦に向けての意気込みと、読者に向けてメッセージをお願いします

まず意気込みは、もう優勝したいですね。それにしかないです。優勝を目指してとにかく全力でやりたいなと思います。プロ野球やWBCだってあると思うけれど、学生の方々が神宮に来て一緒になって戦ってくれたらうれしいなと思います。それで慶應の野球は面白いなと思ってくれて、どんどんスタンドの応援席もいっぱいになってくれるとすごいうれしいなと思います。ぜひ応援に来てください。お願いします。

 

(担当:河合亜采子)

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