東京六大学野球春季リーグ戦が4月11日に開幕する。3季連続5位という結果に終わっている慶大は、“強い慶應”を取り戻すべく、スローガン「ファンファーレ」のもと、約2か月に及ぶ春季キャンプやオープン戦を重ねてきた。今回ケイスポでは、選手を指導してきた慶應の首脳陣に取材し、“強い慶應”復活へのカギに迫った。
第2弾は、オリンピック金メダリストであり、長年読売ジャイアンツを支えてきた上田和明コーチ!(このインタビューは3月28日に対面で実施しました。)
――コーチに就任された経緯を教えてください
3年前より堀井監督の方から、「内野の守備を見てもらいたい」という風に言われてたんですけど、3年間巨人の方との契約があったので、3年待ってもらって来ました。堀井監督は大学の1つ上の先輩なので、3年間一緒にやっていましたし、JR東日本でも三菱自動車岡崎でも途中で縁があって会うこともありました。そんな時にちょこちょこ守備を教えてくれとかいろんな話をしていて、僕も5年ぐらい前から神宮に来れるようになり、堀井監督と連絡を取っていました。「ここはいいですね」「ここは悪いですね」とかいうやりとりもさせていただいていたので、おそらくそういうので、向こうは来てくれるんだったらありがたいみたいな形で入るようになりました。
――慶應で指導されることに対してどのような想いがありますか?
まず、母校で指導できるというのはすごく感謝しています。堀井監督だからこそ僕は「来たい」と思っていましたし、JR東日本でも三菱自動車岡崎でも本当に強いチームを作られている。慶應でも優勝されているという、どこに行っても強いチームを作られるので、自分ももう60歳過ぎているんですけど、ここで堀井監督が「どんな野球をやるのか」というのを今からでも勉強だと思っています。やっぱり母校で、自分の育ったところですから、チームを強くしたいという思いがあります。
――今回コーチとしてチームに関わる中で、ご自身の役割をどのように捉えていらっしゃいますか?
僕は何度もみんなに言っているんですけど、「とにかくチームを明るくしたい」と。私も明るい人間ですから、とにかく陰にこもらないで明るいチームを作りたい。僕が言うのは変ですけど、そういうチームにしたいですね。
あとは、守備を任されているので、今やっているのは、「とにかく正面に入りましょう」「両手で取りましょう」「ランニングスローしないでステップアンドスローで投げましょう」。今年の春のシーズンの目標は「イージーゴロのミスをしない」「送球ミスをしない」です。この2つだけは絶対守ろうねということでやって、1月6日にこちらに来て練習を始めたんですけど、そこから少しずつそれが伝わってきているのかなという気はします。今日(桐蔭横浜大戦)もミスもちょこちょこありましたけど、1月に比べると数段と守備力がアップしていると自負していますので、シーズンに入ってもそういう姿を見せてくれるんじゃないかと期待しています。
――オリンピックやプロ野球など経験豊富な上田さんですが、今の指導にどのように活きていますか?
楽しくて野球やっているというのは変わらないと思うんですね。だから、楽しさを前面に出すわけじゃないですけど、「面白いね」「楽しいね」「もっとやりたいね」という気持ちを持ってやってもらいたいというのは1つあります。
経験豊富とはいってもレギュラーでずっとやっていたわけではないので、控えとしてもいろいろやっていますから、裏の気持ちであったり、試合に出れない人のフォローであったり、そういうところも自分なりにやって明るく持っていく。冗談も言いながら。親父ギャグ大好きなので(笑)。とにかく親父ギャグ言いながら、みんなこっち向いてもらって、明るい慶應の野球にしたいなという思いはありますね。
――選手と接するうえで意識されている距離感やコミュニケーションはありますか?
まず名前を覚えることですね。人を呼ぶときに名前を言えないとなかなかコミュニケーションが取れないので、この年になるとなかなか人の名前が覚えられないんですけど(笑)、まず内野から覚えていって。2月3日からキャンプに行きましたので、そこでピッチャー陣、キャッチャー陣の名前も覚えて、外野も覚えてという形です。今はだいぶ覚えてきました。名前を言いながらコミュニケーションを取るという。去年まで僕はジャイアンツアカデミーにいたので、子どももそうなんですよ。「来て、ちょっとこっち来て」と言っても全然わからない。名前を言うとこっちを向いてすぐにやってくれる。行動も起こしてくれる。それを学んだので、記憶力は悪いですけど、名前を言いながらコミュニケーションを取っています。間違えながら、何度も何度も繰り返しながらやっと覚えたような感じですけどね。
――野手陣に対して、守備面で特に意識させていることはありますか?
とにかくイージーミスをしないことですよね。だから最後の最後までボールをしっかり見なさいと。あと、「悪」という言葉を使うんですよ。「ボールを見ないことは『悪』だよ」「ボールをしっかり握っていないのに投げることは『悪』だよ」「しっかりステップしないことは『悪』だよ」。とにかく「悪」という言葉を使いながらやってきました。みんなにも「悪」という言葉が浸透してきたので、みんなでそれを思うことがすごく大事ですね。僕がいくら叫んだってやるのは選手なので。これもいつも言っているんですけど、「やるのは選手だよ」と。学生コーチがやれるわけじゃない、監督、コーチがやれるわけじゃない。そこに出ているメンバーがしっかりやらなきゃいけないんだからということは常に伝えています。
――首脳陣の一員として、監督や他のコーチの方々とはどのように連携を取られていますか?
僕は1番下なんですけど、皆さんがやりやすい環境というか、冗談も言っていただけるし、これも楽しくじゃないですけど、自由にしてくれていいよと監督からも言われています。お互い部門が離れても、気づいたことは言おうという話もしているので、自由に言ったうえで話ができているというのが良い関係ではないかなと思います。
僕たちがいがみ合ったら選手にも伝わるし、僕たちが仲良くやっていると思えば、選手もそれを見て「良いチームになるかな」と思えると思うので、まず僕たち首脳陣がしっかりコミュニケーションを取りながらやるというのがすごく大事なのかなと思っています。
――就任されてからこれまでの中で、チームや野手陣に変化や手応えを感じている部分はありますか?
かなりの手ごたえですね。ステップしてくれるようになりましたし、選手同士お互いに言い合うようになりました。ダメな時にはダメ出しするし、でもそれは嫌味でもなく、ごめんなさいという感じにみんなやってくれるから、それが浸透しているというのはすごくありがたいです。高みを除けばまだまだとは思っているところはあるんですけど、やろうとする姿を今感じているから、そこは良い雰囲気でいっているし、それを後ろから支える立場でいたいなと思っています。
――今年のチームの強み・特徴をどのように見ていますか?
僕は教えていないんですけど、バッティングがとにかく今すごいですね。なぜかというと、監督が例えばマシンだと「1時間1人で打て」と。「2人で回しちゃダメだ」という形でキャンプの時もずっとやっていて、それも嫌がらずやっているので、バッティングが好きなんでしょうね。とにかく打ち込んで、スイングスピードも120以上出すようにというのは目標でやっているみたいで、とにかく振る力はある。だからあとは、変化球とかの対応力、それも試合を通じて僕たちが感じたことでアドバイスを加えながら、選手たちがそれを実践してくれればさらにレベルアップしていくんじゃないかなという風に思います。
――現時点での課題や、さらに伸ばしていきたい部分はありますか?
細かいプレーですかね。試合を通じるといろんなことが起こるので、必ず決まったプレーがあるわけじゃないので、臨機応変さをこれから求めていかないといけないと思います。
あと、絶対負けちゃいけない戦いが続くわけで、プロ野球は負けてもシーズン通して勝ち星が上回れば優勝できますけど、大学野球は2試合、3試合のうちに2勝しないといけないわけですから。とにかく負けない野球というんですかね。そういうのをもちろん負けていても、最後まで諦めない。そういう姿から慶應のファンの方にも通じると思うので、そこだけは伝えていきたいなと思います。
――昨年、神宮球場で始球式を務められましたが、そのときの心境や、慶應のグラウンドに立つことへの特別な思いはありましたか?
41年ぶりに慶應のユニフォームを着させていただいて、控室で着たときは「これが慶應だ」と。もう感動しました。やっぱり神宮で投げられるというのはすごく光栄でしたし、とにかくめちゃくちゃ緊張して、マウンドの上で足が震えました。「こんなところで投げていいのかな」みたいな。アカデミーをやっていたので軟式ボールを投げていたから、肩はある程度できていたんですけど、沖﨑(=沖﨑真周、経4・幕張総合)という今の主務とキャッチボールしたときの1球目を大暴投しちゃって(笑)。「緊張してるわ」と思いながらそこで30球ぐらいキャッチボールさせていただいて、とにかくストライク目標だったんですけど、ちょっと低めのボールだったんですね。自分では100点取りたかったんですけど、80点。とにかく良い経験をさせていただきました。
――上田さんが思う、注目してほしい選手やポイントがあれば教えて下さい
選手は内野手全員です。みんな期待しかないです。でもやっぱり今津(=今津慶介、総4・旭川東)はキャプテンでね、セカンドの形としてはそんなにうまい感じではないですけど、なんとかする姿はすごく見られるので、キャプテンが引っ張っていってくれて、内野をまとめてくれてという思いはありますね。
――春季リーグ戦に向けての意気込みや読者に向けてメッセージをお願いします
3季連続5位から優勝するなんておこがましい言葉だと思いますけど、チームも変わりましたし、4年生中心に頑張ってくれているので、とにかくリーグ優勝したい。まずここですね。大きく言うといっぱいあるんですけど、まずはこの春季リーグ戦をどう戦うか。
その中の1つは立教戦。開幕の立教戦でどれだけの力が出せるのか。そこが1番の肝心なところだと思うので、ベンチには入らないのでスタンドから手に汗握りながら見ると思いますけど、今までの応援として見ていた感じとは違うと思いますから。とにかく優勝を目指しながら最初の立教戦が大事。1戦1戦、目の前の勝ちにこだわることではないかと思います。期待してください。本当に期待できるチームになっていると思います。
(担当:河合亜采子)

